「離婚は計画的に⑥。~離婚後の手続・その1~」

奈良県王寺町で開業しています。

特定行政書士の若林かずみです。

今回は、離婚後の諸手続について書いてみようと思います。

 

【はじめに】

 

「別れたい…別れたい…」

と思っていて、別れることができると、

「やったーーーーーーー!!」

とスッキリ~(^^

となる気持ち。

離婚したことがない私でも分かります。

付き合っていた人と「別れたい…」と思って別れた時の

あのスッキリとした爽快感!(思い出を回想中…)

ましてや、結婚していた人との別れとなれば、

半端なくスッキリするだろうな~というのは、容易に想像できるところ。

とはいえ、離婚の場合は、別れることが決まった後も

やることが、たーーーくさん、あります!

急いでやらないといけないこともありますので、ここで一度整理してみようと思います。

 

【離婚が決まったら、まずすること~離婚届の提出~】

 

離婚が決まったら、まず、

「離婚届の提出」

これが必要です。

 

現在、日本における離婚の約9割が協議離婚です。

協議離婚というのは、夫婦が自分達で話し合い、離婚することを合意した場合の離婚のことです。この場合に、離婚届を出すのはイメージしやすいと思います。

 

ただ、離婚の方法は、協議離婚だけではなく、その他に、調停離婚、審判離婚、和解離婚、認諾離婚、裁判離婚と、色々あります。

これらのうち、協議離婚以外によく行われる調停離婚や裁判離婚のように裁判所の手続を利用した場合は、裁判所で離婚が決まれば、それだけで離婚が成立するようにも思われます。

ですが、このように裁判所の手続を経た場合であっても、離婚届の提出が必要となります。

 

要するに、

離婚の方法を問わず、離婚届の提出は必ず必要!

ということになります。

 

離婚届を提出して、晴れて、離婚成立!

では、この後、どのような手続きを踏んでいけばいいのでしょうか。

 

【離婚成立後の諸手続】

 

1.夫婦の戸籍を分ける手続

 

離婚届を提出する際に、「夫婦の戸籍を出る人」が夫婦の戸籍を分ける手続をします。

「夫婦の戸籍を出る人」というのは、夫婦の戸籍筆頭者ではない人、つまり、夫婦となったときに姓を変えた人のことのことです。

 

では、夫婦の戸籍を分けるために、どのような手続をするのでしょうか。

 

    夫婦の戸籍を出る人が、結婚前の戸籍(親の戸籍)に戻る

    夫婦の戸籍を出る人が、自分自身を筆頭者とする戸籍を新たに作成する

 

このいずれかを選ぶことになります。

 

    のように、結婚前の戸籍に戻る場合には、旧姓に戻ることになります。

他方、②のように新たに戸籍を作成する場合には、旧姓に戻るか、あるいは、結婚当時の姓を名乗り続けるのかを選ぶことができます。

 

結婚当時の姓を名乗り続けたい場合には、「離婚の際に称していた氏を称する届」を本籍地がある市町村役場に提出する必要があります。

また、この届出は、離婚した日から3ケ月以内にしなければならないことになっていますので、注意が必要です。離婚した場合は、原則として、旧姓に戻りますので、この届出がなければ、原則通り、旧姓に戻ることになります。

では、離婚した日から3ケ月以内に上記の届出をしなかったら、今後、絶対に、結婚当時の姓を名乗ることができないのか?というと、必ずしもそうではありません。

ただ、一度、姓を決めると、その後に変更するのは容易ではないため、離婚後の姓をどうするのかについては、慎重な判断が必要となります。

 

2.子供の戸籍に関する手続

 

両親が離婚した場合、子供の戸籍や姓はどうなるのでしょうか。

 

両親が離婚をしたとしても、子供の戸籍と姓は変わりません。

 

ですので、子供の戸籍や姓を変える場合には、なんらかの手続を経る必要があります。

 

夫婦の戸籍筆頭者である者(夫の場合が多い)が子供を引き取る場合は、

子供の姓に変更がなく、特に問題となることはありません。

問題となるのは、夫婦の戸籍筆頭者でない者(妻の場合が多い)が子供を引き取る場合です。

では、ここで、いくつかのパターンに分けて考えてみましょう。

 

以下のような家族を想像してみて下さい。

夫:鈴木一男(戸籍筆頭者)

妻:鈴木(旧姓;佐藤)京子(離婚後の親権者)

子:鈴木太郎

この夫婦が離婚した場合の問題です。

 

    夫が子を引き取る場合

 →夫と子が同じ戸籍(鈴木一男、鈴木太郎)

 →妻のみ夫の戸籍を抜ける。

   ※これが最も単純な事例です。

 

