技能実習制度における介護人材特有の要件

こんにちは。
介護・福祉の専門オフィス、行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の𠮷川昇平です。

前回のコラムでは、技能実習制度の概要をお伝えしました。

介護現場で技能実習生を受け入れるためには、介護人材特有の要件が定められており、正しく理解しておく必要があります。
今回のコラムは、この介護職種の追加要件をご紹介したいと思います。

まずは、介護職種が技能実習制度に追加される際に議論されたポイントを見てみましょう。次のような考え方を基本として介護固有の要件等が検討されました。

【基本的考え方】

■ 外国人介護人材の受入れは、介護人材の確保を目的とするのではなく、技能移転という制度趣旨に沿って対応すること。
■ 職種追加に当たっては、介護サービスの特性に基づく様々な懸念に対応するため、以下の3つの要件に対応できることを担保した上で職種を追加すること。
① 介護が「外国人が担う単純な仕事」 というイメージにならないようにすること。
② 外国人について、日本人と同様に適切な処遇を確保し、日本人労働者の処遇・労働環境の改善の努力が損なわれないようにすること。
③ 介護サービスの質を担保するとともに、利用者の不安を招かないようにすること。

このような考え方に基づき、介護分野における技能実習生の受入れに関する制度設計がなされています。

介護職種は高齢者へのサービス提供が仕事となりますので、他の技能実習と異なり、技能実習生、実習実施者、監理団体に対して追加要件が定められています。
以下、技能実習生と実習実施者の追加要件をご紹介します。

【技能実習生に関する要件】

①日本語習得レベルに関する追加要件
技能実習1号(1年目)
日本語能力試験のN4に合格している者。その他これと同等以上の能力を有すると認められる者であること。

技能実習2号(2年目)
日本語能力試験のN3に合格している者。その他これと同等以上の能力を有すると認められる者であること。

(参考)
日本語能力試験には、N1~N5の5つのレベルがあります。
いちばんやさしいレベルがN5で、一番難しいレベルがN1です。
「N4」:基本的な日本語を理解することができる。
「N3」:日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる。

②同種業務従事経験(職歴要件)
 団体監理型技能実習の場合、技能実習生は「日本において従事しようとする業 務と同種の業務に外国において従事した経験があること」または「団体監理型技能実習に従事することを必要とする特別な事情があること」を要件として満たすことが必要とされています。

職歴要件は、例えば以下の者が該当します。
■ 外国における高齢者もしくは障害者の介護施設または居宅等において、高齢者または障害者の日常生活上の世話、機能訓練または療養上の世話等に従事した経験を有する者。
■ 外国における看護課程を修了した者または看護師資格を有する者。
■ 外国政府による介護士認定等を受けた者。

【実習実施者・実習内容に関する要件】


①技能実習指導員
■ 技能実習指導員のうち1名以上は、介護福祉士の資格を有する者その他これと同等以上の専門的知識及び技術を有すると認められる者(※看護師等)であること。
■ 技能実習生5名につき1名以上の技能実習指導員を選任していること。

②事業所の体制
■ 技能実習を行わせる事業所が、介護等の業務を行うものであること。(訪問系のサービスについては適切な指導体制をとることが難しいため対象から除かれています)
■ 技能実習を行わせる事業所が、開設後3年以上経過していること。
■ 技能実習生に夜勤業務その他少人数の状況下での業務又は緊急時の対応が求められる業務を行わせる場合にあっては、利用者の安全の確保等のために必要な措置を講ずることとしていること。
■ 技能実習を行う事業所における技能実習生の数が一定数を超えないこと。
■ 入国後講習については、基本的な仕組みは技能実習法本体によるが、日本語学習と介護導入講習の受講のほか、講師を担う者にも一定の要件が設けられている。

参考:技能実習「介護」における固有要件について(厚生労働省社会・援護局)

いかがだったでしょうか。
今回は、介護職種の固有要件のうち、技能実習生と実習実施者に関する要件をご紹介しました。

介護の技能実習生を受け入れるためには、技能実習制度本体の要件に加えて、ご紹介した介護職種固有の要件をしっかり理解してクリアすることが必要です。

他にも様々なルールが存在しますので、介護技能実習生の雇用をご検討される際は弊所へお気軽にご相談ください。

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日本の介護福祉士養成校を卒業した在留資格「介護」を持つ外国人の雇用

こんにちは。

介護・福祉の専門オフィス

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

全国で緊急事態宣言が解除されましたが、いかがお過ごしでしょうか。

経済が少しずつ動き始めていますが、一方で新たな感染者も確認されコロナ第2波への警戒も続いています。

かつての日常を取り戻せる日はまだまだ先になりそうですね。

テレビを見ていると、色んな人が新しいビジネスやライフスタイルを考案し実践されていることが紹介されています。

前向きに、今出来ることを頑張っていきたいですね。

          

さて、今回は、外国人介護職員の雇用に関するテーマの2つ目

「日本の介護福祉士養成校を卒業した在留資格「介護」を持つ外国人の雇用」

についてお伝えしたいと思います。

           

在留資格「介護」は、平成29年9月から始まった新しい在留資格です。

新しく創設された背景として、深刻な介護士不足がありました。

そんな中、「日本再興戦略」改訂2014(平成26年6月24日閣議決定)において、外国人留学生が介護福祉士を取得した場合に我が国での就労を認めることが検討され、出入国管理法の改正を経て、平成29年9月に在留資格に「介護」が創設されました。

