介護保険最新情報の気になるポイント

こんにちは。行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川です。


少しずつ気温が下がってきて、そろそろ冬支度を始めようと思う今日この頃です。
日中は過ごしやすい気候で、お出かけにはとても良い季節ですね。
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

さて、今回のコラムでは、気になる情報がありましたのでご紹介したいと思います。

10月4日に、厚生労働省から介護保険最新情報 Vol.1174 が出されました。
こちらの内容は、多くの介護事業者に関係があり、対応が必要なものです。

令和3年度の介護報酬改定の時に義務化された事項について、準備期間として経過措置が取られていたものがいくつかあります。それが、今年度末で終了し、来年度から完全義務化となります。

義務化される事項について、以下に厚生労働省ホームページから引用します。

1.感染症対策の強化
委員会の開催、指針の整備、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施などを義務化。

2.業務継続に向けた取り組み
業務継続計画の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション) の実施などを義務化。

3.認知症介護基礎研修の義務化
無資格の介護職員に認知症介護基礎研修を受講させるために必要な措置を講じること。

4.高齢者虐待の防止
委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めること。

5.口腔衛生管理の強化
口腔衛生の管理体制を整備し、入所者ごとの状態に応じた口腔衛生の管理を行うこと。

6.栄養ケア・マネジメントの充実
入所者の状態に応じた栄養管理を計画的に行うことを運営基準に規定。

7.事業所医師が診療しない場合の減算
事業所外の医師に求められる「適切な研修の修了等」について、適用猶予措置期間を延長。

引用:介護保険最新情報 Vol.1174
「令和5年度末で経過措置を終了する介護報酬の改定事項について」

上記1~4は介護保険の全サービスが対象です。5及び6は施設系サービス、7は訪問リハビリが対象になっています。

特に、2の「業務継続に向けた取り組み」については、業務継続計画(BCP)の作成が必要となっており、最近 BCP という言葉がよく聞かれるようになりました。

しかし、聞き慣れないBCPという言葉に対し、現場職員さんの中では何の話?という声も聞かれます。

簡単に言うと、感染症や自然災害が発生した場合であっても、介護サービスが安定的・継続的に提供できるように、介護施設・事業所で計画的に備えておくということです。


これを業務継続計画(BCP)作成として、事業者に義務化されました。

近年のコロナウイルスの流行や自然災害の増加で、BCPの必要性が言われるようになったのでしょう。

万が一の時でも必要なサービスを維持できるよう、事業者は可能な範囲で備える努力をしていかなければなりません。

なぜなら、介護サービスは多くの人が利用する欠かせな
い社会インフラになっているからです。

サービスが止まれば、利用者の体力低下や認知症の進行にもつながります。また、家族にも重い負担がのしかかり、仕事に行けないことも起こるでしょう。介護離職となれば、生活に大きな影響が及びます。

このような状況が想定されるからには、介護事業者には有事への備えをしておく大きな責任が課せられているということになります。

厚生労働省のホームページには、BCPのガイドラインや、動画付きの研修資料が準備されています。ひな形もありますので、ぜひご確認いただき、作成を始めてみてはいかがでしょうか。

BCP以外にも、来年度(令和6年4月1日)から義務化される事項をご確認いただき、早目に準備をすすめていただければと思います。

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相続登記の義務化

こんにちは。奈良で活動している行政書士 武村直治です。                  今回は2024年4月1日より開始される【相続登記の義務化】についてお伝え致します。

実は私はラジオ番組もやっていてその中でもお話ししているテーマなんですが、よく考えると私の番組は多分誰も聞いてない気がするのでブログでもお伝えしてみようかなと思います。

今までは土地等の相続登記を行わなくても罰則はありませんでした。手間や費用もかかるため放置する方も多いとのことでした。                          しかしそのために所有者が特定できず、土地の活用について手続等が進まないことが国レベルでの大きな問題となっていました。                           平成28年データでは九州全体の面積(367万㏊)を超える410万㏊が所有者不明土地となっています。ちなみにこのまま放置すれば約20年後には北海道1つ分くらいの土地が所有者不明となるようです。、、、なんかすごいですね。                      ちなみに私も業務において所有者不明でコンタクトが取れず困った経験が何度かあります。   この場合は郵送で文書案内を送ったりするのですが、登記情報があまりに古いと住所も近隣なのに聞いたことがなかったり、時代劇でしか聞かないような名前が記載されていたりするため「返却されるだろうな」と思いながら郵送しますが、やっぱり尋ね当たらず返却されて困ります。

この対策として相続登記が義務化されましたが、どんな内容なのでしょうか?

