介護事業所の書類についての電子申請化

こんにちは。行政書士の武村直治です。

ここ数年、仕事柄電子申請についての話題をよく耳にします。ただ扱う書類については国で統一された雛形でなく県や各市町村ごとの様式による書類も多いため、「ほんとに実現する日は来るのかな?」なんて考えていました。 同じ業種の案件でも市町村によって記載の方法や揃える書類、求められる内容や基準なども違うため、今でも他府県からの依頼などがあった場合は、たとえそれが常に受任している業務でも期限内に完了できるかという点で怖さを感じることがあるのですが、その辺が電子申請化を阻む大きな要因の一つになっています。

今回は行政書士ではなく社会保険労務士の業務範囲のお話しではありますが、今年は介護事業所の電子申請化に向けて進展がありました。

上記介護事業所と自治体の書類のやりとりについては、すでに2022年より「電子申請・届出システム」というものが存在しています。しかしながらまだまだ運用している自治体は少なく、実際には約1700ある市町村のうち数十程度しか利用されていないようでした。

これに対し今年、厚労省は「介護事業者と自治体との書類のやりとりについては電子申請・届出システムを利用すること」を原則化する方針を示し全国の自治体に向けて早急の利用開始を要請するとともに、2025年までに全ての自治体に導入してもらう計画を立てました。

また、国が定める各書類の標準様式を手続きに用いることも原則化するようです。これはすごく羨ましい、、、。

我々が扱う書類はボリュームがあるものも多く補正などもあるため、実は「電子申請=ただただ便利」という訳でもありません。実務上は直接提出に行った方が軽微な補正がすぐ済んだりして便利な場合もあります。

しかし電子申請が進み、同時に国が定める書類の標準様式でも対応可能という状況になれば、遠方の依頼でも1件の申請書の提出だけで往復時間も含めて半日ちかく時間を要することもなくなります。僕は奈良県で活動していますが、遠方の依頼の場合は提出作業だけで丸1日かかったこともありました。また、自信をもって提出に行ったのにその地域では要件や必要な書類が違って書類を持ち帰るなんてことも経験しています。個人的にはこの状況g亜改善されるとすごく嬉しい。

各業界で少しずつ進展がみられる電子申請ですが、こんな感じで早く当たり前になっていけばよいなと思います。

任意後見契約解除の道のり

奈良県王寺町で開業しています。

特定行政書士&申請取次行政書士&AFPの若林かずみです。

今回は、任意後見契約を解除した際に困ったことについて書きたいと思います。

私は、開業後の早い段階で任意後見契約を締結することになりましたが、

この度、その契約を解除することになりました。

実質的には、当事者双方の合意による解除ですが、

合意解除で手続を進めようとすると、

被後見人予定者である方も公証人役場に出向く必要があります。

被後見人予定者は、出向くのが難しい状況でしたので、

私一人だけで手続を進めるために、

私からの一方的解除ということにしました。

一方的解除として、公証人役場で公証をいただくまではスムーズだったのですが、

この後に、思いがけない落とし穴がありました。

任意後見契約が終了した登記をする際のことです。

今回は、任意後見契約を締結しただけで、被後見人予定者が認知症などになる前、

すなわち、契約が発動前、

「任意後見監督人選任前」ということになります。

この任意後見監督人選任前の一方的解除の場合、

終了登記するためには、登記申請書の添付資料として

◎「『解除の意思表示が記載され公証人の認証を受けた書面』(←公証人役場で公証された書類のこと)を配達証明付内容証明郵便として被後見人予定者に送付した謄本」

◎配達証明付内容証明郵便が被後見人予定に配達されたことを証明する「配達証明書」

上記の2つが必要となります。

これら2つがあって初めて、被後見人予定者が契約解除されたことを認識したことになるわけです。

というのも、合意解除と違って、被後見人予定者は公証人役場で公証人と面談していないので、このような書類が必要となります。

さて、この「配達証明付内容証明郵便」。

これを取得するときに、困ったことになりました。

そもそも、配達証明付内容証明郵便は、できる郵便局と、できない郵便局があり、

これについては、郵便局のHPで簡単に調べることができます。

そこで、配達証明付内容証明郵便ができる郵便局において、

『解除の意思表示が記載され公証人の認証を受けた書面』を配達証明付内容証明郵便で発送したいと伝えたところ、公証人の認証を受けた書面を配達証明付内容証明郵便では送れないと言われてしまったんです。。。

これは困った…と思い、法務局に問い合わせたところ、

「よくあるんですよ…。とにかく、できる郵便局を探して下さい」

ええーーーーっ!

