遺言書⑩ ~公正証書遺言 中編~

こんにちは、相続手続きと遺言書作成専門の行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

前回、公正証書遺言のメリットを自筆証書遺言と比較しながら見ていきました。
今回は、公正証書遺言のデメリットとは何かを考えてみたいと思います。

公正証書遺言を作成する際には『2名以上の証人』が必要です。
証人は、遺言書作成の当日に公証人役場へ一緒に行ってもらい、遺言書の作成に立会ってもらいます。

そのため、事前に証人となってくれる人を2名以上探し、依頼しておかなければなりません。
ところが民法には、以下の者は証人になることができないという規定があります。
➀未成年者
➁推定相続人および受遺者、これらの配偶者および直系血族
➂公証人の配偶者、四親等内の親族、書記および使用人

➁を見てもらえばわかるように、一番頼みやすい存在である、近しい親類に頼むことができないのです。

そして、信頼がおけない人物に頼むことも避けないといけません。
証人の役割は、遺言書の内容が遺言者の意思の通り正確に記載されているかを確認し証明することです。つまり、遺言の内容は全て証人に知られてしまうことになります。秘密を絶対に守ってくれる、信頼できる人物でなければ、証人を依頼することができないということです。

万一、遺言書の内容が誰かに漏れてしまえば、財産を狙ったトラブル等が起こる可能性も無いとは言い切れません。

ですので、証人は職務上の守秘義務がある行政書士等の専門家に依頼するのが適切でしょう。また、公証人役場でも証人を紹介してもらうことができます。(費用は別途必要)

それからもうひとつ、費用面の問題があります。
公証人役場で公正証書遺言を作成してもらう際には手数料が必要となります。

これは目的物の価額に応じて、以下の表のように定められています。

目的物の価額

手数料

100万円まで 

5000

200万円まで 

7000

500万円まで 

11000

1000万円まで 

17000

3000万円まで 

23000

5000万円まで 

29000

1億円まで 

43000

1億円を超えて3億円まで

43000円+超過額5000万円まで毎に13000円加算

3億円を超えて10億円まで

95000円+超過額5000万円まで毎に11000円加算

10億円を超える場合

249000円+超過額5000万円まで毎に8000円加算

この手数料は、相続人あるいは受遺者一人あたりのものです。相続人、受遺者が複数人いる場合には、それぞれの人について手数料を算出し合算します。

例えば、妻に2000万円、二人の子供に1000万円ずつの財産を相続させる遺言を作成する場合、

23000円+17000円+17000円=57000円

となります。
これに加えて、目的の価額の総額が1億円以下の場合には、遺言加算といって11000円が加算されます。

上記の例では総額が1億円以下ですので、先程計算した57000円に11000円を加えた68000円が手数料の額となります。

なお、遺言者が病気や高齢等の理由で公証人役場に行くことが出来ない場合には、公証人が自宅や病院に赴き遺言書を作成することもできますが、この場合には手数料は50%加算となり、公証人の旅費や日当も必要になります。

さらに公正証書遺言は、公証人役場で保管される「原本」、遺言者に交付される「正本」と「謄本」の3部が作成されますが原本は3枚を超えた場合1枚毎に250円が加算され、正本、謄本については1枚につき250円が必要です。

以上が、公証人役場に支払う手数料です。

遺言者ご自身で公証人役場とやりとりをする場合には、この手数料で作成できるのですが、実際には行政書士等の専門家に相談して間に入ってもらう方のほうが多いでしょう。
専門家に依頼することで、推定相続人や財産についての調査、必要な書類の準備、遺言書の原案の作成、公証人との打ち合わせ等を任せることができます。
ただし、専門家への報酬は発生します。(当事務所の場合、報酬額は5万円です。また信頼のおける証人も一名1万円でご紹介させていただきます。)

これらの費用(公証人役場の手数料、専門家の報酬、証人の謝礼 等)の総額が公正証書遺言の作成費用となります。

このように費用が高額となってしまうため、『気軽に何度も作り直す』というわけにはいかないのが公正証書遺言のデメリットではあるのですが、遺言書としての確実性、安全性、信頼性においては、現在のところ公正証書遺言が一番優れていると言えます。

しかし、この度の民法改正によって、自筆証書遺言に対する公正証書遺言の優位性が“絶対”とまでは言えなくなるかもしれません。

次回は、それについて触れてみたいと思います。

 

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遺言書⑨ 〜公正証書遺言 前編〜

こんにちは、相続手続きと遺言書作成専門の行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

先週の日曜、平成31年3月3日から、奈良市の各証明書が大手コンビニエンスストアなどで取得できるようになりました。(ただしマイナンバーカードが必要です。)
取得できる証明書は以下のものです。

・住民票の写し
・戸籍全部(個人)事項証明書
・戸籍の附票
・印鑑登録証明書
・課税(非課税)証明書

手数料は窓口と同額ですが、土日祝でも取得することが可能なうえ、利用時間も午前6時半から午後11時までとなっていますので「平日の日中、市役所に足を運ぶ時間がなかなか取れない」という方には嬉しいサービスだと思います。

