遺言執行者①

こんにちは、相続手続きと遺言書の作成支援を専門にしております行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

遺言書を作成する本人(遺言者)が全文を自筆する自筆証書遺言書の保管制度については、これまでのシリーズで詳しく述べてきました。(コラム『自筆証書遺言書の保管』はこちらから)

今回からは、実際に自筆証書遺言書を自分で作成する場合の注意点についてお話しをしていきたいと思います。

一般にあまり馴染みがなく、何のために必要なのかが理解しにくいと思われるのが『遺言執行者』です。

遺言執行者というのは「遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する(民法第1012条第1項)」者で、読んで字のごとく遺言を執行する者ということです。

ご自分で遺言書を作成される場合には、本文中で遺言執行者を指定するようにしていただく事をお勧めします。

これは、相続人間の意見の不一致や、一部の相続人の非協力などにより遺言の公正な執行に支障が出るような場合にも、遺言執行者に遺言の執行を委ねることにより適正かつ迅速な執行が期待できるからです。

遺言執行者になれるのは、未成年者と破産した者以外の者です。

また、遺言執行者は複数人指定することもできますし、行政書士法人などの法人を指定することも可能です。

一般的には相続人の誰かを指定するというケースが最も多いようです。

ですが相続人を指定した場合は、遺言執行者であると同時に財産を相続する当事者でもあるため、他の相続人との間において利害の対立が生じる可能性も否めません。

このようなケースが予見される場合には、法律の専門家など第三者を遺言執行者に指定し、争いを未然に防ぐよう努めることが望ましいと言えます。

「遺言執行者さえ指定しておけば・・・」という一例を挙げておきます。

A子さんはご主人が亡くなられましたが、ご主人は生前にご自分で書かれた遺言書を残しておられました。A子さん夫妻には子どもがおらず、相続人はA子さんとご主人の3人のご兄弟、合計4人です。

遺言書には『妻に自宅を譲渡する』と書かれており、遺言執行者に関する記述はありませんでした。

この場合の問題点は、

①「相続させる」ではなく「譲渡する」と書かれていた点

② 遺言執行者の指定が無かった点

の2つです。

まず①ですが、遺言書は強力な法的拘束力を持つ文書であるため文言の取扱いにも非常に厳しく「相続させる」となっていれば特定財産承継遺言(特定の財産を特定の相続人に相続させる遺言)としてA子さんが単独で自宅の名義変更を行うことができるのですが、「譲渡する」と書かれていたことで遺贈(被相続人の死後に財産を無償で譲ること)とみなされ、相続人全員が登記義務者になるため共同申請をすることが必要になってしまいました。

ご主人のご兄弟もすでに高齢だったこともあって、実印の押印を渋る方がいたり、戸籍謄本や印鑑登録証明書の取得などに多大な時間を費やしました。

しかしたとえ「譲渡する」となっていても、②遺言執行者が指定されてさえいれば遺言執行者が登記義務者となり、受遺者(遺贈を受ける者、この場合A子さん)を登記権利者として2人で登記申請を完了させることができたのです。

このように、せっかく遺言書を準備していても、ほんの些細なミスによって狙い通りの効果を発揮することが出来ず、悔しい思いをすることがあります。

もちろん独学で作成された遺言書が全く無駄になるという訳では無いのですが、どうせなら専門家からアドバイスを受けてしっかりした内容の遺言書を作成する方が、結果大きな安心に繋がると思います。

遺言書を作成しようと思い立ったら、まずは気軽にご相談ください。

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これまでの5年間を振り返って~奥本編~


こんにちは、相続手続きと遺言書の作成支援を専門にしております行政書士奥本雅史事務所の奥本です。


『気軽に相談できる奈良の行政書士のコラム』がスタートしたのは、平成 29年 7 月 7 日のことでした。
あれから早 5 年が経ち、投稿記事数も 200 本を超えました。


ここまで続けてくることができたのは、間違いなくこのコラムメンバーの先生方のおかげです。一人ではとても続けることはできなかったと思います。


業務が多忙な時は、正直執筆を負担に感じることもありましたが、メンバーの先生方の励ましと責任感でなんとかやってくることができました。この場をお借りしてお礼を申し上げたいと思います。


行政書士会の同期 5 名によるリレー形式のコラムというのは、これまであまり例がなかった珍しい取り組みだと思います。
これからも長く続けていきたいと思っていますので、ご愛読よろしくお願いいたします。


