相続登記の義務化

こんにちは。奈良で活動している行政書士 武村直治です。                  今回は2024年4月1日より開始される【相続登記の義務化】についてお伝え致します。

実は私はラジオ番組もやっていてその中でもお話ししているテーマなんですが、よく考えると私の番組は多分誰も聞いてない気がするのでブログでもお伝えしてみようかなと思います。

今までは土地等の相続登記を行わなくても罰則はありませんでした。手間や費用もかかるため放置する方も多いとのことでした。                          しかしそのために所有者が特定できず、土地の活用について手続等が進まないことが国レベルでの大きな問題となっていました。                           平成28年データでは九州全体の面積(367万㏊)を超える410万㏊が所有者不明土地となっています。ちなみにこのまま放置すれば約20年後には北海道1つ分くらいの土地が所有者不明となるようです。、、、なんかすごいですね。                      ちなみに私も業務において所有者不明でコンタクトが取れず困った経験が何度かあります。   この場合は郵送で文書案内を送ったりするのですが、登記情報があまりに古いと住所も近隣なのに聞いたことがなかったり、時代劇でしか聞かないような名前が記載されていたりするため「返却されるだろうな」と思いながら郵送しますが、やっぱり尋ね当たらず返却されて困ります。

この対策として相続登記が義務化されましたが、どんな内容なのでしょうか?

1.法律の施行は上記のとおり2024年4月1日から。

2.遺産分割が成立した日から3年以内に完了させる。

3.完了しない場合、10万円以下の過料が科される。                   令和8年からは氏名や住所などの変更も義務化。こちらは2年以内で罰則は5万円。

4.2024年4月1日以前のものも対象となる。(3年の猶予あり)

このように罰則付きの法改正となります。期日も迫っていますので早めの対応をお勧め致します。                                          

遺言執行者③

こんにちは、相続手続きと遺言書の作成を専門にしております行政書士の奥本です。


それでは今回も引き続き、遺言執行者について詳しく見ていきましょう。


『法定遺言事項』(遺言書に記載されることにより法的な効果が発生する事項)には、遺言執行者によってのみ執行される事項と、遺言執行者がいる時は遺言執行者が、いない時には遺言執行者に代わって相続人により執行される任意的な事項があります。


遺言執行者によってのみ執行される法定遺言事項は、

①遺言による子の認知
②推定相続人の廃除、又は廃除の取消し
③一般財団法人設立のための定款作成、及び、財産の拠出(一般財団法人設立のために最低 300 万円の財産の拠出が必要)の履行

です。


①は、婚姻関係にない者との間に生まれた子を遺言により認知する場合ですが、この場合、 遺言執行者は就職(就任)した日から 10 日以内に認知の届出をしなければなりまん。

また、認知する子供が成人している場合は本人の承諾が必要で、胎児の場合は母親の承諾が必要な点も注意が必要です。


②の推定相続人の廃除とは、被相続人(遺言者)に対して虐待や重大な侮辱を与えた場合や、推定相続人に著しい非行があった場合などに家庭裁判所に申し立てて相続人から廃除することです。
逆に被相続人の生前にすでに廃除されていた場合、遺言で廃除を取り消すこともできます。


③は、被相続人が自分の財産を使って一般財団法人(財産の管理者が財産を運用し助成活動などを行う法人)を設立する場合です。
法人の設立のためには定款(法人の根本的なルールを定めた物)の作成が必要で、設立者による財産の拠出も必要となるため、これらの行為を遺言執行者が代わって行います。

一方、遺言執行者がいる時は遺言執行者が、いない時は相続人によって執行される任意的な法定遺言事項は、


①法定相続分を超える相続分の指定、特定の遺産を特定の相続人に相続させる遺言
②遺贈、及び、信託の設定
③祭祀主宰者(仏壇やお墓などの祭祀財産を引き継ぎ法要などを執り行う)の指定
④生命保険の受取人の指定・変更


です。

①は、相続した財産のうち法定相続分を超える部分については登記・登録その他の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することはできないと民法で定められているからです。

特定の遺産を特定の相続人に相続させる場合(例えば自宅などの不動産や自動車)も登記・ 登録などの執行行為が遺言の実現のために不可欠であるため、遺言執行者または相続人がそれらの行為を執行する必要があります。