テクノロジーの進歩が、行政サービスの向上にも繋がって、暮らしがますます便利になっていきますね。

インターネットの普及により、行政手続きの電子化もどんどん進んできました。我々、行政書士も時代の変化に対応できるよう、常に努力をしていかなくてはなりません。

 

さて、それでは遺言書に話を戻したいと思います。今回は、普通方式の中の『公正証書遺言』についてです。

公正証書遺言とは、公証役場公証人が公正証書により作成する遺言のことです。

公証役場という場所は一般の方にはあまり馴染みがないかもしれませんが、公証人(裁判官や検察官を長く務めた者で、公募に応じた者の中から法務大臣が任命する公務員)が公正証書の作成や、株式会社などの定款の認証を行う役場で、奈良県の場合、奈良市と大和高田市にあります。

では、公正証書遺言のメリットとはなんでしょうか?前回ご説明した、自筆証書遺言と比べて見ていきましょう。

まず、自筆証書遺言は自分自身で保管をしなくてはならないため紛失・汚損・災害等による滅失などの恐れ、また第三者によって隠匿・破棄・改ざんなどをされる可能性があります。
それに対して公正証書遺言は、公証役場で遺言書の原本を保管するためその心配がありません。(原則20年間保管、奈良市の公証役場では本人が120歳になるまで保管します。)

次に、自筆証書遺言を自分で作成した場合には、法律で定められた要件を欠いていることにより無効となってしまったり、相続人の遺留分に対する考慮が無かったためにかえって紛争の元となってしまう危険性などがあります。
公正証書遺言は、公証人が内容の確認を十分行った上で作成するため、要件を満たさず無効となる心配や、遺留分その他への配慮も万全です。

さらに、自筆証書遺言は相続が発生した時(つまり遺言者が亡くなられた時)に、相続人が遺言書を裁判所に提出し、検認の手続きをしなければなりません。

しかし公正証書遺言は、裁判所での検認の手続きが不要です。したがって、相続発生と同時にその遺言書は有効となり、相続財産の処分をただちに開始することができます。

なお公正証書遺言の検認手続きが不要なのは、遺言書の原本が公証役場で保管されているため改ざんされる恐れが無いこと、また公証人が公正証書を作成するにあたっては、公証人法による厳格な職務規定がおかれているため、遺言の内容をあらためて検証する必要が無いから、という理由です。

最後に、自筆証書遺言は全文自筆(財産目録を除いて)が要件ですので字が書けない方は作成することができませんが、公正証書遺言は公証人に内容を口授することで作成できますので、字が書けない方でも作成が可能です。(もしお話しもすることが出来ない場合には通訳者による通訳(手話通訳等)により作成することも可能です。)

自筆証書遺言と比べてこのようなメリットを持っている公正証書遺言ですが、デメリットはないのでしょうか。

これについては次回見ていきたいと思います。

 

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遺言書⑧ 〜自筆証書遺言 後編〜

こんにちは、相続手続きと遺言書作成専門の行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

今回も引き続き、自筆証書遺言についてお話しをいたします。
まずは簡単におさらいをしておきたいと思います。

自筆証書遺言とは読んで字のごとく、全文を自筆により作成する遺言書のことでした。
本文の内容はもちろん、日付と氏名を自書して、押印をすることが必要です。

《自筆証書遺言の作成例》

また自筆証書遺言は相続開始後、遅滞なく家庭裁判所で検認を受けなければなりません。(封印されていた時は開封せずに家庭裁判所へ提出します)
違反した場合は五万円の過料が科されます。

前回はこの検認手続きまでご説明をいたしました。

さて、自筆証書遺言には変更や誤りがあった場合の訂正の方法にも厳格な要件が求められています。ここでもう一度要件を見てみましょう。

《要件》
①遺言者が全文、日付、氏名を自書し、印を押す。
②加除その他の変更は、遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記してこれに署名し、かつその変更の場所に印を押す。

要件の②、言葉を書き加えたり削除したりする場合には、その場所を指示して押印をし、変更した旨を付記してさらに署名をしなければなりません。

《加除その他の変更の例》

この例のように、訂正した行の欄外に「本行2字加入」と記載し署名をする方法や、遺言書の末尾に『付記』として「本遺言書◯行目中 ◯◯を△△と訂正した」等と記載し署名をする方法などがあります。
いずれの場合でも、署名が無ければ加除訂正は無効となってしまうため注意が必要です。

このように、自筆証書遺言は費用がかからないというメリットがある一方で、作成には厳格な要件が求められているため要件を欠いて遺言書が無効になってしまうというケースを招く恐れがありました。

その点も踏まえ、昨年の民法改正では自筆証書遺言の要件が緩和されることとなりました。(施行は平成31年1月13日から)

これまでは全文自筆であることが求められていたため、財産の目録も当然すべて自筆で書かなければなりませんでした。

しかし不動産を多数所有している場合などは、そのすべてについて所在や地番等を細かく記入する必要があり、大変な労力がかかるとともに、誤記が発生する可能性などもありました。