そんな…。

1つ1つ郵便局を当たっていくの??

考えた末、

県庁内の郵便局なら、色々な文書も発送しているだろうし、できるのでは?

と思い、県庁の郵便局に問い合わせたところ、「できる」とのことでした。

というわけで、無事に、配達証明付内容証明郵便を送ることができ、登記まで完了することができました。

というわけで、できない郵便局もありますが、探せばなんとかなるということも分かりました。やれやれ。

特定行政書士、申請取次行政書士(immigration lawyer)

AFP、法務博士、コスモス成年後見サポートセンター奈良県支部会員

若林かずみ(wakabayashi kazumi)

和(yawaragi)行政書士事務所

http://kazumi-wakabayashi-nara.com/

tel; <a href=”tel:0745277711″>0745-27-7711</a>

fax:0745-32-7869

←前の記事    ページの先頭へ↑

一般社団法人と公益社団法人の違い


奈良県奈良市の行政書士ユウ法務事務所の木村友紀です。

ようやく秋になりまして、朝晩は涼しくなりましたね。温暖化のせいで日中は依然として日差しはありますが、比較的穏やかな気候になってきたので嬉しくなってしまいます。

少し話はそれますが、私はコスモス成年後見サポートセンター奈良県支部に所属をしていまして、今期は広報部副部長の職に当たっております。それに加えて、今年からは東京本部の委員会にも任命されまして、11月には東京へ出張も予定しています。11月からはこれまで以上にもっと忙しくなりそうなので、早め早めに仕事を進めていきたいですね~。

さてさて、今回はそんなコスモス成年後見サポートセンターにまつわるお話を少しさせて頂きたいと思います。実はコスモス成年後見サポートセンターは、一般社団法人より公益社団法人に移行がされました。この名称について、ある人から質問を受けまして、一般社団法人と公益社団法人はどう違うのか?ということを説明させて頂く機会がありました。皆さんは、一般社団法人と公益社団法人の違いについてご存知でいらっしゃいますでしょうか?

公益社団法人はどのように成立するか?

起業支援

実は一般社団法人と公益社団法人は全く別物という訳ではありません。公益社団法人を設立しようとすると、まずは前提として一般社団法人を設立していなければいけません。そして、その設立された一般社団法人が公益性を備えている場合には、別途申請をすることによって公益認定を受けて、公益社団法人に移行をすることができるということになるのです。公益社団法人として認定を受けると、一般社団法人よりも税制優遇を受けることができるなどのメリットがあります。

「公益」性とはどのような要件であるか?

行政書士

公益社団法人になることを認定する法によれば、公益性の要件を満たすためには、

1.学術、技芸、慈善、そのほかの公益に関する別表に掲げる種類の事業であるもの

2.不特定かつ多数の者の、利益の増進に寄与するもの

ということになっています。この「公益に関する事業」には、いくつかの例示がありまして、社会的に公益性のある事業を遂行していることが認められれば、公益性の要件を満たします。

コスモス成年後見サポートセンターは、元々一般社団法人として設立されたわけですが、既に設立後10年以上経過されており、また行政書士の活動が成年後見制度に寄与しているということが徐々に認められてきているということや社会的な要請などからも今回公益性を備えているということで評価されたのかもしれません。

以上の点につきまして、何かご不明な点等がございましたらお気軽にお問い合わせ頂ければと思います。

奈良県の行政書士

————————————————————————————————–
事務所名 行政書士ユウ法務事務所
所在地 【〒630-8131 奈良県奈良市大森町43-2 ホワイトパレス21 401号】
電話番号 【050-3698-1344】
FAX  【050-6877-5524】
営業時間 【9:30~18:30】
定休日 【原則、土日祝】
E-mail 【gyouhoum@gmail.com】
————————————————————————————————