1.法律の施行は上記のとおり2024年4月1日から。

2.遺産分割が成立した日から3年以内に完了させる。

3.完了しない場合、10万円以下の過料が科される。                   令和8年からは氏名や住所などの変更も義務化。こちらは2年以内で罰則は5万円。

4.2024年4月1日以前のものも対象となる。(3年の猶予あり)

このように罰則付きの法改正となります。期日も迫っていますので早めの対応をお勧め致します。                                          

遺言執行者④

こんにちは、相続関連の手続きを中心に活動しております行政書士の奥本です。

今回は、遺言執行者についての最終回となります。
遺言執行者の指定は、遺言書の記載事項の中でも比較的重要な項目と言えます。

遺言執行者の指定は、必ず遺言でしなければなりません。
遺言執行者とは文字通り『遺言の内容を執行する者』ですが、以前も書いた通り未成年者と破産者はなることができません。令和4年4月1日より成人となる年齢が18歳に引き下げられましたので、18歳以上で破産者でなければ誰でも遺言執行者になることができるということになります。

ですが遺言の執行には、法律的な専門知識が必要とされるケースも多々あるため、弁護士・司法書士・行政書士等の専門家を遺言執行者に指定する場合も見受けられます。

しかしながら、たとえ専門家を遺言執行者に指定してあったとしても、自分よりも先にその者が亡くなった場合には、その指定自体が無効となってしまう点に注意が必要です。
このような事態に対応するためには遺言書に『指定した遺言執行者(例:弁護士)が死亡している時には、新たな遺言執行者の指定を○○弁護士会の会長に委託し、同会長の指定した弁護士を新たな遺言執行者とする』という文言を記載しておくことで、必ず弁護士が遺言執行者に就任してくれることになります。

このコラムをお読みの方で、もしも「すでに自筆証書遺言を作成したが、遺言執行者を指定していない・・・」と思ってらっしゃる方がおられたら、どうぞご心配なく。

後から遺言執行者に関する遺言のみを行うこともできます。
また、「遺言執行者になってくれそうな人に心当たりがない・・・」という場合には、『遺言執行者への就任』ではなく『遺言執行者の指定だけを委託する』という方法もあります。

では、自筆証書遺言を一旦作成した後に、遺言執行者の指定を友人に委託したいと思った場合の文例を挙げてみましょう。

                 遺言書

   遺言者 〇山〇夫は、令和〇年〇月〇日付けで作成した自筆証書遺言の
  遺言執行者の指定を、次の者に委託します。

   〇県〇市〇町〇丁目〇番
    会社員 ×野×朗
    昭和〇年〇月〇日生

     令和○年〇月〇日
      遺言者 ○山○夫 ㊞

この場合、遺言執行者の指定やその委託が、どの遺言書に関するものであるかを特定するために、遺言書を作成した日付等を明示することが必要ですのでご注意ください。

また、誰でも遺言執行者になれる、とは言うものの、遺言執行者に指定された者が就任するかどうか(指定の委託を受けた者が受託をするかどうか)は、本人の自由意志によるとされており、就任や受託を強制することはできません。

そのため、遺言執行者の就任や指定の受託についてお願いしたい方には事前に相談しておき、内諾を得ておくといったことも大切です。

遺言執行者は複数名指定することもできますので、それぞれに職務を振り分けることも可能です。

例えば法律的な知識が必要な部分は専門家に、それ以外を長男に任せるといったようなケースが考えられます。簡単な例文を挙げます。

 遺言者は、遺言執行者△川△男、及び□田□人の職務の執行方法を次の通り定める。
1.△川△男は、推定相続人廃除請求に関する一切の権限。
2.□田□人は、その余の一切の執行行為。

最後に、遺言執行者の報酬について。
遺言執行者への報酬についての定めは必ず遺言でなされなければなりません。
報酬の金額に関しては、『報酬の金額を○○円と定める』としたり、『遺言執行対象財産の○%とする』といった形で具体的に記載します。

報酬について、遺言に定めがなかった場合には家庭裁判所の審判によることになります。なお、報酬の支払いは、原則として受任事務が終了した後となります。(民法1018条)

ちなみに、専門家に遺言執行者を依頼、または銀行の遺言信託を利用した場合などの報酬の相場は、概ね30万円ぐらいが目安となっているようです。(執行した財産により変動します)

いかがでしたでしょうか?
自筆証書遺言をご自分で作成される場合には、ぜひ遺言執行者についても配慮していただくようにお願いをいたします。

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行政書士奥本雅史事務所
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介護現場の事務負担軽減に向けて

こんにちは。

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川です。

毎日暑い日が続きますが、いかがお過ごしですか?