②遺言書に遺贈(被相続人の死亡後に財産を譲ること)する旨が記載されていた場合は、 遺言執行者または相続人が遺贈義務者となります。(遺言執行者がいる場合は、遺言執行者のみが遺贈の履行を行うことができる)

信託(例:信託銀行等に財産を託し、残される妻に毎月 20 万円ずつ給付する)の設定に関しては、遺言書で遺言執行者が指定されている場合は遺言執行者が、指定されていなければ相続人がそれを実現するための行為を執行することになります。


③は、祭祀主宰者を定める方法として、
・被相続人の指定により
・慣習に従って
・(慣習が明らかでない場合は)家庭裁判所が定めると民法第 897 条にあるため、祭祀主宰者が決まらない場合は家庭裁判所に遺言執行者もしくは相続人が申し出る必要があるからです。


④は、生命保険会社に対する手続きを、遺言執行者もしくは相続人がしなければならないということです。


なお、遺言執行者がいる場合には、相続人は相続財産の処分、その他遺言の執行を妨げる行為をする事はできません。
これに違反して行った相続人の行為は無効となります。


さて、遺言執行者の選任手続きについては民法第 1010 条で以下のように定められていま す。

“遺言執行者がいない時、又はなくなった時は、家庭裁判所は利害関係人の請求によって、これを選任することができる。“

遺言執行者が【いない時】というのは、


①遺言者が遺言執行者を指定しなかった時
②遺言執行者の指定の委託を受けた者が委託を辞退した時
③指定された遺言執行者が欠格者である時
④指定された遺言執行者が就職を承諾しない時


です。


また【なくなった時】というのは、死亡、失踪、解任、辞任、資格喪失などの事由が遺言執行者に生じた時です。

このような場合に利害関係人(相続人や受遺者など)は、家庭裁判所に遺言執行者の選任の申し立てを行います。
(※行政書士は裁判所に提出する書類を作成する事はできませんので、ここでは簡単に説明するに留めます。)


管轄は、相続開始地(遺言者の最後の住所地)にある家庭裁判所です。
必要な書類は、申立書、遺言執行者の候補者の住民票、遺言者の戸籍(除籍)謄本、遺言書の写し等です。


ちなみに、遺言執行者によってのみ執行される法定遺言事項が遺言書に記載されているにも関わらず、遺言執行者がいない又はなくなった場合には、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらわなければならないということになります。


次回に続きます。

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遺言執行者②

こんにちは、相続手続きと遺言書の作成支援を専門にしております行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

遺言執行者についての具体的な内容に入る前に、平成30年に約40年ぶりの大改正が行われた民法の遺言執行者に係る部分が、旧法と比べてどのように変わったか軽くさらっておきましょう。

『遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。』(第1007条2項)

遺言執行者がいる場合、相続人は遺贈(被相続人が亡くなった後、財産を第三者等に譲ること)を履行する義務を負いません。ということは、相続人が全く知らないうちに財産が遺贈されてしまうケースも考えられます。

このような事態を防ぐために、相続人への通知を義務化する規定が新たに設けられました。

『遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。』(第1012条1項)

太字の部分が追記されました。これは遺言執行者が、あくまでも遺言者の意思(遺言の内容)を実現することが責務であることを明示しており、それらの行為が必ずしも相続人の利益のために行われるものではないということが明らかにされました。

『遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。』(第1015条)

旧法の第1015条では単に『遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。』となっていました。この改正条文では、たとえ遺言者の意思と相続人の利益が対立する場合などにおいても、遺言執行者は遺言者の意思を実現するために行動すれば足りるということが示されています。

『遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。』(第1012条2項)


この条文が新設されたのは、受遺者(遺贈を受ける相手)による履行請求の相手方を明確にするためです。遺言執行者がいる場合には遺言執行者に、遺言執行者がいない場合は相続人を相手方として遺贈の履行を請求するという旨が明文化されました。

『遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を負わせることができる。(以下省略)』(第1016条1項)


旧法では『遺言執行者は、やむを得ない事由が無ければ、第三者にその任務を負わせることができない。』とされ、復代理人の選任(代理人である遺言執行者が、さらに代理人を選ぶこと)が制限されていました。

