こんにちは。
行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。
今回から「任意後見」 について詳しくお伝えしていこうと思います。
まずは、任意後見制度の概要をみていきましょう。
認知症などで自分の判断能力が低下した場合の備えとして、あらかじめ、そういう状態になったときに自分に代わって、財産を管理してもらったり、介護その他の必要な契約を結んでもらったりすることを「信頼できる人に頼んでおく」ということが考えられます。
任意後見制度は、このような、将来判断能力が低下した場合における財産管理や介護に関する契約などを信頼できる人にお願いし、これを引き受けてもらう契約(任意後見契約)を締結します。そして、本人の判断能力が不十分となった場合に、任意後見人が契約に基づいて本人の生活を守るという制度です。
任意後見制度には次のような特徴があります。
① 契約は公正証書による必要があります。
② 家庭裁判所により、任意後見監督人が選任された時点から任意後見契約が効力を生じます。(任意後見契約を締結した段階では、引き受けた人は「任意後見受任者」、任意後見契約の効力が生じた後は「任意後見人」と呼ばれます。)
③ 任意後見人は、任意後見監督人の監督を受けながら任意後見契約に基づく事務を遂行します。
④ 任意後見契約を締結したことや、任意後見監督人が選任されて契約の効力が生じたことは、法務局で登記されます。
⑤ 任意後見人に不正行為など、その任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は任意後見監督人などの請求により、任意後見人を解任することができます。
任意後見契約は、適法かつ有効な契約が結ばれることを確実にする必要があるため、公証人の作成する公正証書によってしなければなりません。契約に際しては、公証人が本人の判断能力と契約する意思があるかどうかを確認します。
そして、任意後見契約の公正証書が作成されると、その契約は法務局に登記されます。将来任意後見人が本人に代わって銀行預金を引き出したり、介護施設との契約を締結しようとするときに、この登記事項証明書により権限を証明することで、手続きがスムーズにできます。
また、任意後見契約を結ぶときには、本人の判断能力が備わっていても、実際に支援(後見)を受ける時点では、本人の判断能力が不十分な状況にあるというのがこの制度の特徴です。任意後見人が契約の内容どおりに動いているか本人がチェックすることは極めて困難です。
したがって、この契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することによって、はじめて効力を生ずることとされ、任意後見監督人が本人に代わって任意後見人の監督をすることによって任意後見人の権限乱用を防止し、本人の保護を図る仕組みとなっています。
任意後見制度を利用するに当たっての留意点として、判断能力が低下した後には原則として、利用できないという点があります。任意後見契約を結ぶためには、契約である以上、本人に判断能力が備わっている必要があります。したがって、判断能力が低下してしまった後においては、任意後見制度を利用することがむずかしくなります。
もう一つは、本人の判断能力が低下する以前において任意後見は開始しません。当然のことではありますが、しかし高齢になると、判断能力はしっかりしていても身体的な機能が低下し、日常生活に支援が必要な場合があります。
例えば、寝たきりに近い状況であれば銀行へ行くこともままならないでしょう。このような場合は、任意後見契約ではカバーできませんので、任意後見契約とは別に財産管理や身上監護等についての委任契約を結ぶことになります。
このように任意後見制度を補完する制度もありますので、次回以降のコラムの中でお伝えしたいと思います。
最近は、人生100年時代という言葉をよく耳にします。老後がますます長くなってきます。誰もが心にゆとりをもって、安心して老後の生活を送りたいと願うでしょう。
任意後見契約は将来の老いの不安に備える「老い支度」や「老後の安心設計」と呼ばれることもあります。
例え、何らかの原因で判断能力が低下してしまっても、自分の生活スタイルや、老後の願いを誰にどう託すのか自由に決めておくことができるのは任意後見制度の一番のメリットです。
安心して老後を迎えるためにも、認知症等により、判断能力が低下する前に、自分の財産や収入をどのように活用するか、誰にどのようなことを頼むのかなど考える機会を持つことは大切ではないかと思います。高齢社会の進展とともに、将来への備えとして「任意後見制度」への関心が高まっています。
弊所では、任意後見制度に関するご相談をお受けしております。
ぜひ、気軽にご相談ください。
次回は、任意後見契約の3つの類型について、その特徴や留意点などをご紹介したいと思います。