もうすぐ甲子園で高校野球の全国大会が始まります。

毎年この時期は夏本番を感じながら、テレビ観戦を楽しんでいます。

   

     

さて、近年では、業務のデジタル化およびテレワーク普及の推進から、行政手続きにおいて押印(印鑑)廃止の動きが進んでいます。

      

また、紙で運用されていた文書・資料を電子化して、業務効率改善やコスト削減を図るペーパーレス化も進んでおり、この流れは今後ますます加速していくことが予想されます。

   

介護現場においても例外ではなく、厚生労働省は、介護施設・事業所と自治体との書類のやり取りを効率化する「電子申請・届出システム」の活用を、全ての事業者に原則として求めていく方針です。

   

「電子申請・届出システム」は、ペーパーワークを少なくして介護現場の事務負担を軽減する施策の一環として、国が主導して進めています。このシステムは、これまで活用されてきた「介護サービス情報公表システム」を改修して構築されました。

   

介護施設・事業所の指定申請、変更届出、更新申請、報酬請求などの手続きに必要な書類の提出を、PCからできるようにする仕組みです。

   

現在、介護報酬の請求は、ほとんどの事業所で電送されていると思いますが、その他の申請は、今でも面倒な紙の提出や郵送、FAXでのやりとりがほとんどです。

    

しかしながら、現状ではほとんどの自治体がまだ調整や準備の段階のようです。厚生労働省は段階的に普及を進める計画で、全国の自治体には、2026年3月までに必要な準備を完了させるよう指導しています。

   

この取り組みに先立って、令和3年度4月から施行された介護報酬改定では、業務負担の軽減を目的として「書面で説明、同意等を行うものについて、電磁的記録による対応を原則認めること」とされました。

   

つまり、紙媒体ではなく電子データでの契約等を認め、今まで必要とされてきた署名や捺印は原則不要となりました。

   

介護事業所は利用者にサービスを提供する際に、契約書やケアプランなど様々な文書に署名・捺印が必要です。そのため、署名と捺印をいただくには、紙媒体である書類を作成しなければなりませんでした。

   

そして、その書類をもって利用者と家族への説明を行い、同意を得て署名捺印をし、控えの交付や事業所での原本の保管、などなど・・・

必要とされる書類を作成する業務は大きな負担になっていましたので、この電子化の流れは大いに歓迎すべきですね。

   

電子データ、電子サインの活用といった新たな対応について、介護事業所としても新しいシステムやソフトを導入するなど準備が必要ではありますが、電子化が進むことで、介護事業所の負担軽減につながることを期待したいと思います。

   

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2024年問題

こんにちは。奈良県で活動している行政書士武村です。

なんだかビッグモーターがすごいことになってますね。連日ネットニュースで記事を見ます。去年私の身内がここで車を買ったので注目してるんですが、常識で考えると頭がおかしいんじゃないかと思うほどの不正の数々、、、従業員の方も立場上生活がかかっていると目を瞑らなくてはいけないこともあると思うんですが、当たり前のように不正をしているような空気も感じました。このあたり色々と考えさせられますがそれよりも身内の車は大丈夫なんでしょうか。

さて、前回からかなり期間が空いてしまいましたが、今回は「2024年問題」について触れてみたいと思います。

2024年問題とは、すでに開始されている時間外労働の上限規制(罰則あり)が人材の不足している特定の業界(建設業、物流・運送業など)においても2024年4月から適用されることにより、さらなる人材不足やサービス利用者の料金値上げ、また倒産などが加速すると予測される問題です。これについては大手企業などはすでに対策を行っており、積水ハウスなどは大工の数を3倍以上に増やす、また大和ハウスなどはIT技術を活用した業務の効率化により人材不足に対応しようとするなど、様々な方法を試みているようです。