しかし実際には相続人が遺言執行者に指定されるケースも多く、専門的な法律知識が必要な事案などに対処することが難しいという場合もありました。そこで弁護士等の専門家に一任することができるよう条項の見直しが図られました。

このように、民法改正で遺言執行者に関する法律も様々な変更が加えられています。次回からはもちろん新法に基づいて解説をしていきますが、これら改正の背景を知っておいていただくと、より興味を持っていただけるのではないかと思います。

ではまた次回。

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遺言執行者①

こんにちは、相続手続きと遺言書の作成支援を専門にしております行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

遺言書を作成する本人(遺言者)が全文を自筆する自筆証書遺言書の保管制度については、これまでのシリーズで詳しく述べてきました。(コラム『自筆証書遺言書の保管』はこちらから)

今回からは、実際に自筆証書遺言書を自分で作成する場合の注意点についてお話しをしていきたいと思います。

一般にあまり馴染みがなく、何のために必要なのかが理解しにくいと思われるのが『遺言執行者』です。

遺言執行者というのは「遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する(民法第1012条第1項)」者で、読んで字のごとく遺言を執行する者ということです。

ご自分で遺言書を作成される場合には、本文中で遺言執行者を指定するようにしていただく事をお勧めします。

これは、相続人間の意見の不一致や、一部の相続人の非協力などにより遺言の公正な執行に支障が出るような場合にも、遺言執行者に遺言の執行を委ねることにより適正かつ迅速な執行が期待できるからです。

遺言執行者になれるのは、未成年者と破産した者以外の者です。

また、遺言執行者は複数人指定することもできますし、行政書士法人などの法人を指定することも可能です。

一般的には相続人の誰かを指定するというケースが最も多いようです。

ですが相続人を指定した場合は、遺言執行者であると同時に財産を相続する当事者でもあるため、他の相続人との間において利害の対立が生じる可能性も否めません。

このようなケースが予見される場合には、法律の専門家など第三者を遺言執行者に指定し、争いを未然に防ぐよう努めることが望ましいと言えます。

「遺言執行者さえ指定しておけば・・・」という一例を挙げておきます。

A子さんはご主人が亡くなられましたが、ご主人は生前にご自分で書かれた遺言書を残しておられました。A子さん夫妻には子どもがおらず、相続人はA子さんとご主人の3人のご兄弟、合計4人です。

遺言書には『妻に自宅を譲渡する』と書かれており、遺言執行者に関する記述はありませんでした。

この場合の問題点は、

①「相続させる」ではなく「譲渡する」と書かれていた点

② 遺言執行者の指定が無かった点

の2つです。

まず①ですが、遺言書は強力な法的拘束力を持つ文書であるため文言の取扱いにも非常に厳しく「相続させる」となっていれば特定財産承継遺言(特定の財産を特定の相続人に相続させる遺言)としてA子さんが単独で自宅の名義変更を行うことができるのですが、「譲渡する」と書かれていたことで遺贈(被相続人の死後に財産を無償で譲ること)とみなされ、相続人全員が登記義務者になるため共同申請をすることが必要になってしまいました。

ご主人のご兄弟もすでに高齢だったこともあって、実印の押印を渋る方がいたり、戸籍謄本や印鑑登録証明書の取得などに多大な時間を費やしました。

しかしたとえ「譲渡する」となっていても、②遺言執行者が指定されてさえいれば遺言執行者が登記義務者となり、受遺者(遺贈を受ける者、この場合A子さん)を登記権利者として2人で登記申請を完了させることができたのです。

このように、せっかく遺言書を準備していても、ほんの些細なミスによって狙い通りの効果を発揮することが出来ず、悔しい思いをすることがあります。

もちろん独学で作成された遺言書が全く無駄になるという訳では無いのですが、どうせなら専門家からアドバイスを受けてしっかりした内容の遺言書を作成する方が、結果大きな安心に繋がると思います。

遺言書を作成しようと思い立ったら、まずは気軽にご相談ください。

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法定相続情報証明制度①

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こんにちは、相続手続きと遺言書作成専門の行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

