こんにちは。
行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。
今回のコラムは、認知症ケアについて書きたいと思います。
私は行政書士の仕事以外に介護の研修講師もしています。
先日、「奈良県認知症介護実践者研修」という研修で講義をさせていただきました。
この研修は、国の認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)にも位置付けられているものです。
研修の期間は全部で7日間に渡ります。しかも、途中で1ヶ月程度の実習も課せられており、なかなかのボリュームです。
それでも毎年県内の各施設から200人以上が参加されています。
私は、研修初日の「認知症ケアの倫理」と「認知症の人の権利擁護」という科目を担当しました。「認知症の人の権利擁護」では、成年後見制度についても触れるのですが、これまでコラムでお伝えしたような内容を話しています。
“倫理”や”権利擁護”というと、馴染みがなく少し難しいイメージがありますよね。
受講者にとって取っ付きにくい科目でもあるんです。
ですので、
どうしたら身近に感じてもらえるか、
どんな伝え方をしたらよいか
毎回悩みます。
今回は事例に沿って説明したり、グループ演習を取り入れてみました。
ちゃんと伝わっていたらいいのですが・・・
また別の機会に、この講義の内容についてもコラムでご紹介したいと思います。
さて、認知症ケアを学ぶ際には大切なことがたくさんあります。
その中でも、「パーソンセンタードケア」という考え方はとても重要であり、基本です。
パーソンセンタード・ケアとは,認知症をもつ人を一人の“人”として尊重し,その人の視点や立場に立って理解し,ケアを行おうとする認知症ケアの考え方です。
この考え方を提唱したのは、イギリスのトム・キットウッドという学者さんで、業務中心のケアに対して,人中心のケアの重要性を主張しました。
業務中心のケアとは、言い換えると介護する人を中心としたケアです。
例えば、介護施設では介護する人の都合でケアが行われてきた歴史があり、食事、入浴、排泄の介助が中心でした。
清潔、安全が重視され、そこで暮らす認知症の人は生活を管理され、自由や楽しみがない生活だったようです。
当時のケアの根底には、
認知症の人は何もわからないから、その人のために何でもしてあげなければならない
認知症の人は、すぐに忘れるし、何も考えられないから周りの人がその人のことを決めてあげなければならない
といった考え方があったんですね。
認知症の人には意思がないとみなされ、認知症の人の気持ちや、望む暮らしにはあまり目が向けられませんでした。
そこで、トム・キットウッドは人中心のケアの重要性を主張しました。
人中心のケアとは、
認知症の人の生き方や生活に重心をおき、その人らしさを中心にすること。
そして、認知症の人の声をしっかり聞くこと、聞こうとすることです。
具体的には
認知症の人の気持ちに寄り添う
認知症の人のこれまでの人生ストーリーやこれからの人生に関心を持ってかかわる
認知症であっても、できることや可能性がたくさんあって、それを引き出す
といったことがあります。
そして、
認知症になったからといって、目の前のその人は何も変わらない、
かけがえのない大切な存在であることに違いはない
ということを、私たちが認識することはもちろんですが、認知症の本人に実感してもらえるように支援することがポイントだと思っています。
私は、もし自分が認知症になってしまったら、偏見を持たずに大切にしてほしいです。
笑って過ごせるように、自分の好きなことや役割を続けさせてほしいと思っています。
きっと、多くの人が同じ思いを持っていると思うのです。
だからこそ、認知症の人を支える立場の人をはじめ、多くの人に認知症ケアの大切なポイントを知ってほしいと思います。
2025年には、認知症の人が700万人(約5人に1人)に達すると言われています。
誰にとっても他人事ではない時代になります。
たとえ認知症になっても、安心して最期まで自分らしく暮らしていける社会をつくっていきたいですね。
行政書士・社会福祉士よしかわ事務所は、認知症の方、そしてそのご家族からのご相談もお受けしています。
ケアマネジャーの資格もありますので、介護保険サービスについてもお気軽にご相談ください。