しかし経営体力に乏しい中小・零細企業については資金面や技術面の問題から2024年問題に対応することは容易ではなく、倒産が増大する事態は避けられないと予測されています。

もちろん労働時間の上限を規制することはライフワークバランスの改善や男性の家庭参加など改善すべきといわれている問題について一定の効果を上げる可能性があり良いことだと思っているのですが、一方でさらに諸々の価格が高騰し、かつ企業の倒産が増えるような事態が予測されていることは正直怖さも感じます。

世の中は増税の機運も高まっているように感じますし、自営業者である私は最近ずっと閉塞感を感じています。もう少し好転しないかな。

遺言執行者③

こんにちは、相続手続きと遺言書の作成を専門にしております行政書士の奥本です。


それでは今回も引き続き、遺言執行者について詳しく見ていきましょう。


『法定遺言事項』(遺言書に記載されることにより法的な効果が発生する事項)には、遺言執行者によってのみ執行される事項と、遺言執行者がいる時は遺言執行者が、いない時には遺言執行者に代わって相続人により執行される任意的な事項があります。


遺言執行者によってのみ執行される法定遺言事項は、

①遺言による子の認知
②推定相続人の廃除、又は廃除の取消し
③一般財団法人設立のための定款作成、及び、財産の拠出(一般財団法人設立のために最低 300 万円の財産の拠出が必要)の履行

です。


①は、婚姻関係にない者との間に生まれた子を遺言により認知する場合ですが、この場合、 遺言執行者は就職(就任)した日から 10 日以内に認知の届出をしなければなりまん。

また、認知する子供が成人している場合は本人の承諾が必要で、胎児の場合は母親の承諾が必要な点も注意が必要です。


②の推定相続人の廃除とは、被相続人(遺言者)に対して虐待や重大な侮辱を与えた場合や、推定相続人に著しい非行があった場合などに家庭裁判所に申し立てて相続人から廃除することです。
逆に被相続人の生前にすでに廃除されていた場合、遺言で廃除を取り消すこともできます。


③は、被相続人が自分の財産を使って一般財団法人(財産の管理者が財産を運用し助成活動などを行う法人)を設立する場合です。
法人の設立のためには定款(法人の根本的なルールを定めた物)の作成が必要で、設立者による財産の拠出も必要となるため、これらの行為を遺言執行者が代わって行います。

一方、遺言執行者がいる時は遺言執行者が、いない時は相続人によって執行される任意的な法定遺言事項は、


①法定相続分を超える相続分の指定、特定の遺産を特定の相続人に相続させる遺言
②遺贈、及び、信託の設定
③祭祀主宰者(仏壇やお墓などの祭祀財産を引き継ぎ法要などを執り行う)の指定
④生命保険の受取人の指定・変更


です。

①は、相続した財産のうち法定相続分を超える部分については登記・登録その他の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することはできないと民法で定められているからです。

特定の遺産を特定の相続人に相続させる場合(例えば自宅などの不動産や自動車)も登記・ 登録などの執行行為が遺言の実現のために不可欠であるため、遺言執行者または相続人がそれらの行為を執行する必要があります。


②遺言書に遺贈(被相続人の死亡後に財産を譲ること)する旨が記載されていた場合は、 遺言執行者または相続人が遺贈義務者となります。(遺言執行者がいる場合は、遺言執行者のみが遺贈の履行を行うことができる)

信託(例:信託銀行等に財産を託し、残される妻に毎月 20 万円ずつ給付する)の設定に関しては、遺言書で遺言執行者が指定されている場合は遺言執行者が、指定されていなければ相続人がそれを実現するための行為を執行することになります。


③は、祭祀主宰者を定める方法として、
・被相続人の指定により
・慣習に従って
・(慣習が明らかでない場合は)家庭裁判所が定めると民法第 897 条にあるため、祭祀主宰者が決まらない場合は家庭裁判所に遺言執行者もしくは相続人が申し出る必要があるからです。


④は、生命保険会社に対する手続きを、遺言執行者もしくは相続人がしなければならないということです。


なお、遺言執行者がいる場合には、相続人は相続財産の処分、その他遺言の執行を妨げる行為をする事はできません。
これに違反して行った相続人の行為は無効となります。


さて、遺言執行者の選任手続きについては民法第 1010 条で以下のように定められていま す。

“遺言執行者がいない時、又はなくなった時は、家庭裁判所は利害関係人の請求によって、これを選任することができる。“

遺言執行者が【いない時】というのは、


①遺言者が遺言執行者を指定しなかった時
②遺言執行者の指定の委託を受けた者が委託を辞退した時
③指定された遺言執行者が欠格者である時
④指定された遺言執行者が就職を承諾しない時