    妻が子を引き取る場合(妻と子が同居)

ⅰ)妻のみが夫の戸籍を抜ける場合。

   →夫と子が同じ戸籍(鈴木一男、鈴木太郎)

   →妻のみ夫の戸籍を抜ける(妻が原則通り、旧姓に戻る=佐藤京子)

     ※子の戸籍は、何らかの手続をしなければ、今まで通り。子の戸籍が親権者の戸籍に自動的に移動するようなことはないので注意して下さい。また、この事例のように、母の姓が佐藤、子の姓が鈴木というように、親と子の氏が異なる場合に、子はその親の戸籍に入ることはできないのです。

 

※この場合、妻と子は、同居して生活を共にしているにも関わらず、

親子で姓が異なってしまうということになります。

 

  ⅱ)妻が親の戸籍に戻る場合

     →夫と子が同じ戸籍(鈴木一男、鈴木太郎)

     →妻のみ夫の戸籍を抜けて、妻は自分の親の戸籍に戻る(佐藤京子)

     ※上記の事例では、妻と子の姓が異なるので、そもそも、子が妻と同じ戸籍に入ることはできません。もっとも、仮に妻の子がその氏を変更して妻の旧姓を名乗るとしても、妻の子は、妻の親(子から見ると、祖父又は祖母)の戸籍に入ることはできません。戸籍は、夫婦及び夫婦と氏を同じくする子供ごとに作られる(戸籍法6条)ことになっているので、親・子・孫という三世代の戸籍は戸籍法に反するためです(三代戸籍禁止の原則)。

  ⅲ)妻を筆頭者とする新しい戸籍を作成。妻と子は、ともに妻の旧姓を名乗る

     →夫のみが結婚当時の戸籍に残る(鈴木一男)

     →新しい戸籍に妻と子が入る(佐藤京子、佐藤太郎)

     ※妻を筆頭者とする新しい戸籍ができたら、

家庭裁判所に「子の氏の変更許可(民法791条)」を申し立てる必要があります。

家庭裁判所の許可がおりたら、「許可審判書」が交付されます。

その後、子の本籍地又は、子・親権者の住所地の市区町村役場に、

「許可審判書」を添付して、子の「入籍届」を提出することで

子を妻の新しい戸籍に入籍することになります

     

  ⅳ)妻を筆頭者とする新しい戸籍を作成。妻と子は、ともに結婚当時の姓を名乗る

     →夫のみが結婚当時の戸籍に残る(鈴木一男)

     →新しい戸籍に妻と子が入る(鈴木京子、鈴木太郎)

     ※妻を筆頭者とする新しい戸籍ができたら、

家庭裁判所に「子の氏の変更許可(民法791条)」を申し立てる必要があります。

家庭裁判所の許可がおりたら、「許可審判書」が交付されます。

その後、子の本籍地又は、子・親権者の住所地の市区町村役場に、

「許可審判書」を添付して、子の「入籍届」を提出することで

子を妻の新しい戸籍に入籍することになります

 

    ※上記ⅲ)ⅳ)のように、妻が新しい戸籍を作って、その戸籍に子を入れるため

には、同様の手続を踏む必要があります。

ここで、ⅳ)の場合、妻は離婚後も結婚当時の姓を名乗るのだから、妻の姓は

「鈴木」。子の姓も「鈴木」なのだから、子の氏を変更するための許可を得る必

要があるのだろうか?という疑問を感じる方がいらっしゃると思います。

    とっても、分かりにくいのですが、「婚姻中の氏」である鈴木と、「続称の手続

をとった氏(離婚後も、引き続き婚姻中の氏を使う旨の手続をした氏のこと)」

である鈴木とは、法律上別の氏とされています。ですので、妻と子の氏の呼び

方は「鈴木」と同じであったとしても、この妻と子の氏は、法律上異なる氏と

いうことになります。ですので、ⅳ)の場合であっても、「子の氏の変更許可」

を経る必要があるということになるのです。

 

【終わりに】

 

今回は、離婚が成立した後の手続として、「離婚届の提出」、夫婦や子の戸籍の手続きについて説明しましたが、離婚後にする手続きは、まだまだ沢山あります。

この続きは、また、次回のコラムで説明させていただきます。

 

 和(やわらぎ)行政書士事務所 

           特定行政書士 AFP 法務博士  若林 かずみ

 

参考文献①「これだけは知っておきたい 離婚のための準備と手続き」監修:弁護士 鈴木幸子/柳沢里美 「新星出版社」

参考文献②「イラストと図解でよくわかる!前向き離婚の教科書」 監修:弁護士 森元みのり 「株式会社 日本文芸社」

 

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