THE☆雑感  押印省略 

こんにちは。奈良を中心に活動している行政書士の武村直治です。

さて、今日は普段から何気なく思っている押印省略と現在の状況について述べてみたいと思います。

個人的には、開業してから最も嬉しかったことの1つに押印省略の推進があります。なぜならば、意味のない?(全てが意味のないものではありません。)押印作業によって作業の順序やタスクが増え、思ったように作業が進まない業務を何度も経験したからです。もちろん私の段取り不足に遠因があることも多いのですが。しかしこれは私や行政書士の業務だけでなく、多くの方が経験したことがあるのではないでしょうか。

菅元総理が所信表明で押印の原則廃止を掲げてから数ヶ月で、あっという間に各行政機関で押印廃止の実現に向け動き出しました。正直どうせ実現しないと諦めていたため、このスピードでの対応には驚いたとともに、やればあっという間にできるじゃないかと少し拍子抜けしました。日本もやればできるんですね。本当にビックリしました。まだ完全ではありませんが、現在もほとんどの行政機関が押印廃止を意識し、対応しようとしているように感じます。これはありがたいことです。

ただ、ここからは個人的な感想でしかありませんが、業種によってまだまだその対応にばらつきがあり、不十分だと感じます。

例えば建設業などにおいては、代理人が申請を行う場合は、私の知る限りでは委任状にも申請者の押印は必要なく、代理人の明示を適正に行うことにより書類提出できます。非常にスマートで整合性のとれた仕組みであり、素晴らしいと感じました。

しかし、私がアップしている今年のコラムのテーマである農地転用など他の業務においては、【委任状にだけ押印が必要】・【誓約書と委任状にだけ押印が必要】など、それだったらどうせ印鑑をもらいに伺うか郵送でもしなければいけないのだから意味ないじゃないかと思うことがよくあります。手間が変わらない場合も多々ありました。

押印の意義や起こりうるトラブルの検討等を考慮するとなかなか難しい問題ではあるため、効率ばかりを求めてはいけないことは承知していますが、押印省略の趣旨を考えると矛盾しています。

押印省略はそれ自体が目的ではありません。行政手続の簡素化や効率化、またそのための重要事項であるデジタル化の推進を図ることがおそらく主目的であり、そのための手段としての押印省略のはずです。どうせやるなら大胆に改革して、素晴らしい仕組みを作り上げていただけることを願います。私なんかが簡単に意見できる話しではないのでしょうが、難しいことを難しいといって先延ばしにしていてはどうせ何も変わりません。こんな小さなことすら実現できません。

また国や県に比べ、市町村ではやや意識が薄い、、、というよりも国や県の意図を理解できていないのではないかと感じる市町村もまれに存在します。まあ実際はそんなことはなく努力をして頂いているのでしょうが、外部の私達からすればその結果でしか判断できないため、そう感じることがあるということです。例えば市町村ルールのようですが、ある申請では複数人の押印の順番まで決まっている業務があり、未だに変わっておりません。こういった市町村は複数存在します。各関係者への忖度でも存在するのか、押印書略の趣旨を理解し本気で取り組んでいるようには感じられません。

これらは多大な時間のロスを生みます。私一人ならなんてことないのでしょうが、こういったロスが日本全体で毎日のように発生しているとすると、その経済的損失はどれほどのものでしょうか。ゾッとします。

この押印と非生産性については語りたいことがいろいろあるのですが、今日はこのあたりで終わりにしたいと思います。