今回からは、『法定相続情報証明制度』についてお話ししていきます。

漢字がいっぱい並んでいて、なんのことやらさっぱり頭に入ってこないかもしれませんが、『法定相続(人)の情報を証明する制度』ということです。

相続④でもお話しした通り、相続発生後に相続人を確定するためには、まず被相続人の“出生から死亡までの戸籍謄本”を取得することが必要となります。

現状ある程度年配の方が亡くなられた場合には、戸籍謄本は一通では無く、何通かの束になります。(詳しくは相続④で)

そして相続人の間で遺産分割の話し合いがまとまり、いざ財産を相続する段となると、この戸籍謄本の束を預金払い戻しのために金融機関へ提出したり、不動産登記のために法務局へ提出したりします。

しかし戸籍謄本の束は読み解きが必要となるため、その作業に数週間かかることもあります。

手続きを行う金融機関が複数あった場合には、各機関ごとにその読み解きが行われます。
ですので、『戸籍謄本をA金融機関に提出→返却→B金融機関に提出→返却→C金融機関に提出→返却→登記のために法務局へ提出』と、このように戸籍謄本が手元に返って来なければ次の金融機関等へ手続きをすることができなかったため、手続きの完了までに多大な時間を要していました。

これらの問題点を解決し、相続手続きの煩わしさを軽減する目的で、2017年に法定相続情報証明制度がスタートしました。

この制度は、法務局へ戸籍謄本の束と、その他の必要書類、被相続人と相続人の関係を記した図『法定相続情報一覧図』を提出し、登記官がそれらを確認した後に、その図の写しを交付する、というものです。

その『法定相続情報一覧図の写し』は、金融機関等へ戸籍謄本の束の代わりとして提出し、手続きをする事ができます。
また写しは、必要な通数を交付してもらうことができるので、複数の金融機関等で同時に手続きを進めていくことができるというメリットがあります。

では次回も引き続き、この制度について詳しく見ていきたいと思います。

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民法改正と『相続』

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こんにちは、相続手続きと遺言書作成専門の行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

現在、日本にはおよそ2000種類ほどの法律があります。

その中でも、特に私達の暮らしに大きく関わっているのが『民法』という法律です。

私も行政書士を志すまでは民法の内容をほとんど知りませんでしたが、学ぶうちに、この法律が日々の生活の様々な出来事と深く関係していることを知りました。

民法は全部で1050条あり、その内容は、財産の所有権など権利に関することや、貸し借り、売買、贈与といった契約などについて定められた『財産法』という部分と、親族関係、婚姻、養子縁組、そして相続などについて定められた『家族法』の二つの部分に分かれています。

この家族法の中の「相続」について定められた部分(相続法と呼ばれています)は、2018年、約40年ぶりに大きく改正され、一部はまだ施行されていないものもあります。

私が普段使っているこの相続法の専門書は加除式で、内容が更新される度に、古いページと新しいページを入れ替えていくタイプのものです。
だいたい年に1〜2回、新しいページの束が送られてくるのですが、今回の改正時には通常の倍以上のページが届いて驚きました。あまりにページ数が増えたために、一巻だったものが二巻に分かれてしまった本もあったほどです。

このように専門家であっても追いかけるのが大変な相続のルールを、一般の方が完全に把握することは非常に困難だと思います。

それでなくとも相続の発生時に相続人となられる方は、たくさんの仕事をしなければならなくなります。

まず第一には「葬儀や法要など」があり、第二に「行政機関等への各種届出」、そして第三に「相続の手続き」があります。

しかし、相続②でも触れたように、相続には財産を『放棄』するか『承認』するかを決める熟慮期間(3ヶ月)という期限があります。

例えば、亡くなられた方(被相続人)が多額の借金を抱えた状態で亡くなってしまい、相続人全員が『相続放棄』をすることにした場合、被相続人の配偶者・子→親→兄弟姉妹と全ての相続人が『3ヶ月以内』に裁判所へ相続放棄の申述をしなければなりません。もしも放棄をしていない人がいれば、その方が単純承認をした事になり、被相続人の債務を相続しなければならなくなります。

