相続⑤ ~正も財産、負も財産~

新年あけましておめでとうございます。
皆様にとって2018年が素晴らしい年となりますよう心よりお祈り申し上げます。

あらためまして、相続手続きと遺言書作成を専門としております行政書士奥本雅史事務所の奥本です。
昨年から相続についてのお話を連載してきましたが、ここで少しおさらいをしたいと思います。

まず相続は、人がお亡くなりになれば”必ず”発生するものだということ、そして相続手続きの最初の締め切り『3ヶ月』というものがあることをお話ししました。それは「相続放棄」「限定承認」「単純承認」を決めなければならない締め切りで、葬儀や埋葬などの段取りにも慌しく追われる中、死亡届をはじめとする行政機関への手続きや、公共料金等の各種手続きなどを行い、さらにその準備を進めていかなければならない、ということでした。
また、放棄か承認かを決めるためには「遺言書」「相続人」「財産」の3つの調査を行わなければならず、まずは相続人を確定するために亡くなられた方(被相続人)の戸籍謄本を取得しなければならない、というところまでお話ししました。

被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本を全て集めると、ようやく相続人を確定することができます。(本当はもう少し詳しく説明しなければならないのですが、また別の機会に改めてご説明させていただきます。)

次にしなければならないのは、相続財産を確定するための財産の調査です。

相続財産に含まれるものは、現金や預貯金、株券や国債などの有価証券、建物や土地等(田畑、森林なども含む)の不動産、ゴルフ会員権、絵画等の美術品、高級な家具類や骨董品、貴金属類、自動車、生命保険(生命保険が相続財産となるのは、亡くなられた方自身が契約者として保険料を支払っていて、死亡保険金の受取人が「被相続人自身」または「指定されていない」という場合です。被相続人以外の方が受取人として指定されている場合は、その方の固有の財産となりますので相続財産には含まれません。)などのほか著作権や特許権などもあります。

また、人に貸しているお金(貸付金)や、貸金庫に預けてある金品なども相続財産に含まれますので、忘れないように調査をしなければなりません。

最近では、ネット銀行を利用されている方もたくさんおられます。ネット銀行の場合には通帳が存在しないので、見落とさないよう十分な注意が必要です。

そして相続財産には、正の財産だけでなく、借金などの負の財産もあります。
ローン等の借入金、クレジットカードのリボ払いやキャッシングの残債、滞納されている税金なども相続財産に含まれます。
ほかにも要注意なケースとして、被相続人が誰かの借金の保証人になっていた、という場合も考えられます。知らずに相続をすると、保証人として返済する義務も引き継ぐことになります。

こうして全ての財産を調べ相続財産が確定できれば、ようやく相続をするのか、放棄するのかの判断をすることができます。

財産よりも借金が明らかに多い場合は、「相続放棄」の申述を家庭裁判所に行うことで、全ての財産を放棄することもできます。(相続放棄をした方は、この相続について最初から相続人ではなかったものとみなされます。)

また財産よりも借金の方が少ない場合は、「限定承認」をすることもできます。これは、~相続➂~で説明したように、財産から借金等を差し引いた残りの部分のみを相続するというものです。ただし、限定承認は相続人全員が共同して家庭裁判所に申述を行わなければなりません。相続人の中の一人でも単純承認をした場合は限定承認はできなくなります。

3ヶ月以内に相続放棄も限定承認も行わなかった場合は「単純承認」したものとみなされ、正の財産も負の財産も含めた、全ての財産を相続することになります。

なお、~相続➀~で”相続手続き完了までに現金や預貯金を使ってしまうと相続放棄ができなくなる場合がある”とお話ししましたが、相続人が相続財産の一部であっても処分した場合は単純承認したものとみなされ、その相続人は相続放棄ができなくなります。(例外として、一般的な額の葬儀費用の支出は認められます。)

いかがでしょう。

これだけの調査を、3ヶ月以内にしなければなりません。

時間的な制約がある中でこれだけの作業をしなければならないのは、物理的にも精神的にもかなりの負担となります。

私は、できるだけ早い段階で専門家にご相談されることをおすすめいたします。

私たち行政書士は、職権で戸籍の収集を行うことができます。
そして財産調査のお手伝いや、この次にお話しする遺産分割協議書も作成いたします。
まずはお気軽に行政書士にご相談ください。

それでは次回は、遺産分割協議書についてお話ししたいと思います。

相続➅へつづく、、、

 

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