こんにちは。
介護・福祉の専門オフィス
行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。
すっきりしない天気が続いてますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
梅雨明けまでもう少しかかりそうですね。
先日、研修会に参加してきました。
何の研修かというと、「成年後見人材育成研修」です。
この研修は、社会福祉士会の「権利擁護センターぱあとなあ」(以下、ぱあとなあ)への入会及び成年後見人等の候補者名簿登録をするために必須の研修です。
つまり、社会福祉士として成年後見の仕事をするためには、社会福祉士会に入会し、ぱあとなあにも所属することが必要なんですね。
私は事務所を開業する時に、成年後見業務も考えていたので、社会福祉士会に入会しました。もちろんぱあとなあにも所属できるものと思っていましたが、3年間かけて基礎研修というものを受けないと、ぱあとなあの入会研修が受けられないことが判明しました。
基礎研修とは社会福祉士としての専門性をみっちり叩き込まれる研修です。
この3年間の研修を終えて、ようやくぱあとなあ入会研修の切符を手に入れたというわけです。
これだけ多くの研修が求められるのは、やはり成年後見人の責任の重さからでしょう。
私はすでにNPO法人に所属して成年後見の仕事をしていますが、この機会に学びを深め、実務に活かしたいと思います。
さて、今回のコラムは成年後見人、保佐人、補助人(以下、成年後見人等)の報酬について書いてみたいと思います。
成年後見人等の仕事をするうえで、とても重要な話題です。
今年の3月の下旬に、最高裁が全国の家庭裁判所に対し、成年後見人等に与える報酬の算定方法を変更するように促す通知を出したと新聞で報道されました。
成年後見人等の報酬に関することは民法に定められています。
“家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる。(民法862条)”
ちなみに、奈良家庭裁判所後見係は以下のように報酬の目安を公表しています。
【基本報酬】
成年後見人等が、通常の後見事務を行った場合の基本報酬の額=月額2万円。
ただし、
管理財産額が1000万円を超え5000万円以下の場合
基本報酬額=月額3万円~4万円
管理財産額が5000万円を超える場合
基本報酬額=月額5万円~6万円
基本報酬額の修正
・収益不動産が多数ありその管理が複雑
・親族間に意見の対立がありその調整が必要な事案
・被後見人等の身上監護が困難な事案
・成年後見人等の不正があり後任の成年後見人等がその対応にあたる事案
などの場合には、上記基本報酬額の50パーセントの範囲内で加算した額を基本報酬額とすることがある。
【付加報酬】
(1)訴訟等の特別の行為により、被後見人の財産を増加させた場合
経済的利益額に応じて付加報酬額を決めるが、事案の内容に応じて、30%の範囲内で増減することがある。
(2)特別の後見事務を行った場合
後見開始時に財産調査を行った場合、終了時の引継事務を行った場合、施設入所契約を行った場合には、事務内容に応じて、それぞれ5万円以内、10万円以内、20万円以内で付加報酬額を決める。
(3)(2)の付加報酬を増額する特段の事情がある場合
10万円から30万円の範囲内で付加報酬額を決める。
このように、基本報酬については利用者の財産額に応じて目安が示されています。
これまで、後見事務は財産管理に偏っているケースがあると言われていました。
これは極端なケースですが、専門職後見人の中でも、財産管理がメインの仕事であるからと言って、本人に面会しようとしない後見人や、施設などへ行っても本人に会わず施設職員と事務手続きだけ交わして帰る後見人もいると聞いたことがあります。
その割に、ある程度の報酬を払う利用者からは「後見人が報酬に見合う仕事をしない」といった不満が出ていました。
報道によると最高裁はこの算定方法を、業務量や難易度によって金額を調整する方法に改めるようです。
これから特に重視されるのは、本人の意向を確認し、関係者と連携しながら生活の質を向上させるような後見事務です。
そうすると、介護や福祉サービスの調整、契約をはじめとする身上保護に関する事務への報酬がより手厚くされることが想定されます。
認知症の方、身寄りのない方、所得の低い方など福祉的ニーズが高いケースが増えていますし、社会福祉士の専門性への期待が高まるのではないかと思います。
今後は本人の身上保護をより重視した事務に改善されていくことを期待したいですね。
そして、本人の意思決定支援についても重視されていくことを切に願います。
私も行政書士、社会福祉士として社会の期待に応えられるよう努力したいと思います。
成年後見制度は報酬の考え方をはじめ、必要な人が安心して利用できるように色んな面で改善が進められています。引き続き、今後の動向をチェックして、お伝えできることがあればコラムで発信していきますね。
弊所では、成年後見制度をはじめ、福祉に関するご相談をいつでもお受けしています。
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