成年後見制度と日常生活自立支援事業

こんにちは。

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

 

最近は朝と晩の冷え込みが厳しくなってきましたね。

気がつけば、もう11月。我が家では寝具の入れ替え、衣替えなど冬支度を始めました。

 

今年も残り2か月です。

寒さに負けず、2018年のラストスパート、頑張りたいと思います。

 

さて、今回は、社会福祉法に基づく「日常生活自立支援事業」についてお伝えしたいと思います。

 

日常生活自立支援事業とは

判断能力が十分でない人に対して、福祉サービスの利用に関する手続きの援助を行ったり、地域において自立した生活が送れるように支援することを目的として導入されました。

 

判断能力が十分でない人を支える事業というと、成年後見制度が思い浮かびますよね。

「日常生活自立支援事業」と「成年後見制度」

この2つの制度はよく似ていますが明確な違いもあります。

 

では、順番に説明していきましょう。

 

日常生活自立支援事業がつくられた背景

まず、日常生活自立支援事業がつくられた背景からみていきます。

介護保険法の施行によって、利用者みずからがサービスを選択し、サービス提供者と契約を結び、その契約に基づいて福祉サービスを利用するしくみが基本となりました。

 

しかし、福祉サービスを利用する人の中には、判断能力が必ずしも十分でない人も少なくありません。そうした人々にとって、自分で福祉サービスを選択し、契約を結ぶという行為は容易ではありません。

 

そのため、一連の流れを援助するしくみが必要となったのです。そのしくみとして、日常生活自立支援事業が誕生しました。判断能力が低下した人が安心してサービスを選び、契約を結ぶことができるように支援する成年後見制度も目的としては共通しています。

 

実施主体は社会福祉協議会

日常生活自立支援事業を実施する主体は、都道府県·指定都市社会福祉協議会です。

厚生労働省は、日常生活自立支援事業を創設した際に、全国のあらゆる地域で実施できるようにするため、全国的なネットワークをもつ公益的な団体であり、すでに各地で先駆的な取組みを行っている社会福祉協議会を中心とした事業としました。

 

都道府県·指定都市の社会福祉協議会が事業を実施するにあたっては、市区町村社会福祉協議会等に委託することができます。また、利用者の利便性を考慮して、事業の一部については、地域のNPO法人や当事者団体にも委託することができるようにもなっています。ほとんどの場合は社会福祉協議会ですね。

 

成年後見制度と比べてみると、法定後見では、家庭裁判所に申立てますし、任意後見では公証役場で公証人に任意後見契約書を作ってもらいます。日常生活自立支援事業は社会福祉協議会が中心になっているところが大きな特徴です。

 

日常生活自立支援事業で受けられるサービス

では、日常生活自立支援事業ではどのようなことを行っているのでしょうか。

認知症高齢者など、判断能力の不十分な人が地域において自立した生活を送ることができるよう、以下のサービスを中心とした援助を行っています。

 

  • 福祉サービスの利用援助

福祉サービスの利用援助では、福祉サービスの利用または利用中止のために必要な手続き·福祉サービスの利用料を支払う手続き、福祉サービスについての苦情解決制度の利用手続きに関する援助を行います。

また、住宅改造、住居の賃借、日常生活上の消費契約や住民票の届出などの行政手続に関する援助なども行います。

 

  • 日常生活における金銭管理

日常生活における金銭管理では、年金や福祉手当を受けるために必要な手続き、医療費の支払いに関する手続き、税金や社会保険料、公共料金を支払う手続き、日用品等の代金を支払う手続きに関する援助を行います。

また、これらの支払いに伴う預貯金の払戻し、預貯金の解約、預貯金の手続きに関しても援助を行います。

 

  • 書類預かりサービス

書類預かりサービスでは、利用者の書類等を預かります。

預かることのできる書類としては、年金証書、預貯金の通帳、契約書類·保険証書、実印、銀行印などがあります。

実施主体である社会福祉協議会の判断により、預貯金通帳等の書類預かりサービスを、福祉サービスの利用援助とあわせて実施することができます。

 

利用者は、居住している地域の社会福祉協議会と契約して利用する

日常生活自立支援事業を利用する場合、社会福祉協議会との契約になります。この点も成年後見制度と違う点です。

具体的な流れは次回のコラムでお伝えしますね。

 

対象者は判断能力の不十分な人

では、この事業は、どのような人が対象になるのでしょうか。

それは認知症高齢者、知的障害者、精神障害者など、判断能力が日常生活を送るうえで必要な福祉サービスの利用に関して、自分の判断で適切に決定することが困難な人です。同時に、この事業の契約内容について判断し決定できる能力を有していると認められることが必要です。

 

つまり、「判断能力が不十分である」、「日常生活自立支援事業の契約内容について判断できる」といういずれの要件にも当てはまる人が対象になります。

なんだか矛盾しているようにも思えますね。

 

もう少し具体的に言うと、認知症などで判断能力が多少衰えたけど、日常的な生活を支援してもらえれば、まだまだ住み慣れた地域で自立した生活が送れる場合は、日常生活自立支援事業の利用が考えられます。

 

なお、認知症の診断、療育手帳や精神保険福祉手帳などの所持が利用の要件になることはありません。

 

一人暮らしなどで少し不安があるという人も利用できますし、もし、判断能力がもっと低下してしまったら成年後見制度につなげます。また成年後見制度と併用するケースもあります。

 

日常生活自立支援事業を利用するためのしくみ

改めて日常生活自立支援事業を利用するためのしくみを確認すると、サービスは本人と社会福祉協議会が利用契約を結んで行うことになります。

 

