「離婚は計画的に⑤。~DV被害に遭っている場合の対応~」

奈良県王寺町で開業しています。

行政書士の若林かずみです。

今回は、DV被害に遭っている場合の対応について書いてみようと思います。

 

【はじめに】

 

離婚のコラムを書くにつれ、思い出す知人がいます。

もう何年も音信不通になっていますが、どうしているのやら…。

当時、彼女は、付き合っている彼氏からのDV被害に遭っていました。

私からすれば、

「そんな奴なら別れてしまえ!」

の一言で終わりなのですが、

「でも…」と、彼女はDVの彼氏を別れようとしない。

その後、彼女は別の男性と結婚し、子宝にも恵まれているというのは知っていますが、

さて、平穏な家庭を築けているのだろうか?

果てしない疑問があるのです。

 

DV被害者は、被害の自覚が薄い???】

 

なぜ、その彼女が平和な家庭を築けているか疑問を感じるのかというと、

それは、今までの、こんな経緯があるからなんです。。。

 

私も彼女も若かりし頃、

彼女の彼氏に何度も会ったことがあります。

なぜなら、女同士のお茶会などにも、その彼は参加してくるから。

お話も上手で、とても人当りの良い彼は、

「ザ、良い人」という感じで、好印象。

でも、その裏では、暴力があったんですよね…。

女同士のお茶会にやってくるのも、実は、彼女を監視するため。

男性も混じる飲み会に至っては、呼んでもないのに、

気づいたら、お店に来て、遠巻きに彼女を見つめている。

まるでドラマのような恐怖の世界。。。”(-“”-)”

結局、その彼とは、10年近く付き合っていたはず。

別れてから、DV被害に遭っていたことを聴いてビックリ。

とはいえ、新しく進みだしたんだから、

「次は、良い人を見つけたらいいやん!」

というノリでいたんですよね。

 

ほどなく、彼女には新しい彼氏ができて…。

ある日のこと。

「今日、お茶の約束してたけど、行けなくなった」と彼女から電話。

どうしたん?

と聞くと、

「ちょっと、肋骨を骨折してん」

な、なぜ??

「いや…。彼に蹴られて…」

えーーーーーーーっ!!

なんなんそれ??

どうなってるん???

「ちょっと、言い合いのケンカになって、それで…」

なにそれ!!???傷害事件やんかーーー。

それどうすんの???

もう、別れーーーーー。

「でも、優しいし…」

いやいや、肋骨骨折させられといて、優しいも何もないやろうに。((+_+))

 

と、結局、その彼とも別れることなく付き合い続け…。

その後、私は彼女と疎遠になったため、その後のことは分からないのですが、

今は、結婚していると風の便りに聞いています。

 

DVをしていた彼らですが、

他の女性と付き合っているときには暴力を振るわなかったのに、

彼女のときには、その才能が引き出されてしまったようなんですよね。

 

となれば、今のご主人もどうなのやら…。

推して知るべし…。。。

 

DVには、以下のようなサイクルがあり、

いわゆるハネムーン期というのがあるため、

DV被害者も、そのサイクルから抜け出せないようなんです。

 

DVサイクル

 

1)蓄積期

 

この時期は、日々のイライラやストレスなどを蓄積していく時期になります。

日々のイライラやストレスを抱えるというのは、どんな人にでもあることだと思います。

それらを上手く解消するというのが大人の対処方法。

ですが、DV加害者は、これを上手く解消できず、抱え込んでしまいます。

そして、周囲の人やパートナーに気遣わせないように我慢してしまい、

その気遣いが、さらなるストレスとなって蓄積されていくのです。

 

2)爆発期

 

蓄積期で蓄積したイライラやストレスが、一気に暴力などになってしまう時期が爆発期。

蓄積期でのイライラにより、DV加害者は、かなり緊張した状態になっているのがピークに達し、ちょっとした出来事で、それが爆発します。

一度、爆発すると、コントロールが効かなくなっているので、

上記の友人の事例にあるように、傷害事件に発展するような暴力を振るったりします。

 

3)ハネムーン期

 

爆発期を過ぎると、突然、人が変わったように優しくなります。

結婚当初のような優しく気の利く伴侶に変化することからハネムーン期ともいわれます。

人によっては、暴力を振るったことについて、泣いて謝ってくることもあります。

DV被害者も、もともとはDV加害者のことを好きなのですから、

優しくなったパートナーを見て、許してしまう。

泣いて謝罪するパートナーを見て、「この人を救えるのは私しかいない」と思ってしまう。

 

ただ、こうしている間にも、また、じわじわとDV加害者は蓄積期に戻っています。

そして、この3つのサイクルが延々と繰り返されていくのです。

 

このように、DV加害者は自身を止めることができないのと同時に、

DV被害者も、その負のループから自分自身で抜け出せない状態に陥ります。

 

