相続④ ~秘密は墓場まで~

行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

前回、相続は亡くなられた方(被相続人)の『出生から亡くなるまで』の戸籍謄本を取得することから始まる、というお話しをさせていただきました。

これは、相続人を確定するために必要なことです。

まず亡くなられた方の除籍謄本を取得します。戸籍にお名前が載っていた方が全て亡くなられたり、家族全員で引越して本籍を移されたとき、あるいは結婚などで戸籍から出られて、その戸籍に誰もお名前が残っていない状態になった戸籍は閉鎖され除籍となります。その謄本(写し)が除籍謄本です。(戸籍にまだ誰かのお名前がある場合は、除籍謄本ではなく戸籍謄本となります)

ここから、順々に遡って戸籍謄本を取得していくわけですが、本籍地を移したときや、結婚をしたときにはその度に戸籍が新しくなりますので、その時の本籍地の市区町村役場で戸籍謄本を取得することになります。

そうやって出生までの戸籍謄本を全て集めていくのですが、一つ注意しなければならないのは、改製原戸籍(かいせいはらこせき)です。

じつは戸籍法の改正により、戸籍が新しい様式に作り変えられることがあります。しかし作り替える時に、全ての情報を移しているわけではないのです。例えば、離婚や認知などの情報は移されません。その作り変えられる前の戸籍が改製原戸籍です。ですので、改製原戸籍も忘れずに取得しないといけません。

これらの除籍謄本、戸籍謄本、改製原戸籍謄本を出生まで途切れなく集めると、全ての相続人がそこに載っていることになります。

相続の各手続きをするためには、必ずこの作業を行うことになります。

ですので・・・

よく”秘密は墓場まで持って行く”なんていうセリフがありますが、離婚した事実や、認知した子どもがいる場合なども、亡くなられた後で必ず判明しますので、むしろ隠さずにご家族でよく話し合っておかれることをおすすめします。(亡くなってから知られては、余計に揉め事が起こります)

さて前回のコラムで「単純承認」「限定承認」「相続放棄」について触れましたが、相続人を確定しないと大変な事態になることも考えられます。

3ヶ月の熟慮期間までに、限定承認も相続放棄も選ばなかった場合、自動的に単純承認したものとみなされます。何の手続きもしなければ財産も負債もすべて相続することになるのです。

例えば、お父さんが多額の借金をしている状態で亡くなったとして、お母さんと子どもが相続を放棄した場合、相続権はお父さんのおじいちゃんとおばあちゃんに移ります。おじいちゃんとおばあちゃんも放棄をすれば、お父さんの兄弟姉妹に相続権が移ります。兄弟姉妹が全員放棄をして、「これで相続人は誰もいないな!」と思っていたのに、もしも誰も存在を知らない、離婚した前妻さんとの間の子どもや、お父さんが家族の誰にも内緒で認知していた子どもがいたとしたら・・・

やはり相続人の調査をきちっとしないのは危険です。

(※注 熟慮期間は『相続の開始を知ったときから3ヶ月』です。亡くなられたことを知らなかった場合は熟慮期間は進行しません。)

とはいえ、限られた時間内で戸籍謄本をすべて集めるのは大変困難な作業です。
しかもまだ承認、放棄を決めるためには財産の調査をしなければなりません。

相続の最初の締め切り、熟慮期間3ヶ月の間にしなければならないことは、本当にたくさんあるのです。

相続⑤につづく、、、

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相続③ ~相続の道は戸籍から~

こんにちは、行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

前回のコラムの最後で、相続における最初の期限のお話をしました。

財産を受け継ぐことになる方(相続人と呼ばれます)は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内(熟慮期間と言います)に、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」のいずれかを決めなければなりません。
それぞれの違いについて簡単に説明しますと、

「単純承認」・・・全ての財産(借金等の負の財産も含め)を受け継ぐ

「限定承認」・・・財産から借金等の負債を差し引いた残りの財産を受け継ぐ

「相続放棄」・・・全ての財産を放棄する

となります。ですが、それを決めるために、やらなければいけない調査が3つあります。

それは、遺言書、相続人、相続財産の調査です。

まずは、亡くなられた方(被相続人と呼ばれます)が遺言書を遺しておられないかを調べます。(※遺言書については、またシリーズで詳しくお話しいたしますのでここでは触れません)

つぎに、相続人となる方を調べます。相続人となる方は以下のようになります。

・配偶者は必ず相続人となります。

・被相続人のお子さんがおられる場合は、配偶者とお子さんが相続人となります。《配偶者がすでに亡くなっている場合は、お子さんのみ》

・被相続人にお子さんがおられない場合は、配偶者と被相続人の父母(父母が亡くなっておられれば祖父母)が相続人となります。《配偶者がすでに亡くなっておられる場合は、父母、または祖父母のみ》