故人を失った悲しみと様々な手続きに追われる中での3ヶ月間は、決して長いとは言えないと思います。

ですので、できるだけ早い段階で専門家にご相談されることをお勧めいたします。

この他にも、相続手続きをご自分でされてから『本当にこれで合ってるのかな?』と不安になるケースもおありではないかと思います。

当事務所では一時間4000円の相談料で、相続発生時に必要となる手続きの確認やアドバイスをさせていただいております。

ご自身やご家族、ご親族の皆様が安心してお過ごしになれるよう、ぜひお気軽に当事務所の相談制度をご利用ください。

 

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備えとしての「死後事務委任契約」

こんにちは。

介護・福祉の専門オフィス行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

 

最近「人生100年時代」という言葉をよく聞くようになりました。

政府は2017年に「人生100年時代構想会議」を設置して、国を挙げて人生100年時代を見据えた経済や社会システムの整備を進めていこうとしています。

 

私はまだ100歳になった自分を想像できていませんし、どんな老後を送るのかについても考えたことがありませんでした。

みなさんにとって、「人生100年時代」とはどんなイメージでしょうか。

 

多くの人が長生きできる長寿社会というイメージであれば、とても嬉しいことですよね。

でも、安心して長生きするためには、これまでのように60代で定年して年金で悠々自適の生活というわけにはいかないようです。

 

せっかくの長寿社会を楽しく安心して暮らすためには、ある程度“老後の備え”が必要になってきます。

 

とりわけ、お金や健康については不安に思う人が多いですね。

投資や資産運用などのお金に関するセミナーや健康教室は連日大盛況のようです。

 

また、終活に注目が集まっているのも、安心して老後を過ごせるようにしたいと考える人が増えているからではないでしょうか。

 

さて、今回のコラムですが、「死後事務委任契約」についてご紹介したいと思います。

死後事務委任契約とは、自分が死亡した後の葬儀や役所の手続きなどを生前に第三者に依頼するための契約です。

 

前回のコラムでお伝えした老後の備えである任意後見契約に加えて、死後の不安にも備える死後事務委任契約を検討される方が増えています。

 

死後の事務とは、例えば以下のようなものがあります。

・死亡届に関する事務

・葬儀、埋葬及び永代供養の手配

・病院、介護施設の精算

・健康保険や年金などの社会保険の資格喪失手続き

・遺品整理

・各種サービスの解約・清算手続き など

 

上記のことは、ご親族が対応されるケースが多いと思います。

でも、身寄りのない方やご親族に迷惑をかけたくないと考える方は、死後の煩雑な手続きを誰かに依頼しなくてはなりません。

 

もし、任意後見契約を結んでいたとしても、 任意後見人の権限は本人の死亡によりなくなります。 したがって、任意後見人に対して死後の事務処理を委任することは基本的にはできません。

(死後の事務であっても緊急を要する場合には、任意後見人は、 任意後見契約に基づく応急措置として、与えられた代理権の範囲内で当該事務を行うことは可能です。)

 

弊所では、任意後見契約のご相談を受ける場合は、死後の事務についてもご意向を伺っています。そして、ご希望があれば任意後見契約に加えて死後の事務委任契約を締結する方法があることをご説明しています。

 

死後の事務委任契約の形式は、必ずしも公正証書で作成する必要はありませんが、弊所では、安心安全な公正証書での契約締結をお勧めしています。1通の公正証書の中に任意後見契約と死後の事務委任契約を定めることもできますし、別々の公正証書でそれぞれ定めることもできます。

 

また、死後の事務委任契約と相続との関係では気を付けるポイントがあります。

たとえば、死後の事務委任契約に基づいて発生する報酬や実費がある場合、相続人は、受任者から支払いを求められることになりますので、場合によっては相続人と争いになるかもしれません。

 

また、委任者が遺言書を作成している場合には、遺言の内容と死後の事務委任契約の内容が齟齬しないように留意する必要があります。

個別の状況やご希望によって、準備する契約書や契約内容が異なりますので、専門家に相談しながら準備されることが大切ではないかと思います。

 

任意後見契約、遺言書作成、死後事務委任契約など、老後や死後に備えた制度が注目を集めています。せっかく準備されるものですから、確実に実現できるようにしたいですね。

 