行政書士としての 5 年間を振り返って一番感じているのは『行政書士の仕事は“まずは聞く”ということだな』ということです。

相続関連の手続きでは特に、相続人間の関係や財産の状況等がケースごとに全く異なっているため、先入観を持たぬよう気をつけながら慎重にお話しを聞いていきます。


またご依頼者は人の死に直面しておられるという厳しい状況ですので、本題に入る前に、故人についてのお話や、葬儀や手続きに追われご苦労されている話などをじっくり伺うようにしています。


行政書士は手続きを滞りなく、間違いなく遂行することが仕事ですが、そのためには『聞く力』を養うという事が非常に大切であると感じています。


これからも、人の心に寄り添いながら、心配事を解決していくことができる、そんな行政書士でありたいと決意を新たに励んでいきたいと思います。

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自筆証書遺言書の保管⑩まとめ《後編》

こんにちは、奈良市内で相続手続きと遺言書の作成支援を専門にしております行政書士の奥本です。

前回の終わりに『遺言書は財産の在る無しに関わらず、全ての人に必要ではないかと実務に携わっている中で感じる』と書きました。

財産が全くのゼロであるという場合には遺言書は必要ないかもしれません。しかし亡くなった方が不動産や自動車、預金や株式などの財産をいくらかでも所有されていれば必ず名義変更や解約の手続きをしなければならず、その際には”遺産分割協議書”か”遺言書”が必要となってきます。

遺産分割協議書は、相続人全員の話し合いによって決めた財産の分け方を記した書類で、相続人に作成の負担がかかる上、故人の意思はそこに反映されません。

ですが遺言書なら、生前に遺言者が作成することができ、死後の財産の分け方を自分で決めておく事ができます。

特に、ご自宅だけが主な財産であるという場合は要注意です。遺言書が無い場合は、原則として法定相続分の割合で財産を分けることになりますが、不動産は簡単に分けるというわけにはいきません。

例えばご自宅を子供の一人だけに相続させたいと考えたとき、他の子供達にはそれぞれの法定相続分の現金などを手当することになりますが、手当に十分な現金が無い場合は不動産を相続した子との間に不公平が生じるため、自宅を相続をした子が(少なくとも遺留分相当の)現金を負担することになります。

ですが遺言書には『付言事項(法律的な効果を持たない記載事項)』として、遺言者の希望や気持ちを相続する方々に宛てて書いておくことができます。

『〇〇に自宅を相続させたいと思っているが、それは長年私たちの面倒をみてくれた感謝の気持ちであるので、遺留分の請求は行わずにこれからも兄弟仲良く暮らしていってほしい』といった文章を記しておくことも有効な手立てと考えられます。

こういった付言事項も、自筆証書遺言の方が比較的自由に書きやすい(公正証書遺言の場合は少なくとも公証人と証人に内容を見られてしまうので)という一面があるのではないでしょうか。

さて、自筆証書遺言書の保管制度では、遺言者が亡くなった時にあらかじめ決めておいた相続人一名(または遺言執行者)に対して通知がなされるという仕組みが設けられています。

これにより、もしも生前に遺言書を書いたことを誰にも伝えていなかったとしても、遺言書の存在を知ってもらうことができます。

これは公正証書遺言にも無かった制度で、非常に画期的であると言えます。

では、自筆証書遺言書の保管制度のデメリットはなんでしょうか。

まず本人が必ず法務局に出向かねばならない点が挙げられます。

公正証書遺言の場合は公証人に出向いてもらって作成することが可能ですので、入院中や施設におられる方でも作成することができます。

様式に関する要件もかなり厳しく、氏名は戸籍通りの記載が必要で、通称や雅号、ペンネームは不可となっています。

またスキャナで読み取って画像データ化する関係上、余白にも注意が必要です。上5㎜、下10㎜、左20㎜、右5㎜の余白は必須で、もし1文字でもはみ出していた場合には書き直さなければいけません。

窓口での申請手続きには1時間ほどかかり、提出する申請書や遺言書の内容について専門的な質問をされることがしばしばあるという点も見過ごせません。

(ちなみに窓口では、ご自分が書いた遺言書の内容についての質問には応じてもらえません)