介護の在留資格が創設されるまでは、外国人留学生が大学や専門学校等の介護福祉士養成施設(以下、養成校)で介護福祉士の国家資格を取得しても、日本では介護業務に就けませんでした。

しかし、在留資格「介護」が創設されたことで、現在では介護福祉士国家資格を取得すると、在留資格「介護」が取得でき、介護業務に従事することで長期間の日本滞在が可能となったのです。

  

介護の在留資格を取得するまでの典型的な流れは以下のとおりです。

まずは、外国人留学生として、在留資格「留学」で入国し、養成校で学びます。

  1. 外国人留学生として入国
  2. 介護福祉士養成施設で修学(2年以上)
  3. 介護福祉士の国家資格取得

卒業後、介護福祉士国家資格を取得した場合、在留資格「介護」に変更することができ、介護福祉士 として介護業務に従事することができるようになります。

  1. 在留資格変更「留学」→「介護」

一旦帰国した上で,「介護」の在留資格で新規入国することも可能です。

  1. 介護福祉士として業務従事

在留状況に問題がなければ、在留期間の更新が可能で、その更新回数に制限はありません。さらに、配偶者及び子が「家族滞在」の在留資格で在留することが可能となります。

   

この制度では、EPAや技能実習制度による受入の場合と異なり、受入調整機関がありません。そのため、採用活動は事業者が自主的に行う必要があります。

例えば、日本人学生と同様に養成校を卒業する外国人留学生にアプローチしたり、外国人留学生の就職支援をする団体や人材紹介会社、派遣会社の活用もあります。

事業者がよりよい人材を採用したい場合は、養成校との連携が必須です。

養成校側から就職先として紹介してもらえるようにするためには、普段からの連携がとても重要になります。連携の例としては、養成校の現場実習を受入れたり、留学生をアルバイトとして受け入れることがあります。普段から連携が取れていれば、信頼関係が構築されやすいですし、留学生からも安心できる就職先として認識してもらえるでしょう。

    

ただし、「留学」の在留資格ではアルバイトはできませんので、この場合は地方出入国在留管理局に資格外活動許可の申請をして、アルバイトをする許可を得ておく必要があります。

また、外国人留学生のアルバイトは原則週28時間 に規制(長期休暇期間中は1日8時間以内・週40時間以内)されていますので、事業者側もしっかりと認識したうえで、勤務時間の管理に注意が必要です。

留学生が在籍する養成校は、卒業生の就職先の情報を収集していますので、事業者として外国人を積極的に採用していることをPRしておくこともひとつです。

    

最後に外国人留学生の国籍についてみてみましょう。

国籍別上位5か国は以下のようになっています。

  1. ベトナム(44.7%)
  2. 中国(14.9%)
  3. ネパール(12.0%)
  4. フィリピン(7.9%)
  5. インドネシア(5.3%)

※厚生労働省 社会・援護局 補助事業「介護福祉士を目指す外国人留学生等に対する相談支援等の体制整備事業」(平成30年度)養成校へ所属する外国人留学生へのアンケート調査より

    

上記のように、近隣のアジア諸国からの留学生が多くなっています。

コロナウイルスの影響で今後はどうなるか分かりませんが、日本の介護業界を目指して多くの外国人に来ていただけるように、魅力のある職場環境や外国人が安心して生活できる環境を整備しておくことが大切ではないかと思います。

   

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EPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者の雇用

こんにちは。

介護・福祉の専門オフィス

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

国会で今年度の補正予算が可決されました。

総額約26兆円の補正予算には1人あたり10万円の現金給付や減収となった中小企業に最大200万円を支給する持続化給付金などが盛り込まれています。

緊急事態宣言がいつまで続くのか見通せない状況で、不安を抱えながら暮らす人が多いと思います。一刻も早く給付金がみなさまの手元に届くことを願わずにはいられません。

さて、前回のコラムでは、日本で外国人介護職員を雇用するための制度として、以下の4つをご紹介しました。

1.EPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者の雇用

2.日本の介護福祉士養成校を卒業した在留資格「介護」を持つ外国人の雇用

3.技能実習制度を活用した外国人(技能実習生)の雇用

4.在留資格「特定技能1号」を持つ外国人の雇用

今回は「EPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者の雇用」についてお伝えします。

まず、EPA(経済連携協定)とは、物品やサービスの貿易のみならず、人の移動、知的財産権の保護、投資、ビジネス環境の整備、競争政策など様々な協力や幅広い分野での連携を促進し、二国間又は多国間での親密な関係強化を目指す条約を指します。

このEPA(経済連携協定)に基づき、日本の介護施設で就労と研修をしながら、日本の介護福祉士の資格取得を目指す外国の方々を「EPA介護福祉士候補者」と言います。

現在、EPA介護福祉士候補者受け入れ国としては、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国です。

インドネシアについては 2008 年度から、フィリピンについては2009 年度から、看護師や介護福祉士の国家資格取得を目指す候補者の受け入れが開始しました。また、2014年度からはベトナムからの受け入れも開始しました。

この制度の枠組みは、母国の看護師資格者などの要件を満たした外国人が、日本の国家資格の取得を目的として、一定の要件を満たす介護施設(受け入れ施設)において就労・研修することを特例的に認めるものです。※在留資格は「特定活動」です。