←前の記事    ページの先頭

ドローン関連の申請サイトの変遷

こんにちは、行政書士の奥本です。
徐々に私達の身近な存在になりつつあるドローン。
テレビ番組でもドローンによる空撮映像を頻繁に見かけるようになってきました。
今回はそんなドローンに関する申請サイトの変遷について書いてみたいと思います。


もしあなたがドローンを買ったとしても、『さっそく飛ばしてみよう!』と早まってはいけません。
空中を飛行するドローンには、墜落のリスクや航空機との接触など様々な危険が伴うために、各種の法律で厳しく規制がなされており、実際飛ばすまでに、それらドローンに関する法律について十分に理解しておく必要があるからです。

2015 年 4 月に首相官邸の屋根にドローンが墜落した事件をきっかけにして航空法が改正れ、それまで航空法の規制対象外だったラジコンの飛行機やヘリコプターまでも含めた『無人航空機』のルールが定められることとなりまし た。

その後、次第に制度が整えられていくのですが、つい最近まで各種の申請手続きを行うためのサイトがバラバラだったせいで随分不便でした。

では、各サイトの開設時期を順に並べて見ていきましょう。

2018年4月

【DIPS】=飛行許可等の申請を行うサイト(航空法の改正により、無人航空機を飛行させるために一部空域で許可・承認が必要となったことに伴い開設)

2019年4月

【FISS】=飛行計画を通知して共有するサイト(「飛行計画の通知義務化」に 伴い開設)


2021年12月

【DRS】=機体情報を登録するサイト(ドローン登録制度創設に伴い開設)

このようにドローンを飛ばすためには、3つに分かれた別々のサイトで、それぞれ申請手続きを行われなければならなかったわけです。


しかし 2022 年 11 月に、これら3つのサイトが統合された【DIPS2.0】が開 設、窓口が一本化されて利便性が大きく向上しました。

ドローンに関する制度についてはまだまだ整備の途上で、法改正や制度の創設・変更などが頻繁に行われています。

ですので、我々行政書士も政府の動向を注意深く見守っているところです。
これからもドローンに関する情報をどんどんシェアしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。


←前の記事  ↑ページの先頭へ


行政書士奥本雅史事務所
http://okumoto.tribute-mj.net

介護保険最新情報の気になるポイント

こんにちは。行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川です。


少しずつ気温が下がってきて、そろそろ冬支度を始めようと思う今日この頃です。
日中は過ごしやすい気候で、お出かけにはとても良い季節ですね。
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

さて、今回のコラムでは、気になる情報がありましたのでご紹介したいと思います。

10月4日に、厚生労働省から介護保険最新情報 Vol.1174 が出されました。
こちらの内容は、多くの介護事業者に関係があり、対応が必要なものです。

令和3年度の介護報酬改定の時に義務化された事項について、準備期間として経過措置が取られていたものがいくつかあります。それが、今年度末で終了し、来年度から完全義務化となります。

義務化される事項について、以下に厚生労働省ホームページから引用します。

1.感染症対策の強化
委員会の開催、指針の整備、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施などを義務化。

2.業務継続に向けた取り組み
業務継続計画の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション) の実施などを義務化。

