成年後見制度の診断書の書式の改定と本人情報シートの導入について

こんにちは。

 

安心をお届けする介護・福祉の専門オフィス

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

 

ゴールデンウィークも後半になってきましたね。

みなさまはいかがお過ごしでしょうか。

 

10日間連休の方、お仕事の方

海外旅行、温泉旅行などに行かれる方、家でゆっくりされる方

様々な10日間を過ごされていると思います。

 

そして、平成から令和へ新しい年号に変わりました。

世間はお祝いムード、私もなんとなくワクワクしています。

令和の時代も平和で穏やかな時代になるといいですね。

 

さて、今回のコラムも成年後見制度に関するニュースをお届けします。

 

平成31年4月より、成年後見制度の利用にあたって必要な「診断書の書式」が改定されました。そして、新たに「本人情報シート」というものが導入されることになりました。

順に見ていきましょう。

 

まず、この一連の経緯を見てみると、平成28年5月に「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が施行され、平成29年3月に、「成年後見制度利用促進基本計画」が閣議決定されました。

 

そして、成年後見制度利用促進基本計画において、医師が診断書を作成する際に、本人に関わっている福祉関係者からの情報、つまり本人の置かれた家庭的・社会的状況等に関する情報も考慮できるように診断書の在り方について検討することとされました。

 

このような基本計画を踏まえ、医師が医学的判断を、より的確に表現することができるよう「診断書の書式」が改定され、さらには福祉関係者が本人の生活状況等に関する情報を記載し、医師に伝えるためのツールとして、新たに「本人情報シート」が導入されたようです。

 

これまでも、成年後見制度の利用開始の申立てにあたり、本人の精神上の障害の有無を確認するため、医師が作成した診断書を提出することになっていました。

 

また、法律上、家庭裁判所が成年後見制度の利用開始を認めるか否かの判断をする際には、原則として、本人の精神の状況について鑑定をしなければなりません。

ただし、明らかに鑑定の必要がないと認めるときは、鑑定を行う必要はないとされています。

 

つまり、診断書の提出のみで鑑定の必要がないと判断されるケースがあったということです。

 

最高裁判所事務総局家庭局から出されている成年後見関係事件の概況(平成30年1月~ 12月)によると、

 

成年後見関係事件の終局事件のうち、鑑定を実施したものは、全体の約8.3%(前年は約8.0%)であった。

 

となっています。

ほとんどのケースで鑑定が行われず、医師の診断書のみで医学的判断がされていることがわかります。

 

成年被後見人となった場合には、本人の権利をまもることができる反面、行為能力が制限されることにもなります。

本人に大きな影響があることから、補助・保佐・後見の判別は、十分な情報に基づき、適切に行われるべきです。

 

しかし、成年後見制度の診断書は精神科等の専門医しか書けないという決まりはなく、これまでの仕組みでは、本人の能力を正確に見極めることが不十分なまま、後見等の審判がなされていたケースもあるのではないかと思います。

このことは、利用者の不満につながり、成年後見制度の利用が進まなかった原因の一つとして考えられます。

 

今回の診断書の書式改定のポイントとして、「判断能力についての意見欄の見直し」や「判定の根拠を明確化するための見直し」があります。これまで財産管理能力に偏った部分のチェック項目を変更したり、判定の根拠については自由記載だった精神上の障害の有無と程度について、判定の根拠を具体的に記載する欄が設けられています。

 

さらに、補助資料としての本人情報シートの導入によって、医師は、本人の生活状況や必要な支援の状況等を含め、十分な資料に基づき、より的確に判断することができるようになります。

 

新しい診断書の書式及び本人情報シートの作成に当たっては、認知症や障害がある方の各関係団体や、医療・福祉に携わる関係団体から意見を聴取するなどして検討されたようです。利用される方の立場から意見が述べられ、少しでも利用者本位の内容に改善されたことはよかったと思います。

 

今回の診断書の改定、本人情報シートの導入が利用者の判断能力に応じた自己決定権の尊重や本人保護といった制度趣旨の実現につながり、また利用者がメリットを実感できる制度へとつながることを期待したいですね。

 

弊所では、成年後見制度に関するご相談をお受けしています。

お悩みの際にはお気軽にご連絡ください。

 

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最高裁の考え方「これからは親族後見人」!?

こんにちは。

 

安心をお届けする介護・福祉の専門オフィス

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

 

 

桜も咲き始め、春らしくなってきましたね。

 

 

先週、マリナーズのイチロー選手が引退を発表されました。記者会見をご覧になった方も多いと思います。

 

私は学生時代、野球部に所属していました。

イチロー選手に憧れて試合で「振り子打法」を真似してみました。(残念ながら打率は上がりませんでした)

 

特に憧れたのはイチロー選手の「レーザービーム」です。

外野からの返球でランナーを刺す(アウトにする)姿は見ていて本当に憧れます。

 

バットでの記録が注目されやすいですが、走塁、守備も超一流なんですよね。まさに走攻守の3拍子がそろったスーパースターです。

 

イチロー選手の会見を見ていて一番印象に残ったのは、生き方について語った場面です。

 

~少しずつの積み重ね、それでしか自分を超えていけないと思うんですよ~

 

あくまでも測りは自分の中にあって、自分がやると決めたことを信じてやっていくという主旨の話もされていました。

メジャーリーグで歴史的な活躍をした世界のイチロー選手。

この偉大な記録の背景には、凄まじい努力と、自分の弱さに負けない強い精神力があるんだろうなあ・・・と想像しました。

 

そんなイチロー選手の言葉を聞きながら、私も努力を惜しまず、成長できるように頑張りたいと思いました。

 

 

 

前置きが長くなりましたが、本題に入りましょう。

 

今回は成年後見制度に関する興味深いニュースがありましたのでご紹介させていただきますね。

 

平成31年3月18日

厚生労働省にて第2回成年後見制度利用促進専門家会議が開催されました。

詳しい資料は厚生労働省HPでご確認ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03991.html

 

 

この会議で、成年後見制度をめぐって最高裁判所が「後見人には身近な親族を選任することが望ましい」との考え方を示しました。

 

私は以前のコラムで

 

後見人になった家族の不正などが背景にあり、弁護士ら専門職の選任が増えていて、家族でも選任されるとは限らないとお伝えしていました。

 

