遺言書⑩ ~公正証書遺言 中編~

こんにちは、相続手続きと遺言書作成専門の行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

前回、公正証書遺言のメリットを自筆証書遺言と比較しながら見ていきました。
今回は、公正証書遺言のデメリットとは何かを考えてみたいと思います。

公正証書遺言を作成する際には『2名以上の証人』が必要です。
証人は、遺言書作成の当日に公証人役場へ一緒に行ってもらい、遺言書の作成に立会ってもらいます。

そのため、事前に証人となってくれる人を2名以上探し、依頼しておかなければなりません。
ところが民法には、以下の者は証人になることができないという規定があります。
➀未成年者
➁推定相続人および受遺者、これらの配偶者および直系血族
➂公証人の配偶者、四親等内の親族、書記および使用人

➁を見てもらえばわかるように、一番頼みやすい存在である、近しい親類に頼むことができないのです。

そして、信頼がおけない人物に頼むことも避けないといけません。
証人の役割は、遺言書の内容が遺言者の意思の通り正確に記載されているかを確認し証明することです。つまり、遺言の内容は全て証人に知られてしまうことになります。秘密を絶対に守ってくれる、信頼できる人物でなければ、証人を依頼することができないということです。

万一、遺言書の内容が誰かに漏れてしまえば、財産を狙ったトラブル等が起こる可能性も無いとは言い切れません。

ですので、証人は職務上の守秘義務がある行政書士等の専門家に依頼するのが適切でしょう。また、公証人役場でも証人を紹介してもらうことができます。(費用は別途必要)

それからもうひとつ、費用面の問題があります。
公証人役場で公正証書遺言を作成してもらう際には手数料が必要となります。

これは目的物の価額に応じて、以下の表のように定められています。

目的物の価額

手数料

100万円まで 

5000

200万円まで 

7000

500万円まで 

11000

1000万円まで 

17000

3000万円まで 

23000

5000万円まで 

29000

1億円まで 

43000

1億円を超えて3億円まで

43000円+超過額5000万円まで毎に13000円加算

3億円を超えて10億円まで

95000円+超過額5000万円まで毎に11000円加算

10億円を超える場合

249000円+超過額5000万円まで毎に8000円加算

この手数料は、相続人あるいは受遺者一人あたりのものです。相続人、受遺者が複数人いる場合には、それぞれの人について手数料を算出し合算します。

例えば、妻に2000万円、二人の子供に1000万円ずつの財産を相続させる遺言を作成する場合、

23000円+17000円+17000円=57000円

となります。
これに加えて、目的の価額の総額が1億円以下の場合には、遺言加算といって11000円が加算されます。

上記の例では総額が1億円以下ですので、先程計算した57000円に11000円を加えた68000円が手数料の額となります。

なお、遺言者が病気や高齢等の理由で公証人役場に行くことが出来ない場合には、公証人が自宅や病院に赴き遺言書を作成することもできますが、この場合には手数料は50%加算となり、公証人の旅費や日当も必要になります。

さらに公正証書遺言は、公証人役場で保管される「原本」、遺言者に交付される「正本」と「謄本」の3部が作成されますが原本は3枚を超えた場合1枚毎に250円が加算され、正本、謄本については1枚につき250円が必要です。

以上が、公証人役場に支払う手数料です。

遺言者ご自身で公証人役場とやりとりをする場合には、この手数料で作成できるのですが、実際には行政書士等の専門家に相談して間に入ってもらう方のほうが多いでしょう。
専門家に依頼することで、推定相続人や財産についての調査、必要な書類の準備、遺言書の原案の作成、公証人との打ち合わせ等を任せることができます。
ただし、専門家への報酬は発生します。(当事務所の場合、報酬額は5万円です。また信頼のおける証人も一名1万円でご紹介させていただきます。)

これらの費用(公証人役場の手数料、専門家の報酬、証人の謝礼 等)の総額が公正証書遺言の作成費用となります。

このように費用が高額となってしまうため、『気軽に何度も作り直す』というわけにはいかないのが公正証書遺言のデメリットではあるのですが、遺言書としての確実性、安全性、信頼性においては、現在のところ公正証書遺言が一番優れていると言えます。

しかし、この度の民法改正によって、自筆証書遺言に対する公正証書遺言の優位性が“絶対”とまでは言えなくなるかもしれません。

次回は、それについて触れてみたいと思います。

 

行政書士 奥本雅史事務所
http://okumoto.tribute-mj.net

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