3.認知症介護基礎研修の義務化
無資格の介護職員に認知症介護基礎研修を受講させるために必要な措置を講じること。

4.高齢者虐待の防止
委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めること。

5.口腔衛生管理の強化
口腔衛生の管理体制を整備し、入所者ごとの状態に応じた口腔衛生の管理を行うこと。

6.栄養ケア・マネジメントの充実
入所者の状態に応じた栄養管理を計画的に行うことを運営基準に規定。

7.事業所医師が診療しない場合の減算
事業所外の医師に求められる「適切な研修の修了等」について、適用猶予措置期間を延長。

引用:介護保険最新情報 Vol.1174
「令和5年度末で経過措置を終了する介護報酬の改定事項について」

上記1~4は介護保険の全サービスが対象です。5及び6は施設系サービス、7は訪問リハビリが対象になっています。

特に、2の「業務継続に向けた取り組み」については、業務継続計画(BCP)の作成が必要となっており、最近 BCP という言葉がよく聞かれるようになりました。

しかし、聞き慣れないBCPという言葉に対し、現場職員さんの中では何の話?という声も聞かれます。

簡単に言うと、感染症や自然災害が発生した場合であっても、介護サービスが安定的・継続的に提供できるように、介護施設・事業所で計画的に備えておくということです。


これを業務継続計画(BCP)作成として、事業者に義務化されました。

近年のコロナウイルスの流行や自然災害の増加で、BCPの必要性が言われるようになったのでしょう。

万が一の時でも必要なサービスを維持できるよう、事業者は可能な範囲で備える努力をしていかなければなりません。

なぜなら、介護サービスは多くの人が利用する欠かせな
い社会インフラになっているからです。

サービスが止まれば、利用者の体力低下や認知症の進行にもつながります。また、家族にも重い負担がのしかかり、仕事に行けないことも起こるでしょう。介護離職となれば、生活に大きな影響が及びます。

このような状況が想定されるからには、介護事業者には有事への備えをしておく大きな責任が課せられているということになります。

厚生労働省のホームページには、BCPのガイドラインや、動画付きの研修資料が準備されています。ひな形もありますので、ぜひご確認いただき、作成を始めてみてはいかがでしょうか。

BCP以外にも、来年度(令和6年4月1日)から義務化される事項をご確認いただき、早目に準備をすすめていただければと思います。

前の記事  ページの先頭↑

相続登記の義務化

こんにちは。奈良で活動している行政書士 武村直治です。                  今回は2024年4月1日より開始される【相続登記の義務化】についてお伝え致します。

実は私はラジオ番組もやっていてその中でもお話ししているテーマなんですが、よく考えると私の番組は多分誰も聞いてない気がするのでブログでもお伝えしてみようかなと思います。

今までは土地等の相続登記を行わなくても罰則はありませんでした。手間や費用もかかるため放置する方も多いとのことでした。                          しかしそのために所有者が特定できず、土地の活用について手続等が進まないことが国レベルでの大きな問題となっていました。                           平成28年データでは九州全体の面積(367万㏊)を超える410万㏊が所有者不明土地となっています。ちなみにこのまま放置すれば約20年後には北海道1つ分くらいの土地が所有者不明となるようです。、、、なんかすごいですね。                      ちなみに私も業務において所有者不明でコンタクトが取れず困った経験が何度かあります。   この場合は郵送で文書案内を送ったりするのですが、登記情報があまりに古いと住所も近隣なのに聞いたことがなかったり、時代劇でしか聞かないような名前が記載されていたりするため「返却されるだろうな」と思いながら郵送しますが、やっぱり尋ね当たらず返却されて困ります。

この対策として相続登記が義務化されましたが、どんな内容なのでしょうか?

1.法律の施行は上記のとおり2024年4月1日から。

2.遺産分割が成立した日から3年以内に完了させる。

3.完了しない場合、10万円以下の過料が科される。                   令和8年からは氏名や住所などの変更も義務化。こちらは2年以内で罰則は5万円。

4.2024年4月1日以前のものも対象となる。(3年の猶予あり)

このように罰則付きの法改正となります。期日も迫っていますので早めの対応をお勧め致します。                                          

遺言執行者④

こんにちは、相続関連の手続きを中心に活動しております行政書士の奥本です。

今回は、遺言執行者についての最終回となります。
遺言執行者の指定は、遺言書の記載事項の中でも比較的重要な項目と言えます。

遺言執行者の指定は、必ず遺言でしなければなりません。
遺言執行者とは文字通り『遺言の内容を執行する者』ですが、以前も書いた通り未成年者と破産者はなることができません。令和4年4月1日より成人となる年齢が18歳に引き下げられましたので、18歳以上で破産者でなければ誰でも遺言執行者になることができるということになります。

ですが遺言の執行には、法律的な専門知識が必要とされるケースも多々あるため、弁護士・司法書士・行政書士等の専門家を遺言執行者に指定する場合も見受けられます。

しかしながら、たとえ専門家を遺言執行者に指定してあったとしても、自分よりも先にその者が亡くなった場合には、その指定自体が無効となってしまう点に注意が必要です。
このような事態に対応するためには遺言書に『指定した遺言執行者(例:弁護士)が死亡している時には、新たな遺言執行者の指定を○○弁護士会の会長に委託し、同会長の指定した弁護士を新たな遺言執行者とする』という文言を記載しておくことで、必ず弁護士が遺言執行者に就任してくれることになります。