しかし、この傾向が大きく変わる可能性があります。

 

これまで、家庭裁判所が親族らの不正を防ぐ観点から、専門職の選任を増やす傾向がありました。

 

しかしながら、現在判断力の低下によって権利を護る必要がある人の数に比べ、制度を利用している人の数は低迷しています。

 

色んな原因があると思いますが、大きな原因の一つとして、後見人の担い手不足があるのではないかと思います。

専門職の後見人は数が限られています。一人で何十人も担当することは実務的に不可能です。

 

各自治体で市民後見人の養成なども進められていますが、全国的に十分な担い手が確保できているとはいえない状況です。

 

最高裁は基本的な考え方として、「後見人にふさわしい親族など、身近な支援者がいる場合は、本人の利益保護の観点から親族らを後見人に選任することが望ましい」と提示しました。

 

恐らく、親族に後見人として就任してもらわないと担い手が足りないことが明らかになってきたのではないかと想像します。

 

また、後見人の交代についても、「不祥事など極めて限定的な現状を改め、状況の変化に応じて柔軟に交代・追加選任を行うとする。」とも言っています。

 

これまで、一度就任したら簡単に辞任できませんでした。

 

これは色んな人に後見人の担い手として活動してもらえるようにと考えているようにも聞こえます。

 

ただし、色んな人が後見人として活動する場合、責任を持って後見活動を行わないと、被後見人の権利が侵害されてしまいます。

 

 

最高裁家庭局は、後見人の選任は各裁判官が個々の事案ごとに判断するため「あくまで一つの参考資料」と説明していますが、最高裁の考え方が表明されたことによる影響は必至ではないでしょうか。

 

今後どのような制度運用がなされるのか引き続き注目していきたいと思います。

 

これから認知症患者数が増加することが想定されています。例え、認知症になったとしても安心して暮らせる社会でありたいですね。

 

そのためには、私たち国民が関心を持って制度をチェックしていくことも大切だと思います。

また、新しい情報があればコラムでご紹介させていただきます。

 

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社会福祉士と成年後見制度

こんにちは。
安心をお届けする介護・福祉の専門オフィス
行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。
今回も引き続き、「社会福祉士」について書いてみたいと思います。

 

最近、ニュースやワイドショーで千葉県で起こった児童虐待、そして小学校でのいじめの問題が報じられています。その内容を知れば知るほど本当にあったことなのかと衝撃を受けました。

 

教育委員会、児童相談所の対応、また小学校の先生の不適切な言動に批判が寄せられています。一番つらい思いをしているのは子供たちです。

 

今後、どのようにして子供たちを守るのかを真剣に考えないといけません。私も他人事ではなく自分事として何かできることがないか考えているところです。

 

また、社会福祉士という立場で考えると、子どもの人権を護るという使命があります。虐待やいじめの問題には家族関係や経済状況などに福祉課題を抱えているケースが少なくありません。このような痛ましい事件が起こるたびに、社会福祉士が専門性をさらに発揮していく必要性を感じます。

 

現在、児童相談所や教育委員会で頑張っている社会福祉士に期待しつつ、日本社会福祉士会としても何らかのアクションがあれば協力していきたいと思います。

 

さて、今回のコラムでは、社会福祉士と成年後見制度についてもう少し詳しくお伝えしてみようと思います。前回も簡単にご紹介しましたが、相談援助の専門職、社会福祉士が成年後見制度で担っている役割をお伝えしたいと思います。

 

社会福祉士が成年後見活動に取り組んでいることは、前回のコラムの通りです。

 

活動の根底には「社会福祉士の倫理綱領」があります。活動の拠り所ですね。 これは研修などで徹底的に学びます。とても大事です。

 

その中に、「人間の尊厳」という言葉があり、すべての人間をかけがえのない存在として尊重するとしています。社会福祉士の活動における原則であり出発点だと思っています。

 

社会福祉士には、支援を必要とする人々の生活と権利を擁護することが、社会福祉士という専門職としての価値と原則を具体化するものとしてとらえていて、成年後見制度などの権利擁護の法制度を理解し、積極的に活用していく力が求められています。

 

そして、社会福祉士は地域包括支援センターや権利擁護センターなどで実際に権利擁護に関する相談に対応しています。

 

成年後見制度などの権利擁護制度を利用する必要のある人は、判断能力の衰えや虐待を受けている場合など、自ら主張すること、支援を求めることや制度を活用することができにくい特徴があります。

 

ですので、この人たちが制度を利用し、その利益を享受することができるようにするためには、入り口としての相談が極めて重要になります。

 

この権利擁護相談において社会福祉士は、福祉に関する相談援助、連絡調整の専門職としての役割が期待されています。この期待に応えるには勉強が欠かせません。多くの社会福祉士は勤務外で時間を確保して研修会などで勉強しています。私も頑張らなくては・・・

 

また、成年後見制度は、制度の発足当初から「複雑でわかりにくい」「なじみにくい」などの声が多く、制度利用のための身近な専門相談機関の心要性が指摘されてきました。

 

このような背景もあり、前述の地域包括支援センターは、専門的·継続的な視点から高齢者の権利擁護のための支援を行うことを目的とし、事業内容として成年後見制度の利用支援や高齢者虐待への対応等を実施しています。

 

これらの業務を遂行する専門職として、社会福祉士が配置されているんですね。私の知り合いにも地域包括支援センターで頑張っている社会福祉士がたくさんいます。みなさんから聞く話には、教科書には載っていない色んなエピソードがあります。その中には実務でしか得られない貴重な経験があり、いつも学ばせていただいてます。

 

このように、成年後見制度などの権利擁護に関する相談は、地域包括支援センターが地域の窓口となっています。そこで、しっかり相談者に寄り添いながら、必要な支援をしてくれたり、専門機関や専門家につないでくれます。

 

弊所は地域包括支援センターや地域のケアマネジャーさんからご相談いただくこともあり、協力しながら高齢の方の生活が安定し、安心して暮らせるように支援させていただいています。

 

相談援助を仕事とする社会福祉士は、相談援助技術というものを学んでいます。 社会福祉士に限らず、人と関わる仕事において相談援助技術は必要な技術ですし、役に立ちます。相談に来られた方が安心して話せるかどうか、信頼できるかどうかは相談を受ける立場としてはとても重要です。

 

私も引き続き、自己研鑽に努めようと思います。
機会があれば、役に立つ相談援助技術のご紹介もしていきたいと思います。

 

弊所では地域の方のご相談をはじめ、医療、福祉専門職の方からのご相談もお受けしております。

お悩みやお困りごとをしっかりお聞きし、一緒に解決策を考えます。
お気軽にお問い合わせください。

 

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“社会福祉士”ってどんな資格?

