技能実習制度における介護人材特有の要件

こんにちは。
介護・福祉の専門オフィス、行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の𠮷川昇平です。

前回のコラムでは、技能実習制度の概要をお伝えしました。

介護現場で技能実習生を受け入れるためには、介護人材特有の要件が定められており、正しく理解しておく必要があります。
今回のコラムは、この介護職種の追加要件をご紹介したいと思います。

まずは、介護職種が技能実習制度に追加される際に議論されたポイントを見てみましょう。次のような考え方を基本として介護固有の要件等が検討されました。

【基本的考え方】

■ 外国人介護人材の受入れは、介護人材の確保を目的とするのではなく、技能移転という制度趣旨に沿って対応すること。
■ 職種追加に当たっては、介護サービスの特性に基づく様々な懸念に対応するため、以下の3つの要件に対応できることを担保した上で職種を追加すること。
① 介護が「外国人が担う単純な仕事」 というイメージにならないようにすること。
② 外国人について、日本人と同様に適切な処遇を確保し、日本人労働者の処遇・労働環境の改善の努力が損なわれないようにすること。
③ 介護サービスの質を担保するとともに、利用者の不安を招かないようにすること。

このような考え方に基づき、介護分野における技能実習生の受入れに関する制度設計がなされています。

介護職種は高齢者へのサービス提供が仕事となりますので、他の技能実習と異なり、技能実習生、実習実施者、監理団体に対して追加要件が定められています。
以下、技能実習生と実習実施者の追加要件をご紹介します。

【技能実習生に関する要件】

①日本語習得レベルに関する追加要件
技能実習1号(1年目)
日本語能力試験のN4に合格している者。その他これと同等以上の能力を有すると認められる者であること。

技能実習2号(2年目)
日本語能力試験のN3に合格している者。その他これと同等以上の能力を有すると認められる者であること。

(参考)
日本語能力試験には、N1~N5の5つのレベルがあります。
いちばんやさしいレベルがN5で、一番難しいレベルがN1です。
「N4」:基本的な日本語を理解することができる。
「N3」:日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる。

②同種業務従事経験(職歴要件)
 団体監理型技能実習の場合、技能実習生は「日本において従事しようとする業 務と同種の業務に外国において従事した経験があること」または「団体監理型技能実習に従事することを必要とする特別な事情があること」を要件として満たすことが必要とされています。

職歴要件は、例えば以下の者が該当します。
■ 外国における高齢者もしくは障害者の介護施設または居宅等において、高齢者または障害者の日常生活上の世話、機能訓練または療養上の世話等に従事した経験を有する者。
■ 外国における看護課程を修了した者または看護師資格を有する者。
■ 外国政府による介護士認定等を受けた者。

【実習実施者・実習内容に関する要件】


①技能実習指導員
■ 技能実習指導員のうち1名以上は、介護福祉士の資格を有する者その他これと同等以上の専門的知識及び技術を有すると認められる者(※看護師等)であること。
■ 技能実習生5名につき1名以上の技能実習指導員を選任していること。

②事業所の体制
■ 技能実習を行わせる事業所が、介護等の業務を行うものであること。(訪問系のサービスについては適切な指導体制をとることが難しいため対象から除かれています)
■ 技能実習を行わせる事業所が、開設後3年以上経過していること。
■ 技能実習生に夜勤業務その他少人数の状況下での業務又は緊急時の対応が求められる業務を行わせる場合にあっては、利用者の安全の確保等のために必要な措置を講ずることとしていること。
■ 技能実習を行う事業所における技能実習生の数が一定数を超えないこと。
■ 入国後講習については、基本的な仕組みは技能実習法本体によるが、日本語学習と介護導入講習の受講のほか、講師を担う者にも一定の要件が設けられている。

参考:技能実習「介護」における固有要件について(厚生労働省社会・援護局)

いかがだったでしょうか。
今回は、介護職種の固有要件のうち、技能実習生と実習実施者に関する要件をご紹介しました。

介護の技能実習生を受け入れるためには、技能実習制度本体の要件に加えて、ご紹介した介護職種固有の要件をしっかり理解してクリアすることが必要です。

他にも様々なルールが存在しますので、介護技能実習生の雇用をご検討される際は弊所へお気軽にご相談ください。

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