このコラムをお読みの方で、もしも「すでに自筆証書遺言を作成したが、遺言執行者を指定していない・・・」と思ってらっしゃる方がおられたら、どうぞご心配なく。

後から遺言執行者に関する遺言のみを行うこともできます。
また、「遺言執行者になってくれそうな人に心当たりがない・・・」という場合には、『遺言執行者への就任』ではなく『遺言執行者の指定だけを委託する』という方法もあります。

では、自筆証書遺言を一旦作成した後に、遺言執行者の指定を友人に委託したいと思った場合の文例を挙げてみましょう。

                 遺言書

   遺言者 〇山〇夫は、令和〇年〇月〇日付けで作成した自筆証書遺言の
  遺言執行者の指定を、次の者に委託します。

   〇県〇市〇町〇丁目〇番
    会社員 ×野×朗
    昭和〇年〇月〇日生

     令和○年〇月〇日
      遺言者 ○山○夫 ㊞

この場合、遺言執行者の指定やその委託が、どの遺言書に関するものであるかを特定するために、遺言書を作成した日付等を明示することが必要ですのでご注意ください。

また、誰でも遺言執行者になれる、とは言うものの、遺言執行者に指定された者が就任するかどうか(指定の委託を受けた者が受託をするかどうか)は、本人の自由意志によるとされており、就任や受託を強制することはできません。

そのため、遺言執行者の就任や指定の受託についてお願いしたい方には事前に相談しておき、内諾を得ておくといったことも大切です。

遺言執行者は複数名指定することもできますので、それぞれに職務を振り分けることも可能です。

例えば法律的な知識が必要な部分は専門家に、それ以外を長男に任せるといったようなケースが考えられます。簡単な例文を挙げます。

 遺言者は、遺言執行者△川△男、及び□田□人の職務の執行方法を次の通り定める。
1.△川△男は、推定相続人廃除請求に関する一切の権限。
2.□田□人は、その余の一切の執行行為。

最後に、遺言執行者の報酬について。
遺言執行者への報酬についての定めは必ず遺言でなされなければなりません。
報酬の金額に関しては、『報酬の金額を○○円と定める』としたり、『遺言執行対象財産の○%とする』といった形で具体的に記載します。

報酬について、遺言に定めがなかった場合には家庭裁判所の審判によることになります。なお、報酬の支払いは、原則として受任事務が終了した後となります。(民法1018条)

ちなみに、専門家に遺言執行者を依頼、または銀行の遺言信託を利用した場合などの報酬の相場は、概ね30万円ぐらいが目安となっているようです。(執行した財産により変動します)

いかがでしたでしょうか?
自筆証書遺言をご自分で作成される場合には、ぜひ遺言執行者についても配慮していただくようにお願いをいたします。

←前の記事 ↑ページの先頭へ 次の記事→

行政書士奥本雅史事務所
http://okumoto.tribute-mj.net

介護現場の事務負担軽減に向けて

こんにちは。

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川です。

毎日暑い日が続きますが、いかがお過ごしですか?

もうすぐ甲子園で高校野球の全国大会が始まります。

毎年この時期は夏本番を感じながら、テレビ観戦を楽しんでいます。

   

     

さて、近年では、業務のデジタル化およびテレワーク普及の推進から、行政手続きにおいて押印(印鑑)廃止の動きが進んでいます。

      

また、紙で運用されていた文書・資料を電子化して、業務効率改善やコスト削減を図るペーパーレス化も進んでおり、この流れは今後ますます加速していくことが予想されます。

   

介護現場においても例外ではなく、厚生労働省は、介護施設・事業所と自治体との書類のやり取りを効率化する「電子申請・届出システム」の活用を、全ての事業者に原則として求めていく方針です。

   

「電子申請・届出システム」は、ペーパーワークを少なくして介護現場の事務負担を軽減する施策の一環として、国が主導して進めています。このシステムは、これまで活用されてきた「介護サービス情報公表システム」を改修して構築されました。

   

介護施設・事業所の指定申請、変更届出、更新申請、報酬請求などの手続きに必要な書類の提出を、PCからできるようにする仕組みです。

   