上記の件についてご不明な点があれば、弊所までお気軽にご相談ください。

 

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遺言書⑰ ~遺言まとめ 後編〜

連載記事の一覧はこちら→

こんにちは、遺言書作成と相続手続きを専門にしております行政書士の奥本です。

今年の元旦は、朝から実家へ挨拶に行きました。
両親とお節料理をつついていると突然父が、『3年後、商売(家業はとんかつ屋です)を引退するかどうか判断したい』と切り出してきました。

父は現在77歳ですが、まだ現役で働いています。3年後は80歳。
もちろん引退しても誰も咎めない年齢なのですが、歳の割に若々しく元気なのは自分で店を経営しているという気持ちのハリがあるからだと思っています。
仕事をやめてしまうと急にガクッときてしまうんじゃないかという心配が頭をよぎりました。

ですがもう一方の頭では、親がこういう話をしてくれるタイミングなら、相続の事についても話しやすいな、とも考えていました。
お正月は相続のことを考える良いきっかけになるということを改めて感じました。

皆さまもこのようなタイミングを逃さないよう、ぜひ心に留めておいてください。

さて、それでは普通方式の遺言書についてまとめていきます。

普通方式の遺言書は、死が迫った時ではなく、平時にゆっくりと、『将来の備え』として準備するものです。

普通方式には、
・自筆証書遺言(詳しくは、前編後編番外編にて)
・公正証書遺言(詳しくは、前編中編後編にて)
・秘密証書遺言(詳しくは、前編後編にて)
の3つの方式があり、いずれも民法で要件が細かく定められています。この要件を欠くと、せっかくの遺言書が無効となってしまう場合もありますので、作成は慎重に進めなければなりません。

それぞれの要件など詳細については遺言書⑦~⑭までの各回を見ていただくことにして、ここでは3つの遺言書の比較をしてみたいと思います。

まずメリットを順番に挙げると、

自筆証書遺言
・自分で作成すれば費用がかからない

公正証書遺言
・公証人のチェックによる内容の担保
・原本を公証役場で保管
・検認の手続きが不要

秘密証書遺言
・遺言書の内容は秘密にしたまま遺言を残したことだけ証明してもらえる
・本文は、自筆だけでなくワープロやパソコン、タイプライター等で作成してもよく、また代筆でもよい

メリットに関しては、やはり公正証書遺言が飛び抜けて有利だと言えます。

では次にデメリットを挙げてみましょう。

自筆証書遺言
・自分で作成した場合、要件を欠いたため無効となったり、遺留分への配慮など内容面の不備のためにかえってトラブルを引き起こす恐れがある
・自分自身で保管しなくてはならない(令和2年7月10日より法務局で預かるという制度が開始されます)
・検認の手続きが必要(同制度で法務局に預かってもらった場合は、検認は不要)

公正証書遺言
・公証役場へ一緒に出向いてくれる証人が二名必要
・費用がかかる(公証役場に支払う手数料、専門家に依頼した場合の報酬等)
・遺言書の内容を証人に知られてしまう

秘密証書遺言
・自分で作成した場合、要件を欠いたために無効となったり、遺留分への配慮など内容面の不備のためにかえってトラブルを引き起こす恐れがある
・保管は自分自身でしなければならない
・公証役場へ一緒に出向いてくれる証人が二名必要
・検認の手続きが必要
・公証役場への手数料11,000円がかかる

秘密証書遺言は、他の2つに比べてデメリットが目立ちますね。代筆で作成したい場合(ただし氏名だけは自署しなければなりません)や、どうしても遺言書の内容を誰にも知られたくないなどの理由がある場合以外には、あまりお勧めはできません。

それぞれのメリットとデメリットを見比べると、公正証書遺言の優位性は依然揺るぎないものに思えますが、自筆証書遺言の法務局での保管制度が始まった際には、費用的な面から『専門家のサポートを受けながら作成する自筆証書遺言』の利用が増えていくことも考えられます。

遺言書について何かご不明な点がありましたら、なんなりと当事務所へご相談ください。

 