こんにちは。

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

 

年が明けて早くも半月が過ぎましたね。

みなさま、お正月はいかがお過ごしでしたか?

 

私はお正月休みに今年の目標を立てました。

こころ新たに頑張っていきたいと思います。

2019年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

さて、本題に入る前にみなさまに質問があります。

 

“社会福祉士”をご存知ですか?

 

私の事務所名にも入っている“社会福祉士”ですが、

国家資格なの?

何をする人?

どんな仕事をしているの?

どこで働いているの?

など聞かれることが少なくありません。

 

そこで、今回は“社会福祉士”についてお伝えしたいと思います。

 

社会福祉士とは

 

社会福祉士は、昭和62年に制定された 「社会福祉士及び介護福祉士法」で位置づけられた、社会福祉業務に携わる人の国家資格です。

 

「社会福祉士及び介護福祉士法」を見ると、

社会福祉士とは「専門的知識及び技術をもって、身体上もしくは精神上の障害があること、または環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供する者又は医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者との連携及び調整その他の援助を行うことを業とする者」とされています。

 

何だか長くてわかりにくいですね。

簡単に言うと、身体上や精神上または環境上の理由で日常生活に困っている人の相談に応じ、助言、指導、関係機関との連絡及び調整などを行う相談援助の専門職です。

 

■ 社会福祉士の仕事と職場

 

では、社会福祉士はどこでどんな仕事をしているのか見ていきましょう。

 

社会福祉士が働く職場としては介護保険施設、障がい者施設、児童養護施設などの社会福祉施設が多数を占めます。

 

あとは、医療機関、社会福祉協議会、行政機関、独立型社会福祉士事務所が代表的なものです。その他、教育委員会や更生保護施設などで活躍する社会福祉士も増えてきました。

 

ほとんどの社会福祉士は、組織に所属していて、相談員や施設長といった役職を持つ人も多くいます。専門的な相談窓口を備える機関では社会福祉士資格が必須となっています。

 

上記のように、社会福祉士を必要とする職場は数多く、仕事の範囲や対象も多岐にわたります。基本的には、お年寄りや身体・知的障がい者、ひとり親家庭などの相談にのり、それぞれの状況に応じた支援を行います。さらには、行政や医療機関など各関連施設をつなぐ役割も担います。

 

近年、日本社会では少子高齢社会が進み、さまざまな福祉的課題を抱えています。

生活者の困りごとが多様化、複雑化、潜在化、長期化するなかで、社会福祉士はあらゆる場面で専門性を発揮することが期待されています。

 

■ 社会福祉士の資格について

 

社会福祉士資格は、国家資格ですが、医師や行政書士のように「業務独占」の資格でなく、「名称独占」の資格です。

 

「名称独占」とは、資格をもたない者が、「社会福祉士」という名称を勝手に使用してはならないということで、社会福祉士資格を持っていなければ就けない職種は現在のところありませんが、市区町村の地域包括支援センターでは必置資格になっていますし、求人には、社会福祉士資格を条件としたり、希望しているケースが増えています。

 

また、最近では独立型社会福祉士として事務所を構える人も増えており、福祉施設のアドバイザーや研修講師などで活躍される方もいらっしゃいます。

 

資格を取得するには福祉系の大学を卒業し受験資格を得るパターンが多いですが、その他にも社会福祉士養成校に通ったりするなど複数の道が用意されています。

誰でも受験できるわけではないので、受験資格を得て国家試験を受けるまでの道のりは結構長いものです。

 

■ 成年後見制度と社会福祉士

 

成年後見制度において、社会福祉士は福祉を通じて被後見人に身近な存在であるという実績があります。

弁護士、司法書士に次いで社会福祉士も後見人に関連する業務を行ってきた実績や能力、その取り組みが評価されているため第三者後見人・職業後見人の就任数も多くなっています。

 

最近では、独立型社会福祉士事務所を経営しながら成年後見を受任される方が増えています。

 

日本社会福祉士会、各都道府県社会福祉士会では「権利擁護センターぱあとなあ」という成年後見の専門団体を運営していて、所属している社会福祉士は日々専門職としての研鑽を積んでいます。そして、所定の成年後見人養成研修を修了した社会福祉士が成年後見人等の候補者として登録されています。

 

まとめ

 

最後に社会福祉士の役割を3つのキーワードでまとめたいと思います。

(参考:兵庫県社会福祉士会ホームページ)

 

【つなぐ】

ご利用者やそのご家族が生活の中で困ったことがあった時に、お話をよくうかがって、解決するために最も適したサービスに「つなげる」という役割を担います。

 

【ささえる】

病気、障害、生活資金、悪質な詐欺、子育て、災害…。生きていく上で様々な困難や危機に出会った時に法律や制度、地域に有るサービス、専門的な知識が必要となる情報などを適切に助言し、生活を「ささえる」チカラになることが、社会福祉士の仕事です。

 

【まもる】

預貯金や住居の財産管理、生活を支える福祉サービスの利用を本人に代わって契約するなど、成年後見人としてご利用者を「まもり」ます。

また、高齢の方や障害のある方を「まもる」ため、地域の自治体や弁護士などの専門職と連携し、虐待防止にも積極的に取り組んでいます。

 

 

以上、大まかな説明になってしまいましたが、少しでも社会福祉士のイメージを持っていただけたら幸いです。

 

社会福祉士が活動する分野は本当に幅広く、多岐にわたります。

そのため国家試験の試験科目は19科目もあるんです。

 

生活課題を抱え、福祉の支援が必要な方がいらっしゃれば専門職の社会福祉士がお役に立てると思います。

 

弊所も福祉専門の行政書士事務所として、また社会福祉士としてみなさまのお悩みやお困りごとを解決できるよう頑張ってまいります!