現在、介護報酬の請求は、ほとんどの事業所で電送されていると思いますが、その他の申請は、今でも面倒な紙の提出や郵送、FAXでのやりとりがほとんどです。

    

しかしながら、現状ではほとんどの自治体がまだ調整や準備の段階のようです。厚生労働省は段階的に普及を進める計画で、全国の自治体には、2026年3月までに必要な準備を完了させるよう指導しています。

   

この取り組みに先立って、令和3年度4月から施行された介護報酬改定では、業務負担の軽減を目的として「書面で説明、同意等を行うものについて、電磁的記録による対応を原則認めること」とされました。

   

つまり、紙媒体ではなく電子データでの契約等を認め、今まで必要とされてきた署名や捺印は原則不要となりました。

   

介護事業所は利用者にサービスを提供する際に、契約書やケアプランなど様々な文書に署名・捺印が必要です。そのため、署名と捺印をいただくには、紙媒体である書類を作成しなければなりませんでした。

   

そして、その書類をもって利用者と家族への説明を行い、同意を得て署名捺印をし、控えの交付や事業所での原本の保管、などなど・・・

必要とされる書類を作成する業務は大きな負担になっていましたので、この電子化の流れは大いに歓迎すべきですね。

   

電子データ、電子サインの活用といった新たな対応について、介護事業所としても新しいシステムやソフトを導入するなど準備が必要ではありますが、電子化が進むことで、介護事業所の負担軽減につながることを期待したいと思います。

   

前の記事  ページの先頭↑  次の記事→

2024年問題

こんにちは。奈良県で活動している行政書士武村です。

なんだかビッグモーターがすごいことになってますね。連日ネットニュースで記事を見ます。去年私の身内がここで車を買ったので注目してるんですが、常識で考えると頭がおかしいんじゃないかと思うほどの不正の数々、、、従業員の方も立場上生活がかかっていると目を瞑らなくてはいけないこともあると思うんですが、当たり前のように不正をしているような空気も感じました。このあたり色々と考えさせられますがそれよりも身内の車は大丈夫なんでしょうか。

さて、前回からかなり期間が空いてしまいましたが、今回は「2024年問題」について触れてみたいと思います。

2024年問題とは、すでに開始されている時間外労働の上限規制(罰則あり)が人材の不足している特定の業界(建設業、物流・運送業など)においても2024年4月から適用されることにより、さらなる人材不足やサービス利用者の料金値上げ、また倒産などが加速すると予測される問題です。これについては大手企業などはすでに対策を行っており、積水ハウスなどは大工の数を3倍以上に増やす、また大和ハウスなどはIT技術を活用した業務の効率化により人材不足に対応しようとするなど、様々な方法を試みているようです。

しかし経営体力に乏しい中小・零細企業については資金面や技術面の問題から2024年問題に対応することは容易ではなく、倒産が増大する事態は避けられないと予測されています。

もちろん労働時間の上限を規制することはライフワークバランスの改善や男性の家庭参加など改善すべきといわれている問題について一定の効果を上げる可能性があり良いことだと思っているのですが、一方でさらに諸々の価格が高騰し、かつ企業の倒産が増えるような事態が予測されていることは正直怖さも感じます。

世の中は増税の機運も高まっているように感じますし、自営業者である私は最近ずっと閉塞感を感じています。もう少し好転しないかな。

遺言執行者③

こんにちは、相続手続きと遺言書の作成を専門にしております行政書士の奥本です。


それでは今回も引き続き、遺言執行者について詳しく見ていきましょう。


『法定遺言事項』(遺言書に記載されることにより法的な効果が発生する事項)には、遺言執行者によってのみ執行される事項と、遺言執行者がいる時は遺言執行者が、いない時には遺言執行者に代わって相続人により執行される任意的な事項があります。


遺言執行者によってのみ執行される法定遺言事項は、

①遺言による子の認知
②推定相続人の廃除、又は廃除の取消し
③一般財団法人設立のための定款作成、及び、財産の拠出(一般財団法人設立のために最低 300 万円の財産の拠出が必要)の履行