介護福祉士国家資格の取得後は、在留期間の更新回数に制限が無くなります。一人でも多くの介護福祉士候補者が介護福祉士の国家試験に合格し、その後、継続して日本に滞在することが期待されています。

この受け入れは日本とインドネシア、フィリピン、ベトナム各国との経済連携の強化のために行うものであり、単に労働者を雇用するためのものではありません。しかしながら、介護の現場では人材確保が困難な状況が続いており、EPA介護福祉士候補者は貴重な人材として期待されている側面もあると思います。

そこで、本来の制度趣旨や目的を実現するために受け入れ施設は国家資格が取得できるよう適切な研修を実施することが責務とされています。

そのため、EPA介護福祉士候補者の受け入れを希望する場合は、受け入れ施設の要件として、適切な研修の実施体制が整っているかが重要になります。他にも、施設基準を満たしているか、雇用契約の内容、宿泊施設の確保など細かい要件が複数あり、受け入れるためには準備が必要です。

そして、外国人応募者と介護事業所のマッチングは、JICWELS(国際厚生事業団)が唯一の受入調整機関として担っており、入国手続きや在留資格の管理なども担っています。EPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者の雇用を検討される際は、まずは当該機関へお問合せください。

このようなことから、受け入れ施設はJICWELS(国際厚生事業団)への報告、相談または巡回訪問を受けたりしながらEPA介護福祉士候補者の雇用をしていくことになります。

また、受け入れにかかる費用としては、概算で以下のようになっています。

求人申込手数料 ・・・・・・・・・・・・20,000円

滞在管理費(年額)(JICWELS)  ・・・・・20,000円/人

あっせん手数料(JICWELS)・・・・・・・131,400円/人

送出し手数料(インドネシア)・・・・・・38,000円/人

日本語研修費用(日本語研修実施機関)・・360,000円/人

その他、現地合同説明会に参加するための渡航費等もかかります。

なお、送り出し手数料などについては国ごとに値段が違いますので、あくまでも参考程度に見ていただけたらと思います。

実際にEPA介護福祉士候補者を受け入れた施設では、日本人職員も刺激を受けてモチベーションが上がった、介護現場の活性化につながったという声があります。またご家族やご利用者からは真面目でやさしい、来てくれてよかったなどポジティブな意見も多くあります。

ただ一方で、言葉の壁や生活環境、文化の違いなどによる課題もあり、外国人が安心して働き、そして国家試験合格へ向けて勉強を支援する環境が不可欠です。したがって、EPA介護福祉士候補者の受け入れを検討する際は、十分な理解と準備が必要です。

以上、今回はEPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者の雇用についてお伝えしました。次回は日本の介護福祉士養成校を卒業した在留資格「介護」を持つ外国人の雇用についてお伝えしたいと思います。

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外国人の介護人材を雇用するために何が必要?

こんにちは。

 

安心をお届けする介護・福祉の専門オフィス

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

 

東京オリンピック・パラリンピックの延期が決まりましたね。

新型コロナウイルスが猛威をふるっています。

3月25日、小池東京都知事は感染爆発の重大局面と危機感を表明されました。

首都封鎖が現実となるのか、想像もつきません。

これからどうなっていくのか、不安ばかりが募ります。

 

私が活動している介護業界への影響も大きくなっています。

高齢者が集まる介護施設は、新型コロナウイルス感染症の重症化リスクが高く、厳戒態勢が続いています。もし施設から複数の感染者が出た場合、サービスを中止せざるを得ない事態に陥ります。

 

すでに感染が拡大している地域においては、デイサービスの営業が自粛されているところもあるようです。ご利用者、ご家族への影響はもちろん、介護事業者の負担も心配です。一刻も早い終息を願うばかりです。

 

また、新型コロナウイルス対策で生じた負担も相まって介護事業所の人材不足がますます深刻になっています。以前にもまして、経営者の方から人材不足のお悩みをお聞きするようになりました。

 

求人募集をしても応募がないといった話は数年前から当たり前の現実です。多くの介護施設では試行錯誤しながら対策を打ち続けています。そんな中、最近は、外国人を介護職員として雇用する介護事業者が増えています。

 

そこで、今回は外国人介護職員を雇用するためには、どんな方法があるかお伝えしたいと思います。

 

現在、日本で外国人介護職員を雇用するためには以下に記す4つの制度があります。

 

1.EPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者の雇用

EPAとは、日本と相手国の経済活動の連携強化を図るもので、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国から外国人を受け入れています。

 

2.日本の介護福祉士養成校を卒業した在留資格「介護」を持つ外国人の雇用

日本の介護福祉士養成校に通う外国人留学生は、卒業して介護福祉士を取得すると、「介護」という在留資格を取得できます。

 

3.技能実習制度を活用した外国人(技能実習生)の雇用

外国人技能実習制度は、日本から諸外国への技能移転を目的として、外国人を日本の産業現場に一定期間受け入れ、仕事をしながら技能や技術などを学んでもらい、母国の経済発展につなげてもらうための制度です。

 

4.在留資格「特定技能1号」を持つ外国人の雇用

「特定技能1号」は平成31年4月から新しく始まった在留資格です。人材不足の業界への就労目的で外国人を受け入れるために新設されました。

対象となる外国人は、技能水準や日本語能力水準を試験等で確認し、合格すれば入国できます。

 

