法定後見を利用するのはどんな場合?

こんにちは。

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

前回のコラムでは、成年後見制度の「法定後見」と「任意後見」についてお伝えしました。

「法定後見」は、認知症などによって判断能力が低下してしまったときに、家庭裁判所が決めた後見人等が支援してくれます。
「任意後見」は、判断能力が低下する前に、将来に備えて自分で後見人を選ぶ“転ばぬ先の杖”であることを説明しました。

今回は、「法定後見」について、どんな場合に利用することになるのかについて見ていきたいと思います。

 

~どんな場合に法定後見を利用するのか~

最高裁判所事務総局家庭局が平成 29 年 3 月に出した、成年後見関係事件の概況のなかに、「申立ての動機について」という項目があります。

そこには、
「主な申立ての動機としては、預貯金等の管理・解約が多く、次いで、身上監護となっている。」と記載されています。

申立てのきっかけとなる一番の理由は預貯金等の管理・解約です。
例えば親が認知症になり、病院や施設の入居金など、まとまった金額を親自身の口座から引き出そうとすると、本人確認や後見制度の利用を求められます。

たとえ家族であっても、お金や不動産などの財産は個人のものです。勝手に本人以外の人がお金を引き出したり、不動産を売却したりはできません。判断能力が低下した人の権利を護るため、このような決まりになっています。

 

次の“身上監護”とは普段はあまり使うことがない言葉ですが、具体的に言うと、判断能力が低下して身の回りのことを自分で決めることができにくくなった人の医療や介護、または住まいや買い物など、様々なことに関して代理して契約したり決めたりすることです。ご本人の生活環境を整え、安心して暮らせるように手続きをします。

よく間違えられるのですが、後見人は仕事として直接食事や入浴などの介護をするわけではありません。あくまでも、判断能力が低下した方の意思決定を支援し代理することが役割ですから、病院の費用を支払ったり、介護施設に入居する時の契約を代理したり介護ヘルパーさんが必要であれば手配し契約します。

ただし、家族が後見人になった場合は、家族としての立場で直接介護をすることはあります。

また、病院との治療契約や支払いは後見人の仕事ですが、手術の同意や、入院時の身元保証人は後見人としてはできません。手術は身体を傷つける行為(医的侵襲行為)であるため、本人以外にその判断はできないとされています。

現実的には、病院などでは後見人に対して手術の同意や、入院時の身元保証人へのサインを求められます。しかし、後見人としてはできないことを説明し、手術が必要な場合は、主治医の専門職としての判断にゆだねることになります。

ただし、この場合も後見人が家族の場合は、家族の立場で同意書等のサインはできます。

これらのほか、法定後見を利用することになる場面として、遺産相続があります。遺言がない場合に、遺産分割協議をしなくてはなりませんが、判断能力が低下した人は協議の内容が理解できずに不利益を被る可能性があります。したがって、後見人が本人の利益を護るために代わりに遺産分割協議に対応することになります。

そして、最近は一人暮らしのお年寄りが詐欺被害に遭うケースも増加しており、判断能力が低下してだまされるおそれがある場合は、後見人をつけて詐欺被害を防止しています。

法定後見を利用するきっかけは色々ありますが、いずれにしても後見人は、ご本人の気持ちを汲み取り、本人にとって望ましい生活が実現できるように最善の選択をしていきます。

そのために、ご本人の大事な所有財産を代わりに管理しながら、安心して暮らせるように生活環境を整えること、これが法定後見における後見人等の重要な役割となっています。

 

次回は、どんな人が後見人になっているのか?後見人になるためには何か要件があるのか?についてお伝えしていきます。

 

 

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