法定後見と任意後見の関係について

こんにちは。

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

 

みなさん、年末年始はいかがでしたか?

初詣、旅行、帰省などで楽しい時間を過ごされた方も多いのではないでしょうか。

 

私は久々にゆっくりできました。

しっかり充電できましたので、心機一転頑張りたいと思います。

 

このコラムも読んでくださる方のお役に立つ内容をお届けできるように頑張りますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 

それでは本題に入りましょう。

 

先日、知り合いのケアマネジャーさんからご相談がありました。

身寄りのないご利用者に後見人が必要で、裁判所への手続きを教えてほしいとの内容です。

 

詳しくお聞きすると、そのご利用者は判断能力もしっかりされていて、自宅で一人暮らしをされていますが、かなりの高齢で今後のことを心配しての相談でした。

 

このようなケースでは、判断能力がしっかりされている方であれば、任意後見をご案内します。裁判所への申立ては法定後見になります。

 

このように、法定後見任意後見の違いについて簡単にお伝えしましたが、

「後見人」= 財産管理や役所の手続きを支援してくれる人

という認識が一般的なのかもしれませんし、間違っているわけではありません。

ただ、同じ「後見人」といっても、法定後見任意後見では手続きや利用するタイミングが大きく異なります。

 

そこで、今回のコラムでは、改めて法定後見制度と任意後見制度の概要をお伝えしつつ、両制度の関係についてお伝えしたいと思います。以前のコラムでそれぞれの制度について詳しく書いていますので、そちらも参照しながら読んでいただけると幸いです。

 

 

法定後見制度と任意後見制度

 

成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度があります。

 

法定後見制度とは、本人の判断能力が低下したときに、本人や親族等の申立てにより、家庭裁判所が成年後見人等を選任する制度です。

 

任意後見制度とは、本人に判断能力がある間に、将来自分の判断能力が低下したときに備えて任意後見人として生活を支える人を自分で選んでおく制度です。

 

法定後見制度では、本人の意向にかかわりなく家庭裁判所によって成年後見人等が選ばれるのに対し、任意後見制度では、自分で将来の後見人を選ぶことができる点に大きな特徴がありますし、その人に何をお願いするのか、内容も自分で決めることができます。

 

どちらの制度を利用するかという点については、それぞれの制度の特徴を踏まえて十分に考慮することが必要です。

 

任意後見制度は、契約によるものですので判断能力が備わっていることが前提となります。したがって、精神上の障害等により判断能力が低下している場合には、法定後見制度によるしかないことになります。

 

 

法定後見任意後見の関係

 

任意後見契約が結ばれている場合には、本人について法定後見開始の申立てがされても、家庭裁判所は原則として法定後見開始の審判をすることはできません。原則として、法定後見開始の審判の申立ては却下されることになります。

ただし、本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り、例外的に法定後見開始の審判をすることができるとされています。(任意後見優先の原則)

 

これは任意後見制度による保護を受けることを選択した本人の自己決定を尊重するという趣旨に基づくものです。

 

では、

「本人の利益のため特に必要があると認めるとき」とはどんなときでしょうか。

具体例として、

・本人が任意後見人に授権した代理権の範囲が狭すぎて本人を保護するのに不都合がある場合

・本人について同意権·取消権による保護が必要な場合(任意後見には同意権・取消権がありません。)

・任意後見人が受任事務を行えない事情が生じた場合

・任意後見人が本人の財産を私的に流用して本人に損害を発生させている場合

・合意された任意後見人の報酬額があまりにも高額である場合

・任意後見人に不正な行為·著しい不行跡その他その任務に適しない事由がある場合

などがあげられます。

このような場合、法定後見の申立権者(本人、配偶者、4親等内の親族等)、任意後見受任者、任意後見人または任意後見監督人は、家庭裁判所に法定後見開始の審判の申立てをすることができます。

法定後見の開始の審判がされれば、任意後見契約は当然に終了します 。

 

ただし、法定後見開始の審判がなされたタイミングによって任意後見契約の効力に違いがあります。

①任意後見監督人選任後(つまり任意後見契約が発効した後)に法定後見開始の審判がされたとき

→既存の任意後見契約は当然に終了します。

②任意後見監督人選任前(まだ任意後見契約は発効していない)に法定後見開始の審判がなされたとき

→既存の任意後見契約はなお存続するとされています。つまり、例外的に法定後見を開始した後でも、改めて未発行の任意後見契約について任意後見監督人を選任して法定後見から任意後見へと移行できる可能性が残されています。

 

では、②のとおり、法定後見開始後に任意後見監督人選任審判が申し立てられた場合はどうなるでしょうか。

原則として任意後見監督人が選任され、法定後見開始の審判は取り消されます。ただし、法定後見を継続することが本人の利益のため特に必要であると認めるときには、任意後見監督人選任の申立ては却下されます。

 

このように、現行法では「任意後見優先の原則」が採用されており、任意後見が法定後見に対して優越的な地位に立つことが定められています。

 

成年後見制度では、「自己決定の尊重」という理念がとても大切にされています。

 

法定後見における成年後見人等も本人の意思を尊重して後見活動を行いますが、家庭裁判所が選任した人が、判断能力が低下した本人の意思を十分に汲み取って希望どおりの対応をしてくれるとは限りません。

 

その点で、任意後見では、自分の信頼できる人に希望する財産管理や生活スタイルを詳細に伝えておくことによって、将来判断能力が低下したとしても、自分の希望どおりに対応してもらいやすくなります。

 

任意後見は老後の備えとして利用される方も増えています。

弊事務所でも任意後見に関するサポートに力を入れております。

成年後見制度に関するお悩みなどあれば、お気軽にご相談ください。

 

 

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