こんにちは、相続手続きと遺言書の作成支援を専門にしております行政書士奥本雅史事務所の奥本です。
遺言執行者についての具体的な内容に入る前に、平成30年に約40年ぶりの大改正が行われた民法の遺言執行者に係る部分が、旧法と比べてどのように変わったか軽くさらっておきましょう。
『遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。』(第1007条2項)
遺言執行者がいる場合、相続人は遺贈(被相続人が亡くなった後、財産を第三者等に譲ること)を履行する義務を負いません。ということは、相続人が全く知らないうちに財産が遺贈されてしまうケースも考えられます。
このような事態を防ぐために、相続人への通知を義務化する規定が新たに設けられました。
『遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。』(第1012条1項)
太字の部分が追記されました。これは遺言執行者が、あくまでも遺言者の意思(遺言の内容)を実現することが責務であることを明示しており、それらの行為が必ずしも相続人の利益のために行われるものではないということが明らかにされました。
『遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。』(第1015条)
旧法の第1015条では単に『遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。』となっていました。この改正条文では、たとえ遺言者の意思と相続人の利益が対立する場合などにおいても、遺言執行者は遺言者の意思を実現するために行動すれば足りるということが示されています。
『遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。』(第1012条2項)
この条文が新設されたのは、受遺者(遺贈を受ける相手)による履行請求の相手方を明確にするためです。遺言執行者がいる場合には遺言執行者に、遺言執行者がいない場合は相続人を相手方として遺贈の履行を請求するという旨が明文化されました。
『遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を負わせることができる。(以下省略)』(第1016条1項)
旧法では『遺言執行者は、やむを得ない事由が無ければ、第三者にその任務を負わせることができない。』とされ、復代理人の選任(代理人である遺言執行者が、さらに代理人を選ぶこと)が制限されていました。
しかし実際には相続人が遺言執行者に指定されるケースも多く、専門的な法律知識が必要な事案などに対処することが難しいという場合もありました。そこで弁護士等の専門家に一任することができるよう条項の見直しが図られました。
このように、民法改正で遺言執行者に関する法律も様々な変更が加えられています。次回からはもちろん新法に基づいて解説をしていきますが、これら改正の背景を知っておいていただくと、より興味を持っていただけるのではないかと思います。
ではまた次回。
行政書士奥本雅史事務所