遺言書⑬ ~秘密証書遺言 前編~

こんにちは、相続手続き・遺言書作成を専門としております行政書士 奥本雅史事務所の奥本です。

これまで、普通方式の遺言書には3つの種類があるということをお話ししてきました。

遺言書の全文(財産目録を除く)を自筆で書かなければいけない自筆証書遺言、公証役場で公証人のチェックを経て作成される公正証書遺言、そしてもう一つが今回ご説明する秘密証書遺言です。

秘密証書遺言は『遺言書の内容は秘密にしておきながら、遺言書が存在することを公証役場で証明してもらうことができる』というものです。

公正証書遺言の場合には、遺言書の内容が公証人と証人に知られてしまうというデメリットがありました。

秘密証書遺言を作成する際にも、公正証書遺言と同じく2名以上の証人の立ち会いが必要ですが、秘密証書遺言の場合はすでに封をした遺言書について『これは確かに○○さんの遺言である』という証明をするだけなので遺言の内容については知られることがありません。

これが秘密証書遺言の大きなメリットです。

そしてもう一つの大きな特徴は、第三者の代筆でも良いという点です。

しかも、ワープロやタイプライターで作成したものでも良いと認められているため、字を書くことが困難な方でも作成をすることができます。(ただし、遺言者が氏名だけは自筆で記入して、印鑑を押印することが必要です)

では、秘密証書遺言の要件を詳しく見ていきましょう。

《要件》

①遺言者が、遺言書に氏名を自書し押印すること

②遺言者が、その遺言書を封じ、遺言書に使ったものと同じ印章を用いて封印をすること

③遺言者が、公証人と証人(2人以上)の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨と筆者の氏名と住所を申述すること

④公証人が、遺言書を提出した日付と遺言者の申述の内容を封紙に記載した後、遺言者、証人とともにこれに署名し押印すること

まず①について、遺言書の本文は代筆およびワープロ等での作成が可能ですが、氏名だけは遺言者が自署し、印鑑を押さなければなりません。

次に②ですが、遺言書に押したものと同じ印鑑で封印をすることが必要です。もし違う印鑑を押していた場合は秘密証書遺言としての要件を欠くことになります。

③については、筆者(遺言書を作成する際、ワープロ等を操作した者が別にいる場合はその者が筆者となります)の氏名と住所も申述することが必要です。

これらの4つの要件のいずれかを欠いてしまった場合には、秘密証書遺言としては無効となります。ですが、もし自筆証書遺言の要件を満たしていれば自筆証書遺言としては有効と認められます。

ただそのためには遺言書を作成する際に、遺言者が全文を自書(財産目録は除く)し、作成した日付を記入、署名捺印することが必要です。

じつは秘密証書遺言の場合には、④にあるように公証人が提出した日付を封紙に記載するため、遺言書自体への日付の記入は要件に含まれていません。

しかし、万が一秘密証書遺言の要件を欠いてしまった場合の事も考えて、遺言書は自筆証書遺言の要件を備えたものを作成しておく方が安全だと言えるでしょう。

次回は、秘密証書遺言についてさらに細かく見ていきたいと思います。

 

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行政書士 奥本雅史事務所

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