自筆証書遺言書の保管制度自体は、誰もが利用できることを目指して設けられたわけですが、馴れていない方にとってはいろいろと難しい面があることも否めません。

やはり遺言書作成の段階から専門家のサポートを受け、保管申請手続きの当日も専門家に付き添ってもらうことをお勧めいたします。

最後にもう一つ。

この制度はまだ始まって2年足らずの新しい制度であるため、「金融機関等が遺言書情報証明書できちんと対応してくれているのか?」という点が少し気になっていました。

しかしすでに相続手続きでこの制度を利用された方にお話を伺ったところ『銀行の手続きは驚くほどスムーズでした』とおっしゃっていたので安心しました。

自筆証書遺言書の保管制度は、今後ますますの利用拡大が期待されます。

もしもご興味をお持ちでしたら、ぜひお近くの行政書士に一度ご相談ください。

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法定相続情報証明制度①

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こんにちは、相続手続きと遺言書作成専門の行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

今回からは、『法定相続情報証明制度』についてお話ししていきます。

漢字がいっぱい並んでいて、なんのことやらさっぱり頭に入ってこないかもしれませんが、『法定相続(人)の情報を証明する制度』ということです。

相続④でもお話しした通り、相続発生後に相続人を確定するためには、まず被相続人の“出生から死亡までの戸籍謄本”を取得することが必要となります。

現状ある程度年配の方が亡くなられた場合には、戸籍謄本は一通では無く、何通かの束になります。(詳しくは相続④で)

そして相続人の間で遺産分割の話し合いがまとまり、いざ財産を相続する段となると、この戸籍謄本の束を預金払い戻しのために金融機関へ提出したり、不動産登記のために法務局へ提出したりします。

しかし戸籍謄本の束は読み解きが必要となるため、その作業に数週間かかることもあります。

手続きを行う金融機関が複数あった場合には、各機関ごとにその読み解きが行われます。
ですので、『戸籍謄本をA金融機関に提出→返却→B金融機関に提出→返却→C金融機関に提出→返却→登記のために法務局へ提出』と、このように戸籍謄本が手元に返って来なければ次の金融機関等へ手続きをすることができなかったため、手続きの完了までに多大な時間を要していました。

これらの問題点を解決し、相続手続きの煩わしさを軽減する目的で、2017年に法定相続情報証明制度がスタートしました。

この制度は、法務局へ戸籍謄本の束と、その他の必要書類、被相続人と相続人の関係を記した図『法定相続情報一覧図』を提出し、登記官がそれらを確認した後に、その図の写しを交付する、というものです。

その『法定相続情報一覧図の写し』は、金融機関等へ戸籍謄本の束の代わりとして提出し、手続きをする事ができます。
また写しは、必要な通数を交付してもらうことができるので、複数の金融機関等で同時に手続きを進めていくことができるというメリットがあります。

では次回も引き続き、この制度について詳しく見ていきたいと思います。

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民法改正と『相続』

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こんにちは、相続手続きと遺言書作成専門の行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

現在、日本にはおよそ2000種類ほどの法律があります。

その中でも、特に私達の暮らしに大きく関わっているのが『民法』という法律です。

私も行政書士を志すまでは民法の内容をほとんど知りませんでしたが、学ぶうちに、この法律が日々の生活の様々な出来事と深く関係していることを知りました。

民法は全部で1050条あり、その内容は、財産の所有権など権利に関することや、貸し借り、売買、贈与といった契約などについて定められた『財産法』という部分と、親族関係、婚姻、養子縁組、そして相続などについて定められた『家族法』の二つの部分に分かれています。

この家族法の中の「相続」について定められた部分(相続法と呼ばれています)は、2018年、約40年ぶりに大きく改正され、一部はまだ施行されていないものもあります。

私が普段使っているこの相続法の専門書は加除式で、内容が更新される度に、古いページと新しいページを入れ替えていくタイプのものです。
だいたい年に1〜2回、新しいページの束が送られてくるのですが、今回の改正時には通常の倍以上のページが届いて驚きました。あまりにページ数が増えたために、一巻だったものが二巻に分かれてしまった本もあったほどです。