です。


また【なくなった時】というのは、死亡、失踪、解任、辞任、資格喪失などの事由が遺言執行者に生じた時です。

このような場合に利害関係人(相続人や受遺者など)は、家庭裁判所に遺言執行者の選任の申し立てを行います。
(※行政書士は裁判所に提出する書類を作成する事はできませんので、ここでは簡単に説明するに留めます。)


管轄は、相続開始地(遺言者の最後の住所地)にある家庭裁判所です。
必要な書類は、申立書、遺言執行者の候補者の住民票、遺言者の戸籍(除籍)謄本、遺言書の写し等です。


ちなみに、遺言執行者によってのみ執行される法定遺言事項が遺言書に記載されているにも関わらず、遺言執行者がいない又はなくなった場合には、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらわなければならないということになります。


次回に続きます。

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行政書士奥本雅史事務所

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身寄りのない方の老後の備えについて

こんにちは。
行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川です。

全国的に最強寒波の影響が出ていますが、みなさま無事でお過ごしでしょうか。
私の周りでは、大きな混乱はなく、何とか無事に過ごしています。

やはり、最強寒波と言われるだけあって寒いですね。

体調管理や移動中の事故などには十分お気を付けください。

また、コロナウィルスもまだまだ油断なりません。
寒さ対策に加えて感染対策も引き続き頑張っていきましょう。

さて、昨年末に厚生労働省が 2022 年度の介護支援専門員(ケアマネジャー)試験の結果を
公表しました。

今年度は 54,406 人が受験し、10,328 人が合格。
合格率は 19.0%で、前回より 4.3 ポイント低かったようです。

受験者数は前回より 116 人増えて、3 年連続で増加しています。
一方で、合格者数は前回と比べてマイナス 2334 人で、4 年ぶりに減少しました。

合格率は、毎年上下していますが、10%台~20%前半で推移しています。
試験難易度は、私が受験した 15 年ほど前に比べるとかなり難しくなっています。

日本の超高齢社会において、介護保険サービスの中核を担うケアマネジャー(以下、ケアマ
ネ)は、本当に貴重な存在です。

高齢者の生活課題を解決していく場面では、行政書士との
連携も増えていくのではないかと思います。

実際に、ケアマネさんからの相談で、身寄りのない方のご相談が増えています。

例えば、成年後見制度、相続、死後事務などは、
備えとして準備したい方や、すでに必要な状況の方もおられます。

そこで、今回は「死後事務」について、お伝えしたいと思います。

人が亡くなると、役所への届け出や葬儀などの手続きが必要になります。
親族がいない方は、亡くなった後の手続きを誰かに依頼することになります。この手段とし
て「死後事務委任契約」があります。

死後に必要となる手続きなどは以下の通りです。

 死亡届の提出 

 火葬・埋葬許可証の受け取り


 年金の停止手続き


 健康保険証など役所への返納手続き


 水道光熱費などの支払い・停止の手続き


 家賃・介護施設・入院医療費などの支払い


 賃貸住宅・介護施設の退去手続き など

【葬儀支援として】
 葬儀社との打ち合わせ
 火葬・埋葬許可証の提出
 寺社手配
 喪主代行
 火葬立ち合い、拾骨 など

このように、死後に様々な手続きがあります。
親族がいない場合は、誰に頼むのか決めておくために死後事務委任契約があります。

以前のコラムで、任意後見契約のご説明をしましたが、任意後見人は、ご本人が亡くなった
時点で任意後見契約が終了します。

ですから、任意後見契約と同時に死後事務委任契約も結んでおくと安心です。

また、任意後見契約や死後事務委任契約は、信頼できる人にお願いすることになると思いま
すので、もし遺言を残すなら、遺言執行者も同一の人にお願いすることで、確実に自分の意
思を実現してもらえます。