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遺言書⑯ 〜遺言まとめ 中編〜

これまでの連載記事はこちら→

こんにちは、相続手続きと遺言書作成を専門にしております行政書士の奥本です。

前回はちょっと一休みということで、ドラマの事例から遺言・相続について考えてみましたが、今回からはまた遺言のまとめの続きに入っていきたいと思います。

遺言書④では、まず『遺書と遺言書のちがい』についてお話ししました。
簡単に言うと、遺書は「人生最後の手紙」で、遺言書は「法的な効力を持つ文書」です。
故に遺言書に書かれている遺言者の意思は、亡くなった後に、原則として実現されることになります。

ただ、遺言書が法的な効力を持つためには、法律に則った方式に従うことが必要です。

遺言の方式には『特別方式』と『普通方式』があります。
特別方式の遺言は死の危険が迫っているような特殊な状況で行うもの、一方、普通方式の遺言は平時にいつでもすることができるもの、となります。

特別方式の遺言をすることができるのは以下の4つの場合です。
(1)死亡危急の場合
(2)伝染病で隔離されている場合
(3)在船者の場合
(4)船舶遭難の場合

(1)と(4)は死の危険が迫っているとき、(2)と(3)は隔離された状況にあるときに行う遺言の方式ですが、それぞれに証人になれる人やその人数などについて細かく規定されており、それらを守らねば無効となります。(詳しくは遺言書④をご覧ください)

なお、これらの特別方式の遺言は、普通方式で遺言をすることができない場合の臨時的なものなので、遺言者が『普通方式で遺言書を作成できるようになった時から6ヶ月間生きていたとき』は失効してしまいます。

以上のことからも分かるように、通常の場合は『普通方式で遺言をする』というのが基本です。つまり遺言とは、遺書のように死期が迫ってから書くものではなく、もっと早めに、落ち着いて準備をしておくものなのです。

ご自分で『将来に対する備えが必要だ』と感じたとしたら、まさにその時こそが書き時と言っていいでしょう。

それでは、遺言書で実現できることとはなんでしょうか?

遺言書に書くことで法的な拘束力を持つ事項を『法定遺言事項』と言います。

遺言書は何を書いてもその通りに執行されるというわけでは無く、民法などの法律で、あらかじめ定められた事項についてのみ、効力を発揮します。

法定遺言事項は、以下に挙げるような事項です。
①相続に関する事項
②財産の処分に関する事項
③身分に関する事項
④遺言執行に関する事項
⑤その他の事項

①は相続時の財産の分け方などを指定することです。これは遺言書の最も代表的な目的といえるでしょう。

②は遺贈(相続人以外の者に財産を贈ること)などについて、③は例えば子の認知などに関すること、④は遺言執行者の指定など、そして⑤は祭祀財産(墓地や仏壇など)を承継する者の指定など、です。

これら以外の事項、例えば家族に対する願いや思いなども遺言書に『付言事項』として記すことはできますが、法的な拘束力は持ちません。
ですが、『こういった考えでこのように財産を分けたい』という理由などを遺言書に書き記しておくことは、相続人の理解を得るための助けとなるでしょう。
(より詳しい内容は、遺言書⑤をご覧ください)

では次回は、普通方式の遺言について見ていきたいと思います。

 

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ひと休み 〜ドラマから考える遺言・相続〜

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朝夕めっきり寒くなってまいりました。皆さま、風邪などお召しになっておられませんでしょうか?

相続手続き・遺言書作成専門の行政書士 奥本雅史事務所の奥本です。

遺言書シリーズのまとめの真っ最中ですが、今回はちょっと力を抜いていただくために、ドラマの話題から遺言・相続について考えてみたいと思います。

先日、Amazonプライムで『きのう何食べた?』というドラマが観られるようになっていました。

これは弁護士をしているシロさん(♂)と美容師のケンジ(♂)のゲイカップルの日常を描いたドラマなのですが、出てくる登場人物がみんな優しくて、ほぼ毎回泣けるいいお話です。

シロさんは毎日定時で弁護士事務所を出て中村屋というスーパーで買い物をし、ケンジと一緒に食べるための晩ご飯を作るのですが、出てくるお料理が毎回毎回美味しそうで、作り方も結構時間を割いて詳しく教えてくれます。