 

上記4つの制度以外にも外国人介護職員を雇用する方法があります。

 

それは、就労制限のない在留資格を持つ人を雇用する方法です。

「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」などの在留資格をもつ外国人は日本人と同じように働くことができます。

 

また、留学生で資格外活動許可を得て、週28時間の活動範囲内でのアルバイトという形で介護の仕事に就くことは可能です。

 

日本にはたくさんの外国人がいらっしゃいます。知り合いでいい人がいたら雇いたいと考える場合もあるでしょう。正職員やフルタイムで雇用したいと考えるケースも多いと思います。その際は、必ず在留資格を確認して、介護の仕事ができる人かを確認する必要があります。

 

外国人を介護職員として雇い入れる際は、在留資格をはじめ、様々なルールがあります。

わかりにくい制度でもありますので、次回以降のコラムで4つの制度の詳細について順番にお伝えしていきたいと思います。

 

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備えとしての「死後事務委任契約」

こんにちは。

介護・福祉の専門オフィス行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

 

最近「人生100年時代」という言葉をよく聞くようになりました。

政府は2017年に「人生100年時代構想会議」を設置して、国を挙げて人生100年時代を見据えた経済や社会システムの整備を進めていこうとしています。

 

私はまだ100歳になった自分を想像できていませんし、どんな老後を送るのかについても考えたことがありませんでした。

みなさんにとって、「人生100年時代」とはどんなイメージでしょうか。

 

多くの人が長生きできる長寿社会というイメージであれば、とても嬉しいことですよね。

でも、安心して長生きするためには、これまでのように60代で定年して年金で悠々自適の生活というわけにはいかないようです。

 

せっかくの長寿社会を楽しく安心して暮らすためには、ある程度“老後の備え”が必要になってきます。

 

とりわけ、お金や健康については不安に思う人が多いですね。

投資や資産運用などのお金に関するセミナーや健康教室は連日大盛況のようです。

 

また、終活に注目が集まっているのも、安心して老後を過ごせるようにしたいと考える人が増えているからではないでしょうか。

 

さて、今回のコラムですが、「死後事務委任契約」についてご紹介したいと思います。

死後事務委任契約とは、自分が死亡した後の葬儀や役所の手続きなどを生前に第三者に依頼するための契約です。

 

前回のコラムでお伝えした老後の備えである任意後見契約に加えて、死後の不安にも備える死後事務委任契約を検討される方が増えています。

 

死後の事務とは、例えば以下のようなものがあります。

・死亡届に関する事務

・葬儀、埋葬及び永代供養の手配

・病院、介護施設の精算

・健康保険や年金などの社会保険の資格喪失手続き

・遺品整理

・各種サービスの解約・清算手続き など

 

上記のことは、ご親族が対応されるケースが多いと思います。

でも、身寄りのない方やご親族に迷惑をかけたくないと考える方は、死後の煩雑な手続きを誰かに依頼しなくてはなりません。

 

もし、任意後見契約を結んでいたとしても、 任意後見人の権限は本人の死亡によりなくなります。 したがって、任意後見人に対して死後の事務処理を委任することは基本的にはできません。

(死後の事務であっても緊急を要する場合には、任意後見人は、 任意後見契約に基づく応急措置として、与えられた代理権の範囲内で当該事務を行うことは可能です。)

 

弊所では、任意後見契約のご相談を受ける場合は、死後の事務についてもご意向を伺っています。そして、ご希望があれば任意後見契約に加えて死後の事務委任契約を締結する方法があることをご説明しています。

 

死後の事務委任契約の形式は、必ずしも公正証書で作成する必要はありませんが、弊所では、安心安全な公正証書での契約締結をお勧めしています。1通の公正証書の中に任意後見契約と死後の事務委任契約を定めることもできますし、別々の公正証書でそれぞれ定めることもできます。

 

また、死後の事務委任契約と相続との関係では気を付けるポイントがあります。

たとえば、死後の事務委任契約に基づいて発生する報酬や実費がある場合、相続人は、受任者から支払いを求められることになりますので、場合によっては相続人と争いになるかもしれません。

 

また、委任者が遺言書を作成している場合には、遺言の内容と死後の事務委任契約の内容が齟齬しないように留意する必要があります。

個別の状況やご希望によって、準備する契約書や契約内容が異なりますので、専門家に相談しながら準備されることが大切ではないかと思います。

 

任意後見契約、遺言書作成、死後事務委任契約など、老後や死後に備えた制度が注目を集めています。せっかく準備されるものですから、確実に実現できるようにしたいですね。

 

上記の件についてご不明な点があれば、弊所までお気軽にご相談ください。

 

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法定後見と任意後見の関係について

こんにちは。

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

 

みなさん、年末年始はいかがでしたか?