・被相続人にお子さんがおられず、父母・祖父母もすでに亡くなっておられる場合は、配偶者と兄弟姉妹が相続人となります。《配偶者がすでに亡くなっておられる場合は、兄弟姉妹のみ》

⇒なお、お子さんが亡くなられていた場合はお孫さんが、お孫さんも亡くなられていた場合はひ孫さんが相続人になります。(代襲相続と言います)兄弟姉妹も代襲相続がありますが、甥姪までとなっています。

少し複雑ですが、ここまで理解することができれば、相続人の確定は意外と簡単にできそうです。親戚の中でも、この範囲なら顔もある程度見知った方でしょう。

ですが・・・

亡くなられた人の人生を、すべて把握しておられるということが、果たしてあるでしょうか?

たとえ、お父さんやお母さんであっても、知らないことや秘密というものがあるかも知れません。
どういうケースかといいますと、例えば、離婚・再婚をされていて、以前の配偶者との間にお子さんがいた、というケース。離婚した配偶者は相続人にはなりませんが、お子さんは相続人となります。また、認知した子や養子縁組をされていた場合も相続人となります。

後々になってからトラブルにならぬよう、きちんと調べておく必要があります。

そのためには、被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本を全て取得しなければなりません。

また、戸籍謄本はこの先ご説明していく相続の各種の手続きにも必要となります。

相続の道は戸籍謄本の取得から始まるのです。

相続④につづく、、、

 

相続②  ~いざ相続~

行政書士 奥本雅史

人がお亡くなりになれば、必ず起こるのが相続ですが、その手続きを主体的に行う機会は、おそらく生涯でも1度か2度、お兄さんやお姉さんがたくさんいらっしゃるご家庭なら、まったく機会が無い方もおられるかもしれません。

経験する機会が少ないということは、手続きについて不慣れなことは当然と言えるでしょう。

ここでは、お亡くなりになられてからの実際の手続きを順を追って見ていきます。

まず、「死亡届」を7日以内に市町村役場に提出します。なお、死亡届は提出する前にコピーを取っておいてください。後述するいくつかの諸手続きに亡くなった証明として必要です。
死亡届を提出した際、同じく市町村役場で火葬許可、健康保険、介護保険、国民年金等の手続きをします。

その後、電気、ガス、水道などの公共料金、電話や携帯電話の名義変更あるいは解約、賃貸住宅や駐車場、新聞、クレジットカードなどの解約手続きが必要です。(これらの手続きには、死亡届のコピーを証明とすることができます。)また、生命保険会社への確認や請求の手続きがあります。

もし厚生年金をもらっていた方なら社会保険事務所に行き、手続きをしなければなりません。ですが、この手続きは「死亡届のコピー」ではなく「住民票の除票」が必要ですので、再度市町村役場に出向いてからということになります。(死亡届提出後、住民票の除票が発行されるまでに時間がかかる場合があるため)

もちろん、手続きとは別に、葬儀や法要も行わなければなりません。そして納骨の準備もあります。

ご親族が亡くなり悲しみに包まれている間にも、これだけの手続きをしなければならないのです。

大変なご負担だと思います。

この負担を少しでも軽くするために役立つのが、エンディングノートです。

エンディングノートについては、また機会を設けてお話しさせていただきますが、公共料金やクレジットカードの引き落とし口座、生命保険の内容など、普段自分だけが頭で覚えているような情報が一つにまとめてあると、手続きの際の手助けとなります。

さて、まだ一切、相続の手続きには入っていません。

納骨は一般的には四十九日の法要後ですので、ここまでですでに二ヶ月近くを経過していることになります。

しかし、相続における最初の期限であり、かつ重要な「単純承認」「限定承認」「相続放棄」を決める、三ヵ月という期日が迫っています。

『まだ一ヵ月あれば大丈夫では?』とお考えになるかもしれませんが、ここからが大変なのです。次回からようやく相続の手続きのお話しに入っていきます。

相続③につづく、、、

 

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相続①  ~知らぬが相続~

行政書士 奥本雅史

人間は誰もが、いつかは必ず亡くなります。
そして人が亡くなれば、必ず発生するのが相続です。

今回から数回に渡って、この誰にでも必ず起こる相続についてお話しをしたいと思います。

たとえば、長くご病気で入院されている場合など充分な備えの時間があれば、ご家族のお気持ち的にも、また手続き的にも混乱は少ないものと思われます。

しかし最近では高齢者の単身世帯も増えています。いわゆる孤独死の場合などでは、突然の出来事に動転し、必要な手続きを次々とこなすだけでも精一杯になりがちです。

ところが相続には各種の期限が法律で厳格に定められており、悲しみの最中にも無情に時間は過ぎていきます。

私の個人的な経験をお話しすると、気持ちが動揺する中、葬儀や埋葬、住まいや公共料金などの解約、年金等の手続きで簡単に一ヶ月は過ぎていきました。ですがまだこのような手続きなら一般の方でも想像がつく範囲でしょう。