このように専門家であっても追いかけるのが大変な相続のルールを、一般の方が完全に把握することは非常に困難だと思います。

それでなくとも相続の発生時に相続人となられる方は、たくさんの仕事をしなければならなくなります。

まず第一には「葬儀や法要など」があり、第二に「行政機関等への各種届出」、そして第三に「相続の手続き」があります。

しかし、相続②でも触れたように、相続には財産を『放棄』するか『承認』するかを決める熟慮期間(3ヶ月)という期限があります。

例えば、亡くなられた方(被相続人)が多額の借金を抱えた状態で亡くなってしまい、相続人全員が『相続放棄』をすることにした場合、被相続人の配偶者・子→親→兄弟姉妹と全ての相続人が『3ヶ月以内』に裁判所へ相続放棄の申述をしなければなりません。もしも放棄をしていない人がいれば、その方が単純承認をした事になり、被相続人の債務を相続しなければならなくなります。

故人を失った悲しみと様々な手続きに追われる中での3ヶ月間は、決して長いとは言えないと思います。

ですので、できるだけ早い段階で専門家にご相談されることをお勧めいたします。

この他にも、相続手続きをご自分でされてから『本当にこれで合ってるのかな?』と不安になるケースもおありではないかと思います。

当事務所では一時間4000円の相談料で、相続発生時に必要となる手続きの確認やアドバイスをさせていただいております。

ご自身やご家族、ご親族の皆様が安心してお過ごしになれるよう、ぜひお気軽に当事務所の相談制度をご利用ください。

 

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遺言書⑰ ~遺言まとめ 後編〜

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こんにちは、遺言書作成と相続手続きを専門にしております行政書士の奥本です。

今年の元旦は、朝から実家へ挨拶に行きました。
両親とお節料理をつついていると突然父が、『3年後、商売(家業はとんかつ屋です)を引退するかどうか判断したい』と切り出してきました。

父は現在77歳ですが、まだ現役で働いています。3年後は80歳。
もちろん引退しても誰も咎めない年齢なのですが、歳の割に若々しく元気なのは自分で店を経営しているという気持ちのハリがあるからだと思っています。
仕事をやめてしまうと急にガクッときてしまうんじゃないかという心配が頭をよぎりました。

ですがもう一方の頭では、親がこういう話をしてくれるタイミングなら、相続の事についても話しやすいな、とも考えていました。
お正月は相続のことを考える良いきっかけになるということを改めて感じました。

皆さまもこのようなタイミングを逃さないよう、ぜひ心に留めておいてください。

さて、それでは普通方式の遺言書についてまとめていきます。

普通方式の遺言書は、死が迫った時ではなく、平時にゆっくりと、『将来の備え』として準備するものです。

普通方式には、
・自筆証書遺言(詳しくは、前編後編番外編にて)
・公正証書遺言(詳しくは、前編中編後編にて)
・秘密証書遺言(詳しくは、前編後編にて)
の3つの方式があり、いずれも民法で要件が細かく定められています。この要件を欠くと、せっかくの遺言書が無効となってしまう場合もありますので、作成は慎重に進めなければなりません。

それぞれの要件など詳細については遺言書⑦~⑭までの各回を見ていただくことにして、ここでは3つの遺言書の比較をしてみたいと思います。

まずメリットを順番に挙げると、

自筆証書遺言
・自分で作成すれば費用がかからない

公正証書遺言
・公証人のチェックによる内容の担保
・原本を公証役場で保管
・検認の手続きが不要

秘密証書遺言
・遺言書の内容は秘密にしたまま遺言を残したことだけ証明してもらえる
・本文は、自筆だけでなくワープロやパソコン、タイプライター等で作成してもよく、また代筆でもよい

メリットに関しては、やはり公正証書遺言が飛び抜けて有利だと言えます。

では次にデメリットを挙げてみましょう。

自筆証書遺言
・自分で作成した場合、要件を欠いたため無効となったり、遺留分への配慮など内容面の不備のためにかえってトラブルを引き起こす恐れがある
・自分自身で保管しなくてはならない(令和2年7月10日より法務局で預かるという制度が開始されます)
・検認の手続きが必要(同制度で法務局に預かってもらった場合は、検認は不要)

公正証書遺言
・公証役場へ一緒に出向いてくれる証人が二名必要
・費用がかかる(公証役場に支払う手数料、専門家に依頼した場合の報酬等)
・遺言書の内容を証人に知られてしまう