初詣、旅行、帰省などで楽しい時間を過ごされた方も多いのではないでしょうか。

 

私は久々にゆっくりできました。

しっかり充電できましたので、心機一転頑張りたいと思います。

 

このコラムも読んでくださる方のお役に立つ内容をお届けできるように頑張りますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 

それでは本題に入りましょう。

 

先日、知り合いのケアマネジャーさんからご相談がありました。

身寄りのないご利用者に後見人が必要で、裁判所への手続きを教えてほしいとの内容です。

 

詳しくお聞きすると、そのご利用者は判断能力もしっかりされていて、自宅で一人暮らしをされていますが、かなりの高齢で今後のことを心配しての相談でした。

 

このようなケースでは、判断能力がしっかりされている方であれば、任意後見をご案内します。裁判所への申立ては法定後見になります。

 

このように、法定後見任意後見の違いについて簡単にお伝えしましたが、

「後見人」= 財産管理や役所の手続きを支援してくれる人

という認識が一般的なのかもしれませんし、間違っているわけではありません。

ただ、同じ「後見人」といっても、法定後見任意後見では手続きや利用するタイミングが大きく異なります。

 

そこで、今回のコラムでは、改めて法定後見制度と任意後見制度の概要をお伝えしつつ、両制度の関係についてお伝えしたいと思います。以前のコラムでそれぞれの制度について詳しく書いていますので、そちらも参照しながら読んでいただけると幸いです。

 

 

法定後見制度と任意後見制度

 

成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度があります。

 

法定後見制度とは、本人の判断能力が低下したときに、本人や親族等の申立てにより、家庭裁判所が成年後見人等を選任する制度です。

 

任意後見制度とは、本人に判断能力がある間に、将来自分の判断能力が低下したときに備えて任意後見人として生活を支える人を自分で選んでおく制度です。

 

法定後見制度では、本人の意向にかかわりなく家庭裁判所によって成年後見人等が選ばれるのに対し、任意後見制度では、自分で将来の後見人を選ぶことができる点に大きな特徴がありますし、その人に何をお願いするのか、内容も自分で決めることができます。

 

どちらの制度を利用するかという点については、それぞれの制度の特徴を踏まえて十分に考慮することが必要です。

 

任意後見制度は、契約によるものですので判断能力が備わっていることが前提となります。したがって、精神上の障害等により判断能力が低下している場合には、法定後見制度によるしかないことになります。

 

 

法定後見任意後見の関係

 

任意後見契約が結ばれている場合には、本人について法定後見開始の申立てがされても、家庭裁判所は原則として法定後見開始の審判をすることはできません。原則として、法定後見開始の審判の申立ては却下されることになります。

ただし、本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り、例外的に法定後見開始の審判をすることができるとされています。(任意後見優先の原則)

 

これは任意後見制度による保護を受けることを選択した本人の自己決定を尊重するという趣旨に基づくものです。

 

では、

「本人の利益のため特に必要があると認めるとき」とはどんなときでしょうか。

具体例として、

・本人が任意後見人に授権した代理権の範囲が狭すぎて本人を保護するのに不都合がある場合

・本人について同意権·取消権による保護が必要な場合(任意後見には同意権・取消権がありません。)

・任意後見人が受任事務を行えない事情が生じた場合

・任意後見人が本人の財産を私的に流用して本人に損害を発生させている場合

・合意された任意後見人の報酬額があまりにも高額である場合

・任意後見人に不正な行為·著しい不行跡その他その任務に適しない事由がある場合

などがあげられます。

このような場合、法定後見の申立権者(本人、配偶者、4親等内の親族等)、任意後見受任者、任意後見人または任意後見監督人は、家庭裁判所に法定後見開始の審判の申立てをすることができます。

法定後見の開始の審判がされれば、任意後見契約は当然に終了します 。

 

ただし、法定後見開始の審判がなされたタイミングによって任意後見契約の効力に違いがあります。

①任意後見監督人選任後(つまり任意後見契約が発効した後)に法定後見開始の審判がされたとき

→既存の任意後見契約は当然に終了します。

②任意後見監督人選任前(まだ任意後見契約は発効していない)に法定後見開始の審判がなされたとき

→既存の任意後見契約はなお存続するとされています。つまり、例外的に法定後見を開始した後でも、改めて未発行の任意後見契約について任意後見監督人を選任して法定後見から任意後見へと移行できる可能性が残されています。

 

では、②のとおり、法定後見開始後に任意後見監督人選任審判が申し立てられた場合はどうなるでしょうか。

原則として任意後見監督人が選任され、法定後見開始の審判は取り消されます。ただし、法定後見を継続することが本人の利益のため特に必要であると認めるときには、任意後見監督人選任の申立ては却下されます。

 

このように、現行法では「任意後見優先の原則」が採用されており、任意後見が法定後見に対して優越的な地位に立つことが定められています。

 

成年後見制度では、「自己決定の尊重」という理念がとても大切にされています。

 

法定後見における成年後見人等も本人の意思を尊重して後見活動を行いますが、家庭裁判所が選任した人が、判断能力が低下した本人の意思を十分に汲み取って希望どおりの対応をしてくれるとは限りません。

 

その点で、任意後見では、自分の信頼できる人に希望する財産管理や生活スタイルを詳細に伝えておくことによって、将来判断能力が低下したとしても、自分の希望どおりに対応してもらいやすくなります。

 

任意後見は老後の備えとして利用される方も増えています。

弊事務所でも任意後見に関するサポートに力を入れております。

成年後見制度に関するお悩みなどあれば、お気軽にご相談ください。

 

 

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「認知症サポーター」をご存知ですか?

こんにちは。

介護・福祉の専門オフィス

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

 

毎日寒い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか?

