こんにちは、相続手続きと遺言書作成を専門としております行政書士 奥本雅史事務所の奥本です。
今回は、自筆証書遺言の制度がどのように変わるのかを見ていきたいと思います。
日本はすでに超高齢社会を迎えており、今後、相続の件数はますます増加していくことが予想されます。
そのため自筆証書遺言のデメリットを改善し活用しやすくすることで、相続財産のスムーズな承継を促し、無用な相続争いを防ぐことが必要であると考えられました。
昨年の民法改正で自筆証書遺言の自筆要件が緩和され、同時に『法務局における遺言書の保管等に関する法律』が制定されたのには、このような背景があります。
それでは、『法務局における遺言書の保管等に関する法律』の具体的な内容について見ていきましょう。
《定められている主な内容》
①遺言書保管所(法務局)で遺言書を保管すること
②『遺言書保管事実証明書』の発行
③『遺言書情報証明書』の発行
④検認の適用除外
⑤手数料
①遺言書保管所(法務局)で遺言書を保管すること
遺言書を作成したら、遺言者本人が遺言書保管所(法務局)へ出向き、遺言書保管官に対して保管の申請を行います。
遺言書は自筆証書遺言で、封がされていない、法務省令で定めた様式(別途定められる予定)に従って作成された遺言書でなければなりません。
申請を行うのは、遺言者の住所地、本籍地、または所有する不動産の所在地を管轄する法務局となります。
保管申請がなされた遺言書は原本が保管されるとともに、遺言書の画像情報や作成年月日、遺言者の氏名や生年月日等の情報が併せて管理されます。
なお保管申請の際に、遺言書保管官が遺言書のチェックを行ってくれますが、遺言自体の有効性にまで踏み込んで検討・判断をするわけではありません。
公正証書遺言の場合は、公証人が遺言の有効性についての確認をしてくれますので、ここが公正証書遺言との大きな違いであると言えます。
そして遺言者は、遺言書が保管されている法務局に対して、いつでも遺言書の閲覧を請求することができます。ただし申請と同様、遺言者本人が出頭する必要があります。
また、遺言者は遺言書が保管されている法務局に対して、いつでも保管申請の撤回をすることができます。申請が撤回されると遺言書が返還され、管理されている情報が消去されます。こちらも、遺言者本人が出頭しなくてはなりません。
②『遺言書保管事実証明書』の発行
自分が関係相続人等(相続人、受遺者、遺言執行者など)に該当する遺言書(特定の亡くなられている方のもの)が保管されているかどうかその有無について、もし保管されている場合には作成年月日などの情報について記載される証明書です。
これは誰でも交付を請求することができ、遺言書が保管されている法務局以外の法務局でも請求をすることが可能です。
③『遺言書情報証明書』の発行
法務局で保管されている遺言書に関する情報(画像情報等)が記載された証明書です。
こちらは遺言者の関係相続人等が請求することができます。(ただし遺言者が亡くなっている場合に限る)
この証明書も②と同じく、遺言書が保管された法務局以外でも請求することができます。
また関係相続人等は、遺言者が亡くなっている場合に遺言書の閲覧を請求することができます。閲覧については遺言書が保管されている法務局に請求しなければなりません。
④検認の適用除外
自筆証書遺言の場合、発見後に偽造や変造をされる恐れがあるため、検認の手続きをすることが必要でした。
検認は家庭裁判所が遺言書の現状を確認し、内容を保全することが目的です。
しかし、法務局で保管されている遺言書は内容や保管の状況等が明確なため、検認は不要とされました。
検認には、相続人、受遺者等に遺言書の存在が通知されるという役割もありますが、これについても同法で遺言書情報証明書の交付や遺言書の閲覧をさせた時には、相続人等へ通知をすることと定められていますのでこの役割は補完されていると言えます。
⑤手数料
遺言書の保管の申請、閲覧請求、各種証明書の交付等には手数料が必要ですが、金額に関してはまだ未定です。
このように令和元年6月21日現在、まだ詳しく決まっていない事項がありますが、新しい情報が入り次第またこちらのコラムでお知らせしていきますので、引き続きよろしくお願いいたします。
行政書士 奥本雅史事務所
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