こんにちは。
安心をお届けする介護・福祉の専門オフィス
行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。
ゴールデンウィークも後半になってきましたね。
みなさまはいかがお過ごしでしょうか。
10日間連休の方、お仕事の方
海外旅行、温泉旅行などに行かれる方、家でゆっくりされる方
様々な10日間を過ごされていると思います。
そして、平成から令和へ新しい年号に変わりました。
世間はお祝いムード、私もなんとなくワクワクしています。
令和の時代も平和で穏やかな時代になるといいですね。
さて、今回のコラムも成年後見制度に関するニュースをお届けします。
平成31年4月より、成年後見制度の利用にあたって必要な「診断書の書式」が改定されました。そして、新たに「本人情報シート」というものが導入されることになりました。
順に見ていきましょう。
まず、この一連の経緯を見てみると、平成28年5月に「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が施行され、平成29年3月に、「成年後見制度利用促進基本計画」が閣議決定されました。
そして、成年後見制度利用促進基本計画において、医師が診断書を作成する際に、本人に関わっている福祉関係者からの情報、つまり本人の置かれた家庭的・社会的状況等に関する情報も考慮できるように診断書の在り方について検討することとされました。
このような基本計画を踏まえ、医師が医学的判断を、より的確に表現することができるよう「診断書の書式」が改定され、さらには福祉関係者が本人の生活状況等に関する情報を記載し、医師に伝えるためのツールとして、新たに「本人情報シート」が導入されたようです。
これまでも、成年後見制度の利用開始の申立てにあたり、本人の精神上の障害の有無を確認するため、医師が作成した診断書を提出することになっていました。
また、法律上、家庭裁判所が成年後見制度の利用開始を認めるか否かの判断をする際には、原則として、本人の精神の状況について鑑定をしなければなりません。
ただし、明らかに鑑定の必要がないと認めるときは、鑑定を行う必要はないとされています。
つまり、診断書の提出のみで鑑定の必要がないと判断されるケースがあったということです。
最高裁判所事務総局家庭局から出されている成年後見関係事件の概況(平成30年1月~ 12月)によると、
成年後見関係事件の終局事件のうち、鑑定を実施したものは、全体の約8.3%(前年は約8.0%)であった。
となっています。
ほとんどのケースで鑑定が行われず、医師の診断書のみで医学的判断がされていることがわかります。
成年被後見人となった場合には、本人の権利をまもることができる反面、行為能力が制限されることにもなります。
本人に大きな影響があることから、補助・保佐・後見の判別は、十分な情報に基づき、適切に行われるべきです。
しかし、成年後見制度の診断書は精神科等の専門医しか書けないという決まりはなく、これまでの仕組みでは、本人の能力を正確に見極めることが不十分なまま、後見等の審判がなされていたケースもあるのではないかと思います。
このことは、利用者の不満につながり、成年後見制度の利用が進まなかった原因の一つとして考えられます。
今回の診断書の書式改定のポイントとして、「判断能力についての意見欄の見直し」や「判定の根拠を明確化するための見直し」があります。これまで財産管理能力に偏った部分のチェック項目を変更したり、判定の根拠については自由記載だった精神上の障害の有無と程度について、判定の根拠を具体的に記載する欄が設けられています。
さらに、補助資料としての本人情報シートの導入によって、医師は、本人の生活状況や必要な支援の状況等を含め、十分な資料に基づき、より的確に判断することができるようになります。
新しい診断書の書式及び本人情報シートの作成に当たっては、認知症や障害がある方の各関係団体や、医療・福祉に携わる関係団体から意見を聴取するなどして検討されたようです。利用される方の立場から意見が述べられ、少しでも利用者本位の内容に改善されたことはよかったと思います。
今回の診断書の改定、本人情報シートの導入が利用者の判断能力に応じた自己決定権の尊重や本人保護といった制度趣旨の実現につながり、また利用者がメリットを実感できる制度へとつながることを期待したいですね。
弊所では、成年後見制度に関するご相談をお受けしています。
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