ですので、この二人の周囲の人が異変に気付いたときに、

何らかの対応をしていくということも必要となってきます。

とはいえ、最終は、本人が別れる気持ちにならないとどうにもならないんですが…。

 

DV被害に遭っている場合の対処方法】

 

1)第三者に相談する

   →各自治体や民間団体にDV専門の相談窓口があります。

   電話で気軽に相談できますので、まずは、第三者に相談してみましょう。

 

   ☆相談窓口☆

    ・配偶者暴力相談支援センター(各自治体)

    ・社会福祉事務所   など

    

                ※奈良県内の相談窓口の一覧は奈良市役所のサイトが参考になります。

     「DV(ドメスティックバイオレンス)に関する相談機関」

        →http://www.city.nara.lg.jp/www/contents/1232506927748/

        

                  ※緊急性が高い場合や、土日などは、警察に連絡するのも良いと思い

                 ます。

    ☆警察専用ダイヤル→#9110(短縮ダイヤル) 

                    携帯電話での使用も可能

     →警察専用ダイヤルに電話をすると、地域を管轄する警察本部などの

                  相談窓口に繋がりますので、緊急の場合には、警察専用ダイヤルを利

                  用するのも良いと思います。

 

2)証拠集め

   →DV被害による離婚を考えているのであれば、

自身に有利になる証拠を集めましょう。

 

   ☆集めるべき証拠の例☆

    ・怪我をした部分が分かる写真、診断書

    ・破壊された家や家具の状態が分かる写真

    ・暴力を振るわれたり、暴言を吐かれたことが分かる

                 録音データやビデオ録画

    ・暴言を吐かれたことが分かるようなメールやラインの記録   など

 

3)別居する

   →別居後の居住先は、パートナーに知られにくい場所にする。

   ※緊急時には、上記の警察専用ダイヤルに連絡して、配偶者暴力相談支援

            センターでの一時保護を求めるのも良いと思います。配偶者暴力相談支援

            センターの所在地は、被害者保護のため、公表されていません。また、民

            間のシェルターで一時保護を求めるということもできます。

 

4)保護命令の申し立てをする

           →配偶者から暴行罪又は傷害罪に当たるような暴行を受けたことがある

              か又は生命・身体に対して害を加える旨の脅迫を受けたことがあり、今

               後、配偶者からの身体に対する暴力によりその生命身体に危害を受ける

                おそれが大きいときに、その被害者は保護命令の申立てができます(配

                偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律参照)。

 

☆保護命令とは…。

 

                 →相手方(DV加害者)からの申立人(DV被害者)に対する身体への

                  暴力を防ぐため、裁判所が相手方に対し、申立人に近寄らないよう命

                  じる決定のことです。

 

具体的には、

・六か月間、申立人(DV被害者)の身辺につきまとったり、申立人(DV被害者)の住居(同居する住居は除く)や勤務先等の近辺をうろつくことを禁止する命令(接近禁止命令)や、

・申立人(DV被害者)と相手方(DV加害者)とが同居している場合で、申立人が同居する住居から引っ越しをする準備等のために、相手方に対して、二か月間家から出ていくことを命じ、かつ同期間その家の付近をうろつくことを禁止する命令(退去命令)

などがあり、

これらの命令に違反した場合には、相手方に懲役又は罰金が科されます。

 

以上の保護命令については、裁判所のサイトが参考になります。

http://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section09/dv/

 

【終わりに】

 

DV被害というと、とかくDV被害者側からのみ語られがちですが、

DV被害者だけでなく、DV加害者も広い意味では被害者だったりします。

DV加害者の大半が、幼少の頃に、虐待を受けており、その時の心的外傷により

DV加害者となってしまっています。

ですので、DV加害者がカウンセリングを受けることで心が癒されて

DVが納まるというケースもあります。

DVがあったことで離婚するかどうかは、二人の意思ですが、

負の連鎖を断ち切り、子供達に、それが連鎖していかないようにするためにも

周囲の者が気をつけていくということも必要ではないでしょうか?

 

色々と難しい問題を含んでいますが、

一人で悩んでいるようであれば、お気軽に当方にご相談下さい。

 

 和(やわらぎ)行政書士事務所 

           特定行政書士 AFP 法務博士  若林 かずみ

 

参考文献①「これだけは知っておきたい 離婚のための準備と手続き」監修:弁護士 鈴木幸子/柳沢里美 「新星出版社」

参考文献②「イラストと図解でよくわかる!前向き離婚の教科書」 監修:弁護士 森元みのり 「株式会社 日本文芸社」

参考文献③「少しでも有利に離婚したいならきっちり証拠を集めなさいー幸せになるための別れ方」 弁護士西村隆志・山岡慎二・福光真紀「星雲社」

 

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