そこで今回の改正では、財産目録を添付する場合には、ワープロで作成したものや、第三者によって代筆されたもの、また不動産登記事項証明書や銀行の預金通帳等の写し(コピー)でも良いとされました。

ただし、その目録が複数枚に渡る場合はそのそれぞれに署名押印をしなければなりません。また目録が両面になる場合は、裏表とも署名押印が必要です。

なお、財産目録の加除訂正に関しても変更箇所の指定と押印、変更した旨の付記と署名が必要となります。

このように、自筆証書遺言はその要件によく注意をすれば、ご自分で作成することもできます。

しかし、将来的な争いを招かないようによく検討された遺言書を作るためには、やはりプロのアドバイスが必要となります。

当事務所では自筆証書遺言の作成についてのご相談もお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

 

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遺言書⑦ 〜自筆証書遺言 前編〜

こんにちは、相続手続きと遺言書作成専門の行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

2018年も残すところあと10日ほどとなりました。
年末年始となれば、普段は離れて暮らしているご家族が実家で集まるという方も多くおられるのではないでしょうか。

せっかく家族が顔を合わせる機会ですので『相続や遺言書の話なんて縁起が悪い』などと言わず、一度じっくりそんな話をされてみてはいかがでしょう。

とは言え、、、現実にはなかなか話しづらいものですよね。

でも例えば、「親父は株をやってないの?」とか「自分が(存在を)聞かされてない土地とか無いよね?」などという財産に関する話題をそれとなく切り出してみたり、親戚で相続が起こった場合には相続人の関係はどのようになるのかをみんなで一緒に考えてみるといったことが、話の良いきっかけになるかもしれません。
また、エンディングノートを持参して記入を(あえて)手伝ってもらうというのも一つの手です。

自然な話の流れの中で、自分達の相続について客観的に見つめることができれば大変有意義だと思いますし、そこまで話が進まなかったとしても何か知らなかった新事実が一つ確認できただけで大成功です。

昨今、相続や遺言書に対する意識は徐々に高まりつつありますが、一般的にはまだまだ敬遠されがちな話題でしょう。相続の時に必要な財産などの情報について、一度に全部を聞くことは無理だったとしても、少しずつでもいいので確認をしていくことが大事だと思います。
この年末年始にはぜひ試してみてください。

さて、今回からは『普通方式』の遺言書についてお話しします。遺言書には、死を覚悟した時になってから書くものだけではなく、ある『思い』が生まれた時に書くものもあります。
例えば相続の時に家族が揉めるのを防ぎたい、自分の死後には財産をこう使って欲しい、そういった思いが生まれた時にそれを実現するため『早いうちから』準備をしておくのが普通方式の遺言書です。

普通方式の遺言書には、「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」「公正証書遺言」の3つがあります。

まずは自筆証書遺言についてです。
この自筆証書遺言は、この度改正される民法で要件が緩和されることになりました。しかし、改正民法が施行されるまでの間に作成された遺言書に関しては現行の民法の規定が適用されますので、今回は執筆時点(2018年12月21日)の現行の民法に則ってお話しをいたします。

自筆証書遺言は、文字通り遺言者本人が全文を自筆により作成するものです。

自分で書いて自分で保管するため、費用も特にかからず一番手軽に作成できるのですが、作成に当たっては法律で要件が厳格に定められており、その要件を満たしていなければせっかく書いた遺言書が無効になってしまう場合があります。民法第968条で定められている自筆証書遺言の要件は以下の通りです。

《要件》
①遺言者が全文、日付、氏名を自書し、印を押す。
②加除その他の変更は、遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記してこれに署名し、かつその変更の場所に印を押す。

全てを自筆で作成するのは、遺言者の最終意思、真意を尊重し、偽造や変造を防止するためです。
したがって、パソコン、ワープロ、タイプライター等により作成することや、他人に代筆させることはできません。

また日付についても遺言者の自書が必要とされています。これは、遺言作成時の遺言者の遺言能力の有無(遺言能力が無い場合の例: 遺言作成時に15歳に達していない、認知症や精神疾患により意思能力がないと判断される場合)や、内容が異なる複数の遺言がある場合に、その先後を明らかにするためです。日付が無い遺言は無効となります。

日付は年月日を明らかにして記します。西暦、元号はどちらでも構いません。日付は遺言の成立の日が確定できれば問題ないので「平成○○年の私の誕生日」「還暦の日」などという記載でも構いません。

ただし、「○月吉日」という記載は日付の特定を欠くものとして裁判では無効と判断されています。

押印も原則として遺言者自身がしなければなりません。印鑑については認印でも構いませんが、実印がより望ましいです。

また自筆証書遺言は、遺言の保管者がいる場合には保管者が、いない場合には遺言書を発見した相続人が相続の開始を知った後遅滞なく、家庭裁判所に『検認』を申し立てる必要があります。

