こんにちは、相続手続き・遺言書作成専門の行政書士奥本雅史事務所の奥本です。
それでは今回は遺産分割協議のお話をしたいと思います。
ですがその前に、相続手続きの3つの期限の内の2つ目、【4ヶ月】について少しだけ触れておきます。
1つ目の期限は、相続の放棄や承認を決める3ヶ月という期限でした。次の期限は、相続の開始から4ヶ月以内に準確定申告をするという期限です。生前に確定申告が必要だった方、例えば自営業をされていた方や、亡くなった年の給与所得が2000万円以上だった方、年金受給者であれば一年間の受給額が400万円以上の方(400万円未満であっても、それ以外の収入が20万円以上あった方)は準確定申告をする必要があります。
準確定申告のためには、収入の金額を確定しないといけませんし、申告書は相続人の連名で提出しなければいけませんので、相続人の確定も必要です。
ここまで順を追って手続きをしていれば、財産と相続人の確定はできていますので、準確定申告への備えも整っているはずです。
(準確定申告は税理士さんの業務範囲ですので、説明はこの辺にいたします)
それでは、遺産分割協議の話に戻りましょう。遺産分割協議とは、読んで字のごとく「遺産の分け方を決めるための話し合い」です。
この話し合いは、相続人全員で行います。
遺産の分け方は、遺言書が無い場合は『法定相続分』という割合によって分けると民法で定められています。
相続人には順位があり、法定相続分は順位によって取得できる割合が決まっています。その相続人となるのは、まず配偶者と第1順位の方、第1順位の方が誰も(代襲相続者も含めて)いなければ、配偶者と第2順位の方、第2順位の方も誰もいなければ、配偶者と第3順位の方へと順位が移っていきます。
各順位の法定相続分の割合は以下のようになります。
配偶者は2分の1、残りは子(すでに亡くなっている方がいる場合等は孫、孫も亡くなっている場合等はひ孫)へ
※子(または代襲相続をする孫、ひ孫)が複数人いる場合は均等に分ける
配偶者は3分の2、残りは親(両親共に亡くなっている場合は、祖父母)へ
※父母(または祖父母)が複数人いる場合は均等に分ける
配偶者は4分の3、残りは兄弟姉妹(すでに亡くなっている方がいる場合等は甥、姪)へ
※兄弟姉妹(または代襲相続をする甥、姪)が複数人いる場合は均等に分ける
さて、法定相続分の割合が分かったところで、次は実際の分け方について考えてみたいと思います。
例えば一番上の図のように、夫婦と子ども二人のご家庭でご主人が亡くなった場合で、財産が1000万円の現金のみであったとします。
この場合、奥さんは2分の1の500万円、子ども二人が4分の1の250万円ずつを相続します。
これは簡単です。
では、同じく夫婦と子ども二人のご家庭で、今度は財産が評価額800万円の自宅と現金200万円だったらどうでしょう。合計金額は同じ1000万円になりますが・・・。
子どもがすでに独立しているとすれば、自宅は奥さんが住み続けて、現金を子ども二人で100万円ずつ・・・?
もちろん、全員がそれで納得すれば、その分け方でも構いません。
しかし、法定相続分としては、子どもに250万円を取得する権利があるのです。
もしも子どものうちの一人でもその権利を主張すれば、この遺産分割協議は簡単にまとまりません。
このような場合、奥さんご自身の財産から子どもに、さらに150万円ずつを上乗せして250万円にして支払う方法(代償分割)や、自宅を800万円で売却して現金1000万円としてから法定相続分通りに分ける(換価分割)という方法を取るなどの必要があります。
このように、遺産分割協議がまとまらないケースは、主な財産が自宅などの不動産で、分けやすい現金があまり無いという場合に起こりやすいと言えます。
裁判所が公表している司法統計では、平成28年に裁判所に持ち込まれた相続の争いは、財産額1000万円以下が33%、1000万円から5000万円までが42%となっており、財産額5000万円以下が実に全体の75%を占めています。
「うちは財産がないから関係ない」とは決して言えません。
むしろ、「少ないほど揉める」とも言えます。
ですが、この揉め事を防ぐために【遺言書】が非常に有効なのです。
(遺言書については、また後日このコラムで)
もちろん、「うちの家族は仲が良いので大丈夫!」という方もたくさんおられるでしょう。
穏便に話し合いが運べば、それに越したことはありません。
スムーズに遺産の分け方の話し合いがまとまれば、各自が相続することになった財産を記載して、そこに相続人全員の署名と実印を押した『遺産分割協議書』を作成します。遺産分割協議書は同じ物を相続人の人数分作成し、各自一通ずつ所持します。
その遺産分割協議書を持参することで、不動産の登記や、銀行口座や自動車などの名義変更の手続きを行うことができます。
なお、遺産分割協議は10ヶ月以内にすることが望ましいです。
次回は、その理由についてお話ししたいと思います。
相続⑦につづく、、、