僕は調理師の資格を持っているので家でも毎日料理を作っているのですが、第8話で出てきたお料理がどうしても食べたくなり実際に作ってみました。

【材料】
・オリーブオイル 大さじ4
・タカノツメ 1/2本
・ナス 2本
・パプリカ(赤・黄色) 各1個
・水100cc
・酒 大さじ2
・みりん 大さじ3
・鶏がらスープの素 大さじ1
・しょう油 大さじ1/2

①タカノツメは種を取って輪切り、ナスは縦に四等分し、パプリカは縦切りにしておく。
②オリーブオイルを鍋で熱しタカノツメとナスを入れて炒める。(タカノツメが焦げやすいので注意!)
③ナスに火が通ったらパプリカを入れ、水、酒、みりん、鶏がらスープの素、しょう油で味付けする。
④中火にし、蓋をして蒸し煮にする。全体がくったりとしたら出来上がり。
(※分量は僕の目分量ですので、好みにより加減してください)

あまったら冷蔵庫に入れておいて、翌日冷たいまま食べても美味しいです。
簡単でサッとできる時短メニューですので、ぜひ試してみてください。

さて、この第8話では鉄さんとヨシくんというもう一組のゲイカップルが登場します。鉄さんとヨシくんはシロさん達の家を訪ねてきて、先ほどの料理の他、筑前煮、ちらし寿司などをごちそうになるのですが、食事の後で鉄さんがシロさんにある相談をします。

鉄さん『僕ね、59歳なんですけど、何軒か飲食店を経営していて、経営の方もまあまあうまくいってる方だと思います。それで多少、財産と呼べるものも、あります。それをね、全てヨシくんに渡したいと思っているんです。それでね、遺言書を作ろうと思ったんですが、僕の両親は二人ともまだ健在でね、だからもし僕が今すぐ死んだ場合、遺言書があったとしても・・・』

シロさん『ご両親には3分の1の遺留分があります。鉄さんの財産の3分の1は、鉄さんのお父さんとお母さんに渡ります。』

鉄さん『そうなんです。それで、僕が歯を食いしばって貯めた金を・・・田舎の両親に、びた一文渡したくないんです・・・。ヨシくんとは養子縁組をしようと思ってます。』

シロさん『そうですね。ヨシさんが鉄さんの養子になれば、相続人はヨシさん一人になります。』

相談の内容は以上のようなものでした。
鉄さんと、ご両親との間に、何か並々ならぬ事情や感情があったのでしょうね・・・。

さて、この連載を読んでくださっている皆さまにはすでにお馴染みとなっている、『相続人』 『遺言書』 『遺留分』といったキーワードが登場しました。

それでは、この事例を詳しく見ていきたいと思います。
鉄さんとヨシくんは同性カップルで法律上の配偶者とはなれず、子どもがありませんので、相続人はご両親のみです。つまり鉄さんが遺言書を書かずに亡くなった場合には、ご両親にすべての財産が相続されることになります。(法定相続分は、父と母それぞれ2分の1ずつ)

また、全ての財産をヨシくんに遺贈する旨の遺言書を作成していたとしても、ご両親には相続財産の3分の1を遺留分として取得する権利があります。(遺留分は、父と母それぞれ6分の1ずつ)


★ 遺留分=相続財産の2分の1(ただし、相続人が尊属(父母、祖父母)のみの場合は3分の1)に、各相続人の法定相続分の率を乗じたもの
『遺言書③~遺留分について考える~』もよろしければご覧ください)


しかし、鉄さんがヨシくんを養子にすれば、相続人は第一順位である『子』のみとなりますので、ヨシくんにすべての財産を相続させることが可能です。

昨年、Queenの映画『ボヘミアン・ラプソディ』が大ヒットしたこともあり、LGBT問題は以前よりかなり身近になったように思います。
ただ、法律の改正が行われない限り、同性カップルの相続に関する問題においては、このドラマのように、パートナーと養子縁組をするという選択をせざるを得ないかもしれません。(※それぞれのケースにより、対応は異なりますのでご注意ください)

今回はドラマの事例から遺言・相続を考えてみました。
次からはまた、まとめのつづきに戻りたいと思います。

 

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行政書士 奥本雅史事務所
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