そして、実際にどんな人が支援してくれるかというと、福祉サービスの利用援助や金銭管理などの具体的な援助は、社会福祉協議会に雇用される「専門員」と「生活支援員」が行います。

 

専門員は、初期相談から、本人に必要な援助の決定(支援計画の策定)、この事業に必要な契約締結能力の確認、契約締結に関する業務を行います。

 

生活支援員は、支援計画に基づき、定期的もしくは本人から依頼があったときに援助を行います。

専門員および生活支援員は、当然ながら常に本人の自己決定を尊重する権利擁護の視点に立って援助を行っています。

 

以上が日常生活自立支援事業の概要です。

成年後見制度を利用するほどではないけれど、何か不安があって支援が必要ではないかと考えられる人は地域の社会福祉協議会にご相談ください。

 

弊所でも日常生活自立支援事業や成年後見制度のご相談をお受けしています。

お気軽にご相談ください。お待ちしています。

 

次回は日常生活自立支援事業を利用するための手続きや実際の支援の流れをお伝えしたいと思います。

 

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任意後見とともに備えておきたいこと

こんにちは。
行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

今回は任意後見とともに備えておきたいことをご紹介したいと思います。

先日、テレビのバラエティー番組で終活の特集をやってました。

出演している芸能人が自分の終活について紹介したり、お墓選びや終の住処をさがすなどの内容でしたが、終始楽しい雰囲気でした。

「死ぬことを考えるなんて縁起が悪い」と思われていた時代もありましたが、現在は終活の認知度が上がり、そのイメージも変わってきているようです。

また、朝のワイドショーでも終活に関する特集をよく見かけます。
お墓見学ツアーなるものが人気だとか・・・

それだけ終活に関心を持っている人が多いということですよね。
高齢期を安心して過ごしたいという希望は誰もが持っていると思います。

ところで、「終活」という言葉は日常的に使われていますが、みなさんはどんな意味で使っていますか?

私は、財産の整理(相続の準備)や葬儀、お墓の準備など今のうちに決めておくことかなと思っていました。

一般社団法人終活カウンセラー協会のホームページには、

「終活とは人生のエンディングを考えることを通じて“自分”を見つめ、“今”をよりよく、自分らしく生きる活動」

と書いてありました。
今をよりよく、自分らしく生きるために終活があるのですね。
そして、死ぬことを考えることにより、今をどう生きるのかを考えることにつながるようです。

「これから残りの人生をどう生きるか」

趣味や生きがいをもって楽しく生きていくことを考えるのはもちろん大事なのですが、そのためには不安を解消するための対策も必要です。

高齢期に抱える不安として、お金のこと、健康のこと、介護のこと、葬儀・お墓のことなど様々です。

前回のコラムでお伝えした任意後見契約は、認知症による判断能力の低下に対する備えでしたね。これも一つの備えではありますが、任意後見契約だけではカバーできないこともあるんです。

たとえば、葬儀のことやお墓のことは任意後見契約ではカバーできません。

なぜなら、任意後見契約は本人が死亡してしまったら契約が終了するからです。

亡くなった後のことは親族に任せることになりますが、葬儀ができるような親族がいない場合や、いても任せられない場合には、「死後事務の委任契約」という方法があります。

死後事務の委任契約では、亡くなった後の親族などへの連絡や葬儀社の手配、役所の手続き、火葬、納骨、自宅の整理などが頼めます。

たとえば、葬式は誰が行い、葬儀費用は誰が支払うのかといったことも、決めておくことで相続トラブルを防ぐことができます。

また、最近の葬儀は、家族葬など簡素化されたり、お墓に関しては散骨や樹木葬への関心が高く、多様化しています。つまり、葬儀やお墓に関する考え方や希望も多様化しています。

自分の遺志を実現しようと思えば、誰がいくらの費用で何をするのかを、生前に決めておく必要があります。

「死後事務の委任契約」は葬儀や散骨、樹木葬など、自分の死後に生ずる事務を生前に委任しておく契約です。この契約は本人が死亡すると同時に始まります。

死後に他人に迷惑をかけたくない、死後のことも自分で決めておきたいという希望を実現するために「死後事務の委任契約書」という備えがあります。

この死後事務の委任契約と任意後見契約を同時に契約することによって、判断能力が低下してから亡くなった後までカバーすることが可能になります。

最近は、一人暮らしの高齢者が増えていて、孤独死のニュースを耳にすることが多くなってきました。また、遺体の引き取り手のない事例が増加し社会問題にもなっています。

親族がいても疎遠になっていたり、事情があって死後の面倒まで頼めないこともあります。

このような事例が増えていることから、死後事務の委任契約が注目されています。

以前のコラムでご紹介した「財産管理等委任契約」「任意後見契約」そして、今回ご紹介した「死後事務の委任契約」は同時に公正証書で作成できます。弊所では、ご希望をお聞きしながら契約書の原案をご提案いたします。その他終活に関連することも遠慮なくご相談下さい。

 

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任意後見契約の手続きについて~その2~

こんにちは。

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

 

前回のコラムで、任意後見契約の手続きについて

  • 受任者を決める
  • 授与する代理権の内容を決める

この2点をお伝えしました。

 

今回は、その次の段階を見ていきましょう。

 

 

任意後見契約に必要な書類を準備する

 

受任者(頼む相手)と、授与する代理権の内容(代わりにやってもらうことの内容)が決まったら、必要書類をそろえます。

 

任意後見契約を結ぶには、次のような書類が必要となります。

  • 本人の印鑑登録証明書
  • 本人の戸籍謄本
  • 本人の住民票
  • 任意後見人になる人の印鑑登録証明書
  • 任意後見人になる人の住民票

 