検認は遺言の有効・無効を判断するものではなく、家庭裁判所が相続人に対して遺言の存在を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名などを確認してあとから偽造されたり変造されたりすることを防ぐためのものです。検認を経ないで遺言を執行した場合は5万円以下の過料が科されます。
もし遺言書が封印されている場合は、家庭裁判所で相続人またはその代理人の立会いのもとに開封しなければなりません。違反すると5万円以下の過料が科されます。

少し長くなりましたので、続きはまた後編で。

 

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遺言書④ ~死ぬ前に書くもの?〜

こんにちは、相続手続きと遺言書作成専門の行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

遺言書は死ぬ前に書くもの、であることは間違いありません。

でも『死ぬ前=死の直前のこと』かというと、そうである場合とそうで無い場合があります。
今回は遺言の【方式】についてのお話です。

死ぬ直前に書く、と聞くと”遺書”をイメージされるかもしれません。では遺書と遺言書はどのように違うのでしょうか?

遺書は、例えば自分が死を覚悟したとき、これまでの思いを綴ったり、家族や友人に宛てたメッセージなどを記したもので、あくまで私信といえます。

一方、遺言書は民法という法律によって、書き方や作成の方法、遺言で実現できる内容などが細かく定められている法的な文書なのです。

遺書には法的な効力は一切ありませんが、遺言は遺言者の最終意思を尊重し実現するための制度ですので、遺言書に書かれた内容には法的な効力があります。

遺書に「誰々に財産を譲る」と書いてあったとしても、それは単なる本人の希望に過ぎずその通りに財産を処分する必要はありませんが、遺言書に書かれていた場合はその意思通りに財産処分が実現されます。(前回お話ししたように相続人の遺留分を侵害しない範囲で、ということになりますが)

このように遺書であればノートに走り書きで書いても、音声で録音しても、動画に撮るのもまったくの自由ですが、遺言書は民法で定められた方式で書くことが必要です。

民法が定める遺言書の方式には【特別方式】と【普通方式】という二つの方式があります。

普通方式というのは死期が近い遠いに関わらず将来の備えとして作成するものですので、いつでも作成することができます。

特別方式というのは普通方式で遺言書を作成することができない、特別の場合に認められているもので、死の直前に書くというイメージに近いと言えるでしょう。
特別方式で遺言書を作成することが認められるのは以下の4つの場合です。

(1)死亡危急の場合(民法 976条)
病気などで死亡の危急に迫った者が遺言をする場合は、証人が3人以上立会い、そのうちの1人に遺言者が遺言の趣旨を口頭で述べ、その証人が筆記した後に遺言者と他の証人に内容を読み聞かせ、または閲覧させ、各証人がその筆記が正確なことを承認して署名捺印をすることで成立する。(成立後20日以内に家庭裁判所の確認を受けなければ効力を生じない。)

(2)伝染病で隔離されている場合(民法 977条)
伝染病のため行政処分により隔離された場所にいる場合は、警察官1人と証人1人以上の立会いによって遺言書を作成することができる。なお遺言者、筆記者、立会人、証人は、各自遺言書に署名捺印しなければならない。

(3)在船者の場合(民法 978条)
航海中の船の中にいる場合は、船長または事務員1人と証人2人以上の立会いによって遺言書を作成することができる。なお遺言者、筆記者、立会人、証人は、各自遺言書に署名捺印しなければならない。

(4)船舶遭難の場合(民法 979条)
船舶が遭難し死の危険が迫った場合は、証人2人以上の立会いによって口頭で遺言をすることができる。船舶遭難の状況がやんだ後(証人が生還したとき)に証人が内容を筆記し、署名捺印し、かつ証人の1人または利害関係人から家庭裁判所に請求して確認を受けることによって効力が発生する。(この方式は、航空機の遭難の場合にも準用される。)

(※ 特別方式の遺言は普通方式で遺言書を作成することが出来ない場合の臨時的なものですので、遺言者が普通方式で遺言書を作成できるようになった時から6ヶ月間生きていたときは失効します。)

このような状況は頻繁に起こるというものではありませんが、遺言書とはこんな緊急の場合でも方式を守ることが厳格に求められているということはお分かりいただけたかと思います。

遺書と遺言書の違いを知ることで、『遺言書なんて縁起が悪い』という印象が変わり『将来の為に必要なもの』と思ってくだされば幸いです。

 

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遺言書③ ~遺留分について考える~

こんにちは、相続手続きと遺言書作成専門の行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

さて今回は、”遺留分(いりゅうぶん)”についてお話ししたいと思います。

亡くなられた方がもしも遺言書を作成していなかった場合、相続をすることになった人(相続人)は、亡くなった方(相続される側なので被相続人と言います)の財産から、法定相続分の財産をそれぞれ相続する権利を持つことになります。(法定相続分に関しては『相続⑥』をご覧ください)