 

きっとお役に立てることがあります。ちょっとしたことでも遠慮なくご相談ください。

 

今後のコラムでは、色んな分野で活躍する社会福祉士の活動や専門技術をご紹介したいと思います。

 

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日常生活自立支援事業を利用するための手続きについて

こんにちは。

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

 

12月になりました。

早いもので、今年も残すところわずかとなりました。

なんだか、急にせわしい気分になってきたのは私だけでしょうか。

みなさま、いかがお過ごしですか?

 

先日、年末の恒例行事となっている漫才の頂上決戦「M-1グランプリ」が放送されました。

私はお笑いが大好きで、毎年楽しみにしています。

今年もたくさん笑わせてもらいました。

 

最終決戦に残った3組はやはり実力がありますね。とても面白かったです。

特に気になったのは「和牛」というコンビです。去年、一昨年と連続で2位。

多くの人が、今年こそは!という期待を持って見守っていたのではないかと思います。

そして、期待通りの漫才を見せてくれました。

 

結果は惜しくも2位。僅差でしたね。

ただ、和牛の実力は誰もが認めるところだと思います。今後も楽しみです。

 

ところで、和牛が最終決戦で披露したネタが「オレオレ詐欺」でした。

母親がオレオレ詐欺に引っかからないように、息子が実際に電話をかけて訓練するという設定です。漫才自体はとても面白かったのですが、私はオレオレ詐欺の怖さを改めて感じました。

 

多くの人は、「自分は大丈夫」または、「自分の親は大丈夫」と思っているのではないでしょうか。

私もそう思っていました。しかし、巧妙な話術で気付かぬうちに騙されることがあるのではないかと感じました。

 

特に、高齢になると年とともに判断力が低下するケースもあります。病気や事故などが原因で判断力が低下することもあります。

そんな時は、周囲の人のサポートが必要です。また、いろんな制度や支援機関の力を借りることも必要になるでしょう。

 

漫才を楽しみながら、社会問題についても考えるきっかけになりました。

とても奥が深い漫才でした。

そして、オレオレ詐欺に騙される人をなくすために自分に何かできることがないだろうかと考える機会にもなりました。

 

さて、前置きが長くなりましたが、今回も前回のコラムに引き続き「日常生活自立支援事業」についてお伝えしていきます。

 

今回は日常生活自立支援事業を利用するための流れや支援の内容についてお伝えしていきます。

 

日常生活自立支援事業を利用するまでの流れ

1.相談受付

まずは、相談を受け付けるところから始まります。本人やそのご家族からの相談のほか、地域の民生委員·児童委員、地域包括支援センター、ケアマネジャー、ホームヘルパーなどから相談が寄せられることによって、初期相談を行います。そして、ここから事業を利用するための手続きが始まります。

 

相談を受け、援助の必要性があると考えられる場合は、専門員が本人のもとを訪問して、日常生活自立支援事業の利用についての意向や意思を確認します。

 

この事業では、本人や家族からの相談よりも、本人や家族にかかわっている関係機関からの相談がきっかけとなることが少なくありません。

 

そのため、専門員は本人へ丁寧な説明を行い、また本人の生活上の希望を十分に聞きながら利用の意思を確認します。

 

2.利用できるか具体的な調査をする

次に、本人の利用希望が確認されたら、専門員は、契約締結判定ガイドラインに基づき、具体的な調査を行います。この段階で、本人に日常生活自立支援事業の利用契約を結ぶ能力があるかどうかの確認と、提供するサービスの特定を行います。

 

もし、この段階で、本人に契約を結ぶ能力(契約締結能力)があるかどうか疑わしい場合には、都道府県社会福祉協議会に設置されている契約締結審査会に審査を依頼することになります。

 

そして、契約締結審査会の審査結果によって、契約締結能力があると判断された場合には、次の段階に進むことができます。

 

契約締結能力がないと判断された場合には、本人にその旨を知らせるとともに、成年後見制度の利用等も含め、その人にとってふさわしい生活を送ることができるように、行政や支援団体等の関係機関につなぎます。

 

3.契約書·支援計画を作成して契約を結ぶ

本人の意向が確認され、契約締結能力にも問題がないと判断されたら、専門員は契約書案や支援計画案を本人に示します。そして、今後日常生活自立支援事業において、どのような援助を行っていくかを説明し本人の合意を得ます。

 

その後、1週間をめどに、再度、本人のもとを訪問し、本人の意思の確認、契約内容の理解の再確認をしたうえで、契約を締結します。

 

4.援助の開始

契約が締結されれば、生活支援員が、契約書や支援計画に基づいてサービスを提供します。また、契約を結んでから3ヵ月後に、サービスの実施状況を確認し、支援計画の評価を行います。その後も、契約書に定められた一定期間ごとに支援計画の評価を実施します。

 

5.契約の終了

本人が解約を申し出た場合、本人が死亡した場合、本人の意思が確認できないために本人の生活にふさわしい新たな支援計画を作成できない場合には契約を終了することになります。

 

ここまでが、日常生活自立支援事業を利用するまでの流れになります。

続いて、利用料金と支援内容です。

 

【利用料金について】

相談開始から契約を締結するまでの相談支援は無料です。

契約が締結された後、契約に基づいて行われる生活支援員による援助については、原則として自己負担となります。

 

利用料については、実施主体ごとの判断によるため金額が異なりますが、平均すると、1時間あたり、およそ1200円前後となっています。

なお、生活保護を受給されている方については、公費により補助されることになっています。

 

【支援内容について】

具体的な援助の方法として、相談·助言·情報提供、連絡調整、代行、代理が想定されていますが、本人の自己決定を尊重するために、なるべく「相談・助言・情報提供」「連絡調整」を中心に援助を行い、本人自らが各種の手続きを行うことができるよう援助することを基本としています。

 

相談·助言·情報提供には、生活支援員が、市区町村の行政窓口や金融機関の窓口に本人とともに出向き、本人自らが手続きできるよう、言葉の解説をしたり、記入方法などの助言をしたりすること(同行での相談と助言)も含まれます。

 

代行とは、本人が作成した契約書類等を福祉サービス事業者に届けたり、本人から現金を預かって福祉サービスの料金を事業者に支払うなどといったことです。

 