なお、印鑑登録証明書は発行後3か月以内のものに限りますのでご注意ください。

 

 

任意後見契約書案の作成

 

任意後見契約は、必ず公正証書で結ぶ必要があります。

公正証書とは、公証役場の公証人が作成する証書です。公正証書によらない任意後見契約は無効になります。

 

公正証書により契約が結ばれるまでには、まず最初に委任者である本人と受任者との間で任意後見契約書案を作成します。受任者は本人の意思を十分に確認しながら、その意思にかなう案を作成します。

 

そして、契約形態を決めます。

契約形態は、以前のコラムでも紹介した「将来型」「移行型」「即効型」があり、本人との面談を通じて本人の判断能力や生活実態、希望など見極めたうえで適当な契約形態を選びます。

 

また、代理権の範囲を明確に定めるため、授与する代理権の内容を代理権目録として作成し任意後見契約書に別紙として添付します。

 

 

任意後見契約公正証書の作成

 

本人と受任者の間で作成した任意後見契約書案をもとに、公証人と相談して契約書の文案を完成させ、契約内容を確定します。そして、契約書の文案が完成したら本人と受任者がそろって公証役場へ出向き、「任意後見契約公正証書」を公証人に作成してもらいます。

 

任意後見契約公正証書を作成するにあたって、本人の判断能力と契約を結ぶ意思を確認するため、公証人は原則として本人と面接するものとされています。もし、判断能力に疑いがある場合は、医師の診断書等を求められる場合があります。

 

公証人との相談や任意後見契約公正証書作成の日程については、お近くの公証役場へ電話で問い合わせのうえ、事前に予約を取りましょう。任意後見契約公正証書の作成時は本人、受任者とも実印を忘れずに持参してください。

 

なお、本人が病気やケガで入院中、または高齢などの理由で公証役場に出向けない場合は、公証人に自宅や病院または入所施設などに出向いてもらって作成することも可能です。

 

 

任意後見契約公正証書作成費用

 

公正証書作成に要する費用は、以下のとおりです。

 

  • 公証役場の手数料・・・・・・・・・1万1,000円
  • 法務局に登記するための手数料・・・1,400円
  • 法務局に収める印紙代・・・・・・・2,600円
  • 郵送料金・・・・・・・・・・・・・540円
  • 正本等の作成手数料・・・・・・・・1枚につき250円×枚数

 

任意後見契約公正証書を作成するには、上記の手数料等をもとに計算され、1契約につきおおむね2万円から2万3,000円程度が必要となっています。

 

なお、公証人に自宅や病院等に出向いてもらった場合の手数料は50%加算され、公証人へ支払う日当(1万円。ただし、4時間を超えるときは2万円)と交通費の実費が必要になります。

 

また、任意後見契約と併せて、通常の財産管理委任契約等の委任契約を同時に結ぶ場合はその契約につき上記の①と⑤がさらに必要になります。そして、受任者が複数で、各受任者が権限を単独で行使(各自代理)できる定めがあるときは、受任者の数だけ契約の数が増えることになり、その分だけ費用も増えることになります。ただし、受任者が複数であっても、権限を共同で行使(共同代理)の場合には、1契約として手数料が計算されます。

 

 

以上が任意後見契約の手続きの概要です。

いかがでしょうか。

 

公証役場で任意後見契約公正証書を作成するまでの準備については、専門家に頼むことも可能です。

 

弊所は、必要書類の準備や任意後見契約書案の作成、公証人との打ち合わせなどのサポートができます。ぜひ、気軽にご相談ください。

 

次回は、任意後見とともに、やっておきたい備えについてご紹介したいと思います。

 

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任意後見契約の手続きについて

こんにちは。

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

今回は、任意後見制度の手続きについて見ていきましょう。

 

任意後見契約を締結するためには、まずは次の2点を決める必要があります。

 

  • 受任者を決める

つまり、判断能力が低下したときに自分に代わって必要な契約等を締結してくれる人を決めます。

 

任意後見契約において、どのような人を受任者(任意後見人)に選任するかは、本人(委任者)の自由な選択に委ねられています。

 

誰に任意後見人を頼むかということはとても大きな問題です。弁護士、司法書士、行政書士、社会福祉士等の専門家でなくても、親族やその他の第三者でも構いません。

 

任意後見人になるために、法律上、特に資格を有することなどは求められていませんが、未成年者、破産して復権していない人、成年後見人等を解任された人、本人に対して訴訟を提起したことがある人(その配偶者又は親子)は不適格者として任意後見人になれません。

 

また、不正な行為や著しい不行跡のある者、その他任意後見人の任務に適しない事由のある人(例えば金銭にルーズな人)なども、任意後見人としてふさわしくないとされています。

 

任意後見人には、判断能力が低下したときの財産管理や介護の手配などを全面的に委ねることになります。そして、任意後見開始後の生活を任せることになりますので、信頼できる人を見つけることが何より大切です。

 

一般的には、報酬の問題もあるため、本人の親族、友人・知人が任意後見人になることも多いです。

 

親族に頼む場合は、任意後見制度をよく理解してもらうことが重要です。

 

そして、同年代の人に頼むと、どちらが先に認知症等によって判断能力が低下するかわかりませんから、できれば年齢は自分より若い人の方がよいでしょう。

 

いずれにしても、代理権を悪用、濫用されることがないような信頼できる人を慎重に選ぶ必要があります。適当な人がいない場合は、弁護士会、司法書士会、行政書士会、社会福祉士会、社会福祉協議会などの専門団体でも相談に応じたり、引き受けてくれます。

 