秘密証書遺言
・自分で作成した場合、要件を欠いたために無効となったり、遺留分への配慮など内容面の不備のためにかえってトラブルを引き起こす恐れがある
・保管は自分自身でしなければならない
・公証役場へ一緒に出向いてくれる証人が二名必要
・検認の手続きが必要
・公証役場への手数料11,000円がかかる

秘密証書遺言は、他の2つに比べてデメリットが目立ちますね。代筆で作成したい場合(ただし氏名だけは自署しなければなりません)や、どうしても遺言書の内容を誰にも知られたくないなどの理由がある場合以外には、あまりお勧めはできません。

それぞれのメリットとデメリットを見比べると、公正証書遺言の優位性は依然揺るぎないものに思えますが、自筆証書遺言の法務局での保管制度が始まった際には、費用的な面から『専門家のサポートを受けながら作成する自筆証書遺言』の利用が増えていくことも考えられます。

遺言書について何かご不明な点がありましたら、なんなりと当事務所へご相談ください。

 

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遺言書⑯ 〜遺言まとめ 中編〜

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こんにちは、相続手続きと遺言書作成を専門にしております行政書士の奥本です。

前回はちょっと一休みということで、ドラマの事例から遺言・相続について考えてみましたが、今回からはまた遺言のまとめの続きに入っていきたいと思います。

遺言書④では、まず『遺書と遺言書のちがい』についてお話ししました。
簡単に言うと、遺書は「人生最後の手紙」で、遺言書は「法的な効力を持つ文書」です。
故に遺言書に書かれている遺言者の意思は、亡くなった後に、原則として実現されることになります。

ただ、遺言書が法的な効力を持つためには、法律に則った方式に従うことが必要です。

遺言の方式には『特別方式』と『普通方式』があります。
特別方式の遺言は死の危険が迫っているような特殊な状況で行うもの、一方、普通方式の遺言は平時にいつでもすることができるもの、となります。

特別方式の遺言をすることができるのは以下の4つの場合です。
(1)死亡危急の場合
(2)伝染病で隔離されている場合
(3)在船者の場合
(4)船舶遭難の場合

(1)と(4)は死の危険が迫っているとき、(2)と(3)は隔離された状況にあるときに行う遺言の方式ですが、それぞれに証人になれる人やその人数などについて細かく規定されており、それらを守らねば無効となります。(詳しくは遺言書④をご覧ください)

なお、これらの特別方式の遺言は、普通方式で遺言をすることができない場合の臨時的なものなので、遺言者が『普通方式で遺言書を作成できるようになった時から6ヶ月間生きていたとき』は失効してしまいます。

以上のことからも分かるように、通常の場合は『普通方式で遺言をする』というのが基本です。つまり遺言とは、遺書のように死期が迫ってから書くものではなく、もっと早めに、落ち着いて準備をしておくものなのです。

ご自分で『将来に対する備えが必要だ』と感じたとしたら、まさにその時こそが書き時と言っていいでしょう。

それでは、遺言書で実現できることとはなんでしょうか?

遺言書に書くことで法的な拘束力を持つ事項を『法定遺言事項』と言います。

遺言書は何を書いてもその通りに執行されるというわけでは無く、民法などの法律で、あらかじめ定められた事項についてのみ、効力を発揮します。

法定遺言事項は、以下に挙げるような事項です。
①相続に関する事項
②財産の処分に関する事項
③身分に関する事項
④遺言執行に関する事項
⑤その他の事項

①は相続時の財産の分け方などを指定することです。これは遺言書の最も代表的な目的といえるでしょう。

②は遺贈(相続人以外の者に財産を贈ること)などについて、③は例えば子の認知などに関すること、④は遺言執行者の指定など、そして⑤は祭祀財産(墓地や仏壇など)を承継する者の指定など、です。

これら以外の事項、例えば家族に対する願いや思いなども遺言書に『付言事項』として記すことはできますが、法的な拘束力は持ちません。
ですが、『こういった考えでこのように財産を分けたい』という理由などを遺言書に書き記しておくことは、相続人の理解を得るための助けとなるでしょう。
(より詳しい内容は、遺言書⑤をご覧ください)

では次回は、普通方式の遺言について見ていきたいと思います。

 

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ひと休み 〜ドラマから考える遺言・相続〜

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朝夕めっきり寒くなってまいりました。皆さま、風邪などお召しになっておられませんでしょうか?