しかし遺言書で財産の分け方を指定すれば、被相続人の意思が尊重され、法定相続分とは違う割合で分けることができます。

ですがもしも被相続人が『全財産を愛人の○○○○に譲る』という内容の遺言書を遺して亡くなられ、この遺言の通りに財産の処分が行われたとしたら、後に遺された家族の生活がおびやかされてしまう可能性があります。そこで民法では、相続人が一定の割合の相続財産を”遺留分”として確保できることと定めています。

ではどれだけの割合が遺留分となるのでしょうか。

まず相続財産(※)の2分の1が遺留分全体の額となります。(ただし相続人が直系尊属(父母または祖父母)のみである場合は3分の1。また相続人のうち、被相続人の兄弟姉妹には遺留分はありません。)

その遺留分全体に、各相続人の法定相続分の率をかけたものがそれぞれの相続人の遺留分となります。

それでは私の場合を例に考えてみます。

私の家族は父と母と弟で、祖父母はすでに他界しています。また、父は飲食店を経営しています。
財産は、店舗兼住宅の土地と建物、店舗の設備等をあわせて1500万円、現金資産が300万円の合計1800万円とします。
父が亡くなった場合の相続人は母・弟・私の三人です。

もしも遺言書を書かずに父が他界した場合には、法定相続分通りの

母 900万円(2分の1)
弟 450万円(4分の1)
私 450万円(4分の1)

という財産をそれぞれ取得する権利が発生します。

しかしもし私が、父の事業を引き継ぐことになった場合、店舗物件は私が相続しなければ事業を続けられません。

ここで現金資産が豊富にあれば、母と弟で分け合ってもらえるのですが、現金資産は300万円しかありませんので、母と弟には私から足りない分の現金を支払うという『代償分割』をすることなどが考えられます。

代償金の額は、

900万円(母)+450万円(弟)=1350万円

となり、

1350万円一300万円(現金資産)=1050万円

で、1050万円が不足しています。これはポンと出せるような金額ではありません。

父の事業をスムーズに引き継いでいくためには、例えば受取人を私とした死亡保険金1000万円の生命保険に父に入っておいてもらい、その補填に当てるなどの事前対策も必要でしょう。

また事前対策という点では、遺言書も非常に有効です。

遺言書であれば、店舗物件を私に、母に現金200万円、弟に現金100万円をそれぞれ相続させるという指定をすることもできます。
ただここで問題になってくるのが遺留分です。遺言書で指定された財産の取り分が遺留分より少ない額だった場合、各相続人は遺留分を請求する権利『遺留分減殺請求権(いりゅうぶんげんさいせいきゅうけん)』を行使することができます。

この例では、財産の2分の1の900万円が遺留分全体の額となり、それに法定相続分の率をかけた

母 450万円
弟 225万円
私 225万円

がそれぞれの遺留分となります。

この場合不足額は、

450万円(母)+225万円(弟)一300万円(現金資産)=375万円

となります。

ちなみに遺留分減殺請求権を行使するかどうかは相続人の自由です。

ですが不足分の手当てについては、やはり事前に考えておかないといけません。

このように遺言書で相続財産の分け方を指定する場合には、各相続人の遺留分以上をそれぞれに確保させることを考えなければ、後々争いを引き起こすことにもなりかねず、せっかく作った遺言書もムダになってしまう可能性があります。

相続対策のために必要なのは、まず相続についての正しい知識を持つこと、そして家族でよく話し合っておくことです。

相続について何か気にかかることがありましたら当事務所までお気軽にご相談ください。

(※)遺留分の場合、相続開始前の1年間に贈与された財産も含めて計算する

 

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相続⑧ ~相続 まとめ~

こんにちは、相続手続きと遺言書作成を専門にしている行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

これまで7回に渡って相続についてのお話をしてきました。今回はここまでをおさらいし、相続手続きのまとめをしてみたいと思います。

まず最初に「相続は、人がお亡くなりになれば必ず発生するものである」ということです。
財産がたくさんあるお金持ちの人だけに起こるものではなく、誰にも等しく関係があります。(詳しくは~相続①~で)
そして、相続の手続きに入るまでには、葬儀はもちろん、たくさんの届け出や手続きがあります。(詳しくは~相続②~で)

ここで特に忘れないでいただきたい点は、『死亡届』は提出する前に、必ずコピーをとっておくということです。提出した死亡届は原則として非公開となり、特別な事由がなければ写しの交付を請求することができません。死亡届は様々な手続きで必要となりますので十分ご注意ください。

次に、相続の『3つの締め切り』についてお話ししました。
一つ目の締め切りは”3ヶ月以内”で、相続放棄あるいは限定承認の申述を行う期限です。(詳しくは~相続③~で)
相続の放棄または限定承認を決めるためには『遺言書の調査』『相続人の調査』『財産の調査』の3つの調査が必要です。

まずは被相続人が遺された遺言書があるかどうかを調べます。

次に相続人を調査するために、被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍を取得します。(詳しくは~相続④~で)

そして財産の調査を行いますが、その際には正の財産はもとより、借金などの負の財産にも気をつけなければなりません。(詳しくは~相続⑤~で)