任意後見人の候補者が見つかったら、その人が自分の思いをかなえてくれる人かを見極めます。できれば、契約前に一緒にエンディングノートを作ったりして、財産や生活のことを相談したり、介護や医療について自分が将来どうしたいかなどの思いを伝えるとともに、相性を確認できれば安心です。

 

また、法人も任意後見人になれます。個人の場合と異なり、担当者のケガや病気、死亡等で後見活動が停滞したり終了することがありません。不測の事態でも法人内の別の担当者に替わって対応してもらえます。さらに、様々な専門知識・技能を持つ人々が得意分野を活かしつつ連携して対応してくれることが法人のメリットです。

 

ただし、本人にしてみれば、担当者が変わる可能性があるという点では不安があるかもしれません。その法人が信頼できる組織か、誰が責任を持つのかなどあらかじめ確認しておくことが必要です。

 

 

  • 授与する代理権の内容を決める

自分に代わってやってもらいたいことは何があるか、どのようなことをやってもらうのかその内容を決めます。

 

任意後見人に与える代理権の内容、すなわち任意後見人が代理することができる事務の内容を決めます。任意後見人(受任者)にどこまでの仕事をしてもらうかは、引き受けてくれる人との話し合いによって自由に決めることができます。

 

本人が任意後見人に委任できる事項は、代理権付与の対象となる財産管理に関する法律行為と、身上監護に関する法律行為などです。

 

以前のコラムでも書きましたが、本人の身の回りのお世話や介護などを直接行うことは後見人の職務ではありません。

 

将来介護をしてほしい人(介護サービス事業者等含む)がいれば、任意後見人が本人の代理人としてその人または介護サービス事業者等と契約することになります。

 

代理権の範囲は、将来を予測して定めなければなりません。そのために、広く包括的に定めた方が、委任漏れがなく、不測の事態にも対応しやすくなるため安心です。

 

しかし一方で、あまりに包括的な代理権の定め方をすると、本人からすると「そこまで依頼するつもりじゃなかった。」「そんなことまで頼んだわけではない。」など不満になる可能性もあります。

 

代理権の範囲は、狭すぎると不自由で、本人の望む生活を実現することが難しくなる可能性がありますし、広すぎても不安が残ります。

 

大切なのは、本人が任意後見契約を締結する際に今後の自分自身の生活設計を明確にすることです。自分の望むことは何であり、こんな場合はこうしてほしいとか、これはしてほしくないなどを明らかにしておくことで任意後見人もその意思に沿って適切な事務を行うことができます。

 

そのために、自分の希望を具体的に明確にするための「ライフプラン」や「安心ノート」と呼ばれるものを使って書面に残し、任意後見人に渡しておくことも有効です。

 

 

弊所では、納得して任意後見契約が締結できるよう、手続きから契約内容のアドバイスまでトータルでサポートさせて頂きます。

ぜひ、お気軽にご相談ください。

 

次回も任意後見契約の手続きに関するコラムをお届けします。

 

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任意後見契約の3つの類型について

こんにちは。

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

引き続き、今回も任意後見をテーマにお伝えします。

前回は、将来、判断能力が低下したときの備えとして「任意後見契約」の概要をお伝えしました。

その任意後見契約には

「将来型」 「移行型」 「即効型」の3種類があります。

今回は、この3種類の契約の内容とポイントをまとめました。

 

では、順番に説明していきましょう。

  • 将来型

「将来型」とは、本人の判断能力が低下した後における代理権を任意後見人に授与する“任意後見契約のみ”を締結します。任意後見契約の基本型といってよいでしょう。

本人が任意後見契約を締結する時点では十分な判断能力を有しており、本人の判断能力が「不十分」という状況になってはじめて任意後見人の支援を受けることになります。

この契約形態では、任意後見契約を締結してから効力が開始するまでに相当の年月を経る場合、あるいは、判断能力が低下せず、支援の必要性がなく契約の効力が開始せずに終了することも考えられます。

効力が開始するまでの期間は、いわば待機期間となるわけですが、本人と任意後見受任者が接触しないまま長い年月が経つと、色んな不具合が出てきます。

例えば、本人の判断能力が低下したことに気付かず任意後見が始まらないことが考えられます。また判断能力が低下した本人は、任意後見契約を締結したことを忘れてしまい、突然現れた任意後見人に対して不信感を持ってしまう恐れもあります。

本人にとってみれば、いつ認知症になるかもしれないのに、そのことを誰もチェックしてくれないという不安な状態に置かれます。

その不安を解決する方法として、「自分を見守って、もし任意後見開始の時期が来たら速やかに手続きを取ってほしい」ということを依頼する契約を任意後見受任者と結んでおく方法があります。

この契約は「継続的見守り契約」といい、例えば毎月1回は会って話をして本人の生活状況や健康状態を確認するといった内容が考えられます。将来型の任意後見契約の公正証書の中に記載してもよいですし、公正証書によらないことも可能です。

 

  • 移行型

「移行型」とは、任意後見契約を結ぶと同時に、同じ当事者の間で、別途、現時点から任意後見契約がスタートするまでの間も財産管理や本人の身上監護に関する民法上の委任契約(以下、財産管理等委任契約)を結びます。

このような形態は、財産管理等委任契約から任意後見契約に移行することになるため「移行型」と呼ばれます。

本人の判断能力はしっかりしているものの、寝たきりなどで身体的に日常生活で支援が必要な場合には、財産管理等委任契約により支援してもらうことができます。

一般的に言えることは、人はまず、身体的に不自由になりそれからだんだんと判断能力が衰えていくケースが多いです。

例えば、銀行に行くべきだという判断能力はあるが、身体的に行くのがつらくなる段階。これが「財産管理等委任契約」が必要な段階で、銀行に行くべきだという判断能力がなくなったときが、任意後見がスタートするときになります。