相続手続き・遺言書作成専門の行政書士 奥本雅史事務所の奥本です。

遺言書シリーズのまとめの真っ最中ですが、今回はちょっと力を抜いていただくために、ドラマの話題から遺言・相続について考えてみたいと思います。

先日、Amazonプライムで『きのう何食べた?』というドラマが観られるようになっていました。

これは弁護士をしているシロさん(♂)と美容師のケンジ(♂)のゲイカップルの日常を描いたドラマなのですが、出てくる登場人物がみんな優しくて、ほぼ毎回泣けるいいお話です。

シロさんは毎日定時で弁護士事務所を出て中村屋というスーパーで買い物をし、ケンジと一緒に食べるための晩ご飯を作るのですが、出てくるお料理が毎回毎回美味しそうで、作り方も結構時間を割いて詳しく教えてくれます。

僕は調理師の資格を持っているので家でも毎日料理を作っているのですが、第8話で出てきたお料理がどうしても食べたくなり実際に作ってみました。

【材料】
・オリーブオイル 大さじ4
・タカノツメ 1/2本
・ナス 2本
・パプリカ(赤・黄色) 各1個
・水100cc
・酒 大さじ2
・みりん 大さじ3
・鶏がらスープの素 大さじ1
・しょう油 大さじ1/2

①タカノツメは種を取って輪切り、ナスは縦に四等分し、パプリカは縦切りにしておく。
②オリーブオイルを鍋で熱しタカノツメとナスを入れて炒める。(タカノツメが焦げやすいので注意!)
③ナスに火が通ったらパプリカを入れ、水、酒、みりん、鶏がらスープの素、しょう油で味付けする。
④中火にし、蓋をして蒸し煮にする。全体がくったりとしたら出来上がり。
(※分量は僕の目分量ですので、好みにより加減してください)

あまったら冷蔵庫に入れておいて、翌日冷たいまま食べても美味しいです。
簡単でサッとできる時短メニューですので、ぜひ試してみてください。

さて、この第8話では鉄さんとヨシくんというもう一組のゲイカップルが登場します。鉄さんとヨシくんはシロさん達の家を訪ねてきて、先ほどの料理の他、筑前煮、ちらし寿司などをごちそうになるのですが、食事の後で鉄さんがシロさんにある相談をします。

鉄さん『僕ね、59歳なんですけど、何軒か飲食店を経営していて、経営の方もまあまあうまくいってる方だと思います。それで多少、財産と呼べるものも、あります。それをね、全てヨシくんに渡したいと思っているんです。それでね、遺言書を作ろうと思ったんですが、僕の両親は二人ともまだ健在でね、だからもし僕が今すぐ死んだ場合、遺言書があったとしても・・・』

シロさん『ご両親には3分の1の遺留分があります。鉄さんの財産の3分の1は、鉄さんのお父さんとお母さんに渡ります。』

鉄さん『そうなんです。それで、僕が歯を食いしばって貯めた金を・・・田舎の両親に、びた一文渡したくないんです・・・。ヨシくんとは養子縁組をしようと思ってます。』

シロさん『そうですね。ヨシさんが鉄さんの養子になれば、相続人はヨシさん一人になります。』

相談の内容は以上のようなものでした。
鉄さんと、ご両親との間に、何か並々ならぬ事情や感情があったのでしょうね・・・。

さて、この連載を読んでくださっている皆さまにはすでにお馴染みとなっている、『相続人』 『遺言書』 『遺留分』といったキーワードが登場しました。

それでは、この事例を詳しく見ていきたいと思います。
鉄さんとヨシくんは同性カップルで法律上の配偶者とはなれず、子どもがありませんので、相続人はご両親のみです。つまり鉄さんが遺言書を書かずに亡くなった場合には、ご両親にすべての財産が相続されることになります。(法定相続分は、父と母それぞれ2分の1ずつ)

また、全ての財産をヨシくんに遺贈する旨の遺言書を作成していたとしても、ご両親には相続財産の3分の1を遺留分として取得する権利があります。(遺留分は、父と母それぞれ6分の1ずつ)


★ 遺留分=相続財産の2分の1(ただし、相続人が尊属(父母、祖父母)のみの場合は3分の1)に、各相続人の法定相続分の率を乗じたもの
『遺言書③~遺留分について考える~』もよろしければご覧ください)