です。


①は、婚姻関係にない者との間に生まれた子を遺言により認知する場合ですが、この場合、 遺言執行者は就職(就任)した日から 10 日以内に認知の届出をしなければなりまん。

また、認知する子供が成人している場合は本人の承諾が必要で、胎児の場合は母親の承諾が必要な点も注意が必要です。


②の推定相続人の廃除とは、被相続人(遺言者)に対して虐待や重大な侮辱を与えた場合や、推定相続人に著しい非行があった場合などに家庭裁判所に申し立てて相続人から廃除することです。
逆に被相続人の生前にすでに廃除されていた場合、遺言で廃除を取り消すこともできます。


③は、被相続人が自分の財産を使って一般財団法人(財産の管理者が財産を運用し助成活動などを行う法人)を設立する場合です。
法人の設立のためには定款(法人の根本的なルールを定めた物)の作成が必要で、設立者による財産の拠出も必要となるため、これらの行為を遺言執行者が代わって行います。

一方、遺言執行者がいる時は遺言執行者が、いない時は相続人によって執行される任意的な法定遺言事項は、


①法定相続分を超える相続分の指定、特定の遺産を特定の相続人に相続させる遺言
②遺贈、及び、信託の設定
③祭祀主宰者(仏壇やお墓などの祭祀財産を引き継ぎ法要などを執り行う)の指定
④生命保険の受取人の指定・変更


です。

①は、相続した財産のうち法定相続分を超える部分については登記・登録その他の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することはできないと民法で定められているからです。

特定の遺産を特定の相続人に相続させる場合(例えば自宅などの不動産や自動車)も登記・ 登録などの執行行為が遺言の実現のために不可欠であるため、遺言執行者または相続人がそれらの行為を執行する必要があります。


②遺言書に遺贈(被相続人の死亡後に財産を譲ること)する旨が記載されていた場合は、 遺言執行者または相続人が遺贈義務者となります。(遺言執行者がいる場合は、遺言執行者のみが遺贈の履行を行うことができる)

信託(例:信託銀行等に財産を託し、残される妻に毎月 20 万円ずつ給付する)の設定に関しては、遺言書で遺言執行者が指定されている場合は遺言執行者が、指定されていなければ相続人がそれを実現するための行為を執行することになります。


③は、祭祀主宰者を定める方法として、
・被相続人の指定により
・慣習に従って
・(慣習が明らかでない場合は)家庭裁判所が定めると民法第 897 条にあるため、祭祀主宰者が決まらない場合は家庭裁判所に遺言執行者もしくは相続人が申し出る必要があるからです。


④は、生命保険会社に対する手続きを、遺言執行者もしくは相続人がしなければならないということです。


なお、遺言執行者がいる場合には、相続人は相続財産の処分、その他遺言の執行を妨げる行為をする事はできません。
これに違反して行った相続人の行為は無効となります。


さて、遺言執行者の選任手続きについては民法第 1010 条で以下のように定められていま す。

“遺言執行者がいない時、又はなくなった時は、家庭裁判所は利害関係人の請求によって、これを選任することができる。“

遺言執行者が【いない時】というのは、


①遺言者が遺言執行者を指定しなかった時
②遺言執行者の指定の委託を受けた者が委託を辞退した時
③指定された遺言執行者が欠格者である時
④指定された遺言執行者が就職を承諾しない時


です。


また【なくなった時】というのは、死亡、失踪、解任、辞任、資格喪失などの事由が遺言執行者に生じた時です。

このような場合に利害関係人(相続人や受遺者など)は、家庭裁判所に遺言執行者の選任の申し立てを行います。
(※行政書士は裁判所に提出する書類を作成する事はできませんので、ここでは簡単に説明するに留めます。)


管轄は、相続開始地(遺言者の最後の住所地)にある家庭裁判所です。
必要な書類は、申立書、遺言執行者の候補者の住民票、遺言者の戸籍(除籍)謄本、遺言書の写し等です。


ちなみに、遺言執行者によってのみ執行される法定遺言事項が遺言書に記載されているにも関わらず、遺言執行者がいない又はなくなった場合には、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらわなければならないということになります。


次回に続きます。

←前の記事 ↑ページの先頭へ 次の記事→


行政書士奥本雅史事務所

http://okumoto.tribute-mj.net