したがって、移行型は、この2つの段階に対応できるため、都合のよいものになっています。

このようなことから、財産管理等委任契約と任意後見契約を連結した「移行型」が優れているということで、多くの任意後見契約の希望者から支持されています。

注意点として、財産管理等委任契約は任意後見契約とは別の制度であり、任意後見監督人による監督はありません。

したがって、本人自らが受任者を監督する必要があります。実際に、本人の判断能力が低下しているにもかかわらず、任意後見受任者が、任意後見監督人に監督されることを嫌って任意後見監督人の申立てを行わないまま、財産管理等委任契約による受任者としての権限を乱用するケースも報告されています。

そのため、的確な移行のための措置として受任者の契約の中に義務規定を設けるなどの工夫がされています。

 

  • 即効型

「即効型」とは、判断能力が不十分な状況で任意後見契約を締結し、直ちに家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てをすることで、任意後見契約を発効させるものです。

即効型を利用するメリットとしては、本人が特にその任意後見人を信頼している場合等、法定後見よりも任意後見による支援を選択できることが考えられます。

ただし、本人が任意後見契約の締結に必要な判断能力を有していたか否かが事後的に争われるおそれがあるとの問題が指摘されることがあります。

また、本人に、任意後見契約の内容を十分に理解して締結するだけの判断能力が必要です。

任意後見契約の内容自体は一般的には難しい内容になりますから、例外的に利用されるべき類型と思われます。

 

任意後見契約の3つのタイプについてお伝えしてきましたが、いかがでしょうか。

任意後見は、自分の将来の「もしも」に備えるものです。いざという時に頼れる人が身近にいない、あるいは身近な人に負担をかけたくない、自分のことは最期まで自分で決めたいという人には欠かせないものだと思います。

 

弊所では、任意後見契約についてのご相談をお受けしております。

ご不明な点があれば、お気軽にご相談下さい。

 

 

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「任意後見」ってどんな制度?

こんにちは。
行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

今回から「任意後見」 について詳しくお伝えしていこうと思います。

まずは、任意後見制度の概要をみていきましょう。

認知症などで自分の判断能力が低下した場合の備えとして、あらかじめ、そういう状態になったときに自分に代わって、財産を管理してもらったり、介護その他の必要な契約を結んでもらったりすることを「信頼できる人に頼んでおく」ということが考えられます。

任意後見制度は、このような、将来判断能力が低下した場合における財産管理や介護に関する契約などを信頼できる人にお願いし、これを引き受けてもらう契約(任意後見契約)を締結します。そして、本人の判断能力が不十分となった場合に、任意後見人が契約に基づいて本人の生活を守るという制度です。

任意後見制度には次のような特徴があります。

① 契約は公正証書による必要があります。
② 家庭裁判所により、任意後見監督人が選任された時点から任意後見契約が効力を生じます。(任意後見契約を締結した段階では、引き受けた人は「任意後見受任者」、任意後見契約の効力が生じた後は「任意後見人」と呼ばれます。)
③ 任意後見人は、任意後見監督人の監督を受けながら任意後見契約に基づく事務を遂行します。
④ 任意後見契約を締結したことや、任意後見監督人が選任されて契約の効力が生じたことは、法務局で登記されます。
⑤ 任意後見人に不正行為など、その任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は任意後見監督人などの請求により、任意後見人を解任することができます。

任意後見契約は、適法かつ有効な契約が結ばれることを確実にする必要があるため、公証人の作成する公正証書によってしなければなりません。契約に際しては、公証人が本人の判断能力と契約する意思があるかどうかを確認します。

そして、任意後見契約の公正証書が作成されると、その契約は法務局に登記されます。将来任意後見人が本人に代わって銀行預金を引き出したり、介護施設との契約を締結しようとするときに、この登記事項証明書により権限を証明することで、手続きがスムーズにできます。

また、任意後見契約を結ぶときには、本人の判断能力が備わっていても、実際に支援(後見)を受ける時点では、本人の判断能力が不十分な状況にあるというのがこの制度の特徴です。任意後見人が契約の内容どおりに動いているか本人がチェックすることは極めて困難です。

したがって、この契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することによって、はじめて効力を生ずることとされ、任意後見監督人が本人に代わって任意後見人の監督をすることによって任意後見人の権限乱用を防止し、本人の保護を図る仕組みとなっています。

任意後見制度を利用するに当たっての留意点として、判断能力が低下した後には原則として、利用できないという点があります。任意後見契約を結ぶためには、契約である以上、本人に判断能力が備わっている必要があります。したがって、判断能力が低下してしまった後においては、任意後見制度を利用することがむずかしくなります。

もう一つは、本人の判断能力が低下する以前において任意後見は開始しません。当然のことではありますが、しかし高齢になると、判断能力はしっかりしていても身体的な機能が低下し、日常生活に支援が必要な場合があります。

例えば、寝たきりに近い状況であれば銀行へ行くこともままならないでしょう。このような場合は、任意後見契約ではカバーできませんので、任意後見契約とは別に財産管理や身上監護等についての委任契約を結ぶことになります。

このように任意後見制度を補完する制度もありますので、次回以降のコラムの中でお伝えしたいと思います。

最近は、人生100年時代という言葉をよく耳にします。老後がますます長くなってきます。誰もが心にゆとりをもって、安心して老後の生活を送りたいと願うでしょう。

任意後見契約は将来の老いの不安に備える「老い支度」や「老後の安心設計」と呼ばれることもあります。
例え、何らかの原因で判断能力が低下してしまっても、自分の生活スタイルや、老後の願いを誰にどう託すのか自由に決めておくことができるのは任意後見制度の一番のメリットです。