今年も残り1ヶ月となってきました。

 

そろそろ忘年会の予定が入ってくる時期ですね。

1年の締めくくり、ラストスパートで頑張りたいと思います。

 

さて、先日、奈良県キャラバンメイト養成研修で講師をさせていただきました。

 

この研修は、キャラバンメイトを養成する研修なのですが、「キャラバンメイト」と聞いてもピンとこない方が多いかもしれません。

 

でも、「認知症サポーター」という言葉は聞いたことがないでしょうか。

認知症サポーターとは、認知症について正しく理解し、認知症の人や家族を温かく見守り支援する応援者をいいます。

 

そして、キャラバン・メイトとは、認知症サポーターを養成するために「認知症サポーター養成講座」を開催し、講師役を務めていただく人です。

 

つまり、「認知症サポーターを養成する講師役」を養成するための研修がキャラバンメイト養成研修です。(なんだかわかりにくくてすみません)

 

この事業は、「認知症サポーターキャラバン」といって、厚生労働省が「認知症になっても安心して暮らせるまち」を市民の手によってつくることを目指して平成17年度から始めました。

 

当初は、「認知症サポーター」を全国で100万人養成することを目標にしていましたが、令和元年9月30日現在、認知症サポーター数は11,922,018人(出典:全国キャラバン・メイト連絡協議会)となっています。

 

認知症サポーター養成講座を受けて認知症サポーターになると、その証としてオレンジリング(オレンジのブレスレット)が渡されます。

 

最近は、色んな所でオレンジリングを身に付けている人を見かけるようになりました。

手首に着けている人もいれば、かばんに着けている人もいます。

みなさんはどこかで見かけたことありませんか?

役所の窓口では首から下げている名札に着けている人も多いですよね。

 

地域で暮らす人々の認知症に対する理解が深まれば、たとえ認知症になったとしてもお互いに助け合うことができます。

 

認知症はだれもがなりうるものですし、家族や身近な人が認知症になることなどを含め、多くの人にとって身近なものです。

 

今年の6月には、国の方針として新しく認知症施策推進大綱が認知症施策推進関係閣僚会議で決定されました。

 

この大綱の冒頭には、認知症の人ができる限り地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指すと書かれています。

 

そして、その具体的な施策として、認知症サポーター養成を引き続き推進することも定められています。そうすると、キャラバンメイトとして講師役を担ってくれる人がもっと必要になってきます。

 

奈良県では、キャラバンメイト養成研修は年に2回開催されています。

受講される人は、地域包括支援センターや社会福祉協議会、役所の職員さんが多いですが、民間の介護施設の職員さんや郵便局、警察の方も受講されているんですよ。

毎回60名以上の方が参加され、毎年キャラバンメイトが増えています。

 

これからもっと地域で認知症サポーター養成講座が増えることが期待されますね。

認知症サポーターキャラバンの詳しい情報は奈良県のホームページでもご覧いただけます。

 

ちなみに、私が先日担当した講義は、

○認知症の人と接するときの心がまえ

○介護者の気持ちの理解

○介護者への支援

でした。

 

認知症の人の支援はもちろん大切ですが、そのご家族の支援も同じくらい大切です。

介護しているご家族を支えることが、ひいては認知症の人の支援につながります。

認知症の人が安心して地域で暮らすためには、介護の専門家に相談することや、ご本人に合った介護サービスを利用することがとても大切です。

弊所では、認知症の人や介護をされているご家族のサポートにも力をいれております。

認知症の症状や介護でお悩みの際は、遠慮なくご連絡いただければと思います。

 

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対人援助の基本“傾聴“について

こんにちは。
介護福祉の専門オフィス
行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の𠮷川昇平です。

みなさん、先日のラグビー日本代表の試合いかがでしたか?
めちゃくちゃ盛り上がりましたね!

惜しくも南アフリカに負けてしまいましたが、一次リーグでは凄まじい試合を次々と勝利し、初のベスト8進出という歴史的な快挙を成し遂げました。
日本代表の戦いに多くの人が感動し、勇気をもらったと思います。

私は、試合後にリーチ主将が話された「ワンチーム」という言葉がとても印象的でした。
日本代表は海外出身選手が半数を占めていましたが、「ワンチーム」というスローガンのもと結束して戦ったそうです。選手同士が同じビジョンを持って、強い信頼関係を構築できたからこそ強いチームができたとのことでした。

ラグビーは選手同士のコミュニケーションがうまくいかないと「トライ」にはつながりません。
やはり、ラグビーをはじめチームスポーツにはコミュニケーションが欠かせません。

これは、スポーツに限らず、仕事の上でも円滑に業務を遂行したり目標を達成するためには関係者間のコミュニケーションが必要だと思います。

介護や福祉の世界にも「チームケア」や「他職種連携」という言葉があって、一人の人を支えるために、医療や介護の専門家が連携しています。

医師、看護師、リハビリ職、ケアマネ、介護職など、各専門職はチームの一員としてコミュニケーションを大切にします。そして、同じ目標を持って自分の専門性を発揮していくことになります。

チーム内のコミュニケーションがうまくいかなければ、クライアントを支えることはできません。ラグビーワールドカップでの日本チームの活躍から改めてコミュニケーションの大切さを感じました。

そこで、今回のコラムはコミュニケーションの基本的なスキルである「傾聴」について書いてみたいと思います。

傾聴とは、「耳」「目」「心」を傾けて真摯な姿勢で相手の話を聴くコミュニケーションの技法です。

私は、介護職やケアマネとして対人援助の仕事をしてきました。そして、社会福祉士に関しては相談援助を主な仕事としています。

ご利用者やそのご家族の支援の際には傾聴が基本になります。
行政書士の仕事もお客様の困りごとをお聞きし、解決のお手伝いをさせていただくという面では対人援助と共通する点が多いと考えています。

