EPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者の雇用

こんにちは。

介護・福祉の専門オフィス

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

国会で今年度の補正予算が可決されました。

総額約26兆円の補正予算には1人あたり10万円の現金給付や減収となった中小企業に最大200万円を支給する持続化給付金などが盛り込まれています。

緊急事態宣言がいつまで続くのか見通せない状況で、不安を抱えながら暮らす人が多いと思います。一刻も早く給付金がみなさまの手元に届くことを願わずにはいられません。

さて、前回のコラムでは、日本で外国人介護職員を雇用するための制度として、以下の4つをご紹介しました。

1.EPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者の雇用

2.日本の介護福祉士養成校を卒業した在留資格「介護」を持つ外国人の雇用

3.技能実習制度を活用した外国人(技能実習生)の雇用

4.在留資格「特定技能1号」を持つ外国人の雇用

今回は「EPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者の雇用」についてお伝えします。

まず、EPA(経済連携協定)とは、物品やサービスの貿易のみならず、人の移動、知的財産権の保護、投資、ビジネス環境の整備、競争政策など様々な協力や幅広い分野での連携を促進し、二国間又は多国間での親密な関係強化を目指す条約を指します。

このEPA(経済連携協定)に基づき、日本の介護施設で就労と研修をしながら、日本の介護福祉士の資格取得を目指す外国の方々を「EPA介護福祉士候補者」と言います。

現在、EPA介護福祉士候補者受け入れ国としては、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国です。

インドネシアについては 2008 年度から、フィリピンについては2009 年度から、看護師や介護福祉士の国家資格取得を目指す候補者の受け入れが開始しました。また、2014年度からはベトナムからの受け入れも開始しました。

この制度の枠組みは、母国の看護師資格者などの要件を満たした外国人が、日本の国家資格の取得を目的として、一定の要件を満たす介護施設(受け入れ施設)において就労・研修することを特例的に認めるものです。※在留資格は「特定活動」です。

介護福祉士国家資格の取得後は、在留期間の更新回数に制限が無くなります。一人でも多くの介護福祉士候補者が介護福祉士の国家試験に合格し、その後、継続して日本に滞在することが期待されています。

この受け入れは日本とインドネシア、フィリピン、ベトナム各国との経済連携の強化のために行うものであり、単に労働者を雇用するためのものではありません。しかしながら、介護の現場では人材確保が困難な状況が続いており、EPA介護福祉士候補者は貴重な人材として期待されている側面もあると思います。

そこで、本来の制度趣旨や目的を実現するために受け入れ施設は国家資格が取得できるよう適切な研修を実施することが責務とされています。

そのため、EPA介護福祉士候補者の受け入れを希望する場合は、受け入れ施設の要件として、適切な研修の実施体制が整っているかが重要になります。他にも、施設基準を満たしているか、雇用契約の内容、宿泊施設の確保など細かい要件が複数あり、受け入れるためには準備が必要です。

そして、外国人応募者と介護事業所のマッチングは、JICWELS(国際厚生事業団)が唯一の受入調整機関として担っており、入国手続きや在留資格の管理なども担っています。EPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者の雇用を検討される際は、まずは当該機関へお問合せください。

このようなことから、受け入れ施設はJICWELS(国際厚生事業団)への報告、相談または巡回訪問を受けたりしながらEPA介護福祉士候補者の雇用をしていくことになります。

また、受け入れにかかる費用としては、概算で以下のようになっています。

求人申込手数料 ・・・・・・・・・・・・20,000円

滞在管理費(年額)(JICWELS)  ・・・・・20,000円/人

あっせん手数料(JICWELS)・・・・・・・131,400円/人

送出し手数料(インドネシア)・・・・・・38,000円/人

日本語研修費用(日本語研修実施機関)・・360,000円/人

その他、現地合同説明会に参加するための渡航費等もかかります。

なお、送り出し手数料などについては国ごとに値段が違いますので、あくまでも参考程度に見ていただけたらと思います。

実際にEPA介護福祉士候補者を受け入れた施設では、日本人職員も刺激を受けてモチベーションが上がった、介護現場の活性化につながったという声があります。またご家族やご利用者からは真面目でやさしい、来てくれてよかったなどポジティブな意見も多くあります。

ただ一方で、言葉の壁や生活環境、文化の違いなどによる課題もあり、外国人が安心して働き、そして国家試験合格へ向けて勉強を支援する環境が不可欠です。したがって、EPA介護福祉士候補者の受け入れを検討する際は、十分な理解と準備が必要です。

以上、今回はEPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者の雇用についてお伝えしました。次回は日本の介護福祉士養成校を卒業した在留資格「介護」を持つ外国人の雇用についてお伝えしたいと思います。

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