遺言書⑨ 〜公正証書遺言 前編〜

こんにちは、相続手続きと遺言書作成専門の行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

先週の日曜、平成31年3月3日から、奈良市の各証明書が大手コンビニエンスストアなどで取得できるようになりました。(ただしマイナンバーカードが必要です。)
取得できる証明書は以下のものです。

・住民票の写し
・戸籍全部(個人)事項証明書
・戸籍の附票
・印鑑登録証明書
・課税(非課税)証明書

手数料は窓口と同額ですが、土日祝でも取得することが可能なうえ、利用時間も午前6時半から午後11時までとなっていますので「平日の日中、市役所に足を運ぶ時間がなかなか取れない」という方には嬉しいサービスだと思います。

テクノロジーの進歩が、行政サービスの向上にも繋がって、暮らしがますます便利になっていきますね。

インターネットの普及により、行政手続きの電子化もどんどん進んできました。我々、行政書士も時代の変化に対応できるよう、常に努力をしていかなくてはなりません。

 

さて、それでは遺言書に話を戻したいと思います。今回は、普通方式の中の『公正証書遺言』についてです。

公正証書遺言とは、公証役場公証人が公正証書により作成する遺言のことです。

公証役場という場所は一般の方にはあまり馴染みがないかもしれませんが、公証人(裁判官や検察官を長く務めた者で、公募に応じた者の中から法務大臣が任命する公務員)が公正証書の作成や、株式会社などの定款の認証を行う役場で、奈良県の場合、奈良市と大和高田市にあります。

では、公正証書遺言のメリットとはなんでしょうか?前回ご説明した、自筆証書遺言と比べて見ていきましょう。

まず、自筆証書遺言は自分自身で保管をしなくてはならないため紛失・汚損・災害等による滅失などの恐れ、また第三者によって隠匿・破棄・改ざんなどをされる可能性があります。
それに対して公正証書遺言は、公証役場で遺言書の原本を保管するためその心配がありません。(原則20年間保管、奈良市の公証役場では本人が120歳になるまで保管します。)

次に、自筆証書遺言を自分で作成した場合には、法律で定められた要件を欠いていることにより無効となってしまったり、相続人の遺留分に対する考慮が無かったためにかえって紛争の元となってしまう危険性などがあります。
公正証書遺言は、公証人が内容の確認を十分行った上で作成するため、要件を満たさず無効となる心配や、遺留分その他への配慮も万全です。

さらに、自筆証書遺言は相続が発生した時(つまり遺言者が亡くなられた時)に、相続人が遺言書を裁判所に提出し、検認の手続きをしなければなりません。

しかし公正証書遺言は、裁判所での検認の手続きが不要です。したがって、相続発生と同時にその遺言書は有効となり、相続財産の処分をただちに開始することができます。

なお公正証書遺言の検認手続きが不要なのは、遺言書の原本が公証役場で保管されているため改ざんされる恐れが無いこと、また公証人が公正証書を作成するにあたっては、公証人法による厳格な職務規定がおかれているため、遺言の内容をあらためて検証する必要が無いから、という理由です。

最後に、自筆証書遺言は全文自筆(財産目録を除いて)が要件ですので字が書けない方は作成することができませんが、公正証書遺言は公証人に内容を口授することで作成できますので、字が書けない方でも作成が可能です。(もしお話しもすることが出来ない場合には通訳者による通訳(手話通訳等)により作成することも可能です。)

自筆証書遺言と比べてこのようなメリットを持っている公正証書遺言ですが、デメリットはないのでしょうか。

これについては次回見ていきたいと思います。

 

行政書士 奥本雅史事務所
http://okumoto.tribute-mj.net

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