実際に相談を受ける場面では相談者との信頼関係が不可欠です。
その信頼関係を築いていくには、話を聴くことがとても重要になります。

なぜなら、信頼関係を築いていく大きな要素に「この人は自分の事を分かってくれる」という感覚があるからです。

もし、みなさんも相談する立場になると、自分のことを真剣に理解してくれている人がいたら信頼を寄せやすいですよね。

したがって支援者に求められるのが、傾聴の技法です。支援者は相談者に寄り添い、相談者の心が和らぐような対応をします。

また、傾聴は相談者への対応場面以外でも活用できます。
たとえば、ビジネスシーンにおけるお客様への傾聴です。

お客様のニーズをつかむことは、ビジネスの基本中の基本ですよね。お客様が本当に求めているものを提供できれば満足度は高まりますし、信頼度が高まります。

また、社内においては上司、同僚、部下といった人間関係でも、傾聴によりお互いの信頼関係を強くすることができます。社内のコミュニケーションを円滑にするには傾聴が大変役に立ちます。

傾聴の技法にはいろいろありますが、明日から使えるポイントを3つ上げてみます。

1.相づち、うなずき
これは、傾聴の基本ですね。相手の話に対して適度に相づちやうなずきを入れることで、テンポよく話しやすくなります。「ちゃんと話を聞いていますよ」「あなたの思いを受け止めていますよ」という姿勢が相手に伝わることが重要です。

ただ、あまりにも相づちやうなずきの回数が多すぎると不誠実な印象になるので、バランスが重要です。話の切れ目にタイミング良く相づちやうなずきを入れるようにしましょう。

2.繰り返し
相手が言ったことをそのまま返す方法です。話の語尾やキーワードをそのまま繰り返す技法です。
例えば
「○○があってとてもつらかったんです」
→「つらかったんですね」

「△△を改善したいんですけど」
→「改善したいと思っているんですね」

というように、相手の話への興味を示すために重要となります。また、話の内容を確認するニュアンスもあります。相手は「ちゃんと聞いてくれている」「わかってくれている」ように感じます。

3.要約
相手の話を要約して、「なるほど、○○ということですね」「つまり、○○ということなんですね」のように確認するニュアンスもあります。

要約して繰り返されることで、相手は頭の中を整理できますし、「ちゃんと伝わっているな」と安心できます。

いかがでしょうか。
すでに実践されている方も多いかと思います。

相談を受ける場合、まずはしっかり聴くことが大切です。
そして、相手の存在そのものを受け止め、否定したり評価を加えず受け入れる(受容)ことや、相手の立場に立って理解しようとする(共感的理解)姿勢が相手との信頼関係につながります。

以上、簡単ですが傾聴のポイントをまとめました。

傾聴の技法をはじめ、面接に関する技術はたくさんありますので、また改めてご紹介したいと思います。

 

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「成年後見制度利用支援事業」について

こんにちは。

介護・福祉の専門オフィス

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

 

朝晩はだいぶ涼しくなってきましたね。

秋の気配が近づいています。

 

みなさん、本日からラグビーワールドカップが始まりますね!

日本でラグビーはメジャーなスポーツとは言えないかもしれませんが、このラグビーワールドカップは世界3大スポーツイベントとも言われるほど、世界的に注目度が高いようです。

 

前回、2015年に英国で開かれた大会では強豪の南アフリカに大金星をあげ、「史上最大の番狂わせ」なんて言われました。五郎丸ポーズも流行し、盛り上がりましたよね。

 

今回は日本で開催されます。

日本代表選手のみなさんは並々ならぬ気合いで試合に臨まれるでしょう。

ラグビーならではの激しいぶつかり合いは見ごたえ十分です。

楽しみですね~

きっと感動的な試合を見せてくれるに違いありません。

みんなで応援しましょう!

 

それでは、本題に移ります。

今回は成年後見制度を利用する際にかかる費用について書いてみようと思います。

 

というのも、成年後見制度に関するご相談を受ける中で、費用についてのご質問がけっこう多くあります。お金がないと利用できないと考えている方もいらっしゃいますし、不安に思っている方も多いです。

 

そこで、費用を公的に補助するための「成年後見制度利用支援事業」という制度についてまとめてみました。

まず、成年後見制度を利用するためにかかる費用として、

①申立てに伴う費用

②成年後見人等の事務の遂行に伴う経費としての費用および報酬

の2つがあります。

 

以前のコラムでも紹介しましたが、

① 申立てに伴う費用は、原則として申立人において負担すべきものとされています。

② 後見事務に関する費用および成年後見人等の報酬は、成年被後見人等の資産から支弁するものとされています。

(ただし、成年後見人等の報酬は、成年後見人等の「報酬付与の審判の申立て」に基づいて、家庭裁判所が成年後見人等および成年被後見人等の資力その他の事情を考慮して決定することになっています。)

 

つまり、報酬を支払うことで、成年被後見人等の生活ができなくなるということがないように家庭裁判所が考慮して決定します。

 

このように費用について法律で定められていますが、正確に理解していないと、

「後見人を頼めば毎月お金がかかる」

「お金がないと利用できない」

と考える方が非常に多いです。

 