代理は、本人に代わって第三者が法律行為を行うことをいいます。日常生活自立支援事業では、この代理の援助は限定して行うこととしています。

 

この事業で想定している代理権の範囲は、在宅福祉サービスの利用手続き、本人が指定した金融機関口座の払戻しに限られています。代理の援助を利用する場合には、代理権の範囲は契約により定められることになります。

 

金銭管理については、ガス·電気·水道などのライフラインや住居の確保など、本人の生活基盤を支えるための重要なものであり、金銭管理ができなくなると、生活が成り立たなくなってしまいます。認知症高齢者や障害のある人など、判断能力の不十分な人が在宅生活を継続するためには、金銭管理は重要な要素です。

 

日常生活自立支援事業は、判断能力が不十分な人の金銭管理の支援を行うことで、本人の生活の安定を実現し、自立を支援することも目的としています。

 

ここまで、日常生活自立支援事業についてお伝えしてきました。

この事業は、みなさんの地域にある社会福祉協議会が実施しています。気になった方は最寄りの社会福祉協議会へお問い合わせください。

弊所でもご相談をお受けしています。

生活の中で不安に思うことなど、ちょっとしたことでも大丈夫です。お気軽にご相談ください。

 

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成年後見制度と日常生活自立支援事業

こんにちは。

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

 

最近は朝と晩の冷え込みが厳しくなってきましたね。

気がつけば、もう11月。我が家では寝具の入れ替え、衣替えなど冬支度を始めました。

 

今年も残り2か月です。

寒さに負けず、2018年のラストスパート、頑張りたいと思います。

 

さて、今回は、社会福祉法に基づく「日常生活自立支援事業」についてお伝えしたいと思います。

 

日常生活自立支援事業とは

判断能力が十分でない人に対して、福祉サービスの利用に関する手続きの援助を行ったり、地域において自立した生活が送れるように支援することを目的として導入されました。

 

判断能力が十分でない人を支える事業というと、成年後見制度が思い浮かびますよね。

「日常生活自立支援事業」と「成年後見制度」

この2つの制度はよく似ていますが明確な違いもあります。

 

では、順番に説明していきましょう。

 

日常生活自立支援事業がつくられた背景

まず、日常生活自立支援事業がつくられた背景からみていきます。

介護保険法の施行によって、利用者みずからがサービスを選択し、サービス提供者と契約を結び、その契約に基づいて福祉サービスを利用するしくみが基本となりました。

 

しかし、福祉サービスを利用する人の中には、判断能力が必ずしも十分でない人も少なくありません。そうした人々にとって、自分で福祉サービスを選択し、契約を結ぶという行為は容易ではありません。

 

そのため、一連の流れを援助するしくみが必要となったのです。そのしくみとして、日常生活自立支援事業が誕生しました。判断能力が低下した人が安心してサービスを選び、契約を結ぶことができるように支援する成年後見制度も目的としては共通しています。

 

実施主体は社会福祉協議会

日常生活自立支援事業を実施する主体は、都道府県·指定都市社会福祉協議会です。

厚生労働省は、日常生活自立支援事業を創設した際に、全国のあらゆる地域で実施できるようにするため、全国的なネットワークをもつ公益的な団体であり、すでに各地で先駆的な取組みを行っている社会福祉協議会を中心とした事業としました。

 

都道府県·指定都市の社会福祉協議会が事業を実施するにあたっては、市区町村社会福祉協議会等に委託することができます。また、利用者の利便性を考慮して、事業の一部については、地域のNPO法人や当事者団体にも委託することができるようにもなっています。ほとんどの場合は社会福祉協議会ですね。

 

成年後見制度と比べてみると、法定後見では、家庭裁判所に申立てますし、任意後見では公証役場で公証人に任意後見契約書を作ってもらいます。日常生活自立支援事業は社会福祉協議会が中心になっているところが大きな特徴です。

 

日常生活自立支援事業で受けられるサービス

では、日常生活自立支援事業ではどのようなことを行っているのでしょうか。

認知症高齢者など、判断能力の不十分な人が地域において自立した生活を送ることができるよう、以下のサービスを中心とした援助を行っています。

 

  • 福祉サービスの利用援助

福祉サービスの利用援助では、福祉サービスの利用または利用中止のために必要な手続き·福祉サービスの利用料を支払う手続き、福祉サービスについての苦情解決制度の利用手続きに関する援助を行います。

また、住宅改造、住居の賃借、日常生活上の消費契約や住民票の届出などの行政手続に関する援助なども行います。

 

  • 日常生活における金銭管理

日常生活における金銭管理では、年金や福祉手当を受けるために必要な手続き、医療費の支払いに関する手続き、税金や社会保険料、公共料金を支払う手続き、日用品等の代金を支払う手続きに関する援助を行います。

また、これらの支払いに伴う預貯金の払戻し、預貯金の解約、預貯金の手続きに関しても援助を行います。

 

  • 書類預かりサービス

書類預かりサービスでは、利用者の書類等を預かります。

預かることのできる書類としては、年金証書、預貯金の通帳、契約書類·保険証書、実印、銀行印などがあります。

実施主体である社会福祉協議会の判断により、預貯金通帳等の書類預かりサービスを、福祉サービスの利用援助とあわせて実施することができます。

 

利用者は、居住している地域の社会福祉協議会と契約して利用する

日常生活自立支援事業を利用する場合、社会福祉協議会との契約になります。この点も成年後見制度と違う点です。

具体的な流れは次回のコラムでお伝えしますね。

 

対象者は判断能力の不十分な人

では、この事業は、どのような人が対象になるのでしょうか。

それは認知症高齢者、知的障害者、精神障害者など、判断能力が日常生活を送るうえで必要な福祉サービスの利用に関して、自分の判断で適切に決定することが困難な人です。同時に、この事業の契約内容について判断し決定できる能力を有していると認められることが必要です。

 

つまり、「判断能力が不十分である」、「日常生活自立支援事業の契約内容について判断できる」といういずれの要件にも当てはまる人が対象になります。

なんだか矛盾しているようにも思えますね。

 

もう少し具体的に言うと、認知症などで判断能力が多少衰えたけど、日常的な生活を支援してもらえれば、まだまだ住み慣れた地域で自立した生活が送れる場合は、日常生活自立支援事業の利用が考えられます。

 