しかし、鉄さんがヨシくんを養子にすれば、相続人は第一順位である『子』のみとなりますので、ヨシくんにすべての財産を相続させることが可能です。

昨年、Queenの映画『ボヘミアン・ラプソディ』が大ヒットしたこともあり、LGBT問題は以前よりかなり身近になったように思います。
ただ、法律の改正が行われない限り、同性カップルの相続に関する問題においては、このドラマのように、パートナーと養子縁組をするという選択をせざるを得ないかもしれません。(※それぞれのケースにより、対応は異なりますのでご注意ください)

今回はドラマの事例から遺言・相続を考えてみました。
次からはまた、まとめのつづきに戻りたいと思います。

 

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遺言書⑮ 〜遺言まとめ 前編〜

こんにちは、相続手続き・遺言書作成専門の行政書士奥本雅史事務所の奥本です。

これまで14回に渡って遺言書についてのお話をしてきましたが、ここで一度まとめをしておきたいと思います。
遺言書シリーズの第1回目を書いてから一年半ほどの時間が経っていますので、その間に法律が変わり、状況もかなり変化してきています。
改めてみなさんと一緒に振り返っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

まず〜遺言書①〜では、『遺言書は誰にとっても必要なもの』だと書きました。この当時は「人間が必ず死を迎える以上、誰にでも必ず相続は発生するから」という理由でこう書きましたが、今つくづく思うのは、財産の多少に関わらず、本当に一人一人に必要なものになってきているということです。『遺言書は一人ひとつずつ』という時代は、もうすでに来ていると感じます。

ですので、財産がほんのわずかな現預金だけ、という場合はともかく、不動産が少しでもあるという場合は、遺言書をお作りになられることを強くお勧めします。

遺言書を作っている場合と、作っていない場合では、相続手続きの大変さに大きな違いがあります。遺言書は、相続手続きをスムーズにしてくれる本当に素晴らしいツールであると私は思います。

次に、作成する時期についてですが、これは出来る限り早めに取り組む方が良いと思います。
私の父親は70歳代後半で身体はまだまだ元気なのですが、少し難しい話をしようとすると「わからん」と言って取り合ってもらえなくなります。
父が若い頃にはそんなことは無かったので少し戸惑っていますが、誰でも歳をとると頑固になりますし、判断力などが低下することも仕方がないことです。

しっかりと自分で判断ができるうちに、遺言書を作っておく』というのが遺言書作成の大切なポイントと言えるでしょう。

遺言書というのは「遺書」のようにマイナスなイメージのものではなく、例えば結婚資金、マイホーム購入資金などの準備をしたりするのと同じように、人生設計の一部として位置づけられるものだと思います。ぜひ若いうちから興味を持って取り組んでください。

 

続いて〜遺言書②〜では『遺言書を書いておいた方が良い人』についてお話ししました。
遺言書を書いた方が良い人とは、

(1)離婚、再婚をした人などで、相続する人の関係性が複雑な方
(2)法定相続分以外の分け方を希望する方
(3)法定相続人以外の人に財産をあげたい方

です。「これらに当てはまる方は遺言書を作っておくことをお勧めします」と書いていましたが、これまでの経験を通じて、ハッキリ『必要です』と言うべきかもしれないと思うようになりました。

例えば(1)の場合です。
結婚してお子さんができ、その後離婚して再婚し、また新しいお子さんができたという場合には、自分が亡くなった後、今のパートナーとお子さん達が、前の結婚でのお子さん達と遺産分割協議のために集まって話し合わなければならないのです。想像しただけでも心が苦しくなりませんでしょうか。
遺言書で故人の意思が示されていれば、少しでもその負担は和らぐと思います。

また(2)については、遺言書が無ければ法定相続分通りに財産を相続するというのが原則ですので、法定相続分以外の分け方を希望している場合は、遺言書を作成してください。しかしこの場合は、遺留分に注意が必要です。遺留分については後述します。

(3)の場合、例えばお孫さんや甥や姪、内縁の妻など、通常は相続人とならない方に財産を分けたい時には遺言書が必要です。

これらに当てはまる方は、ぜひとも遺言書を作成してください。
そして、簡単なことではありませんが、自分が亡くなった後のあらゆる展開を想定し、様々な事態に対応できるような遺言書を作成することが必要です。

 

