行政書士奥本雅史事務所の奥本です。
前回、相続は亡くなられた方(被相続人)の『出生から亡くなるまで』の戸籍謄本を取得することから始まる、というお話しをさせていただきました。
これは、相続人を確定するために必要なことです。
まず亡くなられた方の除籍謄本を取得します。戸籍にお名前が載っていた方が全て亡くなられたり、家族全員で引越して本籍を移されたとき、あるいは結婚などで戸籍から出られて、その戸籍に誰もお名前が残っていない状態になった戸籍は閉鎖され除籍となります。その謄本(写し)が除籍謄本です。(戸籍にまだ誰かのお名前がある場合は、除籍謄本ではなく戸籍謄本となります)
ここから、順々に遡って戸籍謄本を取得していくわけですが、本籍地を移したときや、結婚をしたときにはその度に戸籍が新しくなりますので、その時の本籍地の市区町村役場で戸籍謄本を取得することになります。
そうやって出生までの戸籍謄本を全て集めていくのですが、一つ注意しなければならないのは、改製原戸籍(かいせいはらこせき)です。
じつは戸籍法の改正により、戸籍が新しい様式に作り変えられることがあります。しかし作り替える時に、全ての情報を移しているわけではないのです。例えば、離婚や認知などの情報は移されません。その作り変えられる前の戸籍が改製原戸籍です。ですので、改製原戸籍も忘れずに取得しないといけません。
これらの除籍謄本、戸籍謄本、改製原戸籍謄本を出生まで途切れなく集めると、全ての相続人がそこに載っていることになります。
相続の各手続きをするためには、必ずこの作業を行うことになります。
ですので・・・
よく”秘密は墓場まで持って行く”なんていうセリフがありますが、離婚した事実や、認知した子どもがいる場合なども、亡くなられた後で必ず判明しますので、むしろ隠さずにご家族でよく話し合っておかれることをおすすめします。(亡くなってから知られては、余計に揉め事が起こります)
さて前回のコラムで「単純承認」「限定承認」「相続放棄」について触れましたが、相続人を確定しないと大変な事態になることも考えられます。
3ヶ月の熟慮期間までに、限定承認も相続放棄も選ばなかった場合、自動的に単純承認したものとみなされます。何の手続きもしなければ財産も負債もすべて相続することになるのです。
例えば、お父さんが多額の借金をしている状態で亡くなったとして、お母さんと子どもが相続を放棄した場合、相続権はお父さんのおじいちゃんとおばあちゃんに移ります。おじいちゃんとおばあちゃんも放棄をすれば、お父さんの兄弟姉妹に相続権が移ります。兄弟姉妹が全員放棄をして、「これで相続人は誰もいないな!」と思っていたのに、もしも誰も存在を知らない、離婚した前妻さんとの間の子どもや、お父さんが家族の誰にも内緒で認知していた子どもがいたとしたら・・・
やはり相続人の調査をきちっとしないのは危険です。
(※注 熟慮期間は『相続の開始を知ったときから3ヶ月』です。亡くなられたことを知らなかった場合は熟慮期間は進行しません。)
とはいえ、限られた時間内で戸籍謄本をすべて集めるのは大変困難な作業です。
しかもまだ承認、放棄を決めるためには財産の調査をしなければなりません。
相続の最初の締め切り、熟慮期間3ヶ月の間にしなければならないことは、本当にたくさんあるのです。
相続⑤につづく、、、