こんにちは。奈良県で開業している行政書士の武村です。 今年もあっという間に過ぎてしまいましたが、皆様にとってどんな1年だったでしょうか。
さて、今年は1年間ほとんど農地のことばかりお伝えしてきましたので、最後も農地関係で締めたいと思います。
農地を事業場等に転用するために売買(賃借)したが、その農地の一部に例えば古い建物等が存在するなどすでに農地でなく事業にも利用できない箇所があるため、(ただし公図上はその農地でない部分も含めて一筆の農地となっている)土地の一部だけを転用できないか、、、それともいっそ費用がかかっても必要部分のみを分筆した方がよいのだろうか、、、こんなことを検討するケースが稀にあります。つまり登記の地目と現在の土地状況が異なるということになりますが、これによって転用後の面積の利用率など許可を取得するための要件にも絡んでくることがあるので、重要な問題です。こんな場合はどのように対応すればよいのでしょう。
農地転用許可申請は必ずしも分筆を行う必要はないようです。しかしこの場合、上記のように公図や謄本情報と転用を予定している現状の土地の面積に差異が生じるため、いずれにしろ転用する土地の求積図が必要になります。この作業には測量や精度の高い図面が必要になるため、分筆手続を行わなくても通常の農地転用に比べ大きな費用がかかり、結果的に分筆を行った場合と大差ない場合があります。
そのため、個人的には適切に分筆手続を行うことをお勧めします。 行政は書面主義であり、また管轄する法令により手続の担当課も違います。土地の一部だけ農地転用の許可を取得しているが、公図などでは一体となっているような外形の場合、その土地や建物について将来的に他法令の対応が必要になる手続を行う場合に、うまく整合性が取れずその対応が煩わしくなる可能性があります。
また細かい話にはなりますが、一部転用の場合はその一部のみしか許可されていないため、それ以外の残りの土地については「農地」のまま。つまりある状況から土地全体の売買や賃貸借を行ったとしても許可がおりていない部分については名義も地目も変更できないため、将来的に事業場の拡大などでどうしても残りの土地も利用する必要がある場合などには、改めて農地転用許可申請など何らかの手続を改めて行う必要があります。
土地関係手続についてはかなり時間を要するケースが多く、急いで事業を拡大する必要があるにも関わらず半年~1年経ってもまだその土地を利用できない、なんてことが当たり前のように起こりえます。多くの場合は、依頼者の方が予定している準備期間と、実際に必要となる準備期間に大きな差が出ます。この期間の損失を考慮すると、多少の費用が必要であっても適切に分筆を行うことをお勧めします。