〜遺言書③〜では、遺留分についてお話ししました。では先ほどの(2)の具体的な例を見ていきましょう。

財産は自宅と現預金のみ、ご夫婦と長男・次男の四人家族で、ご主人が亡くなり、『妻に全財産を相続させる』旨の遺言書が作成されていた、というケースで考えてみます。
ご主人が作成した『全ての財産を妻に相続させる』という内容の遺言書があったとしても、他の相続人には遺留分(法定相続分1/4の1/2 = 1/8)をもらう権利があります。

なお一点注意が必要なのですが、今回の民法改正では、「遺留分減殺請求権」が「遺留分侵害額請求権」へと変わりました。

これまでは、遺留分減殺請求がなされた場合には、不動産を共有するという扱いがありましたが、新しい遺留分侵害額請求では遺留分に相当する額の金銭で支払うこととなりました。

よってこのケースでも、長男、次男から遺留分の請求があれば、現金で支払うことになります。
ここでもし現預金が不足する場合には、自宅を売って現金化しなければならないということも考えられます。

こうならないような手立てとして、『配偶者の居住権』という新たな制度も創設されました。(この制度については2020年4月1日に施行されますので、また改めて説明する機会を設けたいと思います。)

また遺言書の附言事項で、長男と次男に対して「お母さんに遺留分を請求しないように」という思いを記しておく方法もあります。

遺言書も決して万能ではありませんが、作成することで相続のトラブルを防げる可能性は高くなります。

遺言書の話は決して縁起の悪いものなどではありません。
まずは遺言書のイメージを良いものに変えていただければ幸いです。

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遺言書⑭ 〜秘密証書遺言 後編〜

こんにちは、相続手続き・遺言書作成専門の行政書士 奥本雅史事務所の奥本です。

今回は、秘密証書遺言についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

秘密証書遺言の本文の訂正・加除については、自筆証書遺言の規定が準用されます。
すなわち、『遺言者がその場所を指示し、変更した旨を付記して署名をし、かつ変更した箇所に押印をすること』が必要です。(詳しくは 〜遺言書⑧〜で)

秘密証書遺言を作成するためには、公証役場で2名以上の証人に立ち会ってもらわなければなりません。この証人の資格については、公正証書遺言の規定が準用されます。つまり、

①未成年者
②推定相続人および受遺者、これらの配偶者および直系血族
③公証人の配偶者、4親等内の親族、書記および使用人

以外の者です。
公正証書遺言の場合とは違って遺言の内容までは知られることが無いので、知人・友人などに頼みやすいという点はあるかも知れません。ですがやはり秘密を守れる信頼できる人物を選んで依頼するということは大切でしょう。なお、代筆した筆者を証人から除くという規定は存在しないため、筆者も証人になることができると解されています。

成年被後見人が秘密証書遺言を作成する際には、立ち会った医師が『遺言者が遺言をするときにおいて精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態に無かった旨(きちんと遺言の内容を理解することができる状態だったという証明)』を封紙に記載して署名捺印をしなければなりません。

秘密証書遺言の保管についてですが、公証役場が保管してくれるのは『秘密証書遺言による遺言書が作成された』という事実だけで遺言書の原本を保管する訳では無いので、自分でしっかりと管理をしなければなりません。これに関しては、現状(令和元年8月現在)の自筆証書遺言と同じく、紛失・改ざん・隠蔽等の危険性があると言えます。

秘密証書遺言の場合、遺言者が亡くなった後、遺言書を家庭裁判所へ提出し検認の申し立てをする必要があります。この際には遺言書の封を開けずに裁判所へ提出しなければなりません。(検認を経ないで遺言を執行した場合や、封を開けてしまった場合は五万円以下の過料が科されます。)

秘密証書遺言を作成する際、公証役場に支払う手数料は11,000円です。公正証書遺言を作成する場合と比べると、安く作成することができます。

秘密証書遺言が実際に利用されている件数は、実はそれほど多くはありません。
『遺言書の内容は秘密にしたまま、作成した事実だけは残すことができる』という秘密証書遺言の特徴は、一見すると魅力的にも感じます。

ですが、公正証書遺言の作成と同じぐらい手間がかかる上に、遺言書の内容面や保管面での不安、検認が必要なことなどを考え合わせれば、公正証書遺言を作成する方がより賢明と言えるでしょう。

もちろん当事務所では、秘密証書遺言の作成についてもご相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

 

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