近年では、死後の SNS のアカウント削除などもクローズアップされたり、葬儀や埋葬の在
り方、考え方も多様になっています。

今後は、時代に合わせて死後事務の内容も多様化して
いくのではないでしょうか。

自分らしく生きることと同時に、自分らしい最期を考えて準備される方も増えています。

ケアマネさんが支援されている、親族がいないご利用者のお悩みにも、行政書士がお手伝い
できることがあると思います。

気軽にお近くの行政書士へご相談ください。

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遺言執行者②

こんにちは、相続手続きと遺言書の作成支援を専門にしております行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

遺言執行者についての具体的な内容に入る前に、平成30年に約40年ぶりの大改正が行われた民法の遺言執行者に係る部分が、旧法と比べてどのように変わったか軽くさらっておきましょう。

『遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。』(第1007条2項)

遺言執行者がいる場合、相続人は遺贈(被相続人が亡くなった後、財産を第三者等に譲ること)を履行する義務を負いません。ということは、相続人が全く知らないうちに財産が遺贈されてしまうケースも考えられます。

このような事態を防ぐために、相続人への通知を義務化する規定が新たに設けられました。

『遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。』(第1012条1項)

太字の部分が追記されました。これは遺言執行者が、あくまでも遺言者の意思(遺言の内容)を実現することが責務であることを明示しており、それらの行為が必ずしも相続人の利益のために行われるものではないということが明らかにされました。

『遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。』(第1015条)

旧法の第1015条では単に『遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。』となっていました。この改正条文では、たとえ遺言者の意思と相続人の利益が対立する場合などにおいても、遺言執行者は遺言者の意思を実現するために行動すれば足りるということが示されています。

『遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。』(第1012条2項)


この条文が新設されたのは、受遺者(遺贈を受ける相手)による履行請求の相手方を明確にするためです。遺言執行者がいる場合には遺言執行者に、遺言執行者がいない場合は相続人を相手方として遺贈の履行を請求するという旨が明文化されました。

『遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を負わせることができる。(以下省略)』(第1016条1項)


旧法では『遺言執行者は、やむを得ない事由が無ければ、第三者にその任務を負わせることができない。』とされ、復代理人の選任(代理人である遺言執行者が、さらに代理人を選ぶこと)が制限されていました。

しかし実際には相続人が遺言執行者に指定されるケースも多く、専門的な法律知識が必要な事案などに対処することが難しいという場合もありました。そこで弁護士等の専門家に一任することができるよう条項の見直しが図られました。

このように、民法改正で遺言執行者に関する法律も様々な変更が加えられています。次回からはもちろん新法に基づいて解説をしていきますが、これら改正の背景を知っておいていただくと、より興味を持っていただけるのではないかと思います。

ではまた次回。

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遺言執行者①

こんにちは、相続手続きと遺言書の作成支援を専門にしております行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

遺言書を作成する本人(遺言者)が全文を自筆する自筆証書遺言書の保管制度については、これまでのシリーズで詳しく述べてきました。(コラム『自筆証書遺言書の保管』はこちらから)

今回からは、実際に自筆証書遺言書を自分で作成する場合の注意点についてお話しをしていきたいと思います。

一般にあまり馴染みがなく、何のために必要なのかが理解しにくいと思われるのが『遺言執行者』です。

遺言執行者というのは「遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する(民法第1012条第1項)」者で、読んで字のごとく遺言を執行する者ということです。

ご自分で遺言書を作成される場合には、本文中で遺言執行者を指定するようにしていただく事をお勧めします。

これは、相続人間の意見の不一致や、一部の相続人の非協力などにより遺言の公正な執行に支障が出るような場合にも、遺言執行者に遺言の執行を委ねることにより適正かつ迅速な執行が期待できるからです。

遺言執行者になれるのは、未成年者と破産した者以外の者です。

また、遺言執行者は複数人指定することもできますし、行政書士法人などの法人を指定することも可能です。

一般的には相続人の誰かを指定するというケースが最も多いようです。

ですが相続人を指定した場合は、遺言執行者であると同時に財産を相続する当事者でもあるため、他の相続人との間において利害の対立が生じる可能性も否めません。

このようなケースが予見される場合には、法律の専門家など第三者を遺言執行者に指定し、争いを未然に防ぐよう努めることが望ましいと言えます。

「遺言執行者さえ指定しておけば・・・」という一例を挙げておきます。

A子さんはご主人が亡くなられましたが、ご主人は生前にご自分で書かれた遺言書を残しておられました。A子さん夫妻には子どもがおらず、相続人はA子さんとご主人の3人のご兄弟、合計4人です。

