こんにちは。
奈良県で活動している武村直治行政書士事務所の武村直治です。
このブログは約5年前に開業した同期5人で始めたものですが、今回はこのブログを作成している皆で開業してからの5年間を振り返ることになっています。私のブログにそんなに興味のある方はいないと思うのですが、たまたま良い事も書くこともあるので気が向けば読んでいただければ幸いです。
開業して早5年が経ちましたが、この5年は嘘みたいなスピードで時間が過ぎました。この期間ほど多くの方に助けていただいたことはこれまでなかったような気がします。本当に感謝してもしきれません。
一方、自分の未熟さを痛感した5年でもありました。 この仕事は期限に対してリカバリーがきかない業務も存在し、些細なミスが命取りになる可能性があります。また細かい部分については誰の責任になるのか開業当時の僕では適切に判断できないような部分もありました。
しかし開業当初はまず仕事を取ることにやや執着し、より重要である「その業務を完遂できるか」ということと「完遂できなかった時の責任」について、そんなつもりはありませんでしたが今思えば少し甘く考えていたかもしれません。 とにかくずっとスポーツをやっていて体力にだけは自信があったため走れるところまで走ろうと考えて一生懸命やってきました。今思い返すと多少焦りもあったかもしれません。 後に記載しますが、結果としてそれが大きな間違いでした。
さて、ここからが本題ですが、開業してからこれまでの業務のやり方を振り返るとずいぶんと変化があった気がします。
これは今でも同じなのですが、開業当初から依頼者の方の期待値を少しでも上回るサービスを理想としていました。これについてはこれまでの仕事における経験から、また純粋に誰かの役に立ちたいと考えていたからです。 こう書くと良い人と自分で言っているようで恥ずかしいですが本当です。
一方で業務については、当初はネットに記載されている料金相場を意識しすぎるあまり満足いくだけのサービスが出来ないこともあり、なんとなく中途半パンパな状態であったと思います。 今考えるとすごく矛盾しています。けれど自分の理想と現実の間でホントに悩んでました。
転機は開業から丸2年ほど経った頃でした。 いろいろと他の活動もしていましたが、気が付けば仕事以外のことをする時間がなくなっていきます。 まだまだ未熟な自分にとってこれは本当にありがたいことでしたが、この時期はただ単に私の事務所の規模が小さく、また先輩の先生方に比べ慣れていない業務も多かったのだと思います。この頃はまだ業務に慣れていけば十分こなせるようになると考えていました。 また、自営業あるあるだと思いますが、いつ仕事がなくなるか分からないという恐怖感もあり忙しい状況ではありましたがいろんな業務を受任し続けました。 、、、しかし、これが後に大変な経験をする端緒となってしまいました。
その後しばらくして、ある時期を境に自分の見通しが甘かったことに気付きます。
確かに業務をこなすスピードは上がりましたが、書類の作成だけが仕事ではなく、また不慣れな業務も請けていたことから、予測しているほど業務を完了するまでの時間について短縮できませんでした。 さらに1年ほど経ち、完全に限界を超えていることに気付いた時にはすでに時遅しの状態でした。
いろんな業種の仕事を雑多に請けていた自分が悪いのですが、毎日のように電話一本でコロコロと状況が変わり、また確認を要する事項が発生し、そのあまりの多さに確認のため時間を割いているだけで一日が終わることもしばしばあり、複数案件の期限が同時に迫っていながら業務ができないような状況に陥りました。 ちなみに覚えている限りでは、ピーク時で一週間続けて土日も含め毎日50件ほどの電話がありましたが、その9割ほど(体感です。)が事業の確認事項や変更事項、行政からのお願い(指導)、補正指示、許可を取得したい方からの質問、申請の進捗確認(期限に間に合うか)、あとは農地転用関係の隣地者からの状況確認と多少のクレームでした。 友達からの電話が全然なかったのが残念でした。でもよく考えると友達は少ないので当然かもしれません。
、、、ここまでの状況になると、もう電話している人が誰で、どの案件のことなのかも備忘録を確認しないと全く把握できていませんでしたが、その備忘録も満足に作る時間はありませんでした。
そのうち、これまでは考えられなかったような細かなミスが目立つようになり、簡単な申請書の提出や補正すら対応できない状況が長期的に続きます。これは長期的な業務も請け負っていたため、年単位で続きました。
、、、心底恐怖を覚えました。
その後、人生で初めて過労により体を壊し、損害賠償や廃業を本気で覚悟しました。 体力にだけは自信があったため自分でもビックリでした。 そして、行政書士としてこなせる業務量の限界について体感的に悟った時期でもありました。
これまではお客様のため、と深く考えずに行っていた小さな事柄についても、かかる時間と事務所の売上、また他の依頼者からの業務にかけられる時間等を考慮した結果、田舎で開業している私が本気で行政書士として生きていくのであれば真剣に考えないと事務所と私の体が持たず、結果として依頼者の方にご迷惑をおかけすると考えるようになりました。 選択を迫られた時期であったと思います。
そのため、やや時間に余裕ができた頃からは何が依頼者の方にとってベストなのかをずっと試行錯誤していました。
その結果、依頼者の方と行政書士との関係は一時的、スポット的なものではく長期的に信頼できるパートナーである方がお互いにとって望ましいとの結論に改めて至りました。
そのためには長期的に存続可能な事務所であり、事務所の知識レベルを向上させ、対応できる業務についても拡大し、求められればより利便性に富んだ事務所になっていける、いわゆる成長の可能性を残した事務所であることが結果的に依頼者の方のためになるとの結論に至りました。しっかり勉強する時間も作らなくてはいけません。
その為には料金体制の多少の見直しも必要でした。 お恥ずかしい話しですが、限界まで働いた上での売上を確認して初めて、料金とかかる時間の不一致に気づきました。ネットに記載されている料金を全て一式仕事の料金だと勘違いし、安直に参考材料とし、具体的な業務量に対して必要な時間を正しく計算できていなかったのだと思います。今思えばこれでは仕事の質が下がって当然です。。
また、当初は経費分と自身の生活費分さえあれば何とかやっていけると考え、本来重要であるセキュリティや業務用OA機器などの設備やリース費用、人件費など、事務所をより安定的に稼働させ依頼者の方に安心していただくために必要な費用について甘く見ていたことも原因でした。
上記について甘かったということは、きっとこの当時の自分は「依頼者ファースト」のような表現を使いながらも無意識に心のどこかでは自分中心に物事を考えていたということなのだと思います。恥ずかしいことです。これでは継続的な関係を築くことが比較的多いこの業界において、遅かれ早かれいずれ信頼を失っていく事務所になると感じました。 また料金体制については、同種の業務を行っている先輩先生方にもご迷惑をおかけする可能性があると強く感じた業務もありました。
上記の経緯を経験した結果、弊所の規模を考えると低料金で最低限のサービスを他業種に渡って数多くこなすやり方では、結果的に申請書提出時の補正指示等の対応など、かえって許可取得まで時間がかかるケースも多々あるため、クライアントの方にご迷惑をおかけし信頼を失うリスクが高くなると考えるに至りました。
そのため、事務所の仕事を少し減らし一本の仕事にかける時間を増やし質を高め、ある程度専門業務を絞り、かつネットに記載されている料金だけに縛られその範囲で業務を受けることを再検討し、今に至ります。
とは言っても完全に上記のような理想の形で仕事ができているかと言えばそんなこともなく、様々な状況を考慮し受任させて頂いているのが現状ですが、これらを意識することにより以前より依頼者の方から喜んでいただけることが多くなりました。 これからもよりニーズに答えていける事務所として一生懸命努力していきたいと思います。