自筆証書遺言書の保管②

公正証書遺言と自筆証書遺言書保管制度

 こんにちは、相続手続きと遺言書の作成を専門にしております行政書士奥本雅史事務所の奥本です。 

日本公証人連合会の統計によると、2019年に公正証書遺言で作成された遺言書の件数は11万3137件でした。(2020年3月発表) 

一方、昨年7月にスタートした『自筆証書遺言書保管制度』による遺言書の保管件数は、12月までの半年間で1万2576件となっています。(2021年1月 法務省発表) 

近年、公正証書遺言での遺言書作成件数は年間11万件前後で推移してきましたが、これが『自筆証書遺言書保管制度』の利用にどの程度移っていくのかが今後注目されます。 

あるいは、長年の実績があり信頼性の高い公正証書遺言はこれまでと同程度の数字を維持したままで、比較的取り組みやすい『自筆証書遺言書保管制度』をこれまで遺言書作成への敷居が高いと感じていた層が利用することによって、遺言書作成の全体数が大きく伸びることも考えられます。 

私見ですが、僕はこれが望ましい形ではないかと思います。なぜなら、遺言書の準備が必要な方の数は、そんなに少なくないのではないかと思っているからです。 

遺言書の準備が必要な人とは? 

遺言書を作った方が良い事例として一番わかりやすいと思われるのは《離婚後に再婚し、前の配偶者との間にも今の配偶者との間にも子どもがいる》というケースです。 

親子というのはいくら疎遠になったとしても、法律上の縁が切れることはありません。したがって、もし遺言書を遺していなければ、自分が亡くなった後にその子ども達同士が顔を合わせて遺産相続について話し合わなければならなくなるのです。想像するだけで気持ちが重くなってしまうような事態です。 

日本の離婚の件数は一年間で20万件以上あります。その数を考えれば、遺言書の作成件数はもっと増えていてもおかしくないのではないかと思います。 

遺言書は変更することも可能

しかし、いざ遺言書を作成しようと思いたっても、財産の変動や、自分自身の健康状態、家庭環境の変化など様々な影響によって、遺言をする内容について迷いが生じたり、書くタイミングに関してもいつ書くべきなのか悩んでしまうことがあるかもしれません。 

ですがそもそも遺言書は、一度作成したら『それで終わり』というわけではなく、その時々の状況の変化や、事情に合わせて内容を変更する必要性が生じるものです。 

『自筆証書遺言書保管制度』では、遺言書の保管の申請の撤回をすることができます。 一度預けた遺言書を撤回してその内容を変更する、ということもできますので、ぜひ勇気を持って、遺言書の作成に取り組んでいただければと思います。 

それでは次回からは『自筆証書遺言書保管制度』の具体的な利用方法について見ていきたいと思います。  

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