3つの調査が完了すれば、放棄するか承認するかを判断することができます。
またこの調査により二つ目の締め切り、”4ヶ月以内”に行わなければならない『準確定申告』をする準備も概ね整います。

財産を相続することにした場合は、相続人全員で遺産分割協議という話し合いを行い、相続分を決めます。遺産は民法で定められた法定相続分に従って分けられることになりますが、相続人全員の同意があれば異なる割合で自由に分けることもできます。

しかしここでは、「財産が少ないほど揉める」ということもお話ししました。財産の多い少ないに関わらず、”相続の準備は必要“ということを覚えておいてください。(詳しくは~相続⑥~で)

三つ目の締め切りは”10ヶ月以内”です。これは相続税の申告と納税をする期限です。遺産分割協議はこの期限内に完了することが望ましいです。(詳しくは~相続⑦~で)

相続の手続きは、このようにとても複雑です。
さらには、それぞれご家庭の事情も違うため、100人おられれば100種類の相続の形があります。

相続の際には、ぜひお早めにご相談ください。

できるだけ早い段階から伴走させていただくことで、争いなどを未然に防ぐことにつながります。

また、相続は発生する前の準備や対策も大切です。

なにか心配ごとがありましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。

 

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相続⑦ 〜 最後の締め切り 〜

こんにちは、相続手続きと遺言書作成専門の行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

さて、前回のコラムで「遺産分割協議は10ヶ月以内にすることが望ましい」というお話しをしました。

それは相続の3つ目の締め切りである『相続税の申告と納付』の期限が10ヶ月以内だからです。

(税務申告は行政書士の業務ではありませんので、相続税については軽く触れます。)

じつは相続税には控除があり、財産の総額がその控除額以内であれば相続税額は「0」となり、相続税を払う必要はありませんし、申告もしなくて構いません。

では財産の総額が控除額以内の方は3つ目の締め切りは関係ないのか、というとそうとは言い切れません。税額が「0」でも申告をしなければならない場合があるからです。

そして相続税の申告のためには、遺産分割協議を済まさなければいけません。遺産の分け方が決まらなければ、相続税の計算ができないからです。

「でも、2つ目の締め切りからは半年も期間があるし、さすがに話し合いもまとまるのでは?」と思われるかもしれません。

しかし遺産分割協議は相続人全員で話し合うことが必要です。また遺産分割協議では『寄与分』と『特別受益』というものも考慮しないといけないのです。

寄与分とは、たとえば相続人の方が被相続人の事業を手伝ったり、被相続人を引き取って面倒をみたりして、被相続人の財産の増加に貢献したり財産の維持について特別の寄与があった場合に、法定相続分を超える財産を取得させるという制度です。(財産の増加、維持に『特別の寄与』をしたことが必要とされているため、単に身の回りの世話をした等では認められません。)

特別受益とは、相続人の方が被相続人から受けた資金援助や、遺贈(遺言により財産を受け取る)などによる特別な利益のことです。

被相続人から相続人に対して、大学や留学のための学費や住宅の購入資金などの援助があったとき、特別受益に当たる可能性があります。
特別受益を受けた相続人が、もし法定相続分通りに相続したとすると、他の相続人との間で不公平が生れます。

そこで、特別受益があった場合には『特別受益の持ち戻し』という計算を用いて相続分の調整を行います。特別受益を受けた相続人の法定相続分から、特別受益の金額を差し引くわけですが、以下のような計算をします。

①特別受益の金額と、相続財産の金額を合計します(『みなし相続財産』といいます)

②法定相続分で分割した金額を計算します

③特別受益があった相続人の相続分から特別受益の金額を差し引きます

※ ①に関して、特別受益のうち、遺贈については相続財産に含まれていますので加算はしません。


例)

相続財産1200万円を兄弟3人で分ける(法定相続分では平等に400万円ずつ。ただし長男が被相続人から300万円の資金援助を受けていた)

みなし相続財産(相続財産➕特別受益)=1500万円

一人当たりの法定相続分(みなし相続財産➗3人)=500万円

長男の取得分(一人当たりの相続分➖特別受益分)=200万円

相続分は、長男が200万円、弟2人が500万円ずつ


 

このような寄与分、特別受益については各相続人で主張が食い違うケースもしばしば見受けられ、遺産分割協議が長引いてしまう原因ともなっています。

他にも、親子や兄弟姉妹の間柄であっても感情的なもつれがある場合や、相続人が疎遠な親類である、または海外など遠方に住んでいる場合など、思った以上に時間がかかってしまう原因はたくさんあります。

ところが10ヶ月以内に相続税の申告をしないと、【配偶者の税額軽減】と【小規模宅地等の特例】という2つの特例を受けることができなくなるのです。

【配偶者の税額軽減】とは、配偶者は相続する財産が、法定相続分以下か1億6000万円までなら税額が控除されるという制度です。

【小規模宅地等の特例】は、被相続人が居住していた宅地を相続する際、一定の条件を満たした場合に評価額を80%減額するというものです。

どちらも非常にお得と言える制度ですが、適用を受けるためには相続税の額が「0」でも申告をしなければなりません。

「相続財産の総額は基礎控除の額を超えているけれど、この制度を適用すれば控除額以内におさまるから」と思われたとしても、相続税の申告はしなければなりませんのでご注意ください。