なお、認知症の診断、療育手帳や精神保険福祉手帳などの所持が利用の要件になることはありません。

 

一人暮らしなどで少し不安があるという人も利用できますし、もし、判断能力がもっと低下してしまったら成年後見制度につなげます。また成年後見制度と併用するケースもあります。

 

日常生活自立支援事業を利用するためのしくみ

改めて日常生活自立支援事業を利用するためのしくみを確認すると、サービスは本人と社会福祉協議会が利用契約を結んで行うことになります。

 

そして、実際にどんな人が支援してくれるかというと、福祉サービスの利用援助や金銭管理などの具体的な援助は、社会福祉協議会に雇用される「専門員」と「生活支援員」が行います。

 

専門員は、初期相談から、本人に必要な援助の決定(支援計画の策定)、この事業に必要な契約締結能力の確認、契約締結に関する業務を行います。

 

生活支援員は、支援計画に基づき、定期的もしくは本人から依頼があったときに援助を行います。

専門員および生活支援員は、当然ながら常に本人の自己決定を尊重する権利擁護の視点に立って援助を行っています。

 

以上が日常生活自立支援事業の概要です。

成年後見制度を利用するほどではないけれど、何か不安があって支援が必要ではないかと考えられる人は地域の社会福祉協議会にご相談ください。

 

弊所でも日常生活自立支援事業や成年後見制度のご相談をお受けしています。

お気軽にご相談ください。お待ちしています。

 

次回は日常生活自立支援事業を利用するための手続きや実際の支援の流れをお伝えしたいと思います。

 

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知ってほしい認知症ケアの大切なこと

こんにちは。

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

今回のコラムは、認知症ケアについて書きたいと思います。

 

私は行政書士の仕事以外に介護の研修講師もしています。

先日、「奈良県認知症介護実践者研修」という研修で講義をさせていただきました。

 

この研修は、国の認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)にも位置付けられているものです。

 

研修の期間は全部で7日間に渡ります。しかも、途中で1ヶ月程度の実習も課せられており、なかなかのボリュームです。

 

それでも毎年県内の各施設から200人以上が参加されています。

 

私は、研修初日の「認知症ケアの倫理」と「認知症の人の権利擁護」という科目を担当しました。「認知症の人の権利擁護」では、成年後見制度についても触れるのですが、これまでコラムでお伝えしたような内容を話しています。

 

“倫理”や”権利擁護”というと、馴染みがなく少し難しいイメージがありますよね。

 

受講者にとって取っ付きにくい科目でもあるんです。

ですので、

どうしたら身近に感じてもらえるか、

どんな伝え方をしたらよいか

毎回悩みます。

 

今回は事例に沿って説明したり、グループ演習を取り入れてみました。

ちゃんと伝わっていたらいいのですが・・・

また別の機会に、この講義の内容についてもコラムでご紹介したいと思います。

 

さて、認知症ケアを学ぶ際には大切なことがたくさんあります。

その中でも、「パーソンセンタードケア」という考え方はとても重要であり、基本です。

 

パーソンセンタード・ケアとは,認知症をもつ人を一人の“人”として尊重し,その人の視点や立場に立って理解し,ケアを行おうとする認知症ケアの考え方です。

 

この考え方を提唱したのは、イギリスのトム・キットウッドという学者さんで、業務中心のケアに対して,人中心のケアの重要性を主張しました。

 

業務中心のケアとは、言い換えると介護する人を中心としたケアです。

例えば、介護施設では介護する人の都合でケアが行われてきた歴史があり、食事、入浴、排泄の介助が中心でした。

 

清潔、安全が重視され、そこで暮らす認知症の人は生活を管理され、自由や楽しみがない生活だったようです。

 

当時のケアの根底には、

認知症の人は何もわからないから、その人のために何でもしてあげなければならない

 

認知症の人は、すぐに忘れるし、何も考えられないから周りの人がその人のことを決めてあげなければならない

 

といった考え方があったんですね。

 

認知症の人には意思がないとみなされ、認知症の人の気持ちや、望む暮らしにはあまり目が向けられませんでした。

 

そこで、トム・キットウッドは人中心のケアの重要性を主張しました。

 

人中心のケアとは、

認知症の人の生き方や生活に重心をおき、その人らしさを中心にすること。

そして、認知症の人の声をしっかり聞くこと、聞こうとすることです。

 

具体的には

認知症の人の気持ちに寄り添う

 

認知症の人のこれまでの人生ストーリーやこれからの人生に関心を持ってかかわる

 

認知症であっても、できることや可能性がたくさんあって、それを引き出す

 

といったことがあります。

 

そして、

 

認知症になったからといって、目の前のその人は何も変わらない、

かけがえのない大切な存在であることに違いはない

 

ということを、私たちが認識することはもちろんですが、認知症の本人に実感してもらえるように支援することがポイントだと思っています。

 

私は、もし自分が認知症になってしまったら、偏見を持たずに大切にしてほしいです。

笑って過ごせるように、自分の好きなことや役割を続けさせてほしいと思っています。

 

きっと、多くの人が同じ思いを持っていると思うのです。

だからこそ、認知症の人を支える立場の人をはじめ、多くの人に認知症ケアの大切なポイントを知ってほしいと思います。

 

2025年には、認知症の人が700万人(約5人に1人)に達すると言われています。

誰にとっても他人事ではない時代になります。

 

たとえ認知症になっても、安心して最期まで自分らしく暮らしていける社会をつくっていきたいですね。

 

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所は、認知症の方、そしてそのご家族からのご相談もお受けしています。

 

ケアマネジャーの資格もありますので、介護保険サービスについてもお気軽にご相談ください。

 

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任意後見とともに備えておきたいこと

こんにちは。
行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

今回は任意後見とともに備えておきたいことをご紹介したいと思います。

先日、テレビのバラエティー番組で終活の特集をやってました。

出演している芸能人が自分の終活について紹介したり、お墓選びや終の住処をさがすなどの内容でしたが、終始楽しい雰囲気でした。

「死ぬことを考えるなんて縁起が悪い」と思われていた時代もありましたが、現在は終活の認知度が上がり、そのイメージも変わってきているようです。

また、朝のワイドショーでも終活に関する特集をよく見かけます。
お墓見学ツアーなるものが人気だとか・・・

それだけ終活に関心を持っている人が多いということですよね。
高齢期を安心して過ごしたいという希望は誰もが持っていると思います。

ところで、「終活」という言葉は日常的に使われていますが、みなさんはどんな意味で使っていますか?