様々な事情で申立費用や成年後見人等の報酬が負担できない方もいらっしゃいますが、成年後見制度を利用するための一つの方策として「成年後見制度利用支援事業」があります。

 

この事業は、成年後見制度の利用に伴う費用と後見報酬等の費用を公的に補助しようというもので、実施する市町村の予算に対し国が2分の1、都道府県が4分の1を助成するというものです。

 

国は助成を行う場合の上限の参考単価を次のように示しています。

  • 経費:申立手数料800円、 登記手数料2600円、 鑑定費用 5~10万円、など
  • 成年後見人等の報酬(上限)

:在宅 月額2万8000円

:施設入所 月額1万8000円

 

ただし、成年後見制度利用支援事業は市町村のメニュー事業であり、事業の実施は市町村の選択に委ねられています。平成30年10月1日時点で高齢者関係の申立費用及び報酬助成を実施している市町村は1,480(85%)となっています。

 

また、実施している市町村の場合でも、

・申立費用のみの市町村44(2.5%)

・成年後見人等の報酬のみの市町村126(7.2%)

というように、助成の内容に違いがあります。

(厚生労働省資料:成年後見制度利用促進施策に係る取組状況調査結果)

 

 

みなさまのお住いの市町村が事業を実施しているかどうかは、市町村の例規集やホームページで確認できるところもありますが、情報を出していない市町村もあるため、直接担当課へ問い合わせてみてください。

 

そして、まだ成年後見制度利用支援事業を実施していない市町村もあるようです。財源の確保などの課題もあると思いますが、全市町村において成年後見制度利用支援事業が実施される必要があります。

 

判断能力が低下すれば、お金があってもなくても「本人の権利を護る」ことは絶対に必要です。資力がないからといって成年後見制度が使えないということはあってはならないと思います。

 

成年後見制度が「お金のある人の財産管理のための制度」ではなく、誰でも利用できるようにするためには、資力のない人への公的財政支援は不可欠です。

 

これからは財産管理だけではなく、身上保護にも力を入れた後見活動が望まれます。成年後見制度が安心して使える制度になるためには、引き続き改善が必要ではないでしょうか。

 

成年後見制度をはじめ、介護・福祉に関するお悩みはよしかわ事務所へどうぞお気軽にご相談ください。

 

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「後見制度支援信託」について

こんにちは。

介護・福祉の専門オフィス

行政書士・社会福祉士よしかわ事務所の吉川昇平です。

 

毎日暑い日が続きますね。

外に出ると直射日光が刺さる様な感じで照りつけてきます。

家の中に居ても、窓を開けると熱風が入ってきて一瞬で汗だくです。

クーラーがないと熱中症になりますね。

私は事務所でアイスクリームを食べながら仕事に勤しんでおります。

みなさまも水分補給を心がけて熱中症にはご注意くださいね。

 

 

今回のコラムは「後見制度支援信託」についてご紹介したいと思います。

 

これまでのコラムでもご紹介してきましたが、成年後見制度の下では、後見人は被後見人の財産を管理するという大きな権限が与えられます。

 

しかし、残念ながら一部の後見人が被後見人の財産を流用してしまうという事例が毎年発生しています。

 

そこで、成年後見人等による不正行為を未然に防止するための方策として、「後見制度支援信託」という制度があります。

 

後見制度支援信託とは、家庭裁判所が関与して、被後見人の財産を信託財産にして財産を守る制度です。

 

おおまかに説明すると、本人の財産のうち、日常生活の支払いをするのに必要十分な金銭を預貯金等として後見人が管理し、普段は使用しない多額の金銭を信託銀行等に信託するというしくみです。

 

信託財産については元本が保証されますし、預金保護制度の対象にもなります。

ただし、信託することのできる財産は、金銭に限られています。

 

後見制度支援信託を利用すると、信託財産の払戻しや追加、信託契約の解約をするにはあらかじめ家庭裁判所が発行する指示書が必要となります。

 

つまり、家庭裁判所のチェックが入ることになるので、後見人の不正行為を防ぐことができますし、他の関係者から見てもわかりやすく適正で安全な財産管理が可能になるんですね。

 

また、被後見人の財産は信託財産となり信託銀行等が管理することになりますので、財産管理をめぐる家族間のトラブルを防いだり、後見人が行う財産管理の負担を軽減する、といったメリットも期待できます。

 

この制度は成年後見と未成年後見において利用することができますが、保佐、補助及び任意後見では利用できないので注意が必要です。

 

今年の3月29日のコラムでお伝えしたとおり、これから家庭裁判所は親族を後見人に選任する方向で考えているようです。

 

親族後見人の負担軽減や不正防止の観点からも、今後さらに後見制度支援信託の活用が増えるのではないかと思います。

 

後見人の不正があると、ニュースで大きく取り上げられます。

一部の後見人の行為が成年後見制度自身の信頼を損ねています。

 

後見制度支援信託は、後見人の不正を未然に防ぎ、ご本人の財産を適切に管理するための一つの方法です。

 

このような取り組みを通して、成年後見制度の社会的な信用を高めていけたらいいと思います。そして、誰もが安心して使えるような制度になることを願いながら私も努力していきたいと思います。

 

成年後見制度に関するお悩みは、よしかわ事務所までどうぞお気軽にご相談ください。

 

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