安心して老後を迎えるためにも、認知症等により、判断能力が低下する前に、自分の財産や収入をどのように活用するか、誰にどのようなことを頼むのかなど考える機会を持つことは大切ではないかと思います。高齢社会の進展とともに、将来への備えとして「任意後見制度」への関心が高まっています。

弊所では、任意後見制度に関するご相談をお受けしております。
ぜひ、気軽にご相談ください。

次回は、任意後見契約の3つの類型について、その特徴や留意点などをご紹介したいと思います。

 

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法定後見にかかる費用について

こんにちは。

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

 

今回は、法定後見制度を利用する際にかかる費用についてまとめました。

認知症等で判断能力が低下し後見人が必要な状況になったとき、まず気になることは「費用がいくらかかるのか」だと思います。

 

主な費用は、家庭裁判所に後見(保佐・補助)開始の審判を申立てた時の費用と、後見人等が選任されて第三者の専門家が後見人となった場合の報酬です。

 

 

では、詳しく見ていきましょう。

まず、申立て手続きの段階でかかる費用です。

 

【申立ての準備にかかる費用】

診断書代 数千円(医療機関によって異なります。)
戸籍謄本等取得費用 数千円~(ケースによって変わります。)

【申立て時にかかる費用】

家庭裁判所手数料(収入印紙・切手代等) 1万円弱

(後見・保佐・補助で若干の違いがあります。)

【家庭裁判所が鑑定を必要とした場合】

鑑定費用 5万円~10万円

【手続きを専門家に依頼する場合】

専門家に支払う報酬(弁護士等) 10万円~(事務所によって異なります。)

 

申立てにかかる費用は、基本的には申立人が支払います。

ただし、かかった費用の一部については家庭裁判所が本人の負担とすることもあります。

 

現在の運用としては、かかった費用のうち、収入印紙、切手代、鑑定費用は本人負担とされることが多いですが、手続きを依頼した場合、専門家に支払った報酬は申立人が負担することになります。

 

また、資力が少ない方の場合、法テラスに相談することができます。

収入等の条件がありますが、費用の立替え制度を利用することもできます。

 

 

続いて、後見人等が選任され後見活動がはじまると、後見人等に対する報酬が必要になります。この費用は、本人の財産から支払われます。

 

【第三者の専門家が後見人等になった場合】

弁護士・司法書士・社会福祉士等 月額2万円~6万円程度

(財産が多い場合や遺産相続で本人の財産が増えた場合など、後見活動の内容によって家庭裁判所が判断します。)

【親族が後見人になった場合】

配偶者、子等の親族 報酬を求めないケースも多いですが、報酬付与の申立てはできます。

【後見活動でかかった実費】

交通費、書類取得費用、切手代等 本人の財産から支払います。

 

後見活動の報酬金額については、家庭裁判所が本人の生活・財産状況を踏まえて決定します。

後見報酬が本人の生活を圧迫することがないように、あくまでも本人の生活が優先されています。

 

また、本人の経済状況にかかわらず法定後見制度を利用できるように、

「成年後見制度利用支援事業」という制度があります。

法定後見に関わる費用を助成してくれる制度で、市区町村が行っています。

詳しくは本人の住民票がある市区町村の役所または地域包括支援センターへお問い合わせください。

 

今回は、法定後見制度を利用する際にかかる費用についてお伝えしました。

 

認知症などにより、判断能力が低下してしまった場合は、何らかの支援が必要になります。

後見人等は、家庭裁判所の監督の下で財産を管理し、安心して生活が送れるようにサポートしてくれます。

 

「大切な財産」「幸せに生きる権利」を守るために、まずは法定後見制度を知っていただきたいと思います。そして、いざというときに活用できるよう備えていただければと思います。

 

よしかわ事務所では、無料相談をお受けしています。

どこへ相談したらよいかわからない場合は、お気軽にご連絡ください。

 

次回からは、転ばぬ先の杖「任意後見制度」についてお伝えしていきたいと思います。

 

 

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後見人が決まるまでの流れ ~法定後見~

こんにちは。 行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

 

今回のコラムは法定後見の申し立てから後見人が決まるまでの流れについてお伝えしたいと思います。

 

まず、申立てについて、大まかな流れは次の通りです。

  • 申立て
  • 家庭裁判所で審理
  • 審判
  • 審判確定
  • 後見人が活動を開始

 

慎重な手続きを要しますので、後見人が決まるまでには平均して3~4か月かかります。すぐにでも後見人が必要な状況だと、長い間待たなければなりませんので注意が必要です。

 

では、順番に詳しく見ていきましょう。

 

① 申立て

家庭裁判所に対して後見(保佐・補助)開始の審判の申立てをすることになります。この手続きをする人は申立人となります。

 

法律で申立人になれるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見 監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人、検察官、市町村長、任意後見受任者、 任意後見人、任意後見監督人と決められています。保佐や補助の場合はサポートを受けながら自分で申し立てる方もおられます。

 

申立ての手続きでは、色んな書類を作成しなければなりません。どんな書類が必要になるかは、本人の住民票住所を管轄する家庭裁判所で必要書類一式をもらえますので確認できます。

 

ちなみに奈良家庭裁判所では、「成年後見申立セット」をもらうことができます。必要書類の様式や内容は裁判所によって異なる場合もありますので管轄の家庭裁判所に相談してください。「申立ての手引き」が準備されている場合があります。

 

そして、申立てには色んな書類をそろえる必要があります。

例えば

・申立書(事実関係や事情を説明する書類)