遺言書には『妻に自宅を譲渡する』と書かれており、遺言執行者に関する記述はありませんでした。

この場合の問題点は、

①「相続させる」ではなく「譲渡する」と書かれていた点

② 遺言執行者の指定が無かった点

の2つです。

まず①ですが、遺言書は強力な法的拘束力を持つ文書であるため文言の取扱いにも非常に厳しく「相続させる」となっていれば特定財産承継遺言(特定の財産を特定の相続人に相続させる遺言)としてA子さんが単独で自宅の名義変更を行うことができるのですが、「譲渡する」と書かれていたことで遺贈(被相続人の死後に財産を無償で譲ること)とみなされ、相続人全員が登記義務者になるため共同申請をすることが必要になってしまいました。

ご主人のご兄弟もすでに高齢だったこともあって、実印の押印を渋る方がいたり、戸籍謄本や印鑑登録証明書の取得などに多大な時間を費やしました。

しかしたとえ「譲渡する」となっていても、②遺言執行者が指定されてさえいれば遺言執行者が登記義務者となり、受遺者(遺贈を受ける者、この場合A子さん)を登記権利者として2人で登記申請を完了させることができたのです。

このように、せっかく遺言書を準備していても、ほんの些細なミスによって狙い通りの効果を発揮することが出来ず、悔しい思いをすることがあります。

もちろん独学で作成された遺言書が全く無駄になるという訳では無いのですが、どうせなら専門家からアドバイスを受けてしっかりした内容の遺言書を作成する方が、結果大きな安心に繋がると思います。

遺言書を作成しようと思い立ったら、まずは気軽にご相談ください。

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これまでの5年間を振り返って~吉川編~

こんにちは。
行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

 

毎日暑い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。

 

今回のコラムは、これまでの5年間を振り返ってというテーマでお送りいたします。

 

 

まずは、このリレーコラムについて。

 

平成 29 年 6 月、奈良県行政書士会の新規登録研修で声をかけていただき、現メンバーの先生方とご一緒させていただくことになりました。

今思えば、本当にありがたいご縁だと感じます。開業当初は、右も左もわからない状況で不安ばかりが大きくなっていましたが、同期の先生方とつながれたことが嬉しくて、不安も和らいだことを覚えています。

 

コラムを執筆するのは初めてでしたので、どんな内容にするか毎回1週間以上悩みながら文章を考えていました。

当初は、内容をわかりやすくお伝えするために、試行錯誤の連続で苦労もありました。


でも、業務をより深く勉強する機会になり、おかげでずいぶん成長できたかなと思っています。

 

そして、本コラムのメンバー同士で意見交換する中で、嬉しいコメントや励ましの言葉をかけてもらえたことが、これまで続けることができた一番の原動力だったと思います。


コラムメンバーの先生方には感謝の気持ちでいっぱいです。

 

今後も、読んで下さる方の役に立つ情報をお届けできるように頑張りたいと思います。

 

 

行政書士としての5年間について。

 

当初から、福祉分野での業務をメインに考えていましたが、他の分野のお仕事もたくさん経験させていただきました。

様々なご相談を受けるたびに自分の知識不足を痛感し、常に勉強をし続けることが必要だと考え努力してきました。

 

同時に、福祉分野以外の業務を経験したことで、どんな仕事にも柔軟に対応できるようになり、視野が広がりました。

大変なこともありましたが、無駄なことは一つもなかったと思います。

 

また、仕事を通して色んな人との出会いがありました。
同業の先生に助けていただくことも多く、一人では対応できない案件も何とか完了させることができました。
いただいた案件を丁寧に取り組むことで、次の仕事につながったり、新しいお客様を紹介していただくこともありました。

 

人とのご縁を大切にすること、これは当たり前のことですが、お仕事をさせていただくうえで最も大事だと思いました。

そして、体調管理の大切さも学びました。
開業するまでは、大きな病気やケガをしたことがなく、健康に不安はなかったのですが、ある時期に体調を崩してしまい、多くの方にご迷惑をおかけしてしまいました。

これも当たり前ですが、健康でないといい仕事はできません。実際に体験して思いを新たにいたしました。

 

 

これまでの 5 年間は、貴重な経験ばかりでした。
この経験を土台として、今後の業務に精一杯取り組んでいきたいと思います。

 

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