私は、財産の整理(相続の準備)や葬儀、お墓の準備など今のうちに決めておくことかなと思っていました。

一般社団法人終活カウンセラー協会のホームページには、

「終活とは人生のエンディングを考えることを通じて“自分”を見つめ、“今”をよりよく、自分らしく生きる活動」

と書いてありました。
今をよりよく、自分らしく生きるために終活があるのですね。
そして、死ぬことを考えることにより、今をどう生きるのかを考えることにつながるようです。

「これから残りの人生をどう生きるか」

趣味や生きがいをもって楽しく生きていくことを考えるのはもちろん大事なのですが、そのためには不安を解消するための対策も必要です。

高齢期に抱える不安として、お金のこと、健康のこと、介護のこと、葬儀・お墓のことなど様々です。

前回のコラムでお伝えした任意後見契約は、認知症による判断能力の低下に対する備えでしたね。これも一つの備えではありますが、任意後見契約だけではカバーできないこともあるんです。

たとえば、葬儀のことやお墓のことは任意後見契約ではカバーできません。

なぜなら、任意後見契約は本人が死亡してしまったら契約が終了するからです。

亡くなった後のことは親族に任せることになりますが、葬儀ができるような親族がいない場合や、いても任せられない場合には、「死後事務の委任契約」という方法があります。

死後事務の委任契約では、亡くなった後の親族などへの連絡や葬儀社の手配、役所の手続き、火葬、納骨、自宅の整理などが頼めます。

たとえば、葬式は誰が行い、葬儀費用は誰が支払うのかといったことも、決めておくことで相続トラブルを防ぐことができます。

また、最近の葬儀は、家族葬など簡素化されたり、お墓に関しては散骨や樹木葬への関心が高く、多様化しています。つまり、葬儀やお墓に関する考え方や希望も多様化しています。

自分の遺志を実現しようと思えば、誰がいくらの費用で何をするのかを、生前に決めておく必要があります。

「死後事務の委任契約」は葬儀や散骨、樹木葬など、自分の死後に生ずる事務を生前に委任しておく契約です。この契約は本人が死亡すると同時に始まります。

死後に他人に迷惑をかけたくない、死後のことも自分で決めておきたいという希望を実現するために「死後事務の委任契約書」という備えがあります。

この死後事務の委任契約と任意後見契約を同時に契約することによって、判断能力が低下してから亡くなった後までカバーすることが可能になります。

最近は、一人暮らしの高齢者が増えていて、孤独死のニュースを耳にすることが多くなってきました。また、遺体の引き取り手のない事例が増加し社会問題にもなっています。

親族がいても疎遠になっていたり、事情があって死後の面倒まで頼めないこともあります。

このような事例が増えていることから、死後事務の委任契約が注目されています。

以前のコラムでご紹介した「財産管理等委任契約」「任意後見契約」そして、今回ご紹介した「死後事務の委任契約」は同時に公正証書で作成できます。弊所では、ご希望をお聞きしながら契約書の原案をご提案いたします。その他終活に関連することも遠慮なくご相談下さい。

 

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任意後見契約の手続きについて~その2~

こんにちは。

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

 

前回のコラムで、任意後見契約の手続きについて

  • 受任者を決める
  • 授与する代理権の内容を決める

この2点をお伝えしました。

 

今回は、その次の段階を見ていきましょう。

 

 

任意後見契約に必要な書類を準備する

 

受任者(頼む相手)と、授与する代理権の内容(代わりにやってもらうことの内容)が決まったら、必要書類をそろえます。

 

任意後見契約を結ぶには、次のような書類が必要となります。

  • 本人の印鑑登録証明書
  • 本人の戸籍謄本
  • 本人の住民票
  • 任意後見人になる人の印鑑登録証明書
  • 任意後見人になる人の住民票

 

なお、印鑑登録証明書は発行後3か月以内のものに限りますのでご注意ください。

 

 

任意後見契約書案の作成

 

任意後見契約は、必ず公正証書で結ぶ必要があります。

公正証書とは、公証役場の公証人が作成する証書です。公正証書によらない任意後見契約は無効になります。

 

公正証書により契約が結ばれるまでには、まず最初に委任者である本人と受任者との間で任意後見契約書案を作成します。受任者は本人の意思を十分に確認しながら、その意思にかなう案を作成します。

 

そして、契約形態を決めます。

契約形態は、以前のコラムでも紹介した「将来型」「移行型」「即効型」があり、本人との面談を通じて本人の判断能力や生活実態、希望など見極めたうえで適当な契約形態を選びます。

 

また、代理権の範囲を明確に定めるため、授与する代理権の内容を代理権目録として作成し任意後見契約書に別紙として添付します。

 

 

任意後見契約公正証書の作成

 

本人と受任者の間で作成した任意後見契約書案をもとに、公証人と相談して契約書の文案を完成させ、契約内容を確定します。そして、契約書の文案が完成したら本人と受任者がそろって公証役場へ出向き、「任意後見契約公正証書」を公証人に作成してもらいます。

 

任意後見契約公正証書を作成するにあたって、本人の判断能力と契約を結ぶ意思を確認するため、公証人は原則として本人と面接するものとされています。もし、判断能力に疑いがある場合は、医師の診断書等を求められる場合があります。

 

公証人との相談や任意後見契約公正証書作成の日程については、お近くの公証役場へ電話で問い合わせのうえ、事前に予約を取りましょう。任意後見契約公正証書の作成時は本人、受任者とも実印を忘れずに持参してください。

 

なお、本人が病気やケガで入院中、または高齢などの理由で公証役場に出向けない場合は、公証人に自宅や病院または入所施設などに出向いてもらって作成することも可能です。

 

 

任意後見契約公正証書作成費用

 

公正証書作成に要する費用は、以下のとおりです。

 

  • 公証役場の手数料・・・・・・・・・1万1,000円
  • 法務局に登記するための手数料・・・1,400円
  • 法務局に収める印紙代・・・・・・・2,600円
  • 郵送料金・・・・・・・・・・・・・540円
  • 正本等の作成手数料・・・・・・・・1枚につき250円×枚数