相続はここからさらに想像力を働かせなければなりません。何故なら、相続は確実に発生しているにも関わらず、わかりやすく頭の上に「相続人」という文字が表示されたり、体がピカピカ点滅したりすることはなく、見た目にはなんの変化もありません。それどころか、役所からもどこからも通知すら来ないのです。

そしてもし持ち家があれば変わらず住み続けることもできますし、預金も印鑑やキャッシュカードでおろすことができます(※注意 原則、故人名義の口座はすぐに凍結されます。また次回以降で詳しくお話しをしていきますが、相続手続き完了までに預金を使ってしまうと相続放棄ができなくなる場合があります)

でもだからといって放っておくのは禁物です。

暮らしになんら変化がなく、あなたが全く気づいていなかったとしても、相続はどんな場合でも “必ず“ 発生しているからです。

相続② につづく、、、

 

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身近な相談窓口

行政書士 奥本雅史

はじめまして、奈良市で事務所を開いております行政書士の奥本です。
事務所はJR奈良駅から歩いて5分、なら100年会館の少し西にあります。どうぞよろしくお願いいたします。

第一回目は、行政書士という職業について、私の考えをお話ししたいと思います。

まず法律に携わる職業としては、弁護士、司法書士、行政書士の3つが挙げられます。
行政書士は、「役所に出す書類を作成・提出する」のが仕事です。代表的なものは、各種の営業許可などです。

では、同じように○○書士という名前で、どこが違うのか一般の方にはわかりにくい司法書士さんとの違いはなんでしょう。
ひとことで言うと「登記」ができることです。

10年以上昔の話ですが、借金の抵当権を抹消するために、近くの行政書士の先生に登記をお願いしてしまったことがあります。
後の恩師でもあるその先生は「私は登記ができないので・・・。司法書士の先生をご紹介します」と優しくおっしゃられました。その時は何がなにやらさっぱり分かりませんでしたが、ひどく失礼なことを言ったものだと今思い出すと冷や汗が出ます。
行政書士には登記ができません。登記は司法書士さんの独占業務だからです。

一方、弁護士さんの仕事は、みなさん割とイメージがしやすいと思います。裁判での弁護、民事訴訟などテレビや新聞等で目に触れる機会も多いですよね。
行政書士も法律の専門知識を駆使して職務に当たりますが、弁護士とは決定的に違う部分があります。

行政書士はもめごとに関与することができません。たとえば、離婚の場合、話し合いが整った協議離婚で離婚協議書を作成することはできますが、もしも話し合いがこじれて争いごとになればタッチすることはできません。法律による紛争の解決は弁護士さんの独占業務となるからです。

じゃあ最初からなんでも弁護士さんに依頼すればいい、のでしょうか。

もちろんそれも正しい考えです。弁護士さんならば最初から最後まで、どんな状況になっても対応してくださるでしょう。

しかし、法律や手続きの専門家のために必要となる話の内容と、自分が聞いて欲しい部分、たとえば心配ごとであったり、怒り、悩みなどの話とは、往々にしてズレがあるものです。
すべてお任せしておけば、法律的な問題は解決します。でも素朴な疑問や心の問題まで解決するために相談の時間を使うことは難しいでしょう。弁護士さんの相談料は高額であり、また時間に比例して増額されるからです。

私は常に、法律にあまり詳しくない方の初歩的な質問や、お気持ちの部分まで聞くことを心がけています。

行政書士になる前、法律のことを知らなかった頃の経験から、そんな不満や漠然とした不安な気持ちがよくわかるからです。

そしてもうひとつ。

私達、行政書士は『すべてを一人ではできない』ということをよく知っています。

ですから、司法書士、弁護士、税理士、社会保険労務士などたくさんの先生方と繋がりを持っています。

それはつまり、ご相談いただいた問題を、どこで解決すればいいのかが判断できる、ということです。
インターネットを開いた時、最初に検索サイトで検索をするように。

行政書士はみなさんの身近な相談窓口であると僕は思います。

どこに相談してよいか分からないお困りごとがありましたら、どうぞ気軽に行政書士に相談してみてください。
必ずお役に立てると思います。

 

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