・診断書(本人の判断能力を証明するもの)

・本人の戸籍謄本、住民票

・後見人候補者の住民票

・登記されていないことの証明書

・財産目録及び財産を証明する資料

・収支報告書

・親族同意書

・親族関係図

 

申立て手続きは親族が行うケースが多いですが、これだけの書類をそろえるのは大変な作業です。仕事で時間がとれなかったり、やり方がわからなくて困ってしまうこともあるでしょう。このような場合は弁護士、司法書士といった専門家に手続きを依頼することが可能です。

 

また、これらの提出書類のうち、本人の判断能力を証明する診断書は医師に作成を依頼する必要がありますので、早めに普段の様子をわかってくれている主治医などに依頼しておきましょう。手続きをスムーズに進めるポイントです。この診断書をもとに、成年後見・ 保佐・補助のうち、どの類型で手続きをするのかが決まります。

 

それから、後見人の候補になる人について親族や専門家でお願いしたい人が決まっていれば、申立書に候補者情報を記載出来ます。

 

提出する書類が一通りそろったら、家庭裁判所に申立てをする日時を予約します。 申立ては、申立人、候補者、本人(保佐・補助の場合)で家庭裁判所に出向きます。 提出書類をもとに、家庭裁判所の担当者と面談しながら本人の状況など必要に応じて確認が行われます。本人が高齢や病気などの理由で裁判所に出向けない場合は、担当者が来てくれることもありますので、相談してみてください。

 

家庭裁判所で審理

続いて、提出した書類に基づいて家庭裁判所の中で審理されます。

・申立書類の審査

・調査官による調査

・親族への照会

・必要に応じて精神鑑定

 

家庭裁判所は成年後見人等を選任するにあたり、本人の心身の状態や生活状況、財産の状況をはじめ、後見人候補者のことや、候補者と本人の利害関係の有無などを踏まえて総合的に判断します。

もちろん本人の意向もしっかり確認し、慎重に判断しています。

 

審判

審理が終われば、家庭裁判所は後見(保佐・補助)開始の審判をし、あわせて成年後見人(保佐人・補助人)を選任します。(裁判官が判断します。)

そして、申立てからおよそ1~2か月で「後見(保佐・補助)開始の審判」という審判書が届きます。

 

審判確定

審判書を受け取ってから、結果に不満がある場合は2週間以内に不服申立てをします。ただし、希望した後見人候補者でない人が後見人になったという理由での不服申立てはできません。また、この2週間の不服申立て期間中は、後見人は活動を始めることはできません。

 

⑤ 後見人が活動を開始

不服申立て期間が終わると、ようやく後見人が正式に決定します。

後見が開始されると、法定後見の種類、後見人の氏名、被後見人の氏名などの情報が東京法務局へ登記されます。この登記された内容を証明するのが、登記事項証明書であり、後見人であることの証明書になります。後見人として、銀行や役所の手続きの際にはこの証明書が必要になります。

 

このようにして、後見人が決まり、活動が始まります。 後見人の仕事内容については、また別の機会にお伝えしたいと思います。

また、成年後見制度を利用する際に、かかる費用についても次回以降にお伝えしますね。

 

成年後見制度の利用にあたり、申立てから、後見人が決定するまでの大まかな流れをお伝えしてきましたが、多くの手間と時間がかかる印象を持たれたのではないでしょうか。

身近な人が、認知症などで判断能力が低下した場合、銀行の手続きなどで「後見人をつけてください」と突然言われるかもしれません。このような状況は誰にでも起こりうることです。

 

このような時は、まず落ち着いて、身近な相談窓口へ行ってください。親切に教えてくれるはずです。

地域包括支援センターや社会福祉協議会の後見センターなど、各地域に設置されている相談窓口がありますし、弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士などの専門職団体にも相談できます。また、法テラスも相談にのってくれます。

 

よしかわ事務所でも無料相談を受けておりますので、遠慮なくご連絡ください。

 

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どんな人が後見人になるの?

こんにちは。行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

前回に引き続き「法定後見」についてお伝えしていきます。

今回は“どんな人が後見人になっているのか?”というテーマで進めていきますね。

認知症などで判断能力が低下してしまった場合、法定後見制度を利用すれば成年後見人、保佐人及び補助人(以下成年後見人等)が財産管理や身の回りの生活に必要な判断などを支援してくれることをお伝えしました。

ここで気になってくるのが、どんな人が成年後見人等になっているのだろう?ということですよね。

もし、自分や親族が法定後見制度を利用することになったら誰が成年後見人等になるのか、気になります。

最高裁判所事務総局家庭局が出している成年後見関係事件の概況(平成29年3月)の中には、成年後見人等と本人の関係についてのデータがあります。

まずは、親族(配偶者、親、子、兄妹姉妹及び※その他の親族)が成年後見人等に選任されたものが全体の約28.1%となっています。この数は毎年減ってきています。親族の成年後見人等は3割以下というのは少し意外に思われるかもしれません。(※その他の親族とは、配偶者、親、子及び兄妹姉妹を除く、四親等内の親族)

一方で、親族以外の第三者が成年後見人等に選任されたものは全体の71.9%です。

この数は年々増加しています。

件数の多い順から見てみると、司法書士、弁護士、社会福祉士の順になっています。

次いで、社会福祉協議会、行政書士です。

その他、市民後見人やNPO法人なども今後増えてくる可能性があります。

法定後見の場合は家庭裁判所が成年後見人等を選任する際、財産の状況、本人の状態など総合的に考慮します。申立て手続きの時に後見人候補者を記載できますが、必ずしも希望した人が後見人に選任されるとは限りません。この点が法定後見の特徴です。近年は、ご本人の権利をまもるために必要な知識や専門性を持った専門家が選ばれるようになってきました。