 

任意後見契約公正証書を作成するには、上記の手数料等をもとに計算され、1契約につきおおむね2万円から2万3,000円程度が必要となっています。

 

なお、公証人に自宅や病院等に出向いてもらった場合の手数料は50%加算され、公証人へ支払う日当(1万円。ただし、4時間を超えるときは2万円)と交通費の実費が必要になります。

 

また、任意後見契約と併せて、通常の財産管理委任契約等の委任契約を同時に結ぶ場合はその契約につき上記の①と⑤がさらに必要になります。そして、受任者が複数で、各受任者が権限を単独で行使(各自代理)できる定めがあるときは、受任者の数だけ契約の数が増えることになり、その分だけ費用も増えることになります。ただし、受任者が複数であっても、権限を共同で行使(共同代理)の場合には、1契約として手数料が計算されます。

 

 

以上が任意後見契約の手続きの概要です。

いかがでしょうか。

 

公証役場で任意後見契約公正証書を作成するまでの準備については、専門家に頼むことも可能です。

 

弊所は、必要書類の準備や任意後見契約書案の作成、公証人との打ち合わせなどのサポートができます。ぜひ、気軽にご相談ください。

 

次回は、任意後見とともに、やっておきたい備えについてご紹介したいと思います。

 

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任意後見契約の手続きについて

こんにちは。

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

今回は、任意後見制度の手続きについて見ていきましょう。

 

任意後見契約を締結するためには、まずは次の2点を決める必要があります。

 

  • 受任者を決める

つまり、判断能力が低下したときに自分に代わって必要な契約等を締結してくれる人を決めます。

 

任意後見契約において、どのような人を受任者(任意後見人)に選任するかは、本人(委任者)の自由な選択に委ねられています。

 

誰に任意後見人を頼むかということはとても大きな問題です。弁護士、司法書士、行政書士、社会福祉士等の専門家でなくても、親族やその他の第三者でも構いません。

 

任意後見人になるために、法律上、特に資格を有することなどは求められていませんが、未成年者、破産して復権していない人、成年後見人等を解任された人、本人に対して訴訟を提起したことがある人(その配偶者又は親子)は不適格者として任意後見人になれません。

 

また、不正な行為や著しい不行跡のある者、その他任意後見人の任務に適しない事由のある人(例えば金銭にルーズな人)なども、任意後見人としてふさわしくないとされています。

 

任意後見人には、判断能力が低下したときの財産管理や介護の手配などを全面的に委ねることになります。そして、任意後見開始後の生活を任せることになりますので、信頼できる人を見つけることが何より大切です。

 

一般的には、報酬の問題もあるため、本人の親族、友人・知人が任意後見人になることも多いです。

 

親族に頼む場合は、任意後見制度をよく理解してもらうことが重要です。

 

そして、同年代の人に頼むと、どちらが先に認知症等によって判断能力が低下するかわかりませんから、できれば年齢は自分より若い人の方がよいでしょう。

 

いずれにしても、代理権を悪用、濫用されることがないような信頼できる人を慎重に選ぶ必要があります。適当な人がいない場合は、弁護士会、司法書士会、行政書士会、社会福祉士会、社会福祉協議会などの専門団体でも相談に応じたり、引き受けてくれます。

 

任意後見人の候補者が見つかったら、その人が自分の思いをかなえてくれる人かを見極めます。できれば、契約前に一緒にエンディングノートを作ったりして、財産や生活のことを相談したり、介護や医療について自分が将来どうしたいかなどの思いを伝えるとともに、相性を確認できれば安心です。

 

また、法人も任意後見人になれます。個人の場合と異なり、担当者のケガや病気、死亡等で後見活動が停滞したり終了することがありません。不測の事態でも法人内の別の担当者に替わって対応してもらえます。さらに、様々な専門知識・技能を持つ人々が得意分野を活かしつつ連携して対応してくれることが法人のメリットです。

 

ただし、本人にしてみれば、担当者が変わる可能性があるという点では不安があるかもしれません。その法人が信頼できる組織か、誰が責任を持つのかなどあらかじめ確認しておくことが必要です。

 

 

  • 授与する代理権の内容を決める

自分に代わってやってもらいたいことは何があるか、どのようなことをやってもらうのかその内容を決めます。

 

任意後見人に与える代理権の内容、すなわち任意後見人が代理することができる事務の内容を決めます。任意後見人(受任者)にどこまでの仕事をしてもらうかは、引き受けてくれる人との話し合いによって自由に決めることができます。

 

本人が任意後見人に委任できる事項は、代理権付与の対象となる財産管理に関する法律行為と、身上監護に関する法律行為などです。

 

以前のコラムでも書きましたが、本人の身の回りのお世話や介護などを直接行うことは後見人の職務ではありません。

 

将来介護をしてほしい人(介護サービス事業者等含む)がいれば、任意後見人が本人の代理人としてその人または介護サービス事業者等と契約することになります。

 

代理権の範囲は、将来を予測して定めなければなりません。そのために、広く包括的に定めた方が、委任漏れがなく、不測の事態にも対応しやすくなるため安心です。

 

しかし一方で、あまりに包括的な代理権の定め方をすると、本人からすると「そこまで依頼するつもりじゃなかった。」「そんなことまで頼んだわけではない。」など不満になる可能性もあります。

 

代理権の範囲は、狭すぎると不自由で、本人の望む生活を実現することが難しくなる可能性がありますし、広すぎても不安が残ります。

 

大切なのは、本人が任意後見契約を締結する際に今後の自分自身の生活設計を明確にすることです。自分の望むことは何であり、こんな場合はこうしてほしいとか、これはしてほしくないなどを明らかにしておくことで任意後見人もその意思に沿って適切な事務を行うことができます。

 

そのために、自分の希望を具体的に明確にするための「ライフプラン」や「安心ノート」と呼ばれるものを使って書面に残し、任意後見人に渡しておくことも有効です。

 

 

弊所では、納得して任意後見契約が締結できるよう、手続きから契約内容のアドバイスまでトータルでサポートさせて頂きます。

ぜひ、お気軽にご相談ください。

 

次回も任意後見契約の手続きに関するコラムをお届けします。

 

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