遺言書⑤ 〜遺言書で何ができる?〜

こんにちは、相続手続きと遺言書作成専門の行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

遺言書は、『書いておけばなんでもその通りになる』というものではありません。

今回のテーマは『遺言書で何ができるのか』についてです。

遺言書に書かれている内容で法的な拘束力を持つ事項は『法定遺言事項』と呼ばれます。

法定遺言事項は民法などの法律で、おおよそ以下のような事項が規定されています。

①相続に関する事項
・遺産分割方法の指定、又は指定の委託(民法908条)
→これが遺言書に書かれる最も一般的な内容ではないかと思います。遺産分割方法の指定とはつまり「財産の分け方を定める」ということです。
例えば「不動産は妻に、預金は娘に相続させる」といった形で指定する場合や、代償分割や換価分割(詳しくは~相続⑥~で)など分割の方法を定める場合などがあります。
そして指定の委託とは「特定の第三者に、財産の分け方を定めることを委ねる」ということです。

・相続分の指定、又は指定の委託(民法902条)
→相続分の指定とは『法定相続分とは異なる割合で相続させたい』場合に、その割合を定めることです。例えば「妻、長男、次男にそれぞれ3分の1ずつ財産を相続させる」
というような場合です。指定の委託とは「特定の第三者に、相続分を定めることを委ねる」ということです。

・特別受益者の相続分に関する指定(民法903条)
→特別受益(詳しくは〜相続⑦〜で)を受けた相続人について、特別受益の持ち戻しを免除したい場合などにその旨を記載します。

・遺産分割の禁止(民法908条)
→(相続の開始から5年以内に限り)遺産の分割を禁止することができます。

・推定相続人の廃除と取り消し(民法893条・894条)
→被相続人に虐待を行った場合や重大な侮辱を加えた場合、または推定相続人に著しい非行があった場合には、家庭裁判所に申し立てその推定相続人を相続人から『廃除』することができます。これは生前行為でもすることができますが、遺言により廃除をすることもできますし、逆に廃除を取り消すこともできます。

・共同相続人間の担保責任の定め(民法914条)
→相続した財産に問題(相続した建物が壊れていたなど)があったために損害を被った相続人がいる場合には、各相続人は相続分に応じて保証しなければなりません(担保責任を負う)。しかし遺言によって、例えば資力の少ない相続人の担保責任を免除するということを定めることもできます。

・遺贈の減殺方法の指定(民法1034条)
→遺留分減殺請求がなされた場合に、各遺贈に対してどの順番で減殺をするか順番を指定することができます。

②財産の処分に関する事項
・包括遺贈、及び特定遺贈(民法964条)
→包括遺贈は財産の『割合』を指定して贈ることです(”全財産の4分の1を○○に与える”など)。特定遺贈とは特定の財産(例えば土地などの不動産など)を特定の人に贈ることです。

・一般財団法人の設立(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律152条)
→遺言により一般財団法人を設立することができます。(遺言によらず、生前に設立することも可能です。)

・信託の設定(信託法3条)
→遺言により、信託銀行等に財産を託し、被相続人の目的を実現する(例えば、残された妻に毎月20万円ずつ給付するなど)ことができます。(遺言によらず、生前に設定することも可能です。)

③身分に関する事項
・認知(民法781条)
→婚姻関係にない者との間に生まれた子を遺言で認知することができます。(遺言によらず、生前に認知することも可能です。)

・未成年後見人の指定、未成年後見監督人の指定(民法839条)
→未成年者の親権を行う者は、その者が死亡すれば他に親権者がいなくなる場合に限り、遺言により未成年後見人を指定することができます。
また未成年後見人を指定できる者は、その未成年後見人を監督する未成年後見監督人を遺言により指定することができます。

④遺言執行に関する事項
・遺言執行者の指定、又は指定の委託(民法1006条)
→遺言書の内容を執行する遺言執行者を指定することができます。またその指定を第三者に委ねることも可能です。

⑤その他の事項
・祭祀承継者の指定(民法897条)
→祭祀財産(墓地、墓石、仏壇、仏具等)を承継し、祭祀を主宰する者を指定することができます。(遺言によらず、生前に指定することも可能です。)

・保険金受取人の指定、又は変更(保険法44条・73条)
→保険金の受取人の指定や変更を遺言で行うことができます。(遺言によらず、生前に指定または変更することも可能です。)

これ以外の事項、例えば葬儀の方法の希望、散骨や埋葬方法の希望などは、遺言書に記載したとしても法的拘束力がありません。
法定遺言事項以外の事項は『付言事項(ふげんじこう)』と呼ばれます。

付言事項にはたしかに強制力はありません。ですが、自分の願いを家族に伝えるために遺言書に付言事項を記載しておかれることは非常に大切だと思います。

また、法定相続分以外の分け方をする場合には、相続人の間で不公平感が生まれるのを防ぐために「何故、その分け方にするのか」という思いの部分を記すことも大事です。

遺言書作成で分からないことがありましたら、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

 

行政書士奥本雅史事務所
http://okumoto.tribute-mj.net

←前の記事 ↑ページの先頭へ 次の記事→