※ 相続税の基礎控除=3000万円➕600万円✖法定相続人の数(例えば相続人が、配偶者と子供2人の場合なら4800万円まで非課税)

次回は、相続についてのまとめをしてみたいと思います。

相続⑧につづく、、、

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相続⑥ ~少ないほど揉める?~

こんにちは、相続手続き・遺言書作成専門の行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

それでは今回は遺産分割協議のお話をしたいと思います。

ですがその前に、相続手続きの3つの期限の内の2つ目、【4ヶ月】について少しだけ触れておきます。

1つ目の期限は、相続の放棄や承認を決める3ヶ月という期限でした。次の期限は、相続の開始から4ヶ月以内に準確定申告をするという期限です。生前に確定申告が必要だった方、例えば自営業をされていた方や、亡くなった年の給与所得が2000万円以上だった方、年金受給者であれば一年間の受給額が400万円以上の方(400万円未満であっても、それ以外の収入が20万円以上あった方)は準確定申告をする必要があります。

準確定申告のためには、収入の金額を確定しないといけませんし、申告書は相続人の連名で提出しなければいけませんので、相続人の確定も必要です。

ここまで順を追って手続きをしていれば、財産と相続人の確定はできていますので、準確定申告への備えも整っているはずです。
(準確定申告は税理士さんの業務範囲ですので、説明はこの辺にいたします)

それでは、遺産分割協議の話に戻りましょう。遺産分割協議とは、読んで字のごとく「遺産の分け方を決めるための話し合い」です。

この話し合いは、相続人全員で行います。

遺産の分け方は、遺言書が無い場合は『法定相続分』という割合によって分けると民法で定められています。

相続人には順位があり、法定相続分は順位によって取得できる割合が決まっています。その相続人となるのは、まず配偶者と第1順位の方、第1順位の方が誰も(代襲相続者も含めて)いなければ、配偶者と第2順位の方、第2順位の方も誰もいなければ、配偶者と第3順位の方へと順位が移っていきます。
各順位の法定相続分の割合は以下のようになります。


配偶者は2分の1、残りは子(すでに亡くなっている方がいる場合等は孫、孫も亡くなっている場合等はひ孫)へ

 ※子(または代襲相続をする孫、ひ孫)が複数人いる場合は均等に分ける


配偶者は3分の2、残りは親(両親共に亡くなっている場合は、祖父母)へ

 ※父母(または祖父母)が複数人いる場合は均等に分ける


配偶者は4分の3、残りは兄弟姉妹(すでに亡くなっている方がいる場合等は甥、姪)へ

 ※兄弟姉妹(または代襲相続をする甥、姪)が複数人いる場合は均等に分ける


さて、法定相続分の割合が分かったところで、次は実際の分け方について考えてみたいと思います。

例えば一番上の図のように、夫婦と子ども二人のご家庭でご主人が亡くなった場合で、財産が1000万円の現金のみであったとします。

この場合、奥さんは2分の1の500万円、子ども二人が4分の1の250万円ずつを相続します。

これは簡単です。

では、同じく夫婦と子ども二人のご家庭で、今度は財産が評価額800万円の自宅と現金200万円だったらどうでしょう。合計金額は同じ1000万円になりますが・・・。

子どもがすでに独立しているとすれば、自宅は奥さんが住み続けて、現金を子ども二人で100万円ずつ・・・?

もちろん、全員がそれで納得すれば、その分け方でも構いません。

しかし、法定相続分としては、子どもに250万円を取得する権利があるのです。

もしも子どものうちの一人でもその権利を主張すれば、この遺産分割協議は簡単にまとまりません。

このような場合、奥さんご自身の財産から子どもに、さらに150万円ずつを上乗せして250万円にして支払う方法(代償分割)や、自宅を800万円で売却して現金1000万円としてから法定相続分通りに分ける(換価分割)という方法を取るなどの必要があります。

このように、遺産分割協議がまとまらないケースは、主な財産が自宅などの不動産で、分けやすい現金があまり無いという場合に起こりやすいと言えます。
裁判所が公表している司法統計では、平成28年に裁判所に持ち込まれた相続の争いは、財産額1000万円以下が33%、1000万円から5000万円までが42%となっており、財産額5000万円以下が実に全体の75%を占めています。

「うちは財産がないから関係ない」とは決して言えません。
むしろ、「少ないほど揉める」とも言えます。

ですが、この揉め事を防ぐために【遺言書】が非常に有効なのです。

(遺言書については、また後日このコラムで)

 

