後見人が決まるまでの流れ ~法定後見~

こんにちは。 行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

 

今回のコラムは法定後見の申し立てから後見人が決まるまでの流れについてお伝えしたいと思います。

 

まず、申立てについて、大まかな流れは次の通りです。

  • 申立て
  • 家庭裁判所で審理
  • 審判
  • 審判確定
  • 後見人が活動を開始

 

慎重な手続きを要しますので、後見人が決まるまでには平均して3~4か月かかります。すぐにでも後見人が必要な状況だと、長い間待たなければなりませんので注意が必要です。

 

では、順番に詳しく見ていきましょう。

 

① 申立て

家庭裁判所に対して後見(保佐・補助)開始の審判の申立てをすることになります。この手続きをする人は申立人となります。

 

法律で申立人になれるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見 監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人、検察官、市町村長、任意後見受任者、 任意後見人、任意後見監督人と決められています。保佐や補助の場合はサポートを受けながら自分で申し立てる方もおられます。

 

申立ての手続きでは、色んな書類を作成しなければなりません。どんな書類が必要になるかは、本人の住民票住所を管轄する家庭裁判所で必要書類一式をもらえますので確認できます。

 

ちなみに奈良家庭裁判所では、「成年後見申立セット」をもらうことができます。必要書類の様式や内容は裁判所によって異なる場合もありますので管轄の家庭裁判所に相談してください。「申立ての手引き」が準備されている場合があります。

 

そして、申立てには色んな書類をそろえる必要があります。

例えば

・申立書(事実関係や事情を説明する書類)

・診断書(本人の判断能力を証明するもの)

・本人の戸籍謄本、住民票

・後見人候補者の住民票

・登記されていないことの証明書

・財産目録及び財産を証明する資料

・収支報告書

・親族同意書

・親族関係図

 

申立て手続きは親族が行うケースが多いですが、これだけの書類をそろえるのは大変な作業です。仕事で時間がとれなかったり、やり方がわからなくて困ってしまうこともあるでしょう。このような場合は弁護士、司法書士といった専門家に手続きを依頼することが可能です。

 

また、これらの提出書類のうち、本人の判断能力を証明する診断書は医師に作成を依頼する必要がありますので、早めに普段の様子をわかってくれている主治医などに依頼しておきましょう。手続きをスムーズに進めるポイントです。この診断書をもとに、成年後見・ 保佐・補助のうち、どの類型で手続きをするのかが決まります。

 

それから、後見人の候補になる人について親族や専門家でお願いしたい人が決まっていれば、申立書に候補者情報を記載出来ます。

 

提出する書類が一通りそろったら、家庭裁判所に申立てをする日時を予約します。 申立ては、申立人、候補者、本人(保佐・補助の場合)で家庭裁判所に出向きます。 提出書類をもとに、家庭裁判所の担当者と面談しながら本人の状況など必要に応じて確認が行われます。本人が高齢や病気などの理由で裁判所に出向けない場合は、担当者が来てくれることもありますので、相談してみてください。

 

家庭裁判所で審理

続いて、提出した書類に基づいて家庭裁判所の中で審理されます。

・申立書類の審査

・調査官による調査

・親族への照会

・必要に応じて精神鑑定

 

家庭裁判所は成年後見人等を選任するにあたり、本人の心身の状態や生活状況、財産の状況をはじめ、後見人候補者のことや、候補者と本人の利害関係の有無などを踏まえて総合的に判断します。

もちろん本人の意向もしっかり確認し、慎重に判断しています。

 

審判

審理が終われば、家庭裁判所は後見(保佐・補助)開始の審判をし、あわせて成年後見人(保佐人・補助人)を選任します。(裁判官が判断します。)

そして、申立てからおよそ1~2か月で「後見(保佐・補助)開始の審判」という審判書が届きます。

 

審判確定

審判書を受け取ってから、結果に不満がある場合は2週間以内に不服申立てをします。ただし、希望した後見人候補者でない人が後見人になったという理由での不服申立てはできません。また、この2週間の不服申立て期間中は、後見人は活動を始めることはできません。

 

⑤ 後見人が活動を開始

不服申立て期間が終わると、ようやく後見人が正式に決定します。

後見が開始されると、法定後見の種類、後見人の氏名、被後見人の氏名などの情報が東京法務局へ登記されます。この登記された内容を証明するのが、登記事項証明書であり、後見人であることの証明書になります。後見人として、銀行や役所の手続きの際にはこの証明書が必要になります。

 

このようにして、後見人が決まり、活動が始まります。 後見人の仕事内容については、また別の機会にお伝えしたいと思います。

また、成年後見制度を利用する際に、かかる費用についても次回以降にお伝えしますね。

 

成年後見制度の利用にあたり、申立てから、後見人が決定するまでの大まかな流れをお伝えしてきましたが、多くの手間と時間がかかる印象を持たれたのではないでしょうか。

身近な人が、認知症などで判断能力が低下した場合、銀行の手続きなどで「後見人をつけてください」と突然言われるかもしれません。このような状況は誰にでも起こりうることです。

 

このような時は、まず落ち着いて、身近な相談窓口へ行ってください。親切に教えてくれるはずです。

地域包括支援センターや社会福祉協議会の後見センターなど、各地域に設置されている相談窓口がありますし、弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士などの専門職団体にも相談できます。また、法テラスも相談にのってくれます。

 

よしかわ事務所でも無料相談を受けておりますので、遠慮なくご連絡ください。

 

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