親族以外の第三者が増えているということは、つまり家族であっても成年後見人等に選ばれないこともあるということです。

その理由の一つとして、親族後見人等の財産の使い込みがあります。制度の理解不足から本人の財産を勝手に使ってしまうことがあるのですね。いくら家族でも本人の財産を勝手に使ってしまうのは財産侵害になります。

実は財産侵害等の不正報告件数の9割以上が専門職以外というデータ(内閣府成年後見制度利用促進委員会事務局)も出ています。最近では、専門職後見の体制が整ってきたこともあり、専門職が選任される傾向になっています。また、親族が成年後見人等に選ばれた場合でも、後見監督人、保佐監督人、補助監督人というチェックする人がつけられるケースも増えています。

その他、親族を後見人候補者として申立てをしても、親族間での意見が対立していたり、候補者の体調がすぐれないなど、状況を総合的に考慮したうえで家庭裁判所が判断しています。

 

では、成年後見人等になるために何か資格が必要なのでしょうか。

結論からいうと、特別な資格は必要ありません。

ただし、「欠格事由」といって、後見人等になれない人が法律で次のように定められています。

  1. 未成年者
  2. 成年後見人等を解任された人
  3. 破産者で復権していない人
  4. 本人に対して訴訟をしたことがある人、その配偶者または親子
  5. 行方不明である人

以上のような事情も含めて本人を支援する成年後見人等を家庭裁判所が選んでいます。

 

最後に、成年後見人等になるために特別な資格は必要ないとお伝えしましたが、現在、成年後見人等を受任している専門職はそれぞれの専門職団体に所属したり、研修を受けて受任できる準備や体制を整えています。不正を防止し、適正に後見業務を遂行できるよう、様々な取り組みが続けられています。

 

次回は

法定後見を利用する際の、申立てから後見人が決まるまでの流れ、そして、かかる費用についてお伝えしていきたいと思います。

 

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法定後見を利用するのはどんな場合?

こんにちは。

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

前回のコラムでは、成年後見制度の「法定後見」と「任意後見」についてお伝えしました。

「法定後見」は、認知症などによって判断能力が低下してしまったときに、家庭裁判所が決めた後見人等が支援してくれます。
「任意後見」は、判断能力が低下する前に、将来に備えて自分で後見人を選ぶ“転ばぬ先の杖”であることを説明しました。

今回は、「法定後見」について、どんな場合に利用することになるのかについて見ていきたいと思います。

 

~どんな場合に法定後見を利用するのか~

最高裁判所事務総局家庭局が平成 29 年 3 月に出した、成年後見関係事件の概況のなかに、「申立ての動機について」という項目があります。

そこには、
「主な申立ての動機としては、預貯金等の管理・解約が多く、次いで、身上監護となっている。」と記載されています。

申立てのきっかけとなる一番の理由は預貯金等の管理・解約です。
例えば親が認知症になり、病院や施設の入居金など、まとまった金額を親自身の口座から引き出そうとすると、本人確認や後見制度の利用を求められます。

たとえ家族であっても、お金や不動産などの財産は個人のものです。勝手に本人以外の人がお金を引き出したり、不動産を売却したりはできません。判断能力が低下した人の権利を護るため、このような決まりになっています。

 

次の“身上監護”とは普段はあまり使うことがない言葉ですが、具体的に言うと、判断能力が低下して身の回りのことを自分で決めることができにくくなった人の医療や介護、または住まいや買い物など、様々なことに関して代理して契約したり決めたりすることです。ご本人の生活環境を整え、安心して暮らせるように手続きをします。

よく間違えられるのですが、後見人は仕事として直接食事や入浴などの介護をするわけではありません。あくまでも、判断能力が低下した方の意思決定を支援し代理することが役割ですから、病院の費用を支払ったり、介護施設に入居する時の契約を代理したり介護ヘルパーさんが必要であれば手配し契約します。

ただし、家族が後見人になった場合は、家族としての立場で直接介護をすることはあります。

また、病院との治療契約や支払いは後見人の仕事ですが、手術の同意や、入院時の身元保証人は後見人としてはできません。手術は身体を傷つける行為(医的侵襲行為)であるため、本人以外にその判断はできないとされています。

現実的には、病院などでは後見人に対して手術の同意や、入院時の身元保証人へのサインを求められます。しかし、後見人としてはできないことを説明し、手術が必要な場合は、主治医の専門職としての判断にゆだねることになります。

ただし、この場合も後見人が家族の場合は、家族の立場で同意書等のサインはできます。

これらのほか、法定後見を利用することになる場面として、遺産相続があります。遺言がない場合に、遺産分割協議をしなくてはなりませんが、判断能力が低下した人は協議の内容が理解できずに不利益を被る可能性があります。したがって、後見人が本人の利益を護るために代わりに遺産分割協議に対応することになります。

そして、最近は一人暮らしのお年寄りが詐欺被害に遭うケースも増加しており、判断能力が低下してだまされるおそれがある場合は、後見人をつけて詐欺被害を防止しています。

法定後見を利用するきっかけは色々ありますが、いずれにしても後見人は、ご本人の気持ちを汲み取り、本人にとって望ましい生活が実現できるように最善の選択をしていきます。

そのために、ご本人の大事な所有財産を代わりに管理しながら、安心して暮らせるように生活環境を整えること、これが法定後見における後見人等の重要な役割となっています。

 

次回は、どんな人が後見人になっているのか?後見人になるためには何か要件があるのか?についてお伝えしていきます。

 

 

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