もちろん、「うちの家族は仲が良いので大丈夫!」という方もたくさんおられるでしょう。

穏便に話し合いが運べば、それに越したことはありません。

スムーズに遺産の分け方の話し合いがまとまれば、各自が相続することになった財産を記載して、そこに相続人全員の署名と実印を押した『遺産分割協議書』を作成します。遺産分割協議書は同じ物を相続人の人数分作成し、各自一通ずつ所持します。

その遺産分割協議書を持参することで、不動産の登記や、銀行口座や自動車などの名義変更の手続きを行うことができます。

なお、遺産分割協議は10ヶ月以内にすることが望ましいです。

次回は、その理由についてお話ししたいと思います。

 

相続⑦につづく、、、

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相続⑤ ~正も財産、負も財産~

新年あけましておめでとうございます。
皆様にとって2018年が素晴らしい年となりますよう心よりお祈り申し上げます。

あらためまして、相続手続きと遺言書作成を専門としております行政書士奥本雅史事務所の奥本です。
昨年から相続についてのお話を連載してきましたが、ここで少しおさらいをしたいと思います。

まず相続は、人がお亡くなりになれば”必ず”発生するものだということ、そして相続手続きの最初の締め切り『3ヶ月』というものがあることをお話ししました。それは「相続放棄」「限定承認」「単純承認」を決めなければならない締め切りで、葬儀や埋葬などの段取りにも慌しく追われる中、死亡届をはじめとする行政機関への手続きや、公共料金等の各種手続きなどを行い、さらにその準備を進めていかなければならない、ということでした。
また、放棄か承認かを決めるためには「遺言書」「相続人」「財産」の3つの調査を行わなければならず、まずは相続人を確定するために亡くなられた方(被相続人)の戸籍謄本を取得しなければならない、というところまでお話ししました。

被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本を全て集めると、ようやく相続人を確定することができます。(本当はもう少し詳しく説明しなければならないのですが、また別の機会に改めてご説明させていただきます。)

次にしなければならないのは、相続財産を確定するための財産の調査です。

相続財産に含まれるものは、現金や預貯金、株券や国債などの有価証券、建物や土地等(田畑、森林なども含む)の不動産、ゴルフ会員権、絵画等の美術品、高級な家具類や骨董品、貴金属類、自動車、生命保険(生命保険が相続財産となるのは、亡くなられた方自身が契約者として保険料を支払っていて、死亡保険金の受取人が「被相続人自身」または「指定されていない」という場合です。被相続人以外の方が受取人として指定されている場合は、その方の固有の財産となりますので相続財産には含まれません。)などのほか著作権や特許権などもあります。

また、人に貸しているお金(貸付金)や、貸金庫に預けてある金品なども相続財産に含まれますので、忘れないように調査をしなければなりません。

最近では、ネット銀行を利用されている方もたくさんおられます。ネット銀行の場合には通帳が存在しないので、見落とさないよう十分な注意が必要です。

そして相続財産には、正の財産だけでなく、借金などの負の財産もあります。
ローン等の借入金、クレジットカードのリボ払いやキャッシングの残債、滞納されている税金なども相続財産に含まれます。
ほかにも要注意なケースとして、被相続人が誰かの借金の保証人になっていた、という場合も考えられます。知らずに相続をすると、保証人として返済する義務も引き継ぐことになります。

こうして全ての財産を調べ相続財産が確定できれば、ようやく相続をするのか、放棄するのかの判断をすることができます。

財産よりも借金が明らかに多い場合は、「相続放棄」の申述を家庭裁判所に行うことで、全ての財産を放棄することもできます。(相続放棄をした方は、この相続について最初から相続人ではなかったものとみなされます。)

また財産よりも借金の方が少ない場合は、「限定承認」をすることもできます。これは、~相続➂~で説明したように、財産から借金等を差し引いた残りの部分のみを相続するというものです。ただし、限定承認は相続人全員が共同して家庭裁判所に申述を行わなければなりません。相続人の中の一人でも単純承認をした場合は限定承認はできなくなります。

3ヶ月以内に相続放棄も限定承認も行わなかった場合は「単純承認」したものとみなされ、正の財産も負の財産も含めた、全ての財産を相続することになります。

なお、~相続➀~で”相続手続き完了までに現金や預貯金を使ってしまうと相続放棄ができなくなる場合がある”とお話ししましたが、相続人が相続財産の一部であっても処分した場合は単純承認したものとみなされ、その相続人は相続放棄ができなくなります。(例外として、一般的な額の葬儀費用の支出は認められます。)

いかがでしょう。

これだけの調査を、3ヶ月以内にしなければなりません。

時間的な制約がある中でこれだけの作業をしなければならないのは、物理的にも精神的にもかなりの負担となります。

私は、できるだけ早い段階で専門家にご相談されることをおすすめいたします。

私たち行政書士は、職権で戸籍の収集を行うことができます。
そして財産調査のお手伝いや、この次にお話しする遺産分割協議書も作成いたします。
まずはお気軽に行政書士にご相談ください。

それでは次回は、遺産分割協議書についてお話ししたいと思います。

相続➅へつづく、、、

 

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