任意後見契約の3つの類型について

こんにちは。

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

引き続き、今回も任意後見をテーマにお伝えします。

前回は、将来、判断能力が低下したときの備えとして「任意後見契約」の概要をお伝えしました。

その任意後見契約には

「将来型」 「移行型」 「即効型」の3種類があります。

今回は、この3種類の契約の内容とポイントをまとめました。

 

では、順番に説明していきましょう。

  • 将来型

「将来型」とは、本人の判断能力が低下した後における代理権を任意後見人に授与する“任意後見契約のみ”を締結します。任意後見契約の基本型といってよいでしょう。

本人が任意後見契約を締結する時点では十分な判断能力を有しており、本人の判断能力が「不十分」という状況になってはじめて任意後見人の支援を受けることになります。

この契約形態では、任意後見契約を締結してから効力が開始するまでに相当の年月を経る場合、あるいは、判断能力が低下せず、支援の必要性がなく契約の効力が開始せずに終了することも考えられます。

効力が開始するまでの期間は、いわば待機期間となるわけですが、本人と任意後見受任者が接触しないまま長い年月が経つと、色んな不具合が出てきます。

例えば、本人の判断能力が低下したことに気付かず任意後見が始まらないことが考えられます。また判断能力が低下した本人は、任意後見契約を締結したことを忘れてしまい、突然現れた任意後見人に対して不信感を持ってしまう恐れもあります。

本人にとってみれば、いつ認知症になるかもしれないのに、そのことを誰もチェックしてくれないという不安な状態に置かれます。

その不安を解決する方法として、「自分を見守って、もし任意後見開始の時期が来たら速やかに手続きを取ってほしい」ということを依頼する契約を任意後見受任者と結んでおく方法があります。

この契約は「継続的見守り契約」といい、例えば毎月1回は会って話をして本人の生活状況や健康状態を確認するといった内容が考えられます。将来型の任意後見契約の公正証書の中に記載してもよいですし、公正証書によらないことも可能です。

 

  • 移行型

「移行型」とは、任意後見契約を結ぶと同時に、同じ当事者の間で、別途、現時点から任意後見契約がスタートするまでの間も財産管理や本人の身上監護に関する民法上の委任契約(以下、財産管理等委任契約)を結びます。

このような形態は、財産管理等委任契約から任意後見契約に移行することになるため「移行型」と呼ばれます。

本人の判断能力はしっかりしているものの、寝たきりなどで身体的に日常生活で支援が必要な場合には、財産管理等委任契約により支援してもらうことができます。

一般的に言えることは、人はまず、身体的に不自由になりそれからだんだんと判断能力が衰えていくケースが多いです。

例えば、銀行に行くべきだという判断能力はあるが、身体的に行くのがつらくなる段階。これが「財産管理等委任契約」が必要な段階で、銀行に行くべきだという判断能力がなくなったときが、任意後見がスタートするときになります。

したがって、移行型は、この2つの段階に対応できるため、都合のよいものになっています。

このようなことから、財産管理等委任契約と任意後見契約を連結した「移行型」が優れているということで、多くの任意後見契約の希望者から支持されています。

注意点として、財産管理等委任契約は任意後見契約とは別の制度であり、任意後見監督人による監督はありません。

したがって、本人自らが受任者を監督する必要があります。実際に、本人の判断能力が低下しているにもかかわらず、任意後見受任者が、任意後見監督人に監督されることを嫌って任意後見監督人の申立てを行わないまま、財産管理等委任契約による受任者としての権限を乱用するケースも報告されています。

そのため、的確な移行のための措置として受任者の契約の中に義務規定を設けるなどの工夫がされています。

 

  • 即効型

「即効型」とは、判断能力が不十分な状況で任意後見契約を締結し、直ちに家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てをすることで、任意後見契約を発効させるものです。

即効型を利用するメリットとしては、本人が特にその任意後見人を信頼している場合等、法定後見よりも任意後見による支援を選択できることが考えられます。

ただし、本人が任意後見契約の締結に必要な判断能力を有していたか否かが事後的に争われるおそれがあるとの問題が指摘されることがあります。

また、本人に、任意後見契約の内容を十分に理解して締結するだけの判断能力が必要です。

任意後見契約の内容自体は一般的には難しい内容になりますから、例外的に利用されるべき類型と思われます。

 

任意後見契約の3つのタイプについてお伝えしてきましたが、いかがでしょうか。

任意後見は、自分の将来の「もしも」に備えるものです。いざという時に頼れる人が身近にいない、あるいは身近な人に負担をかけたくない、自分のことは最期まで自分で決めたいという人には欠かせないものだと思います。

 

弊所では、任意後見契約についてのご相談をお受けしております。

ご不明な点があれば、お気軽にご相談下さい。

 

 

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